「えーっと…時間通り…でもないか。1時間以上早かったな」

待ち合わせ場所までゆっくりと歩きながら、俺は時計に目をやる。
予定時刻は10時。今は8時45分だ。
今日はデートの日。しかも相手は六道女学院でも五本指に入る弓ちゃんこと弓かおりなのだ。

敬謙な諸君であれば弓ちゃんが俺とデートする筈が無いというのは想像するに容易いと思う。
知らぬ諸君に簡単に説明するとすれば、自称強敵手(ライバル)の修行と戦いが三度の飯より好きな伊達雪乃丞の彼女だからだ。

最初くらいこういう風に仰々しく説明しても良いだろう?
だって、デートとはいえ…

雪乃丞の代理なんだからな


40000ヒット リクエスト短編「彼氏と彼女 〜恋愛の条件〜」


『Bye Bye Sadness, And Find Out〜』
「んー…」

ゆったりとした休日の朝を、布団の中で楽しむ俺の耳に携帯の音楽が流れてくる。
携帯を開ければまだ6時。
こんな時間に掛けてくる非常識な奴は一人しか居ない。

「お掛けになった電話番号は現在『伊達』の付く名の方には一切使用されておりません。糞お掛けになった電話番号を、もう一度そのBattle Junky脳みそと節穴Eyeで糞お確かめの上、糞改めて…」
「冗談などどうでも良いっ! 助けてくれ! 横島!」

声の主は想像通り、雪乃丞だった。
だが、普段とは違う切羽詰った危機感迫る声。
こんな声の時は確実に厄介事を持ち込んでくるのは明白だ。

「すまんが、俺は緩やかな休日を楽しんで…」
「お前が休日で無いと出来ない事なんだよ!」

『なんじゃそりゃ?』と小さく呟く俺の耳に、矢継ぎ早に事情を説明してくる。
それも延々と。

ちらりと時計を見れば、説明だけで10分近くかかっている。

「あのな…もう少し掻い摘んで話せないんか、お前は」
「し、仕方ないだろう。状況の説明とか下手なんだよ!」

きっとコイツの頭は筋肉で出来て、プロテインという名の血が流れているんだろうなと考えるのは今更か…

この延々と説明された事を簡潔に言うなら

『修行で忙しいから、代わりに弓とデートしてくれ』

という事なのだ。
どうも、そのデートも雪乃丞からではなく弓ちゃんかららしい。
明言はしなかったが恐らく、『修行とワタクシとどっちが大事なんですの!?』とか『次のデートまで来てくれないのでしたら、恋人解消しますわっ!』とか言われたのだろう。

「で、で…どうなんだっ!?」
「わかったっての。 つまり、食事して映画見て軽くショッピングして弓ちゃんのご機嫌取って来いって事だろう。」

やる気の無い俺の声に、『流石は俺のライバルだぜっ!』とか変なところで感心している。
いや、俺の感情に反応できるほどの余裕すら無いのだろう。

現在進行で携帯から殴る音や破砕音が聞こえてきてるからな。
修行しながら電話するなよ…

「穴兄弟になるのも不本意だが、ちゃんと弓ちゃんの欲求も解消してやるから安心…」

『しろよー』と続ける俺の耳に『バキリ』と鈍い音が聞こえて電話が途切れてしまう。
全く…冗談の通じない男である。




「あれ…弓ちゃんだよ…な?」

待ち合わせ場所に居た数人の男に囲まれた少女。
あの特徴的な目は弓ちゃんだと思うが、予定時刻より1時間以上も早いのだ。
一瞬違うかとも思ったが、怒気を孕んだ霊力が膨れ上がるのを見たとき、俺は全力で走っていた。

GSにもルールという物がある。その一つに『一般人に特異能力を使うべからず』というのがあるのだ。

いくら社会的に認知され、科学的見解も出た現代とはいえ
GS達の持つ特異な能力は、一般時から見れば異質であり下手をすれば『化け物』と証されるほどなのだ。

走る俺の脳裏に、生まれながらにして式神を内包した故に幼少の頃から『トモダチ』の居なかった女性の事が浮かぶ。
確かにその人は能天気といえるほどに元気だが、その内にある闇は同じ能力を持つ物にしか判らないのだ。

