「夏だーっ! 海だーっ! 水着美じ…ぶっ!?」

狭いコブラでは皆が行けないからと、免許を取ったヨコシマの運転で来た海水浴場。
何時(いつ)もの横島のお決まりのボケを、ミカミの鉄拳で封殺されるのを横目に
私達は更衣室へと向かっていた。


50001ヒット リクエスト短編 「夏の暑さと いう名の魔物」


「くはーっ 暑いでござるなぁぁ」

全く、人間って何でこんな無駄な事が好きなのだろう。
何かを獲るわけでもなく、意味も無く海で遊ぶ為だけに時間を割く。
こんな無意味な行為が好きな人間だからこそ、嫌う事なんて出来無いのだけれど。

出る所も出てない肢体を全く気にすることなく、スポーツ水着で身を包んだシロが
『暑い暑い』と嬉しそうに笑っている。
私は暑いのは苦手だ。どちらかと言えば、クーラーの効いた事務所で昼寝している方が好きなのだ。

「おーいシロー、タマモー。こっちだこっち」

と、いち早く水着に着替えた横島が…
…いけない、何を胸高鳴らせているのだ私は。
『かぁっ』と頬の熱くなるのを感じ…

「タマモ」
「な、ななによ」

シロに突然耳元で名前を呼ばれて、大げさに驚いてしまう。
そんな私に、シロはけらけらと笑われ『もう暑さにバテたでござるか、運動不足でござるな』と小馬鹿にされた。

私はアンタみたいに毎日100キロも走れるような体力馬鹿じゃないっていうのに。

「ちょっ…なに突ぜ…ひゃぁぁっ!?」

シロの言葉に『むっ』としていると、突然横島に抱き寄せられ押し倒され
パニックに陥る私の身体に何か知らない冷たいものを触れさせて…

「ままっ…待って、よよっ…横島ぁっ…わたっ…わたしっ…まだっ…心の準備…ふぁ?」
「こんなに顔真っ赤にして…ったく、最近暑いんだからさ…気をつけろよ」

まさかこんな公衆の面前で初体験をするのか、等と馬鹿な想像をしている私に
横島は冷したタオルで顔を拭いてくれていただけだった。

全く…何を考えていたのだ、私は。

冷たいタオルで拭われて、少しだけ冷静になってきた私と横島の視線が絡む。

トクン・・・と、胸が鳴る

横島の優しい笑み。みるみる顔が赤くなっていくが、きっと横島は気づいてくれ無いのだろう。
『暫く横になってろ』と、額(ひたい)にタオルを乗せてくれる。


「珍しいわね。きっとアンタの事だから、ナンパにでも行ってると思ったんだけど」
「ちょ、ちょっと美神さぁん」

揶(からか)うではなく、本心なのだろう。驚くミカミの声と苦笑するキヌの聞こえる。

「いやータマモが暑さにバテてるみたいスからね。誰かが傍(そば)に居てやったほうが良いっしょ?」

へらへらとした横島の軽い声にも、私は優しさを感じてしまう。
狙ってやるではなく、自然とこういう事が出来る男。

だからこそ、皆横島の事が好きなのだ…私を含めて。
今くらいは…横島に甘えてゆっくりしよう。

ミカミたちは『後で交代するから』と、海へと行ってしまった。
横島と二人きり…もちろん、周りは知らない人が沢山居るけど。



「あ、知ってるかタマモ。砂に埋れると結構涼しいんだぞ」

…前言撤回。やっぱり横島は意地悪だ。
軽く砂を掛けるだけだと了承したのに、腕どころか指先すら動かせないほどの大量の砂を私の上に掛けたのだ。

…確かに涼しいけど、けどっ!

「う、動けないじゃないっ!」
「気にすんな、俺がずっと居てやるんだし」

そう言う横島の『にやっ』と笑む顔が怖いって言ってるのに!


「ほらタマモ、カニだぞー。食べる時と違って生きてるんだぞー」
「ほらタマモ、ナマコだぞー」

一体何処から持ってくるのか、私の顔や身体…正確には身体の上に盛った砂の上に
多数の甲殻類や軟体動物を乗せたり近付けたりしてきたのだ!

「いやっ!…いやぁぁっ!? なにっ! なんなのっ!? きゃぁぁっ! 鋏(はさみ)! ちょっ横島ぁ!髪の毛挟まれ…なにこれ!いやぁぁっ!!気色悪いぃぃぃっっっ!!!」

生まれて始めてみる謎生物達に半泣き…いや、半狂乱する私を
横島は心底楽しそうに眺めて…うぅっ…絶対後で仕返ししてやる!!

