「今日は一日、秋蘭の元で働きなさい」
「へ…?」
今年最終日の朝。最近は華琳の元で色々と仕事をしていた俺に、突然の辞令が降りていた。
秋蘭は華琳の文官のトップであり、その下で働く事に問題は無いのだが
本当にここ最近は華琳の近くでサポートをしていたので、思わず気の抜けた声が出てしまっていた。
無論それは俺だけではないだろう。華琳に全幅の信頼を寄せているからこそ口には出していないが、皆不思議そうな顔をしている。
喜んでいるのは、俺を嫌っている桂花くらいなものだ。
「あら、私の言葉が理解できないのかしら?」
「そういうわけじゃないんだけどな…うん、わかった。よろしくな、秋蘭」
「あぁ。北郷も文官として、良い働きをするようになっているからな。期待している」
華琳との会話もそこそこに秋蘭の方を向けば、いつもの様に目を閉じて薄く笑っている。
普段通りの表情と言えばそうなのだが…どうもおかしい。
「何をしているの。時間は有限よ、一刀」
「あ、あぁ」
華琳の方に視線を戻せば、華琳の方も笑みを浮かべている。
俺の気付かないところで、何かコンタクトがあったということか。
華琳に生返事を返したまま、秋蘭の後をついていく。
小さな疑問を、心に秘めながら。
2012年 新年秘め始めSS「真・恋姫無双 〜魏ルート〜」
「年の初めの蜜月」
「…ふむ。あぁ、問題ない。随分と助かったよ、北郷。姉者ではこうはいかないからな」
「し、春蘭と同列なのか。俺は」
気が付けば日もとっぷりと暮れていた。
一日掛けての書類の整理と欄分けだ。国一つ分の書類を一日で終わらせられたのは僥倖と言うべきなのか、強行軍で半ば無理矢理終わらせようとしたのは無謀と言うべきなのか。
文官の皆は死屍累々といった様相で机に突っ伏している。
元気…あくまで外見は、だが…なのは秋蘭だけだ。
そう、俺も精魂尽きてしまい、今にも床に座り込みそうになってしまっていた。
「それは『まさか』さ。姉者は純粋に剣一筋だからな」
これは秋蘭なりの褒め方なのだろう。姉である春蘭と主である華琳を至上としている秋蘭の。
他に例えるものが無いから、ということなのかもしれない。
「さて、今日はもうこれで終わりだ。北郷は…っ!」
「秋蘭っ!」
秋蘭が椅子から立ち上がろうとした時だった。普段からしっかりと立つ春蘭がバランスを崩したのだ。
気の張らない城内で躓(つまづ)く春蘭とは違い、およそ躓く事など無いあの秋蘭が、だ。
だからだろう。俺の体は俺の考えが動く前に動き始め、秋蘭が倒れる前に抱きとめていた。
貧血でも起こしたのだろうか。ほんの一瞬だけ気を失ったのだろう。
いやそれよりも、だ。秋蘭の身体はまるで冷水の様に冷え切っていたのだ。
「おい、秋蘭!」
「ん、あぁ。北郷か。すまないな。少し疲れたみたいだ」
抱いたまま軽く秋蘭の身体を揺さぶれば、すぐに気が付いたのだろう。ゆっくりと目を開けてくれる。
やはり年末ということもあって、睡眠時間を削ってでも仕事を来年に持ち越さないで良い様に働いていたのだろうか。
華琳はこれを見せたかったのだろうか…
そして、俺の顔を確認して安心したのだろうか。秋蘭は再び目を瞑り、小さな寝息を立て始めていた。
「で、俺はなんで剣を向けられているんだ?」
「可愛い妹である秋蘭の寝込みを襲おうとしたのだ。首を刎(は)ねられて当然だろう」
このまま文官用執務室に居ても仕方が無いと、秋蘭たちの部屋まで抱いたまま来たのだが…
毎度のことながら、なぜ春蘭は俺に剣を向けるのだろうか。
「俺は執務室で寝てしまった秋蘭をつれて来ただけだっての。それと、秋蘭は寝てるから。静かにな」
「へ?あ、あぁ…そ、そうか。うむ、なら私が連れて行こう」
