「うぅ〜…さむさむ…」

しんしんと雪降るクリスマス。俺…横島忠夫は足早に商店街を抜け、家へと急いでいた。
別に帰った所で彼女がいるわけでもない。
だが一人身である俺にとって、この日に商店街をゆっくり歩く事は自殺行為に等しいのだ。

しかし、俺の足は途中で…そう、一つの店の前で止まってしまうのだった…


43210ヒット リクエスト短編「パーソナル・キャラクター」


俺の目を惹いたのはショーウィンドゥに並べられた『PC(パーソナルキャラクター)』達だった。
実用的なシステムで構成された『マリア』シリーズと、感情…云わば『擬似彼女』のシステムを導入された『テレサ』シリーズだ。

確か、自称ヨーロッパの魔王とか言ってる『ドクターカオス』とかいうじーさんが発明したらしい。
最初は軍事用として使われようとしたらしいのだけど…
本当かどうかは知らないが、じーさんとマリアシリーズの母体であるフルカスタムモデル『マリア』と共に軍を蹴散らしたらしい。
俺が生まれる前の話だな。

そして、所謂(いわゆる)『メイド』として一般人に広く使ってもらおうと量産化していき
瞬く間に全国シェアを手に入れた…ん、だったかな。
今ではマリア、テレサシリーズを含む全タイプを『PC』と呼ぶようになったわけで…

俺の視線が、彼女達の足元に行く。値段である。
そして、軽く一つため息。

どう考えても、俺が買える値段ではない。
特に『擬似彼女』のシステムを搭載しているテレサシリーズは非常に高いのだ。
コストパフォーマンスに優れたマリアシリーズでも、と思うのだが
それですら高嶺の花。

「チクショーッ! モテない男はPCにすら見向きもされんのかーっ!?」

血の涙を流しながら叫んだ所で買える様になる訳でもなく
俺を避けるように歩くカップル達を睨みつけて、商店街を後にするのだった。


「はぁぁ…どっかにPC落ちて無いかなぁ…」

PC一台ウン百万もする物がそうそう落ちているはずもなく
俺のため息は雪振る宙に消え…

「…何だありゃ?」

白い吐息の舞う空を見上げれば、何かが飛んでるのだ。
鳥か飛行機か、はたまた何かの宣伝か

ぼぅっと見上げて居れば、何やら空から人が振って…

「ぬぉわぁぁぁっ!?」

『ドガァッ!』と非常に鈍い音を立てながらゴミ捨て場に人?は突っ込んでいく。
あまりの音に叫んでしまったが、粗大ゴミ等をふっとなしながら突っ込んだのだ。
人なら確実に死んでいるだろう。

だが覗いてみれば傷は殆ど無く、恐る恐る触れてみれば
まるで氷の様に冷たいではないか。

「も、もしかして…PC…なの、か?」

人間にしてはあり得ないほど整いすぎたプロポーション。
ボリュームのある髪、フェイスペイント。
この気温と同じ温度。飛行物も見えなかったのに空から降ってきた。
そして、落下による凄まじい衝撃を受けたにも拘(かかわ)らずほぼ無傷。

PCの中には空を飛べるタイプがあるというのは話に聞いた事がある。

そう…目の前にある全てが、この女性がPCであると告げているのだ。
だが、見たことの無いタイプである。
マリアともテレサとも違う。
恐らくはカスタムメイドタイプなのだろう。