しかし、どうやって止める?
雪乃丞やヴァンパイアハーフのピートの様に男であれば殴ってでも止めるが、相手は少女なのだ。

…まて。俺は彼氏(代理だが)だよな?
だったら、止める方法は一つか…

「貴方たち、いい加減にしなぁぁぁぁぁっっ!?」
「ごめんかおり、遅れたよ」

今まさに弓ちゃんの技能である水晶観音を発動しようとした瞬間。
まさに間一髪だった。

俺は弓ちゃんを後ろから抱き締め、耳元を擽(くすぐ)る様に囁けば
一気に集中力が無くなったのだろう、霊力が霧散して…目を瞑り身体をビクビクと震わせて…

…耳弱いのだろうか?
雪乃丞はこんな事しないだろうからなぁ…

周囲に居た野郎共も彼氏君の登場で気が削がれたのだろう。何も言わずに何処かへと去っていく。

「ごめんな、かおり。もっと早く来れば良かったよ。そうすればかおりを嫌な目に合わせずに済んだのに…」
「やぁぁ…やめっ…ひゃめっ…」

俺が耳元で囁く度に、弓ちゃんが顔を真っ赤にして震えるのが可愛くて可愛くて
思わず…いや、故意か。弓ちゃんがぐったりしてしまうまでずっと囁いてしまった。


「いやーすまんすまん。あんまり弓ちゃんが可愛かったからさ」
「う〜〜〜〜…横島さん不潔ですわ」

少々やりすぎて足に力が入らなくなってしまった弓ちゃんを近くの喫茶店まで連れて来て
一緒にお茶をしているのだが、落ち着いてからずっと俺の事を睨んでいる。

確かに彼氏でもない男にああいう事をされるのは良いとは思わないだろうけども

「弓ちゃん」
「…判ってますわ」

久しぶりの…弓ちゃんには初めてであろう俺の真面目な声に、弓ちゃんは目を逸らしながらも自嘲気味に呟く。
流石にああいう公衆の面前で力を行使しようとした事に罪悪感が…

「雪乃丞も来ないみたいですし、横島さんのナンパに…あら?」

俺の予想とは180度程ずれた回答に思わず椅子から滑り落ちてしまう。
普通ならば椅子からずり落ちる事など無いのだが、この身に流れる『オオサカ』の血が『そうしろ』と俺に言うのだ。

顔を赤くしながら応えていた所を見ると、冗談ではないようだ。
俺がずり落ちたのを弓ちゃんは不思議そうな顔で見ていた。

『違った?』と。

おおまかに言えば違わない(とは言っても、予定時刻よりまだ30分早い)のだが…

「へぇへぇそうでございますよ。俺は可愛い可愛い弓ちゃんが他の男にナンパされるのが我慢できなくてねー」

座りなおしながら殆ど棒読みで言う俺の言葉に不自然を感じなかったのだろうか
俺が座りなおしたのを見計らうように『ぽつり』と小さく呟いたのだ。

「でしたら…『弓』ではなく、『かおり』と呼んで欲しいですわ」
「ん、わかったよ『かおり』」

名前を呼び捨てにする事に俺は抵抗を感じないので、自然と口から『かおり』と出たのだが
弓ちゃん…あ、いやかおりは驚いたのか顔を真っ赤にして口を『ぽかん』と開けている。

