「フッフッフ…」

ここは美神令子除霊事務所の台所。
まだ肌寒さの残る早朝、俺は甘い香りの立つ鍋をゆっくりとかき混ぜていた。
普通に考えれば、俺が台所に立っている事自体非常に不自然なのだが
今日はホワイトデーという事もあり、皆特に気にした様子も無い。

台所の主たるおキヌちゃんですら、俺の邪魔をしまいと
気を利かせて台所に入って来ないくらいなのだ。


「こんな所かな…うんうん、俺にしては良い出来じゃないかっ!」

小さな容器に移し替え、冷蔵庫に入れながら満面の笑みを浮かべて笑う。
本当に、笑いが止まらないとはこの事だろうな、と俺は思った。


GS美神短編「小さな手違い?それは小さな策略」


「こっちが美神さんので…」

美神さんに渡すのだけは少し離れた場所に置いて、他の…おキヌちゃん達に渡す物は雑多に纏めておく。
平たく言えば、美神さんに渡すチョコ『だけ』特殊な物を入れているのだ。
さらに判りやすいように、美神さんの分は複数個ある(それはもう、一回で終わったら勿体無いので)小さな容器を大きめの容器に纏めて入れてある。

敬虔な諸氏ならお分かりであろう。
厄珍から美神さんの脱ぎたてパンツと交換して手に入れた強力媚薬(排卵誘発剤入り)をこっそり入れているのだ。
つまり、コレを美神さんが食べれば…

『キャー横島くーん、私をメチャクチャにして〜っ!!』

とか、あるいは

『横島君…もう、我慢できないのっ!!』

とか言いながら美神さんが俺に…


「なーんつってなっ! なぁんつってなぁっ!!」

『なっはっはっはっは!!』と冷蔵庫の前で笑う俺を見るタマモの視線が非常に痛いが、後の情事の事を考えれば些事に等しい。

後は半日寝かせて(そうしないと味に気付かれる可能性があるらしいのだ)、皆が居なくなってから
最後に美神さんに食べさせれば、全てが終わ…もとい、バラ色の人生が始まるのだ。


「横島さーん、そろそろ時間ですよ〜」
「おう、丁度終わったよ」

時間を見れば、既に10時を軽く回っている。
今日の除霊タイムだ。
予定では夕方頃には帰って来れるので、時間潰しとしても丁度良いと言える。


「じゃあ横島君、行くわよ」
「了解ッス!」
「頑張るでござるよーっ!」

美神さん、シロ、俺、そして無言で付いて来るタマモ。つまり今回は、おキヌちゃんはお留守番である。

「皆さん、頑張ってくださいね〜」

笑顔で見送るおキヌちゃんに笑顔を返し、俺は車の助手席に…

「アンタはトランク!」
「何でなんやー!!」

…乗ることは許されず、俺は小さなトランクの中に詰め込まれてしまうのであった。



「あ〜…酷い目にあった…」

往復共々トランクの中で過ごした所為か、身体を伸ばせば『ゴキゴキ』と骨が悲鳴を上げる。
しかも今回は…いや、今回『も』か。
シロとタマモが競争を始め、それを諌めて走り回って…


『アンタって、あの子達の父親みたいね』

『くすり』と、小さな笑みを浮かべながら美神さんが言った言葉が脳裏に浮かんでくる。
言われた時は調子が悪くて、美神さんに飛びつくことが出来なかった。

いや、それ以上に酷いことを言ってしまった。
何も考えずに出てしまった言葉だ。

『いやー…なら、何時もご飯作ってくれてるし、おキヌちゃんが母おぶーっ!?』

普段なら『アホか』とか罵りながら殴り飛ばしてくる美神さんが、無言で殴ったのだ。
シロタマのお陰で特に悪い雰囲気になったわけではないが、引っ掛かりがあるのは確かである。


「やっぱ、あそこは『それは俺の嫁にーっ』とか言いながらの方が良かったかなぁっ!?」

ぼーっとしてたのもあったが、突然腕を引っ張られたのに全く対応が出来ず
バランスを崩してしまい、引っ張られたままに相手を押し倒してしまった。

引っ張られた先は事務所の中。
考えれば、相手はおキヌちゃん以外ありえないのだが

いきなり俺を引っ張ること自体、おキヌちゃんでは『ありえない』話なのだ。


「美神さん達は用事ですよね?」

おキヌちゃんは、俺が押し倒したことを気にする風も無く
吐息がかかりそうな程に近い距離で、何時ものような笑みを浮かべて聞いてくる。

いや、確認してくる。


…確認?
おキヌちゃんは知っていた?