秋蘭の寝入った顔を見て少しは理解してくれたのだろうか。今回はすぐに剣を収めてくれていた。
本当ならば最初から剣は抜かないで欲しいが、どうも信用されてないのか大事な人順位の低さからなのか…
先に弁解しておくが、秋蘭は軽い。流石に華琳ほどではないが、長身の秋蘭でも俺より20キロは軽いのではないかと思うほどに軽い。
だがそれでも長時間抱いているのは辛いものがある。
それを察してくれた…わけではないだろう。単に妹である秋蘭は自分で、と思って行動したのだろう。
春蘭が秋蘭を抱き上げてくれていた。
流石に武官である春蘭は軽々と秋蘭を持ち上げている。
春蘭と秋蘭は身の丈も腕の細さもほぼ同じ。どちらかといえば二人より俺の方がまだ筋肉も、腕の太さもありそうなんだけどな。
「じゃ、俺は帰るよ。おやすみ、春蘭、秋蘭」
「あぁ、早く寝ろ。それと、北郷…」
流石に眠気が増してきている。早々に部屋に戻ろうと背中を向けた時だ。
後ろから春蘭の躊躇(ためら)いがちな声が聞こえてくる。
ほんの数秒。ほんの少しの逡巡。何か春蘭なりに考えたのだろうか。
しかし、春蘭から出た言葉はただ一言だけ。
「ありがとう、北郷」
「大切な仲間だからな。もちろん、春蘭もな」
短い言葉。でも春蘭に『ありがとう』といわれたのは何度目だっただろうか。
そう思うほどに少ない。それは『感謝しない人間』という意味ではない。
本当に、本気で感謝した時にしか口にしないだけだ。
その一言を言うためにどれだけ考えたのだろうか。普段全く考えるということをしない、あの春蘭が。
だから俺も、短く応える。大切な仲間だから、と。
閨(ねや)を共にしたこともある。だけど…恋人とか、そういうのではないと思う。互いに。
どちらかといえば家族に近いのだろうか。
そんなことを考えながら、俺は少しだけ暖かくなった気分に笑みを浮かべながら自分の部屋の方へと足を向けた。
さて…部屋に戻ったは良い。
ベッドの布団が『こんもり』と膨らんでいるのはどうしたら良いのだろうか。
普通に考え…いやどう考えても『あやしい』の一言だ。
命のやり取りをするこの世界ではあるが、命を狙われるような事はしてない…と、思う。
それに、布団の端から金色の髪が一房見えている。
華琳たちの中で金色の髪をしているのは、華琳と風だけ。そして風は少しウェーブのかかったストレートだったはずだ。
つまり、ベッドの中に居るのは華琳ということになる。
「遅かったわね」
「お陰で何とか全部終わったけどな」
寝巻きに着替えて腕から滑り込ませる。
指に触れた柔肌を抱きこむようにしながら、そのまま身体をベッドの中へと滑らせた。
少し予想外だったのは、ベッドの中に居た華琳が裸だったこと位だろうか。
俺の行動は予想通りだったのだろうか。驚いた風もなく俺にされるがままに抱きしめられ、笑みを浮かべている。
「秋蘭の体調がそろそろ限界近いのは分かっていたもの」
「全部お見通し、ってわけか」
やはり裸のままベッドに居るのは寒かったのだろうか。少しだけ冷えた華琳の身体を抱きしめながら、軽く摩って行く。
首筋から背中を通り、腰の辺りまでをゆっくりと。
肌理(きめ)細やかな華琳の肌はまるで薄絹のようだ。
「随分と無粋な触り方ね」
「身体が冷えてて、寒いかなと…」
そんな俺の行動が気に召さないのだろうか。眉を少しだけひそめた。
日中の、普段の余裕のある華琳の顔ではない。俺に、俺だけに見せてくれる少しだけ…ほんの少しだけ年相応の顔。
「…本気で言っているのかしら?」
「年末忙しかっただろう。華琳も疲れてるんじゃないか?」
華琳の求める回答を悉(ことごと)く外してしまっているのだろう。
先ほどよりも皺の寄り方が酷くなっている。