「こっ…ここっ…こういう時は…その…ちっ…『ちゃん』とか、『さん』付けするものではありませんの!?」
「したほうがよかった?」

真っ赤になりながらアタフタとするかおりが可愛くて、ニコニコと笑みながら聞き直せば
さらに顔を赤くして俯いてしまう。

本当に可愛いなぁ…この娘(こ)。
俺が雪乃丞だったら絶対に代理とか頼まないけどなぁ…

丁度10時になった頃に俺が立ち上がると、かおりが『あっ…』と小さな声を上げて俺の顔を見上げてくる。
まるで捨て猫みたいな顔をしながら。

…いかん、本当に穴兄弟になりたくなってきたぞ。
って、それは下品か。
もとい、…いかん、本当にかおりを抱きしめたくなって来たぞ。
…の方が良いな、うん。

俺が手を差し出せば、かおりは手と俺の顔を交互に見ながらもじっとしている。

「ほら、行こう。デート。 まずは映画でも、な?」
「えっ…あ…は、はいっ!」

俺の手を握っていいものかと逡巡しているのか、中空で止まるかおりの手を握りカウンターを抜ける。

「あの、よこし…」
「かおり、俺の事は名前でなー」

何故かは知らないが、俺の知る女性人は皆俺の事を苗字で呼ぶのだ。
俺としては名前で呼んでもらった方が嬉しいのだけれど、はやり好きな男以外は名前で呼びにくいのかもしれない。

俺がそう言えば、かおりはおずおずと俺の事を名前で呼んでくれる。もちろん苗字の時と同じく『さん』付けだが。


暫くは引張り気味で歩いていたのだが、心の踏ん切りがついたのか
俺の方が引っ張られる様になっていた。

俺の手を握ったままずんずんと勝手に進み、映画のカウンターでチケットを買おうとする。
題名を見れば『GSハザード』とか書いてある。

たしかこの映画は、悪霊を研究している研究所で実際に起きた事件を基に作ったものだ。
実験に失敗した研究員に悪霊が取り付き、殺されてゾンビとなる。
そのゾンビが次々に感染するように周りの研究員たちをゾンビに変えていく…という無いようだったはずだ。

どう考えても女の子が見るような映画ではない。
ぬっちゃぬっちゃのぐっちょぐっちょで俺も生理的にあまり受け付けない類なのだ。

「あのさ…この映画…っつーか、このジャンル好きなの?」
「勿論ですわっ!」

少しばかりの怒気を含んだ口調で答えながら財布を取り出そうとするかおりを制止して
横から金を店員に渡す。
いくらお嬢様学校の六道女学院の生徒だとはいえ、GSとして働いている俺の方が何百倍…いや何万倍も持っているのだ。

…今『ありえねぇ』って思った奴、手ぇ上げろ。
確かに俺だって高校の間の見習いバイトでは貧乏暇なしだったが
高校卒業して美神さんの所に正社員として働き始めた今としては、一般サラリーマンの軽く100倍は貰っているのだよ。

すまん、100倍は言いすぎた。50…いや30倍かな…多分…

と、兎に角…俺は今金に不都合を感じるほど…ましてや喫茶店や映画の代金を女の子に奢って貰わなければならないほど切迫しているわけではないのだっ!

少しだけ、言ってて情けなくなってきた…。


時間ぎりぎりだった所為か、飲み物すらかう暇無く席に座る。
だが映画鑑賞中に飲み物や食べ物無しというのは、俺としてはルール違反なのだ。

俺は飲み物等を買いに行こうと席を立っ…

…立てなかった。

腕を物凄い力で握られているのだ。
もちろん、隣に雪乃丞や他の女性人が居て、睨みつけながら俺の腕を握っているわけではない。
握っているのはかおりなのだ。

視線を向ければ、目をぎゅうと瞑り『がたがた』と震えながら俺の腕を握り締めていた。

「ひぃっ!?」

『ガタンッ!』と何かが落ちる音が館内中に響けば、小さく悲鳴を上げている。
…絶対入る映画間違えていたな、これは。

隣に『蛍と出合った一ヶ月』という恋愛物があったのだ。
恐らくそっちに入るつもりが、何か考え事をしていた所為でこっちのチケットを買ってしまったのだろう。

『グァァァァ!』
「きゃぁぁぁっ!!!」

映画のゾンビの叫び声とかおりの悲鳴が重なる。
俺に抱きつき、『もういや…もういやぁ…』と何度も何度も呟いてるのを見ると
やっぱり苦手なのだろう。

このままだと本気で泣き始めそうだからと立たせようとするも、腰が抜けたのか立とうとしてくれない。

「よっ…と」

かおりの背中に腕を回せば、上手い具合にかおりは俺の首に腕を回してくれる。
そのまま俺はかおりの膝に腕を通し、所謂(いわゆる)『お姫様だっこ』をして館内から出たのだ。