持ち上げてみれば驚くほどに軽い。
スーパーモデルも裸足で逃げ出しそうなプロポーションの割に、体重は30Kgを切ってそうな感じだ。

空を見上げれば、曇った空と雪以外何もない。
俺は17歳で、サンタを信じる年ではないが…

「今年だけ、信じるか…」

そう呟いて、彼女を抱えて持ち帰って行った。



「よい…しょ…ふぅ…」

彼女を取り敢えずと布団に寝かせ、やっと一息つく。
早速起動させようと思ったが…

スイッチがない。
やはり、カスタムモデルの為か起動スイッチは巧妙に隠してあるのだろう。

何処だ何処だと探しながら、隈(くま)なく身体を触ってみれば
やはり驚くほどに素晴らしい体つきをしている。

テレサシリーズも中々の物だったが、このPCはそれを軽く凌駕していた。

ボリュームのある大きな胸
折れそうなほどに細い腰
柔らかいながらも程よい弾力のある大きな尻

痩せすぎているわけでもなく、太っているわけでもなく
魅力と言う名の形を極限まで作り上げたと言っても過言ではないかもしれない。

「うぉ…すげぇ…」

身体は氷の様に冷たいが、胸は驚くほどに柔らかく
少し触れただけで俺の指が簡単に埋れてしまうほど。

それでいて流れる程の柔らかさではなく、手を離せば
仰向けに寝ているにも拘らず、綺麗な胸の曲線を作り出す。

まさに人在らざる存在。
人間では作り出せない美。

「満足するまで好きなだけ触りなよ。満足したら、さっきのゴミ捨て場に捨てて欲しいね」
「えっ!?」

ぽつり…と掠れるほどに小さな声。
瑞々しい少女の声ではなく、背筋に電気が走ってしまうほどに妖艶な声。
まるで、物語に出てくるサキュバスを彷彿とさせる…そんな声だった。

彼女のマスターはどんな人だったのだろうか
そして、何故捨てたのだろうか…

まさか起動したままだとは思っても見なかったが、どうやら彼女自身『捨てられた』という事は理解しているらしい。

彼女に罪はないというのに…

「早くしておくれ。ここは『暖かすぎる』んだよ」

動かぬままに天井を見る彼女の瞳から、一滴の涙が零れていた。

何を戸惑っている?
『そのため』に連れて来たのだろう?

言え、早く!

「あの、さ…」
「なんだい?」

俺の言葉に反応してはくれるが、瞳は天井を向いたまま。
本当に言っていいのだろうか、そんな不安を拭い去るように
俺は、大きな声で叫ぶのだ。

「俺…俺が…今からお前のマスターになってやるっ!」
「はぁっ!?」

言った言葉の意味は通じたのだろう
驚きと呆れの混じった声を上げながら、『バサリ』と大きく毛布を退かしながら起き上がり
こちらを睨むように見詰めてくる。

「アンタ…アタシがどんな存在か知ってて言ってるのかい? アタシは魔族なんだよっ!」

マゾク?
そんなタイプは聞いた事がない。
カスタムタイプだと思ったが、どうやらこの言い方からすれば『いわく』付きのタイプの様だ。

だが、それは『過去』の話だ。
捨てられた時点で、俺からすればそんな事は些事となってしまう。

「そんな小さな事…俺がお前のマスターになる事に関係無いだろう」
「小さいって…関係あるさねっ!」

彼女なりに『マゾク』というのに拘りでもあるのだろうか
だが、そんなのは…

「関係ないよ…お前はマスターから捨てられた。そして、俺が拾ったんだ」
「…っ!」

はっきりと突きつけられて、流石に堪えたのだろう。
大きく目を見開き、そのまま大粒の涙を流し始める。

俺が優しく頭を抱き締めると、恐る恐る…そう、まるで捨て猫のような慎重さでゆっくりと俺の背中に腕を回し

「あ…あぁ…あぁぁぁぁぁぁっっっ!!!!」

まるで、生まれたての赤子の様に
慟哭が、心の叫びが…彼女の口から溢れていった。



「ぐすっ…それ相応の覚悟は出来てるんだろうね?」

覚悟?
覚悟もなしに成せる事など何一つ無い。なんて事を親父が言っていた気がする。
猫を飼うも、犬を飼うも…そしてPCのマスターになるのもそれ相応の覚悟と言う物が必要なのだ。

「勿論だ…えっと…」
「メドーサ…だよ」

よくよく考えてみれば、名前を聞いてなかったのだ。
俺が新しいマスターになったのだから、名前は俺が決めても良いのだが
それぞれPCにはデフォルトの名前と言う物が付けられている。
その『メドーサ』というのも、恐らく彼女のデフォルトの名前なのだろう。
そういえば、俺も名乗ってなかったか…

