ゆったりとした微睡(まどろ)みからゆっくりと覚醒していく 「ん…んふ…んっちゅ…はむ…」 視界に入る豪奢な天井 シルクのカーテンから漏れる朝の光 「っぷぁ…はぁ…はぁ…はん…ちゅ…」 毎朝確認してしまう。 もしかしたら、夢ではないのかと。 本当は、小さなアパートで鼾(いびき)をかいて寝ているのではないかと。 「んんっ…はぁっ…んむ…はちゅる…っちゅ…」 だが、俺の身を襲う甘い快感が『これは現実なのだ』と…そう言っていた。 じわじわと来る快感に、俺の口から『はぁ…』とため息が零れてしまう。 いつもの様に一気に射精(イ)かせてくれるのなら良いのだが、どうも今日は焦らしたいらしい。 484848ヒット リクエスト短編「妻の条件」 彼女と付き合い始めて、もう半年になる。 最初は冗談か何かと思っていた。 何せ、相手はGS界では重鎮とされる世界最大の式神使いの家系の一人娘。 多少行動と性格に難があったとは言え、俺を見初める意味がわからなかった。 『私は〜貴方が〜あなたがぁぁ〜』 顔を赤くし、泣き叫びながらも必死に告白してきた彼女の姿が脳裏に浮かぶ。 式神たちを暴走させながら俺に抱きついて、何度も何度も『好き』だと。 …しかし、長い。 俺が起きてからもう10分近く経っている筈なのに、未だに焦らしている。 いい加減こちらとしても我慢が出来なくなって来ていると言うのに… 『たぁちゃぁん…きてぇ…』 ベッドに座り、足を広げたままに立てて 俺に見えるように、全くと言っていいほどに生えていない秘所を指で開きながら 熱っぽい視線と熱い吐息で俺を誘ってくる彼女の姿が脳裏に浮かんでくる。 淫乱な訳ではないと思うが、非常に積極的な娘だ。 こうやって、朝から俺のをしゃぶって起こそうとしたり…は、今回が初めて…か。 「んぐっ!?…んっ…んぶっ…はっ…んっ…んんっ…」 流石に俺の理性の限界を超えてしまった。焦らしすぎなのだ。 俺は彼女の頭を掴み、そのまま乱暴に腰を動かし始めた。 シーツに隠れたままに、くぐもった声と水音が漏れて聞こえてくる。 見えない分『容赦』という物が無く、ただただ己の欲望の為だけに腰を動かしてしまうのだ。 しかし、彼女も結構余裕のようだ。 大体嫌な時には泣きそうになって、身体から霊力が漏れ出し 酷ければ式神たちが出てきたりするが、今の彼女からはその兆候は見られない。 マゾの資質でもあるのかな。等とも思うが、俺にはSMの趣味は無いのだ。 「くっ!」 「んんっ!?…んっ…ぶっ…ごほっ…んぐっ…」 焦らしに焦らされた所為だろうか。 今までの何倍もの快楽が身を襲うと同時に、唯の一度の射精で数発分も出している様な快感が全身を襲う。 シーツの中から咽(むせ)る声が聞こえるが関係ない。 少しでも快感を長引かせようと、俺は射精しながら腰を動かし続けていた。 「はぁっ…はぁ…はぁ…」 そのままもう一度射精をし、彼女の顔に擦り付ける様に動かしてからベッドを降りる。 朝からハードだな、全く。 軽い虚脱感に襲われる身体をゆっくりと伸ばし… 「たぁーちゃ〜んっ おはよ〜」 ドアから入って来た彼女…六道家の一人娘である六道冥子に会ったのだ。 「…? どうしたの〜?」 絶句する俺に、冥子は不思議そうな顔を浮かべている。 不思議なのは俺の方だと言いたい。 いや、それより…ベッドの中に居るのは誰なんだ? 「ひっく…うっく…ぐす…」 ベッドの方からすすり泣く声が聞こえてきて、俺の身体からどんどん血の気が引いてくる。 「た〜ちゃん、あのねあのね〜」 しかし、幸か不幸か冥子にはその声が聞こえて無い様で 俺の手を握りながら微笑んで来た。 「今朝〜タマモちゃんが〜ウチに〜来たの〜」 マッタリのんびりとした声で言って… 待て タマモが来た? もしかして、ベッドに居るのはタマモなのか? 