直ぐ近くにある椅子に座らせようとするも、力一杯に俺に抱きついたまま離れてくれない。
仕方なしと俺が椅子に座り、その上に座らせてゆっくりと頭をなでていく。
『もう大丈夫』、そう言い聞かせながら。

「ぅ…うぁ…うぁぁぁぁぁんっっ!!!」

やっと安心できたのだろうか、『ガタガタッ』と全身を大きく震わせながら大声で泣き始める。
きっと怖いだけでは無いのだろう、恐らく今日『も』雪乃丞は自分よりも修行を選んだ事
その事が悲しくて、それと遭い俟ったのだろうと。

そう、思っておこう。
俺は、かおりを座らせている膝が何か温かい物で濡れていくのを感じながら
そう心の中で呟いた。



「うーむ…」

なし崩しとはよく言ったものだ。
今居るのはラブホテルの一室。

とは言っても色気のある話ではなく、俺の膝の上に漏らしてしまったので
かおりの服と俺のズボンをクリーニングに出すのと時間潰しに入っただけである。

まさか、漏らすほど怖がっていたとは…
だったら入らなければ良いだろうとも思うが、気の強さが仇になったのだろう。
彼氏である雪乃丞なら鼻で笑うだろうからなぁ…

バスローブに身を包んでシャワールームを出れば、出口で待っていたのだろうか
まるで俺が見えていないとばかりにその場でバスローブを脱いでかおりが中に入っていく。

少し見えてしまったではないか。 全身くまなく少しだけ。
…いかん、反応するな息子よ。

そんな俺の思いも空しく、股間に血が集中していく。
まったく即物的だよなぁ…
俺の脳裏に『据え膳食わぬは』等という言葉が浮かぶが

…流石に食ったらヤバいよなぁ


しかし、暇である。
女性のお風呂は長いと聞いていたが、ここまで暇になるとは思わなかった。

暇になれば興味が出る。
そもそもラブホテルなど来たのは初めてなのだ。

一緒に来てくれる相手もいないからなぁ…
自分で言ってて情けなくなってくるな、全く。

「うぉ…すげぇ…おぉおぉ…」

うぃんうぃんとベッドが回転したり、天井にあるミラーボールが光ったり
いきなり部屋が暗くなったりと、まるで餓鬼の様に色んなボタンをポチポチと押していけば

「ふいーん? 何…んがっ!?」

最後の一つを押せば、何か機械の唸る音がするのだが何も起こった様子が見えない。
何だと周囲を見回せば、一つだけ違っている場所があった。

そこにあったのは、シャワーを浴びるかおりの裸体。

どうやらシャワールームの仕切りが無くなる仕組みの様だ。
しかも、シャワールーム側からは見えないのか、こちらを見ているかおりに変化は無かった。

「いやコレはなかなか…って、待て俺。こんな事をしてどうするんだ、早く元に戻そうじゃないか」

そんな言葉を出すも、身体は動かず、かおりの肢体をまじまじと眺めてしまう。
だが、煩悩が働いたのは数秒だけだった。

思いつめたかおりの顔。
明らかに尋常ではなかった。

まるで…自殺でも考えているような…
いや待て、そんな事がと頭を振るが、不安が消えてくれない。
だったらと、ベッドから降りてシャワールームへと向かう。
どちらにせよ今のかおりの表情は普通ではないのは確かなのだから。


シャワールームのドアを開ければ
悲鳴も上げず、かおりはぼぅっとした表情でこちらを見詰めてくる。

「見てるだけでは、我慢出来なくなりましたの? こんなわたくして良ければ…」

抑揚の無い声。まるで機械のような感情の無い声。
しかし、何と言った?『見てるだけでは』?
シャワールーム内を覗けば、なんと室内が丸見えだったのだ。

つまり、俺が見えていたという事。
そして、俺がかおりの裸体を見ても何も反応しなかったという事…?