「いやー楽しいな、タマモ」
「楽しんでるのはアンタだけでしょうが!?」

全く身体が動かないから、必死に口で罵倒する
動けないのを利用して非道な事をする奴だ、と。

しかし、そんな言葉を横島は鼻で笑い…顔を…近づけて…

「じゃあ、このままタマモの唇を奪おうとしても…タマモは抵抗できないんだよな」
「えっ…」

周りが見ているのに…何時もと違う、横島の少し低めの声に
頭がくらくらして、一瞬横島が何を言ったのか気付く事が出来なかった。

横島の顔が近付いて…

そして…

眼前一杯に、さっき真横に置かれた『ナマコ』とかいう謎生き物が現れた。

「じゃ、このナマコ君に奪われてみようかっ!」
「本気で嫌ぁぁぁぁぁっ!!!!!」

人間必死にやれば何でも出来る、なんて格言があるらしい。私は人間ではないけど。
恐怖と悪寒が私の全身を走り、後数ミリで謎生物にファーストキスを奪われようとした瞬間
除霊のときの数倍の出力の狐火が、私の全身から放たれていた。




「横島のばか横島のばか横島のばか横島のばか横島のばか横島のばか横島のばか横島のばか」

真っ黒に焦げた横島を思い切り踏みつけ、私はシャワー室へと入っていた。
口から出るのは横島への恨みの言葉。

そう、何時もこうなのだ。
私の気持ちなど知らないで、何時も私の想像の斜め上の行動しかしてくれない。

海で泳ぐ気なんて最初からなかった。
ただ、水着に身を包んだ私を見て…少しは違う何かを感じてくれるかもしれない
ただ、そう思った…いや、そう願ったから来たのだ。

「くぬっ! くぬっ!」

色々と想像しながら着たときは大して気にもならなかったが
苛付いている所為もあるのだろう、身体の至る所に引っかかって水着が上手く脱げてくれない。

こんな小さな事ですら、横島が悪いと感じ…

「あー、ごめんなタマ…」

この男の辞書にデリカシーという言葉は載っていないのだろうか。
ノックすらなく、ごく普通に私のは言っているシャワー室の扉を開かれた。

今…水着は左足首にしかかかっていない。
つまり、私はほぼ真っ裸の状態なのにっ!

「よ…むぐっ!?」

私が叫ぼうとした瞬間、横島は私の口を塞ぎ
後ろ手でドアを閉め私を抱き締めて、ドアと反対側にあるタイルの壁に背中を預けた。

その間、僅か1秒足らず。

「タマモー? ここに居るのー?」

何をしているのだ、と思ったら
どうやら直ぐ後ろにミカミが居たのだろう。
横島はそれにいち早く気付いて、今の行動をとったのだ。

『たのむ』と横島の必死の小声が私の耳元で囁かれる。
そっと私の口から手を退かしたのを察するに、『ここに横島は居ない』とでも言わせたいのだろう。

「ミカミ、ここよ」
「あぁ、居たのね。横島君が見当たらないんだけど、知らない?」

床にへたり込み、まるで神に願うように半泣きになりながら私を拝む横島。
なんて…なんて哀れな姿だろうか。

「えー、横島? …何処だったか…なぁっ!」
「う…」

裸足のままに、横島の股間を踏みつける。
横島の小さなうめき声に、ミカミの怪訝な声が…

「まさかとは思うけど、そこに横島君…居ないわよね?」
「さぁ…そこまでっ…ヘンタイじゃっ…無いとっ!…思うけど…ねっ!」

『ぐいっぐいっ』と私が股間を踏む度に、横島は必死に口を両手で押さえて声を殺している。
しかも…足の裏で感じるこの固さ…

横島…私の足で感じてるんだ…

そう感じた瞬間、私の背中に『ぞくぞくっ』とした何かが走っていく。
私は今どんな顔をしているのだろう…
横島の表情から察するに、普段とは全く違う顔をしているのだろうという事は判るけど。

熱く…固い横島の…
頭がくらくらしているのは、シャワー室の暑さの所為だろうか…それとも…

「ねぇ、タマモ…何か変な声が聞こえない?」

ミカミの怪訝そうな声に、横島がビクリと震える。
そういえば、私は裸なのに横島だけ水着姿って不公平よね。

『脱ぎなさい』と、声を出さず口で命令すれば
横島が首を振って…

「そういえば、変な声が…」

横島が首を振った瞬間に、私はミカミに答える。『聞こえる』と。
そうすれば、横島はやっと水着を脱ぎ始めた。

「でも、気のせいかもしれないわよ?」
「…そう?」

凄い…『びきびき』に固くなった横島のアレが…狭苦しかったのだろう、水着を脱いだ瞬間
『ブルッ』と震えながら出て来た。

長く、太く…天を突かんばかりの横島のアレ。
私の顔がどんどん熱くなるのを感じる。

横島が、『もう止めよう』と口だけで伝えてくる。
止める? 私がこうやってるのは、全て横島の所為なのに。

「ミカミ、熱くて悪いんだけど…今から水着脱いでシャワー浴びるから、横島が覗かないようにそこで見張っててくれない?」
「くすっ…良いわよ?」

シャワーを出せば、丁度横島の全身に掛かる。
見開かれた横島の瞳。 何をされるのか、少しは気付いたのかもしれない。

関係ないけど!

