「ふっ…んぅ〜〜…はふ…」 春の朝といえば少し寒く感じるものだけれど、今日は日差しが強いのかとても暖かく感じた。 ゆっくりと伸びをして、カーテンを透けて差す朝日に目を細めながら勢いよくカーテンを開ければ 鮮やかな彩りの学院が眼下に広がった。今日も晴れのようだ。 戻ってきた日常がこれほど掛け替えの無いものだとは思いもよらなかったわけで… それでも、戻らなかった日常もあるわけで… 「おはよう、私のリズ。良い天気ね」 「おはよう、リーゼロッテ」 「おはようございます、ルイ姉さま、タバサ」 朝起こしに来るのはケティではなく、ルイ姉さまとタバサに変わってしまった。 確か、自宅療養中だとか言う話なのだけれど… 「ほら、アンタが顔を出さないから落ち込んでるでしょ。さっさとなさい」 「は、はいっ!」 そんな私の顔を見たルイ姉さまは頬を人差し指で掻き、後ろを振り向いて誰かに喋ってる。 それに、相手の声…これは… 「お、おはよう、リーゼロッテ。ひ、ひさし…ぶり?」 「ケティ!!」 横にずれたルイ姉さまの後ろには、ケティが居たのだ。 思わず大声が出てしまい、涙が零れそうになってしまった。 「よかった…よかったよぉ…」 「ちょっ!いたっ…痛いっ!そんなに強く抱きしめないでぇぇっ」 でも、悲しくて泣くのではなく、嬉しくて泣くのだから良いか…と頬を緩めた瞬間ぽろぽろと涙があふれてしまう。 止まらない、止められない。私はケティを強く抱きしめながら、大声で泣いた… それにしても、『ルイズ様助けてぇっ』て、ケティ…それでは私が怪力みたいじゃない。 −−−−−−−−−− ゼロの使い魔中期連載SS「オクトメイジ」 第十一話「ちっぱい?おっぱい?Aカップ!? −小さな一歩は偉大なる進化の証…?−」 −−−−−−−−−− 「見た目成長しても、相変わらずやることが子供ね…ま、リズはそこが可愛いんだけど」 「見た目だけじゃなく、ちゃんと中身も成長してますーっ!…見た目が成長?」 いつものように全力で抱きしめたせいなのか、『も、もうだめ…』という遺言…じゃない、言葉を残してぐったりしてしまったケティに驚いていると ルイ姉さまの、ため息交じりの呆れた声が上がっていた。 それよりも、ルイ姉さまの言った言葉が気になったのだ。見た目が成長しても…と。 8歳を迎えて以来、ずっと成長しなかったのに… 私は急いで姿見の前に向かって、じぃっと自分の姿を見るけれど…変わった…の、かな? 「リズ、アンタと私の身長差を言ってみなさい」 「えっと…さんじゅ「41サントよ。今153サントだから」えぇっ!? また伸びたのですかっ!?」 『成長期なのだから当たり前でしょう』と事も無げに返されたけれど、私の肩に手を置き後ろに立った 姿見に一緒に映るルイ姉さまとの身長差がそこまであるとは思えなかった。 「頭一つ分位の差だから…まぁ詳しくは計ってみないと分からないけれど…多分125サント位だと思うわよ」 「お…おぉぉ…」 前が112サントだったから…125サントいえば、13サントも成長したことになる。 それも半月でっ! 今までの成長期の分を、この半月で一気に取り戻したのだろうか。 因みに『半月』っていうのは、ルイ姉さまの使い魔が居なくなった日から数えての半月の事で… 実は、私が襲われた『あの日』からルイ姉さまの使い魔はどこかに居なくなってしまったらしい。 同時に食堂に勤めていたメイドが一人居なくなっていたので、手引きされたか連れ去られたのではないか…と噂が立ったけれど この半月で、その噂を聞くことはなくなっていた。 「うひょあっ!?」 「何色気の無い声を上げているのよ、うん…タバサくらいはあるかもしれないわね。