「う、うわっ!?」
「あぁ…忠夫さんはわたくしの様な身体でも反応してくださるのですわね…」

かおりの行動に俺は、思考の波に意識を飛ばしていた所為で反応できずに押し倒されてしまう。
同時にバスローブが肌蹴てしまい、いきり立つ俺のモノが曝け出されてしまうのだが
かおりは愛(いとお)しそうにそれを優しく撫で始めたのだ。

いや…違う。愛しそう? そうじゃない。
シャワーに濡れて最初は気付かなかったが、かおりは泣いていたのだ。

「あっ…」
「するなら、ベッドの上でな」

優しくかおりを立たせ、頬に軽くキスをすれば『はい』と頷いてくれる。
かおりは自暴自棄(やけ)になりかけている。
恨むなよ雪乃丞。お前が悪いんだからな。

恐らくだが、ほぼ毎回デートをすっぽかしていたのだろう。
そして、今回が『最後』なのだと言ったのだろう。

だから、雪乃丞は俺に電話を掛けて代理を立てた。

結局アイツはかおりじゃなく修行を選んだって事なのだ。



「あ、あの…わたくし…初めてですので、出来れば優しく…」
「…えぇっ!?」

ベッドに抱き締めながら優しく倒した時に出たかおりの言葉には本気で驚いた。
流石に恋人同士となった雪乃丞とは関係があると思っていたのに…

「さ、流石にキスはあるよね?」

冗談気味に聞けば、『かぁっ』と顔を赤くしてそっぽを向いてしまう。
本気(まじ)なのかっ!?

「じゃ、こっちから…全部貰うよ」
「は…はい…ん…んんっ!?…ちゅ…」

多分キスするときに舌入れるのも知らなかったのだろう。
舌を滑り込ませた瞬間に舌を噛まれそうに…いや、少し噛まれてしまったが
そのまま気にせずかおりの口内や舌を舐めて上げれば、おずおずと絡めてくる。

「ん…ちゅ…ひゃ…ひゃぁぉ…んちゅ…ふぁん…っはぁ…頭がびりびりして…はむっ…ちゅる…」

ほんのちょっとキスしただけで目を潤ませて、触れ撫でる度に『ぴくぴく』と可愛く反応して小さく嬌声を上げていく。

「あ、あたまっ…ふわふわ…してっ…こわっ…なに…こっ…や…あっ…〜〜〜〜〜っっ!!!」
「…ありゃ」

思わず間抜けな声が出てしまった。
本当に耳が弱いのだろう。右腕で優しく抱き締めながら左手で胸を愛撫しながら
少し音を立てながら耳を舐めて上げれば、背を反らせ『ひくひく』と震えてしまった。

「大丈夫?」
「…っはぁ…っはぁ…ら…らい…ひょーぶ…れひゅ…わ…」

辛いほど強い快感ではなかったようだ。
うっとりとした表情で虚空を見ながら、呂律の回らない口調ながらもしっかりと俺の言葉に反応してくれる。

感じ易い娘なんだなぁ…

「あっ…んっ…んあぁっ!」
「ん、ちょっと辛いか…ゆっくりやるから…」

股間の方に手を伸ばせば、そこは熱く濡れている。
だが、反応が強すぎるのだ。
感じ易い体質の所為が少し辛そうな表情をしている。

ゆっくりゆっくりと触れていけば、段々と声に甘みが増していくが…

「あー…辛いなら今日は止め…」
「…っ!?」

すると今までぐったりしていたかおりが、まるで電気が走ったように飛び起きて
いきなり俺を押し倒したのだ。

突然の事で反応できなかった俺の唇を今度はかおりが塞いでくる。
それから俺の胸を愛撫し始め、頬、耳へと舌でなぞりキスをして…

って、これは…俺がした事そのまま真似てるいのか。

「あ、あのさ…男は女みたいに感じないから」

『ぴくり』と震えてかおりの動きが止まる。
やはり真似てたのか。
気持ち良くない訳ではないが、どうしてもある一点に比べれば弱い。
女と感じ方が違う所為だとは思うが…