「あ、俺は忠夫…横島忠夫だよ」
「ヨコシマ…さま…」

まるで噛み締めるように俺の苗字を呼ぶメドーサの声に、俺の心臓がドキリと跳ね上がる。

それをメドーサは感じ取ったのか、俺の股間に手を伸ばし…

「あ、ちょっと待って…って、そんな泣きそうな顔しないで! ほら、身体冷たいからさ…」
「ご、ゴメン…直ぐ暖めるからさ」

俺が止めたらいきなり悲しそうな表情で俺を見詰めてくるんだもんな。
思わず言い訳がましく口早に喋ってしまったが、メドーサは『忘れてたよ』と少し恥しそうに言いながら俺から離れた。

その恥しそうな顔のなんとも愛らしいことかっ!
今すぐにでも押し倒…

「うぁっちゃー!?」
「ごっごご…ごめん、熱くしすぎた!?」

急にストーブ並…いやそれ以上の熱さを体中から発されて、思わず叫んでしまう。
あたふたとしているメドーサの顔は可愛いのだが、あと30秒も続けられたら俺は干からびたかもしれん…

『大丈夫?』と心配そうな顔でメドーサが俺の頬に当ててくる手からほんのりとした暖かさが伝わってくる…

「あ…」

『ぎゅう』と抱き締めれば、人間と同じ温度位になっているのか
冷えていた時と比べてとても安心感を感じる。

だが、その安心感も一瞬だけ。
耳元にかかるメドーサの吐息が、欠片ほどに残っていた俺の理性を微塵に引き裂いてしまったのだ。

「め…メドーサぁぁぁっ!!」
「あっ…んむっ…ちゅ…んふ…んちゅる…っちゅ…」

半ば強引に押し倒し、荒々しくメドーサの唇を貪る俺を
メドーサは嫌がることなく優しく迎えてくれる。

暖かいメドーサの舌が俺の口の中に入ってきて、俺の舌や口内を愛撫してくるその感触はとても気持ち良く
背筋を『ぞくぞくっ』とした物が流れていく。

「っはぁ…はぁ…メドーサ…メドーサぁ…」

ズボンを脱ぐのももどかしく、膝下まで無理矢理脱いだ俺は
ガチガチに固くなった物をメドーサの中に…

「あ、あれ…?」

全く…未経験ですと公言している様な物だよな。
メドーサを気遣う余裕すらなく、半ば強引に入れようとするも入り口が判らない俺の頭をメドーサは片腕で優しく抱き締め
もう片方の手で俺のを優しく握って導いてくれる。