美神さんの用事とは、美神さんの母親の美智恵さんがシロタマの二人に用があるから連れて来いと
…車の中で電話があったのだ。
しかも、事務所には電話しておらず『おキヌちゃんに言っておいてね』と美神さんから託(ことづけ)を貰っている。

だが、今はそれどころではない。

「ご…ごめん、おキヌちゃん」
「いえ、気にしなくていいですよ。確かにここでは痛いですし」

今ごく普通の口調で、おキヌちゃんが何やら凄まじい言葉を言ったような気がしたが…
いやいや、美神さんとの蜜事が頭に残っている所為でそう感じているのだろう。
そう思ってはいるものの…

「さ、行きましょ」

どうもおキヌちゃんが俺に触れてきているような気がするのだ。
いつもならただ促すだけなのに、そっと俺の手を握って軽く引っ張っている。

まるで、それが当たり前のような笑顔で。


「おキヌちゃん、もしかして…チョコ食べた?」

ちょっとした違和感が膨らんでいく。
もしかして…そんな思いが止まらなくなってくる。

もしかして、『あれ入り』チョコレートを食べたのではないか…と。


だがおキヌちゃんからの回答は無く、ただ『にこっ』と笑みを浮かべただけだった。
いやいや…その笑みのなんといやら…じゃない、魅力的なことか。

少し上気した頬が相俟(あいま)って、『どきり』と心臓が跳ね上がる。


「ちょ、ちょっとごめん」

急いで確認せねば。そう思って台所へ走り、勢い良く冷蔵庫を開けた。

1、2、3の…減ってない。
『ほっ』と胸をなでおろす。
もしかして、おキヌちゃんたちの方に間違えて入れてしまったのではないかと懸念していたのだが…

「…っ!」

息を呑んだ。
『美神さん』に渡す方。あっちには5つ入っていたはずなのに…

「4つ…まさかっ!」

流し台の方に目をやれば、見たことのある空の小さい容器。
そういえば、どれが誰のかなんて言って居なかった。

おキヌちゃんだからつまみ食いはしないだろうと、勝手に想像していたのだが…
明らかに事務所メンバーの数より多いチョコの数だ。
他の人に渡すにしても、一個は自分のだと思うだろう。

なら、一個くらい食べても問題ないと思って…


「よぉこしぃま…さんっ!」
「ひぃっ!?」

あまりの突然のことに、思わず偏な声が上がってしまう。
おキヌちゃんの声、後ろから抱きつかれたこと…そして…

「横島さぁん…私たちに…こぉんな…えっちになるチョコ食べさせようとしてぇ…なぁに考えてたんですかぁ?…んふふ〜」
「お、おおっ…おキヌちゃっ…おちっ…落ち着いてっ!!」

おキヌちゃんの細い指が、ズボン越しに俺の股間を弄ってきているのだ。
やっぱりおキヌちゃんは、間違えて媚薬入りのチョコを食べてしまったらしい。


「落ち着いてますよぉ? ちょーっと頭がふら〜ってしてますけどぉ…うふっ…」

左脇から『にゅっ』とおキヌちゃんの顔が覗いてくる。
『かちゃかちゃ』と音を立てながら、ズボンがおキヌちゃんの手で脱がされていく。

抵抗して逃げれば…なんて事は出来ない。
何故なら…


『この媚薬、とーっても強力ね。男の精液を子宮に注がれるまでどんどん興奮していくね。絶対止まらないね』


厄珍から聞いた言葉。
美神さんに食べさせたら、そのまま襲い掛かる心算(つもり)だったので大して気にもかけなかったのだが
おキヌちゃんが食べたというなら話は変わってくる。