「こっ…ここ…なら、どうですの?」
「む、無理しなくて良いよ?」

どう考えても触り慣れている感が無い。初めて触るのだろう、おっかなびっくり触っているのは
傍目から見ても明らかだった。

だが俺の言葉が癪に障ったのか、大きく口を開けて…

「ま、待っ…いてぇぇぇぇっ!!!!!」
「っ!?」

予想通り、噛み付いてきた。
あまりの痛みに思わず身を縮め込ませてしまう。
流石に本気で噛まれたわけではないので血は出て居ないが、痛いのには変わりは無いのだ。

「ご、ごめんなさいっ!!」
「い、いや良いよ…知らなかったんだしさ…」

俺はかおりの頭を優しく撫でて、再びかおりを組し抱き
腰の下に枕を添える。

「かおり、痛くても止めないからな」
「は、はいっ! 頑張りますわっ!!」

いや、頑張らずに力を抜いて欲しいのだけど流石に最初からリラックス出来る人はそうそう居ないからなぁ…

「ん…」
「ゆっくり深呼吸、な」

かおりの秘所に当て、深呼吸を促す。
人というのは、息を吐くときに力が抜けるのだ。

大きく吸って、吐く
吸って、吐く
吸って…吐く

「はぁ…あぁぁぁっっっ!!!!」
「くっ!」

『メリッ』という肉を割く様な感覚と共にゆっくりとかおりの膣内(なか)に埋まっていく。
まるで金降ろしで擂(す)られるかの様な凄まじい締め付けと、ざらざらとした膣壁で
気を抜けばそのまま出してしまいそうになってしまう。

『かちかち』と歯を鳴らし、息浅く目を見開くかおりの頬に手を添えて『呼吸…ゆっくりと…』と促していく。
だが、あまりの痛みに思考がまともに働いてくれないのだろう。

俺は軽く息を溜め、一気に貫き

「っっっ!!!!!!!」

一気に引き抜いた。
やはり力が入りすぎた所為だろう、俺のにはかおりの血がまとわり付いていた。
少し裂けたかも知れない。

「かはっ…はっ…はぁっ…はぁっ…」
「よしよし…がんばったな…」

だらだらと、壊れた蛇口の様に目を見開いたまま涙を流すかおりを抱き締め
頬にキスをしながら優しく頭を撫でていく。

「…ちゃ…苦茶…った…かった…ですわ…」

感度がいいという事は、それだけ傷みも強く感じるという事なのだろう。
おキヌちゃんや美神さん…シロやタマモですらここまで酷く痛がることは無かったのに。


「よし、もう一回いくぞ」
「ま、ままっ…!!」

落ち着いたのを見計らって『もう一度』といえば、流石に半泣きになるが今更途中で止める方がかおりの為にはならないのだ。

「大丈夫、深呼吸…ゆっくりと、な」
「は、はい…ん…すぅ…はぁ…あっ…あぁっ!!」

流石に二度目とあって、強い抵抗はあるものの痛みは少ないのだろう。
意外とあっさり根元まで埋まってくれていた。

「どうだ、ちゃんと入っただろう。 痛くないか?」
「っか…はぁ…少し…苦し…ですわ…ん…でも、そう…痛くは…」

うん、痛みは大分無くなったみたいだな。
これからが本番だ。

もう一度引き抜いて…

「ん…はっ…あっ…ぁ…」

亀頭だけ埋めて軽く出し入れしていく。
『ちゅくちゅく』と少しだけ血の混じった愛液が何ともいやらしい音を立て
奥まで迎え入れれた余裕が生まれたのだろうか、少し声に甘みが入り始めている。