だかそれも少しだけ。小さなため息をついた後は、元の華琳の顔に戻っていた。
「貴方が釣った魚に餌をやらない男だということを忘れていたわ」
「それ、褒めてないよな」
なんとなくは分かる。華琳が俺を求めてくれていることを。
だが今は大事な時期でもある。三国がどうなるか、来年には大きく動くだろうことが。
そしてその準備のために、年末年始と身体に鞭打ちながら無茶しなければならないことが。
少しでも英気を養う必要があるのではないか、と…勝手に思っていたわけだ。
だが、それが正解ではなかったことは、今の華琳を見ればわかる。
身体は確かに休めば大丈夫だろう。しかし、ストレスはそうはいかないわけだ。
皆忙しいから夜伽に呼ぶわけには行かない。
どんなに疲れていても、華琳に呼ばれれば皆喜んで夜伽に参加はしてくれるだろう。
だからこそ、呼ぶ側が節制しなければならないのだ。
そしてそんな中。本当に最近。ほんの少しだけ。本当に、二人きりの時だけ。
華琳が甘えられる存在として、今の俺があるわけだ。
「ん…んっ…んんっ…はぁ…キス…と、いったかしら。まだ慣れないわね…」
「『でも嫌じゃない』、かな」
普段の顔に戻った華琳の顎を優しく掴み、唇を奪う。
啄(つい)ばむ様に。優しく。
あまりキスという習慣がないからだろう。ものの数回でフェラチオが上手くなった華琳も、キスだけは未だ初々しく受けてくれる。
少しだけ顔を赤くした華琳の言葉に続けるように言うと、ほんの一瞬少しだけ眉をひそめた。
だがその一瞬、華琳の細い腕が俺の首に回される。
「ん…んっ…はぁ…っちゅ…かずと…ちゅ…」
お返しとばかりに、唇だけでなく舌を絡ませてきていた。
だが俺もされてばかりではない。回された腕から脇、腰に掛けてゆっくりと撫でていく。
腰で止めた手の動きをお尻まで這わせ、ゆっくりと撫でる。
形のいい小ぶりな華琳のお尻から太ももへと降り、内股を撫でて秘所を避けながら。
既に濡れていたのか、それともキスで感じたのか。
もう内股にまで垂れて来た愛液が指に絡み付いてくる。
そこまで来てようやく気付くことが出来た。
自分で触れるまで気付けなかったのだ。
俺の寝巻きの下…つまり下半身が裸になっていることに。
「…ンふ…んっ…ふふ…もう堅くなってるわね。んっ…指でも触れたのだから…ほら、わかるでしょう?」
その一瞬の隙を突かれていた。
華琳は俺のを内股で挟み込んだのだ。垂れた愛液で濡れた太ももと秘所の間に。
『ぬるり』と、熱くぬめった感触。もう既に華琳のスイッチが入っていたのだ。
「はっ…ぁ…ふふ…私の膣内(なか)に入りたいって…ん…私を孕ませたいって…言ってるわ…ね、一刀…私のはどうなのかしら?」
華琳の問いに答えない。
ただ、熱く溶けた視線を向ける華琳の瞳を見詰めた。
腰を振り、擦り付ける華琳の腰を掴みながら。
『にちゃっ』と聞こえたのは、華琳が口を開いたからだろうか。
それとも…
「んっ…くぅっ!!…あいっ…らず…大きい…わね…っく…はっ…ぁ…」
少しだけ入ったからなのだろうか。
俺は華琳に覆い被さり、一気に貫いていた。
最初の頃は少し浅かったからだろう。全部入るのは無理だったが、今では根元までしっかりと受け入れてくれている。
だがまだ最初は辛いのか、震えながら熱い息をゆっくりと吐いていた。
だが華琳に余裕はある。目が訴えている。
『その程度なのか』と。
だから俺は、ゆっくりと腰を引き
「あぁぁっ!!!」
思い切り叩きつけた。
背中が反る。
腰が浮く。
随分と『出来上がって』いたのだろう。難なく快感を受け入れているようだ。
この調子なら少し位は…
いや…
「あっ…あぁっ!!…っずと!…かずとっ…かずとぉっ!!」
俺は最初から全力で打ち付けていく。
視線が重なった時に気付いたのだ。