ここで俺がやらなかったら…?
恐らく遠くない未来に、おキヌちゃんの興奮が限界を超えて精神に異常を来たしてしてまうだろう。

おキヌちゃんがこうなったのは、俺がちゃんと説明していなかったから…
いや違う。

俺が薬などに頼って美神さんを抱こうとしたからだ。


「待っておキヌちゃん、俺が…気持ちよくするから」
「はぁい…んふふ…いーっぱい、してくださいね」

流し台に手を付き、おキヌちゃんが俺にお尻を向けてくる。
挑発するようにお尻をゆっくりと動かしている姿がなんとも艶かしい。

『ごくり』と生唾を飲んでゆっくりとスカートをたくし上げれば、白いお尻が…
いやそれよりも…ぐちゃぐちゃに濡れたおキヌちゃんの秘所に目を奪われてしまう。

既におキヌちゃんは下着を着けていなかったのだ。

「んっ…横島さんのっ…指っ…ぃ…っは…んんっ…」

食べてからどれくらいの時間が経っているのだろうか。
恐る恐る手を伸ばせば、そこはまるで熱病に掛かったかのように熱くなっている。

ゆっくりと触れる程度の刺激では物足りないのか、おキヌちゃんは物の数秒で『はやくぅっ』と魘(うなさ)される様におねだりして来るのだ。

あの、普段楚々(そそ)としたおキヌちゃんがこんなにも興奮している。
それだけで、俺のは熱く…

あ、すまん。
おキヌちゃんに弄られた時に大きくなっていたな。


「いくよ、おキヌちゃん…っ!」
「は…い…んっく…ひゃ…ん…んんっ!!」

俺の方も既に限界に近かった。
顔半分を自分の腕にうずめて、おキヌちゃんが切なそうに俺の顔を見つめる姿に
我慢なんて出来るはずが無いのだ。

小さな抵抗。
あったのはそれだけだった。

それだけおキヌちゃんの膣内(なか)は熱く緩くなっており、しかしながらヒダの一つ一つが俺のに絡んできて
入ってきたのを喜ぶように、『ひくひく』と震えながら俺のを優しく包んで締めて…

…あれ?


「おキヌちゃん、絶頂(イ)ってる?」
「き、聞かないでっ…くださっ…っはぁ…ふーっ…ふーっ…んひぃっ!」

さっきまでこっちを見つめていたおキヌちゃんが、顔を腕に埋めながら『いやいや』と顔を振っている姿が可愛くて
意地悪したくなって『ぐっ』と膣奥を擦り上げてあげれば、『びくびく』と震えながら背中を反らせてしまう。

初めてのはずなのに、軽く擦っただけで絶頂(イ)ってしまうなんて…


「んっ…あっ…あぁっ…っくぁ!…そんっ…激しっ…さっ…やぁんっ…頭のぉ…中っ…えっちな…んんっ…事で…一杯に…ひゃうっ…なっちゃいますぅっ!!」

俺が腰を打ち付ける度に小さな絶頂を迎えているのだろう、さっきから膣内が痙攣しっぱなしになっている。
声が裏返り、『だらだら』と涎を垂らしながら全身を駆け巡る快感に翻弄されるおキヌちゃんの姿は
可愛くて…愛(いとお)しくて…

「いいよ、もっと一杯俺を感じてっ!…ほらっ!…ほらっ!!」
「ひゃぁっ…感じっ…ますっ…ぅ…すごっ…子宮が…きゅんきゅんしっ…放しでっ…壊れ…壊れちゃいますぅっ!」

もっと見たい、おキヌちゃんのいやらしい姿を…艶姿(あですがた)をっ!
『ぐりぐり』と奥を擦り上げたり、浅く入り口付近を苛めたり
やること全てに敏感に反応して、可愛い嬌声を上げ『きゅうっ』と膣壁が俺のを締め上げてくる。