ふむ…55のAって所かしら」 「…っ!? 妻のカップが…夫と同じ…これは、喜ぶべき?悲しむべき?…悩みどころ…」 いつの間にか、恐らく私が考え事をしている間だとは思うけれど…ルイ姉さまが私の胸を『むにむに』と揉み始めたのだ。 タバサが後ろの方で微妙な顔をしているようだけれど、そんな事よりも大切なことがあるっ! 「膨らんでいる部分といえば、乳首しかなかった私の胸が…ルイ姉さま、もっと揉んで下さいっ!」 「喜んでっ!」 ささやかながらも、ルイ姉さまの手で形を変える私の胸が嬉しくて 思わずそんな事を言ってしまったのだけれど…そういえば、ケティがそこに居たような… 「ギーシュさまぁぁっ 私の胸、揉んで下さぁぁいっ!」 「あらら…流石に胸を揉むのは魅了(しげき)が強すぎたみたいね…感化されて物凄い事叫びながら走って行ったわ…」 「け、けてぃ…」 そう思って急いでドアの方を向けば、ドアが閉まるのと目をハートマークにしたケティが走り去る姿が視界の端に映った。 恐るべし、私のフェロモン…だってほら、タバサにまで効いているようで タバサは私の下着の匂いを嗅ぎながら、自分で弄り始めていたのだ。 でも、下着は今穿いているから…今、タバサが手に持っているのは昨日穿いていたやつ… 「はぁはぁ…ケティの匂い…凄く興奮する」 「きゃぁぁっ!! ダメっ!タバサ!それ、昨日のだからっ!汚いから!…臭いなんて嗅いじゃだめぇぇっ!!」 顔が滅茶苦茶熱くなるのを感じながら、私は飛び掛るようにタバサから下着を…いや、使用済み下着入れごと奪い取る。 この袋は汚い物しか入って居ないのだから、雑菌が沸いている可能性が高いのに… 「はきゅうっ!? にゃ、にゃんで舐めてるのぉ…やっ…あっ…る、ルイ姉さままで…」 「ん…ちゅる…私のオカズを取ったから。はぷ…んふ…よく考えれば本人が目の前に居るのに…んぅ…ちゅ…その下着で…あむ…なんて…無粋だった」 「ホントね。『胸を揉んで〜』なんてリズから誘ってくる事なんて滅多に無いんだから、空気読んで一緒に気持ちよくなればよかったのよ」 私が袋を奪い取ったのも束の間。なんとタバサは私の股の間に顔を埋め、あそこを舐め始めたのだ。 驚いて声を上げ逃げようとしたのだけれど、『逃がさぬ』とばかりにルイ姉さまが私を後ろから抱きしめ やわやわと胸を再び揉み始めたのだ。しかも普通の揉み方じゃなく、相手を感じさせるえっちな揉み方で… それに胸を揉んでって、そういう意味じゃないから!ただ、胸が膨らんだのが嬉しかっただけだから! でもそんな抗議の声を上げる暇も無く、二人に弄ばれてしまう。 やっぱり私って、流されやすいのかな… 「あぁ、なんて嘆き、悲しい事なのかしら、私の心の友ルイズ。こんな女狐に謀略に負けるなんて…」 「「あ、アンリエッタ姫殿下っ!?」」 丁度私がベッドに押し倒されたところ。ルイ姉さまが私に覆いかぶさり、タバサが私の足を撫で摩り始めたところに聞こえた声だった。 全員が同時に窓を見れば、そこにはトリスティン王国の王女である『アンリエッタ・ド・トリスティン』が浮き佇んでいたのだ。 驚いたというものじゃない。王女といえば王城に居るものだし、そもそも今は同盟とか結婚とかそんな話でゲルマニアに行っていた筈… 「…今日帰ってくる予定で、今日魔法学院に来る予定になっているとコルベール先生が言っていた」 「そういえば言ってたわね、通りで外が騒がしいと思っていたわ」 「相変わらずマイペースなのね、私の友ルイズ」 そういえば私のクラスでも先生が、昨日そんなことを言っていた気がする。 