「う・・・」

夏でもないのに寝苦しく感じ、横島はゆっくりと目を開ける。
視界に入るのは我が家我が家の天井…そして、赤いメッシュの入った白い髪の毛

そう、暴走犬こと人狼『犬塚シロ』が抱きついていたのだ。


GS短編「兄様と呼んで良いですか」


「お、俺はどきどきなんかしてないぞー!?」

ぎゅうと抱き締められて感じる柔らかな感触に、頭を振りつつ『ロリコン違うんやー!』と叫んでいるが、次の瞬間びくりと身体を振るわせた。

「とぉ・・・さま・・・」

シロが顔を当てている部分が濡れていた。
そう、シロは父親を殺され、単身でこの人間界に移り住んでいるのだ。

「父親が恋しくなっても仕方ないか…」

姿は中学生くらいだが、中身はまだまだ…いや輪をかけて子供なのだから。
横島が優しく頭を撫でると『んっ…』とくすぐったそうに声を漏らしながらも、すりすりと擦り寄ってくる。

「う・・・あ・・・?」
「あぁ、すまん。起こしたか?」

ぼぅっとしたままゆっくりと目を開けるシロに優しく微笑む。

「なぁシロ…俺さ、父親にはなれないけど、兄くらいにはなってやれるからな」
「え…ほ、本当でござるか!?」

眠気はどこへやら、狂喜乱舞するかのように起き上がり『きゃうーんっ』と雄叫びのような声をあげて喜んでいる。
やはりまだまだ子供だな…と心の中で呟きながら横島がシロの頭を撫でる。

何時ものシロなら、撫でられるとほぅっと溶けたような表情をするのに、今回は違っていた。
頬を朱に染め、ちらちらと横島の顔を窺っているのだ。

「じ、じゃあ…こ、こっ…今度から…」
「あぁ、先生じゃなくて兄と読んでいいぞ」

シロの言いたい事は判るとばかりに、言葉の途中から肯定する。
それが余程嬉しかっただろう。シロは飛びついて顔を舐め始める。
何時もの横島なら『顔はやめてー』と叫ぶ所だが、今日から兄妹になるのだと許し…

その許しが間違いの始まりであった。

「んっ…んっ…」

なんと顔だけでは飽きたらず、口の中まで舐め始めたのだ。

「ぷはっ…ってこらシロ! 口の中まで舐める奴があるかっ」

すぱぁんっと小気味の良い音を響かせながら頭を平手で叩くと『きゃいんっ』と小さく鳴いて離れる。そう、何時もなら。

でも、今回のシロは叩かれても離れなかった。

「し…シロはあにさまの妹でござるから…そんな事に屈しないのでござるっ」
「あにさまって…ってそうじゃねぇ…口の中まで舐めるなと言ってるんやー!」

叫ぶ横島にくすりと笑むと、シロは耳元に口を寄せ

「じゃあ、代わりに全身を舐めでござるよっ」
「ぜ、全身はいややぁー!」

そんな横島の叫びが一晩中こだましていた…


勿論、全身を舐められたかは定かではないが

「横島…ちょっとあんたシロ臭くない?」

とタマモに言われたり

「あにさまーっ」

と叫びながら横島に抱きつき、キスをするシロの姿がそこかしこで見られたという…


はしがき

シロ妹化計画第一弾(一弾!?)をお送りしますゆめりあんでござります。
いやはや・・・某所にて電波を頂きましたので、書いてみました。
意外に良いですねー。次はタマモやおキヌちゃん辺りでも書いてみたくなります。

では、次回に。

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