「ぐあ…残金112円かよ」

ここは、俺こと横島忠夫の自室。空腹に負けそうになりつつ財布の中身を確認すれば、何とも寂しい金額が顔を覗かせている。
時計に目をやれば18時過ぎ。丁度夕飯時といった所か。

腹は減りども懐寒く…
カレンダーを見れば、次の給料日まであと一週間はある。
何時もならここまで金欠になる事は無い。
事務所に居ればおキヌちゃんの手料理が食べれていたから、家で食べる事すら殆ど無かったのに。

ココ最近は…

『近頃霊的不況が続いてるから、アタシが呼んだ時だけ来なさい』

先月美神さんに言われた言葉が脳裏に浮かんで、俺の口からため息が漏れてしまう。
30日の内20日以上は事務所に行っていた時と比べて、今月は10日も行っていない。

「流石に、他のバイトも掛け持ちせんと死ぬぞ…」

そういう所まで来たのだ…


GS美神短編「ネコねこ狂想曲(ラプソディ)」


「問題は、どこでバイトするか…だよなぁ」

まず、高校生を雇ってくれるバイト。これが第一。
そして、美神さんの所をやめるわけではないので不定期に休める場所。
後は…

「美人のねーちゃんでも居れば…」

…なんて冗談も口に出してみるが、背に腹は換えられなくなって来ている。
さっきから腹の虫が鳴りっ放しなのだ。

…となれば、安くても飯にありつけるバイトだ。
コンビニ、喫茶店、レストラン…その辺りか。

レストランというフレーズを思い浮かべると同時に、一人の女性の顔が脳裏に浮かぶ。

魔鈴めぐみ

『魔法料理 魔鈴』を経営する現代の魔女。
彼女なら知らない仲ではないから、多少の融通も利く…と、思う。


「えーっと…ぐあ…マジかよ」

駄目元で魔鈴さんの店に来てみれば『CLOSED』の文字。
しかし、今日は休みではないはずなのに…

「あ、あれ? 開いてる」

ドアノブに手を掛ければ、あっさりと開き『カラン』と銅鐘の音が静かな店内に鳴り響く。
『魔鈴さん?』と入り口近くで呼びかけるも返事が無い。

店内が明るい。電気がついている。
空調も効いている。やはり今日はあける心算(つもり)だったのだろう。

きょろきょろと辺りを見回せば、遠くから聞こえる猫らしき鳴き声。
そういえば、魔鈴さんの使い魔は猫なのだ。
言葉が喋れる上に二本足で立つという奇妙な猫。

こっちか、と台所を覗けば…

「に…にぁ!?」

居た。猫が。

あぁ、いやいや

猫の魔鈴さんが

いや、これも違う

猫耳と尻尾を生やした素っ裸の魔鈴さんが、四つ這いになり
お尻をこちらに向けていた。

足音で気付いたのか、お尻を向けたまま顔をこちらに向けて驚いた顔をしている。

「何だ…この匂い…」

独特の青臭い臭い。後々魔鈴さんから聞いたのだが、この臭いはマタタビの枝から作ったお酒の臭いらしい。
鼻に付くアルコールの臭いに頭がくらくらする。

「う、うぉっ!?」

気付けば、『どさり』という音と共に俺は倒れていた。
鼻先数ミリの所にある魔鈴さんの顔。
どうやら、俺は押し倒されたらしい。って、そんなに冷静になってる場合でもなかった。

「にぁ…にぁにゃなぉ…んにんにゃん…」

魔鈴さんが目に涙を浮かべて猫語(?)で必死に訴えてきているのだ。
因みに、俺は猫の言葉なんて全くわからない。

シロかタマモ辺りなら判るかもしれないが…
と、考えて思い出す。

俺には文珠があるじゃないか、と

しかしストックが…

「ぶほぁっ!?」

後ろから見たときは、大事な部分が尻尾で完全に隠れていたので見えなかったが
押し倒されている状態の今では、全てが見えているのだ。

悪いと思いつつ、まじまじと鑑賞…

「んに…んにゃ…」

鑑賞する暇も無い。
視線を魔鈴さんの身体の方へと向けた瞬間に、魔鈴さんのなんとも恥しそうな声。

よくよく考えれば当たり前である。
俺と魔鈴さんは恋人同士とか、そんな関係ではないのだ。
極端な話『知っている』だけ。
そんな相手に裸を見られるのは流石に恥しいだろう。