最近授業に身が入らなかった弊害がこんな所にきてたとは…知っていたら今日は学院なんて居なかったのに。 窓の外が大騒ぎになっているようだけれど、アンリエッタ姫殿下はそんな事を気にした風も無く私の部屋に入って来た。 それ以前に、まるで私が居ないかのように振舞っている…やっぱりまだ嫌われているらしい。 嫌われる理由とすれば、あの変態(ウェールズ殿下)にアンリエッタ姫殿下の目の前で告白されたことだけれど… 確実にあれが原因だろう。 「ルイズ、人払いを。他国の方や『全く関係ない人』に聞かせる話ではありませんので」 言葉の端に嫌味が混じってる…流石の強引ぐまいうぇいなルイ姉さまも、王女相手に声を荒げることは出来ないのか 苦笑いしながら小さく『ごめんね』と言ってくれたのが精一杯だった。 にしても、何の話だろう…聞くなといわれれば気になるのは確かだけれど どんどん視線が冷たくなり続けるアンリエッタ姫殿下の威圧に押されるように、部屋を後にするしか無かった。 私の部屋なのに… 「むぅ…」 どうもアンリエッタ姫殿下だけは苦手だ。王女という立場もあるけれど、それだけではない。 アンリエッタ姫殿下はウェールズ様に浅からぬ恋心を抱いており、それだけにウェールズ様に… ウェールズ様かぁ…今ごろ何してるかな… じゃなくて! あんなの変態で良いのよ、変態で。 4歳だった私にいきなり求婚してくる位だし、突然抱きしめられたし そもそも、私よりも10歳も年上なのだ。 想像して見て欲しい、14歳の男が4歳の女の子に求婚している姿を。変態以外何者でもない。 「あれっ?タバサ?タバサぁ?」 一緒に食堂に向かって歩いていたはずのタバサがいつの間にか居なくなっている。 どこへ行ったのだろうか。 外に近くなったぶん騒がしさが増しており、人通りも多いから 恐らくは何かにかり出されてしまったのかも知れない。 大方アンリエッタ姫殿下の事だろうけれど… と、その時。突然人が割れた。 あぁ、ごめんなさい。人の波が割れたのだ。 騒々しく、慌しく走り回っていたはずの人の波が。 私を中心に、縦に、まっすぐに。 いや、中心は私だけではなかった。もう一人、私の視線の先に… 「やあ、久しぶりだね、僕のリーゼロッテ。美しさに磨きがかかって、見違えたよ」 「『貴方様の』はルイ姉さまでございましょう、ジャン・ジャック・フランシス・ド・ワルド様」 そういえば、この人はグリフォン隊の隊長に就任したとか聞いている。 恐らくはアンリエッタ姫殿下の護衛としてゲルマニア訪問について行ったのだろう。 「フフッ。相変わらずつれないなキミは。まるで僕の心を惑わず子悪魔のようだ」 『エスコートしますよ』と言いながらも、ワルド様は手ではなく腰を抱いてくるのだが 何せこの人は184サントの長身である。口元の髭もあり、小さな私の腰を取ったつもりでも 自然と手は背中に添えられた感じになってしまい、まるで子に連れ添う親の様にしか見えないだろう。 「きゃぁぁっ!ワルド様がリーゼロッテをエスコートされていますわ。なんて絵になる二人なのかしら…」 …訂正。どうやらこの学院には節穴しか居ないらしい。 「ふむ、普段から一人で食べるのかい?」 「いいえ、貴方様が私の隣に座られましたので、皆遠慮しているだけですわ」 『お前が邪魔なんだよ』と暗に伝えたのだが、どうやら全く別の…恐らくは真逆の解釈をしたらしく 終始にこやかな笑顔で俺の食事をとなりで見続けていた。 皮肉でワルド様に黒パン(非常に固い安物のパン)と塩スープを出したのだけれど、嬉しそうに頬張るワルド様を見て、少し躊躇(ためら)ってしまった。 「ははっ、気にしなくて構わないさ。元より学院で食事が取れるなんて思っていなかったからね。