「うっ…ぁ…」

足に液体石鹸を付け、思い切り横島のアレを踏めば
口を塞ぐのを忘れた横島の口から、うめき声が漏れた。

「い、今横島君の声しなかった!?」
「んー…もしかして、他のシャワー室で待機してるんじゃない?」

ミカミの言葉に話半分で対応しながら、私が足を小刻みに動かせば
石鹸が泡立ち、『くちゅくちゅ』と足とアレの擦れあう音がシャワー音に混じって聞こえてくる。

『ふっ…ふっ…』と、横島の息が荒い。
こんな事されて…気持ち良いんだ、横島は。

「私の足で弄られて、気持ち良いの? 声を出したらミカミにバレるわよ」

『気持ち良かったら、首を縦に振りなさい』と小声で言っても、さっきから横島は首を横にしか振らない。

「あー、ミカミー」
「どうしたの?」

『にやっ』と笑みを浮かべながらミカミを呼べば、横島は必死に首を縦に振る。
そう、最初からそうやって素直にすれば良いのに。

「ううん、居てくれるかなって…思っただけ」
「ふふっ…ちゃんと居るわよ」

横島はほっとしているけど、終わらないわよ?
『アンタが射精(イ)くまで、止めないからね』、そう口だけで伝える。

足先で先の柔らかい部分を弄れば、先端から『ぷくっ』と透明な液が出てくる。
私の心臓が高鳴りっ放しで…私も感じてきてる…股間のあたりが『じゅんっ』て、何かが垂れてる…

「ミカミさーん」
「あの声はおキヌちゃんね…ごめんね、直ぐ戻るから」

そう言うミカミの気配が遠ざかっていく。
でも、終わらない…終わらせない。
まだ、横島が射精してないから。

「タマ…ぶっ!?」
「ん…ぁは…ちゃんと支えなさいよ。でないと、大声で呼ぶから」

私は横島を上向かせ、その顔の上に座って横島に両手で支えさせる。
これで、両足で横島のを…

「んぁっ!?…なに…横しっ…横島の舌が…私の…」

『くちゅり…くちゅり』と横島の舌が音を立てながら、私の股間を舐め始めたのだ。
今まで感じたことの無い不思議な感覚。

頭がボーっとして、何も考えられ…って、考えられなくなってどうするのよ。
横島の奴、こんな事をして…うやむやにしようって思ってるんでしょうけど…そうは問屋が卸さないわよ。

私は両方の足の裏で横島のアレを挟み込み、擦っていく。
『にちゃっにちゃっ』という音が私の足と横島のアレから…だけでなはく

「んぁっ…や…横島の舌が…何か…入って来ちゃう…」

私の股間の辺りからも聞こえていた。
でも、横島がしっかり支えてくれているお陰で足が自由に動かせる。



そんな…何時までも続くと思っていたこのお仕置き…それも、終わりは来るのだ。

「はぁっ…はぁっ…あっ!」
「きゃぁっ!?」

汗の所為だろうか。
支えていた横島の手が滑って、私はそのまま横島の身体を滑り落ち…

「うぁ…出…!」
「やっ…やぁぁっっ!」

私の太股と股間の間にアレが来た瞬間…まさにその瞬間だった。
私の股間から『にょきっ』と生えているように見えるそれの先端から、真っ白い『ドロドロ』とした液が
私の顔や、胸…ううん、全身に降りかかってきたのだ。

多分パニックになったからだと思う。
頭の中が真っ白になって、私は大声で叫んでいた。
横島が私の口を塞いでももう遅い。

「タマモ!」
「タマモちゃん!?」

ドアが開かれ、ミカミとキヌとシロが私達の居るシャワー室に入ってきて
私は、身体を痙攣させながら…よく判らない何かに意識を攫われていった…




「う…ぁ…ここ…は?」
「あ、気付いた?」

朦朧とした意識のままに目を開けると、そこにはキヌの姿。
どうやらキヌが膝枕してくれているようだった。

耳に聞こえる低いエンジンの音。
視線を動かせば、景色が流れている。

どうやら、車の中のようだ。

「タマモ、ちゃんとアイツの記憶の無くなるまでシバいておいたから…あんまり気落ちしちゃダメよ?」

運転席の方から、ミカミの気遣う声が聞こえる。
シロの心配そうな瞳。

そういえば、遠くから横島のうめく声が聞こえるような気がする。


「全く、あの節操なしは…」
「全く、横島さんにも困ったものです…」
「先生も酷いでござるよ…」

私を除く3人の口から、呆れた声が漏れる。
でも、嫌っているわけではない…それは感じる。

皆、横島の事が好…

「「「私(拙者)だけでなく、タマモにまで手を出すなんて…」」」
「はぁっ!?」

なに、じゃあ私以外は全員横島と…その…あ、愛の…契りを…
しかも、私の場合は…嫌がる横島を半ば無理矢理…

「ふ…ふふふ…」

皆が互いの言葉に驚く中、私は
事務所に付いたら、きっちりと横島をウェルダンまで焼いてやろうと誓うのであった…



はしがき

というわけで、50001ヒットリクエスト短編をお送りします、ゆめりあんでござります。

夏です。海です。行きたいですーっ!
…じゃなくて

タマモの足コキです。
上手く表現できたかなぁというのが少しだけ不安でした。

では、また次のキリリクにて…

キリリクの部屋へ

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