「うっく…だ、射精(だ)すよっ!」
「射精し…射精して下さいぃっ!…私の…私の子宮に…いっぱい…横島さんの赤ちゃんの種を…注いで下さいぃっ!!」

腰が持っていかれそうな程に凄まじい快感が身体を貫いていく。
俺の射精に反応するように、膣壁が俺のを更に奥へと導くように『ざわざわ』と動き始める。

『むにゅっ』とした感覚を鈴口に感じた瞬間、熱く滾った精子が一気にほどばしっていた。


「っっっ!!!!…っはぁっ!…すごっ…いっぱ…出てますぅっ!…私の…赤ちゃん作るところにっ…横島さんの精子がっ…たくさん…すごっ…気持ち良いの…止まらなっ…あぁっ…横島さっ…受精してますっ…横島さんに膣内射精(なかだし)されて、受精しちゃってますぅっっ!!」






「よこひまひゃぁん…しゅきぃ…」
「っはぁっ…キヌちゃ…」

どれ程射精(だ)していただろうか。
終わった後も抜けることは無く、おキヌちゃんを抱きしめたまま床に座り込んでしまっていた。



「…終わった?」
「っ!?」

余韻が冷めたのを見計らったと言わぬばかりのタイミングで聞こえてきた声に、俺は『ビクッ』と震えてしまう。
おキヌちゃんはあまりに絶頂を感じて疲れたのだろうか、『すぅすぅ』と小さな寝息を立てていた。

「た、タマモ…何時から?」
「何時からも何も…私達が帰ってきた事にすら気付いてなかったの? ほい、シロ」

冷蔵庫からチョコを取り出しながら、タマモが明らかに小馬鹿にした口調で言ってくる。
…じゃなくてっ!

今タマモが手に取ったのは…シロに渡したのはっ!

「心配しなくて良いわよ? ちゃんと『媚薬入り』の方を食べるから」

やはりというか、妖孤と人狼には媚薬も嗅ぎ分けられるのだろう。
しっかりと『媚薬入り』と判った上で食べて…

「お、おい…それって…お前ら俺に抱かれたいって事なのか?」
「ニブいにも程があるわね…ま、『媚薬入り』は処分するようにミカミから言われてるし、捨てるの勿体無いじゃない?」
「煩悩魔人の先生を満足させるには、拙者達二人で無いと無理でござろうからな」

咋(あからさま)なため息をひとつ付いたタマモと、嬉々とした表情のシロ。
対照的ながらも…って

「美神さんに媚薬バレてたんかーっ!?」
「気づかれてないって思ってたのはアンタだけ。全員知ってたに決まってるじゃない」

シロがおキヌちゃんを横たわらせると、タマモが俺に覆いかぶさってくる。
同時に股間に感じる暖かい感触と甘い快感。
シロが舐めているのだろうか…それを確認する術はない。

視界一杯に居るタマモの上気した顔に目を奪われて…

「ミカミは今夜、西条の所に泊まってくるそうよ。私達もアンタの子を孕んであげるから…頑張って満足させなさいよ?」
「タマモー、逆でござるよ〜。拙者達が満足するのは簡単でござる。頑張って先生を満足させるのでござるよっ」

シロの言葉に『くすり』と笑むタマモの表情は、まさに傾国の美女と謳われた妖狐そのもの。
どうやら、今夜はまだまだ長くなりそうだ…



はしがき

というわけで、ホワイトデーなお話をお送りしますゆめりあんでござります。
媚薬系は色々考えてはいたものの、中々手をつけなかったジャンルではあります。

楽しめましたでしょうか。いえむしろ

おかずになりましたでしょうかっ!

結局のところ、エロ話ってそこに行き着くのです。


本当は、シロタマの部分や…それから4Pに入る所まで構想があったのですが
流石に長すぎる(最後のシロタマの台詞辺りで既に12000字突破)ので、割愛となりました。

い、一応おキヌちゃんメインの話ですからっ!
とお茶を濁しつつ…
また、次回に。
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