ありつけただけでも僥倖だよ」 なんて幸せ回路だろうか。これでは私がただの嫌な奴にしかならないではないか。 おそらくそんな心算はないのだろうけれど、非常に居た堪れなくなってくる。 「…はい、お食べください」 「なんと、態々リーゼロッテが僕にサントウィッチを作ってくれるとは…あり難く頂戴するよ」 食事にならず、食欲も失せてしまったので 手早く食パンを取り、サラダと海老にハムを挟んで、付け合せのソースを軽く振りかけて渡してしまった。 時間にすれば20秒もかかっていないと思う。 顔が熱い。何でこんな事をしなければならなくなってしまったのか。 それもこれも私の小さな意地から始まったのだと自覚しているから、恥ずかしくて顔が熱くなってしまったのだけれど ワルド様は私が照れて居るとでも思ったのだろうか、さらに笑みを大きくしながら簡易サンドウィッチを口に頬張っていた。 「あぁもう、何をやっているのですか。口元にソースが零れていますよ」 「おっと…すまない。手を煩わせてしまったね。 本当にキミは、僕の心をかき乱すのが好きだね」 かき乱すのはどっちですか。26にもなって口の周りにソースをつけながら食べるなど、何時まで子供の気分なのですか、と言いたくなる。 我慢できなくなって口元をナプキンで拭いてあげたのだけれど…うーん…ペースに乗せられている気がする。 食べ方にしても行動にしても、気になって仕方ないのだ。 「いやぁ…久しぶりにこんな美味しいものを食べたよ。ありがとう、僕のリーゼロッテ」 「うぐ…べ、別にワルド様のためにしたわけではありませんわ」 本当に、真正面から射抜いてくる彼は苦手だ。 ある意味、子供のように純粋だと言えるのかも知れないけれど… 「これは、ほんのお礼だよ…」 「っ!?…し、失礼しますっ!」 彼の目が見れなくて、下を向いていたのだけれど 『お礼』と言われて突然腕を引かれ、気付いた時には彼の唇が私の頬に触れていた。 もう、顔どころか全身が熱い。 気恥ずかしくなって、足早に食堂を後にする。 けれど、彼は追いかけるどころか立つ気配すらない。 完全に遊ばれていたのだ。 悔しい。遊ばれたことよりも…あのロリコンに、しかも頬にキスされただけなのに… こんなにもドキドキしてしまう自分が… 「タバサ! もう、どこに居たのよ…探したのよ」 「突然突風が吹いて…気付いたらリーゼロッテとはぐれてしまっていた」 突然の突風…あンのロリコンめ…やっぱり全部仕組んだことだったのかっ! 文句を言いに戻ろうとしたけれど、タバサはいきなり私の腕を掴んでいた。 「美味しそう…」 「えっ? あ、サンドウィッチね。一つあげる」 何だろうと思ったら、涎を垂らしながら私の手に持つサンドウィッチを見ていたのだ。 そういえば、私は朝食を食べたけれどタバサは恐らく食べずに探し回っていたのだろう。 結局食欲がわかなくて半分も食べずに終わってしまったので、ロリコンが食べている最中に二つ作っておいたのだ。 恐らくまだアンリエッタ姫殿下と話しているルイ姉さまと食べようと思って。 流石に朝食は食べているだろうと思っていたタバサのお腹が鳴ったのに気付いて、私の分を渡したのだ。『ごめんなさい』と心の中で呟きながら。 「あれ、ルイ姉さま…と、アンリエッタ姫殿下が居ない…」 部屋に戻ってみれば、誰も居なくなっていた。 窓も閉めてあり、そとの喧騒がなくなっている所からすればもう帰ってしまったのだろうか。 「はく…んく…ふぉへ…へはぃ…」 「?…あぁ、手紙、ね」 因みに、今タバサが食べているのは、ルイ姉さまに渡すために作った分のサンドウィッチである。 