しかし悲しいかな、俺の霊力の元は煩悩なのだ。
女性の肢体を見るなり触るなり想像するな…

「んむぁ!?」
「ん…んにぁ…んにゃ…にぅ…にゃ」

何て言っているのかは判らない、だが判る事はひとつだけある。

俺は今、魔鈴さんのチチに顔を挟まれていた。
いや正確には、俺の頭を魔鈴さんが抱き締めているのだ。

混乱しつつも、魔鈴さんの胸の柔らかい感触を頬で感じ

「ん…にぁっ…んに…」

魔鈴さんの鼻の掛かった声に、俺の身体がびくりと震える。
いけない、何をしている俺。
気付けば、胸に思い切り頬擦りしてしまっていた。

だが、お陰で右手に感じる丸い玉の感触。
何とか文珠を生成できたのだ。

さて、次の問題だ。
なんて文字を入れるか。

『猫』…じゃ、完全に猫になってしまいそうだ。
『人』…って魔鈴さんだと簡単にわかる位だから、意味はないだろうし。
『言』…って、これだと人の言葉とか固定できそうも無いし…
『カチャカチャ…ジィィ』…そうそう、かちゃかちゃで…じぃ……?

「んなぁっ!?」

思考の波に飲まれて全く気付かなかったが、視界に魔鈴さんの姿が無い。
音がしたのは明らかに俺のGパンであり、現に今脱がされ…

そう、視線を向ければ
真っ赤になりながら、魔鈴さんは俺のズボンを脱がしていたのだ。

気のせいか、魔鈴さんの呼吸が荒い。

俺が何かしたのか、とも思うが考えていただけで何もしていない。
文珠も発動していない。

「んにぅ…んにぁ…ん…」

驚きで身体が硬直している俺とは対照的に、魔鈴さんが目を潤ませながら俺の股間に頬擦りしている。
トランクス越しに感じる魔鈴さんの頬の感触。

仕方ない、これは不可抗力だよなぁ…
なんて、自分に言い訳しながらも淡い快楽に身を委(ゆだ)ね…

「って、委ねんなよ俺!?」

あんまり気持ち良くて、他の事がどうでもよくなって来そうになったが
魔鈴さんと俺はこういうことをする関係には無いのだ。

恐らく、魔鈴さんの姿が変わったのに原因が…

「うっく…ま、魔鈴さっ…」
「んにぅ〜…んにぃ〜…はぁ…む…ん…んにぅ…んむ…」

硬くなる俺の物をトランクス越しに咥え始めている。
時間の猶予など無い。

ぶっちゃけると、暴発寸前なのだ。

「とっとととっ…とりあえず『伝』で魔鈴さんの思考を…ぶほぁっ!?」

文珠に『伝』と籠めて、急いで魔鈴さんの額に当てる。
途端に流れてくる魔鈴さんの思考…

『男の臭い』『我慢できない』『えっちしたい』『咥えたい』『入れてほしい』

「んにっ!…にぅぅ…」

『びくびく』とトランクスの中で跳ねる俺の物を見詰めながら、魔鈴さんの残念そうな声が零れる。
我慢なんて出来るわけも無かった。
頭の中に直接魔鈴さんのエロい思考が流れてきたのだから。