「も、もしかして…タマモか?」 言って置いて変だが、俺は返事するなと願っていた。 タマモが俺に好意を持っていたのは知っている。 しかし、こういう大胆な事をする様な奴ではない筈なのだ。 「うぁ…ひっく…うあああああああああんっっっ!!!!」 俺の思いも空しく、俺の声に呼応するように ベッドの中からタマモの泣き叫ぶ声が聞こえてきた。 流石に気付いたのだろう。 俺の手を離して、冥子はゆっくりとベッドに向かいシーツを捲ったのだ。 …死んだかな、俺。 儚い人生だったと、心の中で涙を流し… 「あら〜…タマモちゃん〜こんなに〜いっぱい〜…うふふ〜」 「…へ?」 俺の頭の中では、怒り狂った冥子が俺をボコボコにするシーンが流れたのだが 目の前に居る冥子は、タマモの顔中に付いた精液を舐め取りながら『うふふ』と微笑むだけだった。 「タマモがここに居候するって?」 「そうなの〜」 未だに『ぐしぐし』と泣いているタマモの頭を洗いながら、冥子が俺に相槌を打ってくる。 しかし解せない、と俺はプールほどもある大きな湯船に浸かりながら思うのだ。 無論、タマモが居候してきた事に付いてではない。 俺は、自分でも判るほどに酷い事をしたのだ。 それも非難されても当然な事を。 しかし、二人とも非難するどころかそんな素振りすらない。 何か裏があるのだろうか、とも思ったのだが 冥子自身嘘などそういったものを付くのが非常に苦手なのは付き合っていてわかる。 だとしたら…もし、俺の頭に浮かんでいる事が事実だとしたら… 俺は不安を拭うように冥子の方を向き、『違うと言ってくれ』という思いを込めて聞いてみるのだ。 「なぁ、冥子…もしかして…」 『タマモにそういう事しろと言ったのはお前なのか』と、続く言葉が消える。 振り向かれた彼女の表情に後ろめたい物は感じない。 真っ直ぐな瞳。 俺が間違いだったのではないかと、唯の俺の妄想なのだと… 「やっぱり〜気持ち良く無かったの〜?」 「っ!?」 息を呑む俺の耳に『初めてだったから仕方ないよね』という冥子の言葉が突き刺さってくる。 「な、なぁ冥子…俺たち結婚を前提に付き合ってるんだよな?」 「…?」 俺の問いに、きょとんとした顔が返ってくる。 『何を今更言っているのだ』と。 「あ、そうよね〜…私達が〜早く〜結婚しないと〜」 『愛人囲めないよね』 屈託の無い笑みと共に聞こえた冥子の声。 いや、冥子ではない者が喋っているのではないかと勘違いしてしまう。 六道家とはそういうものなのか? 妻と同時に愛人を囲むのは当たり前なのか? 「どうしたの〜? 難しい顔して〜」 疑問が浮かび続ける俺に、冥子とタマモが近付いてくる。 どうやら洗い終わったらしい。 二人は俺の両側に浸かり、そのまま俺の身体を弄(まさぐ)って…って、ちょっと待て 「冥子、お前は良いのか?」 「何が〜?」 『俺が愛人を囲ってもお前は気にならないのか』と聞いたつもりだったが、冥子には通じなかったのだろうか。 冥子はタマモに教えながら、俺の感じる部分を触っていた。 世界の美女は俺の物、とか ハーレムは男の夢、とか確かに俺は言って居た。 しかし、それはモテない男の戯言なのだと…かつて俺を好きだと言ってくれた女の魔族と恋仲となった時に感じたのだ。 だからこそ、今の状態が異様に感じてしまう。 「あのね〜…私達が〜結婚したら〜…令子ちゃんや〜おキヌちゃんとかも〜呼ぼうと〜…」 「呼ばなくて良いっ!!」 あまりの俺の大声に、冥子が『ひっ』と小さく悲鳴を上げる。 そうだ、これは異常なのだ。 ならばこれ以上続かないようにしないといけないのだ、と。 俺は冥子とタマモを抱き締めなら心を落ち着かせ、小さく呟く。 「いいか冥子…俺は、そんな事をされても嬉しくない」 「で、でもぉ…」 「良いから、黙って聞けっての」 話していて判った事。 