「ん…ぁ…だんだ…んっ…ふかっ…」

そう、慣らす様にゆっくりとストロークを深くして
少し埋めたら抜いて、もう少し深く入れてまた抜く。

こうやって周りを解さないと痛みが先に来る…らしい。


「はぁっ…すごっ…こんっ…こんなっ…初めっ…ひゃうっ!!」
「可愛いなぁ…凄い可愛い顔してるよ」

『ひくひく』と震えながら『きゃふきゃふ』と喘ぐかおりの何と可愛いことか。
上手い具合に感じるようになってきてる。

そろそろ本気で動いても大丈夫か。

「じゃ、強く動くよ」
「ひゃ…ぁ…?…あぁっ…りゃめっ…こわっ…こわれ…ま…きゃうっ…んぁぁっ!」

『いやいや』と涙を流しながら一身に俺を受け止めるかおりの顔にもう痛みは無い。
感じ易い身体の所為で、初めての悦楽に翻弄されているといった所か。


しかし、そろそろ…我慢が…
膣内(なか)もひくひくしだしてるから、そろそろ絶頂(イ)きそうなのは判るが…

「か、かおり…足…あしっ!…はなっ!…放してぇぇっ!!」
「だっ…ゾクゾク止まらなっ…ふわふわし…こわっ…忠夫さんっ!…忠夫さんんっ…〜〜〜〜っっ!!!!!」

情けない声が出てしまう。
何と、かおりが足を絡ませてきたのだ。
これで抜くことも出来ないどころではない。
『ぐりぐり』と腰を押し付けてくるので、さっきから子宮口が亀頭にくっ付いてしまって…

切羽詰っていた所に来て、かおりの絶頂に呼応するように膣壁が『ざわざわ』と動き始めたのだ。
まるで、それは膣奥まで導き射精を促すかのような動き。

もう、止まらない…ここで止めれる奴が居たら土下座してでも教えを請うぞ俺は。

「うっく…出っ…出るっ!」
「やっ…なかっ…あつっ…でっ…あぁっ!!」

膣内射精(なかだし)ってこんなに気持ちよかったんだなぁ…
なんて他人事の様に、自慰する時の何倍もの量の精液を膣にすら漏らさぬとばかりに
子宮に直接出しながらぼうっと考えていた。

「っはぁ…っはぁ…もう…出ねぇ…」
「うふふ…ふふっ…」

ぐったりと倒れこむ俺を優しく抱きとめ、『くすくす』と笑むかおりの声に宙寒さを感じてしまう。
まさか、ここまで計算づくだったのだろうか、と。

「交わりがここまで素晴らしい物だとは思ってもみませんでしたわ。一緒に絶頂を迎える事もできましたし…忠夫様とは相性も良さそうですわね…」

何時の間にか『様』付けになってる。
重いだろうとごろりと横になれば、今度はかおりが上になって
まるで猫の様に俺の胸に頬を摺り寄せてくる。

やっぱ、可愛いなぁ…
目が合えば、かおりは『えへへ』と目を細めて笑みを浮かべる。

「…でも、一回出されただけでは出来たかどうかも不確かですわね。今日は一日暇ですし…頑張って下さいませ、忠夫様っ」
「やっぱり確信犯ー!?」


雪乃丞…お前が捨てたんじゃなくて

お前が捨てられたんだな…


「はぁんっ…またっ…いっぱい…出てますわぁ…」

そして、俺は捕まったのか…あはは…


はしがき

4万ヒット横島X弓のお話しをお送りしますゆめりあんでございますー。

女は怖いんだぞーってお話しですね。
寝取ってしまったーと思わせて、捕まったのは横島君だったという…

はてさて、どこから演技だったのでしょうねぇ…その辺りは読者様に想像していただくという事でっ!

では、また次のキリリクにて…
キリリクの部屋へ

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