「ほら、ここだよ…アタシは足のつま先から髪の毛一本に至るまで…全部ヨコシマさまの物なんだからね…好きに犯して…良いよ」

愛(いとお)しく感じてしまうメドーサの甘い声。
柔らかく大きな胸に包まれながら、俺はゆっくりとメドーサの膣内(なか)に入って…

「うっ…あ…」

半分位入った程度で暴発してしまう。
普通の女であれば『最低』と侮蔑の声を上げられるのだが

「まだ…硬いね…そのまま、良いよ…入って…」
「く…ぁ…」

一度出したにも関わらず、硬さの全く衰えない俺のを
まるで奥へと引きずり込んでいくように膣壁が動き、難なく膣奥まで入ってしまった。

「どうだい…アタシの膣内(なか)は?」
「すげぇ…気持ち良い…また…出ちまいそうだ…」

あまりの気持ちよさに頭のぼぅっとしている俺を、愛しそうに頭を撫でて微笑んでくれる。
良いなぁ…やっぱ最近の男が彼女作らないでPCとデートしてるのも判るよ。

「は…ぁ…出っ…」
「ん…ぁ…ふふっ…びゅくびゅくって…まだ収まらないね」

動かないまま出てしまう俺を、何度も何度も優しく撫でてくれる。
全く…本気でメドーサに溺れてしまいそうだ。

だが、俺も男なのだ。
流石に二度も出して少しは余裕が出来た。
今なら腰を動かすことも出来るだろう。

1分持つか判らないけど…

「ん…ぁ…はふ…んぁ…」

ゆっくりゆっくり俺が動くたびに、メドーサは俺の動きに併せて腰を動かし
甘い嬌声を上げてくれる。

胸から顔を上げれば、潤んだ瞳で溶けきった表情をしたメドーサが
俺の顔をうっとりと見つめて…

「あっ…くぁ…」
「ふふっ…そんなにアタシの膣内(なか)気持ち良いのかい?」

確かに気持ちが良い。
でも、今回射精(だ)したのは気持ちよかったからだけではない。

「うっとりと俺を見つめてくるメドーサの顔が可愛くてさ…」
「っ!?」

自分でも気恥ずかしくなるような台詞が、あっさりと俺の口から出てしまう。
するとどうだろう…メドーサの顔がみるみる内に真っ赤になってしまったのだ。

ダメだ…俺は完全にメドーサに溺れてしまった…

「メドーサ…もうずっと放さないからな」
「フン…今更何言うんだい…ずっと離れてやらないんだからね」


それから2時間くらい経っただろうか
俺は自分で数えるのも馬鹿らしくなるほどにメドーサに膣内射精(なかだし)して
未だにメドーサの膣内(なか)に入れたまま、ぐったりとメドーサに体重を預けていた。

「ふふっ…お疲れさま。気持ちよかったかい?」
「ん〜…凄ぇ気持ちよかった…もう死んでもいい位に…」

冗談から出た本心だった。
もし、今すぐに死んだとしても悔いは残らないだろう…と。
だが、メドーサは突然俺の顔を両手で挟んで

「い、いいいっ…いきなり何を言い出すんだい!? あ…アンタが死んだら…アタシ…アタっ…アタシは…」

顔をくしゃくしゃにして、メドーサがぽろぽろと大粒の涙を流す
本気の涙だ。

そうだ、何を考えているんだ。
俺は、メドーサのマスターになったんじゃないか。
俺が死んだら、前マスターの様に彼女を捨てる事になるではないか。

「ごめん…ちょっと軽率だったな」
「嫌…やだよ…絶対長生きしておくれよ…もし死んだら、魂放してやらないんだからね…」

『ぐすぐす』と鼻を啜りながら泣くメドーサの頭を撫で、ふと思いつく。

「なぁ…メドーサ」
「ぐすっ…な、なんだい?」

噂に聞いた事がある話…それは…
そう、メドーサに聞くのは一つの勘みたいなものだった…

「さっき散々膣内射精(なかだし)したけど、『出来た』かな?」
「あ…え、えと…ヨコシマさまが嫌なら…アタシは別に…」

ビンゴ。
誰が作り出したのか、それは未だにわからないらしいが
世界に数台だけ存在していると言われた『受胎機能』のあるPC
彼女は、その中の一台だったのだ。

俺は、少し暗い声で言うメドーサの頬に軽くキスをして、優しく微笑む。

「嫌なわけ無いだろう? 俺は見てみたいよ、メドーサとの子供」
「あ…ぁ…あり…が…と…」

涙交じりの『ありがとう』
それは、紛れも無く彼女に『命』があるといえる確かな言葉だった。

「しかし凄いな…世界に数台しか無い内の一台のPCが俺の家に来たなんて…」
「…?」

物深気に呟く俺の言葉に、不思議そうな顔をしてメドーサが見つめる。
自分がどれだけ凄い存在なのか、きっと知らないのだろう。

そして、知る必要も無いのだ。
メドーサは、俺だけのPCなのだから。




はしがき

というわけで、再構成物の横島Xメドーサ物をお送りしますゆめりあんでござります。

うーん…世界変われば人変わる。
ここまでラヴラヴになるとは思いませんでした…

横島君は最後まで勘違いしてますが、メドーサはPCじゃなく魔族です。
って、書かなくても敬謙な読者諸氏は判っているでしょうけど、ね。

実は、短編終了ではなく
この話はまだ先があります。


横島の下僕となって幸せの絶頂にあるメドーサ
しかし、一つの難題が突き刺さってきた。

「か、金が無ぇ…」

一体彼は何のバイトを始めるのかっ!?


…なんて、ね。

続きを読みたい方は、どうぞキリリクを思い切り踏んじゃって
リクエストをどうぞっ!

では、また次のキリリクにて…
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