ルイ姉さまに渡してと言いながらタバサに渡したはずなのだけれど、一秒とかからず食べ始めてしまった。 それほどお腹が空いていたということなのだろう。 タバサに渡された置手紙を手に取り、開いて… −死ねばいいのに− 一気に落ち込んだ。こんな事するのアンリエッタ姫殿下しか居ないよ… 「リーゼロッテ、二枚目がある」 「え?あ、ほんとだ」 紙をずらしてみると、筆跡はルイ姉さまのようだ。 どうやらルイ姉さまが書いた置手紙の上に、アンリエッタ姫殿下はご丁寧に重ねて行ったのだろう。 そんな事する前に自分の気持ちをウェールズ様に打ち明ければいいのに… 「え、え?…えーーーーーっ!?」 「…どうかした?」 ほんの数行、軽く書いてあっただけだけれど内容が凄まじかった。 −アンリエッタ姫殿下の用事で、数日の間アルビオンへと行って来ます。 今アルビオンは戦争中で心配かもしれないけれど、大丈夫。グリフォン隊隊長のワルド様が同行してくださるらしいから。 タバサ、何かあったらリズをお願い。貴方になら全てを任せられるから。 ルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエール− 「ど、どどっどうっどうっ!」 「落ち着いて、リーゼロッテ。確かアルビオン王国は今激戦地区に指定されているはず。王女の命令とはいえ、そこに向かわなければならないということは、トリスティンにとってもかなり危険な事態が生じるということ」 そんなの分かってる! アルビオンに行くとかどうでも良い! 「ワルド様が同行しているのが問題なのよ!」 「…え?」 きょとん、とされてしまった。それもそうだ。タバサはワルド様の事を知らないから。 ウェールズ・テューダーとジャン・ジャック・フランシス・ド・ワルドの二人は、恋心を持つ相手の目の前で私に告白してくるような人なのだ。 そんな人とルイ姉さまが一緒になど行ってしまったら… 『リズ、旅先でね…出来ちゃった♪』 「うぁぁっ!? 危険なのっ!危険すぎるのっ! お願い、一緒に来て!」 「それは構わないけど…どうしたの?」 『途中で話すから!』とだけ言って、タバサに急いで使い魔の風竜を呼んで貰う。 あのワルド様のことだ。恐らくはグリフォンに乗って行っている筈だ。 風竜ほどの速度が出るはずはないのだが、何よりグリフォンは航続距離が凄まじい。 速度のみ勝っている風竜では飛べない距離を軽く飛んでしまう。 もしかすると、休みなしで一気にアルビオンまで行ってしまうかも知れないのだ。 しかも、グリフォンの上で… 『やぁっ! ワルド様ぁっ…そんっ…なかっ…ぁ…かき混ぜたら…何度でも…絶頂(イ)っちゃいますぅっ!!』 『可愛いよ、僕のルイズ。グリフォンの振動が効いてさっきから僕のを『きゅうきゅう』と締め付けているよ。ほら、今沢山出してあげるからね…っ!』 なんて事が…! 「ひとつ、聞いて良い?」 「わっ…とと…なに、とりあえず…飛んでっ!」 窓の外に待機した風竜(確かシルフィードとかいう名前だったと思う)に飛び乗って首につかまりながら一気に加速してもらう。 出来るだけ最大速度で飛んでもらわないと、追いつこうにも追いつけないから。 「リーゼロッテ、貴女は…どっちに嫉妬しているの?」 「えぇっ!?…し、嫉妬って…ち、違うからっ!」 上空の雲を抜け、昼に差し掛かる頭上の太陽の光を浴びながら言われた一言。 私が嫉妬している? ダレに? 私はただ、あのロリコンに言い含められるルイ姉さまが可哀相で… 訝しげに私を睨むタバサの視線を避けるように私は、前を向いた。 なんで私があんなロリコンに嫉妬しないといけないのだ。 「嫉妬なんて…してないんだからっ!!」