「ん…んぃ…ちゅ…んっ…はむ…んにゅ…」
「うぁ…魔鈴さっ…」

魔鈴さんは俺のトランクスを思い切り脱がし、白濁塗れとなった股間の周りに舌を這わせ始める。
猫化した所為なのか、ざらりとした魔鈴さんの舌の感触。

一通り周りを舐め終わる事には、俺の物は再び硬くなっており

「んぶっ!?…ん…ん…」

嬉々とした表情で魔鈴さんに加えられ、10秒と経たずにそのまま魔鈴さんの口の中に出してしまう。

『ちゅるちゅる』と音を立てながら、尿道に貯まった精液を吸い取り
硬さの衰えぬ俺の物から口を離す。

恍惚とした表情。
目を潤ませ、頬を染め、少し上を向いて零さぬように、『くちゅくちゅ』と音を立ててうっとりとしながら口の中にある物を口全体で味わっていた。

しばらくして、『こくり』と喉が動く。
目を細め、大事そうに…

「んにぁっ!」

我慢なんて、もう出来ない。
せめて抵抗してくれればと思うのだが、魔鈴さんは俺に押し倒されても全く抵抗しない。
いや、それどころか…

「んに…にぅ…んにゃ…」

俺の物を掴むと、自分の秘所へとあてがうのだ。
俺の物と魔鈴さんの秘所が擦れ、『にちゃにちゃ』と淫音が店内に響く。

そういえば、ここは店内だった。
場所を変え…

「んにっ…んにぁぁっ」
「うっくぁぁっ!!」

『にゅる』という感触と共に、暖かい物に包まれていく快楽に身体が振るえ
そのまま出してしまう。

無理も無い、と思ってほしい。
俺は初めてなのだ。だが、魔鈴さんは物凄く不満そうな顔をしている。

『もう終わり?』

そう、顔に出ていた。

「にぅぅぅぅぅ…」

このままじっとしていたら引っかかれそうな気配。
大丈夫、俺のはまだ萎えていない。まだ終わって無いのだ。

「にぁぁぁんっっ」
「うぁ…っく…すご…」

魔鈴さんの頭を抱きながら、ゆっくりと膣(なか)に挿入(い)れていく。
少しづつ進むたびに内壁がざわざわと動き、俺のを優しく締め付け扱(しご)く凄まじい快感。
気を抜けば、直ぐにでも出てしまいそうだ。

「るにぁぁ…んにゃぁぁ…」

『ハッハッ』と浅い呼吸と、猫の嬌声が胸元から聞こえる。
1往復で10秒以上かかっているというのに、少し動くごとに魔鈴さんの身体がびくびくと震えて
それに呼応するように肉壁も俺のをきゅうきゅうと締め付けてきた。

「うぁ…も…出…うっく…」
「んにっ…ん…ん………んぃ…」

絶頂に目を細める俺の頬を魔鈴さんが舐めてくる。

視線が絡む
悦楽の中にある怒り。

考えても、俺の所為だった。

「少し、強く動きますよっ!」

我慢できないなら、数で勝負するしかない。
既に二回も膣内(なか)で射精(だ)しているのだ。出るのは気にするな、兎に角魔鈴さんを満足させろ

そうしないと、俺…殺されるかもしれん

「にぁぁっ…んにゃぁぁっ…んにぅぅぅっ!!」

先ほどとは明らかに違う声。
全身を『がくがく』と震わせ、魔鈴さんは涙と涎を流しながら喘いでいた。



…もう何回膣内射精(なかだし)したか、何て覚えていない。
股間の感覚は麻痺し、ただただ魔鈴さんを貫くためだけに、悦楽を与えるだけのために腰を動かしていた。
それでも尚快楽が貯まれば膣内(なか)に出し、出しながら動く。
もう俺の出した物が『ぐじゅぐじゅ』と泡立ちながら、繋がっている所から溢れてきていた。

「んにっ…に…あ…ぁ…」

さっきとは違う動きと声。
もしかして、魔鈴さん絶頂(イ)きそうになってるのか。
そう思うが早いか、全力を込めて腰を動かす。

もう幾度の絶頂で頭の中が変になりそうだ。
だが、それももう少しで終わる。
終わらせる、ただそれだけの為に動く。

「に…あっ…まっ…また…絶頂(イ)きますっ…絶頂(イ)きっぱなしなのに、膣内射精(なかだし)されながら、また絶頂(イ)きますぅぅっっ」
「・・・へ? う、うぁぁぁっっ」