華琳が、思い切り抱いて欲しがっていると。
すぐに余裕が無くなっているのだろう。目に涙を浮かべ、俺の名前を呼びながら抱きつく華琳を強く抱きしめた。
さらに激しく貫きながら。
「あっ…ぁくっ!…ずっ…と…ひぐっ!…んんっ!!…はっ…んぁっ!!」
悲鳴の様に喘ぐ華琳を。泣きながら俺の名を呼ぶ華琳を抱きしめる。
何となくだ。何となく気付いているのだ。この三国の戦争が終わる時が、俺たちの別れだと。
だが、そんなのは幻想だと。まやかしだと。そんなもの吹き飛ばしてやると。
俺たちは走り続けるしかない。
今はただ、この蜜時に…
「もっ…だ…や…はやっ…かずっ…はやくっ…ちょうだいっ!…かずとのっ…いっぱ…なかにぃっ!!」
もう俺も限界だ。
複数抱く時と違う。腰の力を緩めて快感に身をゆだねる。
我慢しない。ただ、委ねるだけ。
「かりっ…華琳っ…」
「かずっ…も…ぁ…やっ…〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜っっっっ!!!!」
「なぁ…」
「絶対に嫌よ」
取り付く島もない。
あれからもう数時間は経っている。新年の朝日が昇ろうとしている。
だが、俺たちはあれから一睡もすることはなかった。
繋がり続けていたのだ。
身体は疲れているのに、『硬度』が減るどころか増すばかり。
お陰で小さな華琳の秘所が歪に膨らんでいた。
いい加減もう良いだろう、と抜こうとしたのだが
華琳は嫌がって、足を俺の腰に絡ませてきている。
「あのな、あと1刻位で朝の会議だろう?」
「…このままが良いもん」
…『もん』?
いや、きっと俺の聞き間違いだろう。きっと『のよ』と言ったのだろう。
俺の胸に顔をうずめる華琳の頭を優しく撫でる。
眠気はもうピークだが、寝るわけには行かないのだ。
それは華琳とて同じ。いや、華琳の方がずっと強いだろう。
「ねぇ、一刀」
「ん、なんだ?」
小さな声。本当に小さな、小さな声。
自信の塊の華琳らしからぬ声。
でも、不思議と変だとは思わない。
ただ、震える身体はきっと
快感の余韻か、朝の寒さのせいだろう。
「分かっているでしょうね」
「…あぁ」
俺が本当に必要になるのは、戦争をしている時ではない。
戦争が終わって平和になってからなのだ。
未来の知識が必要とされるのは、乱時ではなく平時。
不安なのはお互い様。
だから、俺は華琳を強く抱きしめる。
「ずっと一緒だ。ずっと、ずっとな」
「当然よ、貴方は私のモノだもの」
少し落ち着いたのだろうか。
顔を上げて、笑みを浮かべる華琳の顔はとても美しい。
そうだ、一つ忘れていた。
「皆より先に、な」
「一国の主たる私に、最初に会話出来ることを誇りに思いなさい」
どちらが言うでもなく、合わせるでもなく。
ただ、口にする。
「あけましておめでとう、華琳。これからもよろしくな」
「あけましておめでとう。一生私の元に居なさい、私の一刀」
あとがき
というわけで、あけましておめでとうございます〜。新年の夢璃杏でござります。
どこぞのエッチな絵師様より『真・恋姫無双の姫初めを読みたい』と所望されまして、即興で書き上げてみました。
華琳ルートはちょっと悲しいルートなので、ちょっぴり悲しい感じが出てしまいました。
恋姫無双のキャラクターのように、全力で今年も駆け抜けたいですっ!
とりあえずは雪夜のA's編かなぁ…ほんとは別のも書きたいですが、余裕がっ!!
余裕が無いなら雪夜先に書いた方がいいかなと!
いうわけで、次回より雪夜A’s編が始まります。
お楽しみに♪
↓ウェブ拍手です。
↑読まれた方は押してくれると嬉しいかもっ!!
2012/01/10:はっかい。様よりイラストを頂きました♪
短編目次へ