それは、冥子は俺が去るのを恐れていたのだ。 だから、愛人という名の鎖で俺を繋ぎとめようとしていた。 俺からすれば、逃げる気も無いのに望みもしない鎖に繋がれる事になるのに。 「まぁ、タマモとは関係持ってしまったから仕方ないとしても…もう、無理すんな…良いな?」 「た、たぁちゃん…」 これで、良いのだ。 良いはず…なんだけど 「つまりこのドスケベロリコン煩悩魔王の劣情を、わたしと冥子のたった二人で受け止めろと言ってるわけね」 「どうしてそういう解釈になるんやーっ!?」 タマモの『やれやれ』といった風の言葉に、思わずツッコミを入れてしまうが… そうか、とやっと判った…言われるまで気付けなかった。 最初から、冥子が無理をしていたのだと。 最初から、冥子は必死だったのだと。 それに気付けないで、俺は好き勝手に冥子にぶつけていたのだと。 「あ、あのさ…ごめんな、今まで…」 ばつが悪く、冥子の顔を見れないままに呟いてしまう俺の耳に 「うっ…うぅ…っく…」 冥子の、苦しくも辛い泣き声が聞こえてきた… 熱い湯船に浸かっている筈なのに、身体に冷たい何かが流れていく。 それだけ、彼女は辛かったのだ…辛い思いをさせてしまったのだ… 『どうすんのよ』とタマモが横から聞いてくるが…どうするか。 いや、簡単なことか。 「冥子、今度から嫌な事は『嫌』ってちゃんと言えよな」 「あ…でも…」 「『でも』は無しだ。俺は冥子と歩きたいんだよ。だから俺の無理にばかり付き合わず、お前の無理にも付き合わせてくれ…な」 『くしゃり』と頭を撫でれば、やっと…冥子の笑みが… 冥子の本当の笑みを見れたような気がした。 「ねえ、わたしはわたしは?」 「お前は却下」 空気を読まずに横槍を入れてくるタマモににべも無く言えば、『なんでっ!?』と嘘泣きに入り始めた。 嘘泣きだとわかり易いんだよな…こいつは。 「お前に我が侭言わせすぎると、毎日毎食揚げが付いてきそうだからな」 「揚げ美味しいじゃないっ!」 タマモの抗議の声に、やっと俺達は声を出して笑う事が出来た。 だから、俺はタマモの頭を撫でながら『ありがとな』と心の中で呟くのだ。 それから、俺と冥子は結婚して 無事(?)にタマモは俺の愛人第一号となった訳なのだが… 「それで〜、ここが〜こうで〜」 「ふむふむ…」 「なるほど、勉強になるでござる」 「め、冥子…アンタそんな事まで…」 何で俺はベッドに素っ裸で縛りつけられて、冥子の教材にされているんだ? しかも、周囲には冥子とタマモだけではなく俺の見知っている…俺の愛人となった美女たちが下着姿で冥子の講義を受けて… 「それで〜…えいっ」 冥子の何とも可愛らしい声とは裏腹に、凄まじいテクニックであっさり射精させられる俺を見ながら 麗しき愛人たちの感嘆の声が響いていた… 『はい、二回目〜』と『くすくす』笑みながら良い様に俺を射精(イ)かせる冥子と、周りの美女たちを見ながら これで、良かったのか…俺? そう、思わずには居られなかった。 はしがき というわけで、484848ヒットをお送りしますゆめりあんでございます。 …のつもりだったのですけど、書き終わって 『ぎゃーっ 3P書いてないー!?』って気付いた時は後の祭り… 今回はちょっと雰囲気を変えてみました。 エロ度から言えば…最高を10として…3くらい、かな? 冥子ちゃんと横島君が恋仲になったら、冥子ちゃんはどうするだろうかというのを考えて書いて見ました。 最初は冥子ちゃん視点で書いていたのですが、凄まじくダークな話になったので横島君視点に… 唯のエロではなく、真面目に付き合っている二人の関係… ちょっとだけ大人の関係って感じになれたでしょうか。 軽い感じのエロは結構書いてましたからねぇ… 偶にはこういうのもどうなのかな、と… では、また次回に。