唐突に耳に届く猫語(?)ではない魔鈴さんの声。
はっきりとした意思が聞こえる。って、そんな場合ではない。

朦朧とする意識の中、魔鈴さんを見れば頭にあった猫耳がなくなっている。

確認できたのはそれだけだった。
魔鈴さんがぎゅうと抱きつき、声にならない声を上げながら絶頂(イ)くのと同時に
物凄い締め付けと、まるで膣奥に飲み込まれるのではないかという肉壁の動きに

もう何度も出したはずなのに、今迄で一番の量が出ていた。
腰が抜けてしまうほどの快楽が身を焼いていく。

その快楽に翻弄されながら…俺は、ゆっくりと意識を失った…




「ほぉ…そんな言い訳が通用するとでも?」
「い、いや本気(マジ)なんですってば!?」

あの一件から数日たって、明らかにお互いの見る目が変わってしまった事を皮切りに
俺は事務所を辞めることにしたのだ。

事の顛末を美神さんに話し(流石にヤってる所は省いたが)たのだが、全く信用してくれている気配は無い。

シバかれる! そう思ったのだが
美神さんは無言のまま、ゆっくりとため息を付きにこりと微笑んだ。

「全く…」

どうやら理解はしてくれて…

「どうせ自給はあっちの方が上で大した危険もなくてちょっと良い雰囲気になったりとかしてそんでもって『この位しか出せなくてすみません、お詫びに毎食食べさせて上げますから毎日来てくださいね♪』とか何とか言われたりしたんでしょうがぁぁぁっ!!」

全く理解してくれていなかった…

「うぎっ!?」

急に身体が硬直してしまう。
自分の身体を見れば、大量の低級霊が俺の周りに居た。
耳に聞こえる笛の音…これは

「おおお、おき…おキヌちゃん!?」
「うふふふふ…そうですか。私の料理より魔鈴さんの料理の方が美味しいんですか。そうですよね、あっちはプロですし、私みたいに胸無いわけじゃないですし、影も薄くないですし、魅力もたっぷりですものね…うふふふふ…」

振り向けば、視界の端に見えるおキヌちゃんの姿。
黒いオーラを身に纏い、暗い笑みを浮かべながらゆっくりとこちらに近付いてくる

「ふ、二人とも…待っ…!」
「問答…」
「無用ですっ!」

筆舌し難い、とはこの事だろうなぁ…と思いながら
殴られ、叩かれ、踏まれ、シバかれながら二人の今日のパンツの色を確認する。
今日も二人は肌色。

俺って、結構余裕あるよなぁ。




一方その頃…

「ふふっ…これで、横島さんは私の所に来てくれますね」
「恋愛に魔法を使うのはフェアじゃないと思うニャー…」

『魔鈴印 夢想薬(猫耳ばーじょん)』と書かれた薬瓶を振りながら『くすくす』と笑む魔鈴さんと、使い魔猫のため息交じりの声が静かな店内に響いた…


はしがき

というわけで、ネコミミ魔鈴さんをお送りしますゆめりあんでござります。
実はこの話、某お方よりのリクエストだったりします。

『俺だってリクエストしたいんだぞコノヤロー』って方もいらっしゃるとは思います。

勘違いしないでくださいね?
リクエストはキリ番ゲットした人以外受け付けない。って訳じゃないんですよ。

リクエストと、私のストック及び周りの需要が噛み合えば
その人のリクエストは通って、この様にSS化するわけなんです。
こういう場合リクエストした人の事は公開していないので判り辛いですが
実は短編の凡そ7割強がリクエストされた物をSS化した物なのです。

『どーせ言っても書いてくれないだろうから』と最初から諦めるのではなく
『一杯リクエストして、一個でも通れば良いや』という感覚で図々しくリクエストしてくれた方が良いと思います。

私の場合に限り、ですけどね?

さらにリクエストをSS化する確率上げたいなら、最近GTY+様の『マリあんチャット』に出没していますので
そこで私と仲良くなりましょうっ

知らない人からよりも、ずっとリクエストが通りますよ?


では、また次回に
短編目次へ

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