「選べ、メフィスト」

朗々と謳う様に私に問われる言葉。
私はメフィストなんて名前ではない。私は美神令子。Sランクゴーストスイーパー。
でも、目の前のこの男・・・いや魔王アシュタロスにとって些事なのだろう。

アシュタロスの手の中からうめき声が聞こえる。
うめき声に紛れて骨の砕ける音が聞こえる。

もう、時間が無い。

歯噛みする暇すらない。

「目の前でお前の愛する男が死する瞬間を見るか、それとも私の元へ来るか」

私はゆっくりとアシュタロスの前へと進み、傅(かしず)く。

「貴方様の元へ参ります…我が父…アシュタロス様」

不思議と涙は出ない。

アシュタロスの手が緩み、『ずるり』と落ちてきた横島君を受け止める。

まさに半死半生
不死身かと思ってしまうほどのこの男が今まさに命のともし火を消さんとしていた。
急いで手持ちの文珠を全て使い、治癒を進める。

「…っかみ…さ…」

息を吹き返した開口一番に私の名を呼ぶのか、この馬鹿は。
血に塗れた彼の頭をそっと撫で、歯の無い彼に口付けをする。

事故ではない、自らの意思による…私のファーストキス。
悲しいほどに血の味しかしない…

「さよなら、横島君」

決別
もう、私が人の地を踏むことは無いだろう…


30000ヒット リクエスト短編「私が私らしくあるために」


ゆっくりと意識が覚醒する。
肌に感じる清浄な力

また、あの日の夢を見てしまった…

私が人間界からこの魔界に来た日の夢。
もうあれから丁度一年が経ってしまった。

「…起きたか、メフィスト」
「はい、アシュ様」

私を抱く力が少しだけ強くなる。
視線を上げればアシュタロスの優しい顔。
私はこの魔界に来てから一度も立った事が無い。
ずっとアシュタロスの膝元に座り、彼の腕に抱かれたままなのだ。
私の身を包む柔らかなドレス。締め付けるように着ていた前の仕事服とは大違いである。

私は…ここに来る時、死を覚悟していた。
結晶は私を殺すか、私自らの意思で前世の姿である魔族メフィストにならないと取る事が出来ない。
だから、生きたままに魂の結晶を剥ぎ取られ、残苦の叫びを上げながら死ぬのだと。

でも、違った…

『お前が魔族に戻りたくないのならそれでも構わん。寿命尽きるまで人として生きると良いだろう。私の傍を離れる事は許さぬが…死した後再び人として生まれ変わりたいのならば、結晶を除いた後に輪廻の輪へと還してやろう』

あまりにも優し過ぎる声。
胸に抱かれるこの安心感。
やはり、この魔王は私の創造主なのだと今更ながらに実感してしまうのだ。


ふと気付けば、アシュタロスが私の目の前に果物を差し出している。
両手で受け取り、口に含む。

人間界には無い魔界の果物。
不味い訳ではない。味からすれば今まで食したどんな果物よりも美味しいと言える。

私が咀嚼し、溜飲する姿を見ながらアシュタロスが優しい笑みを浮かべ
私の頭をそっと撫でてくれる。

何も不安は無い。
強いてあげるとすれば、ここが魔界であり嘗て知った人に二度と会えなくなった事位か。

「メフィスト」

アシュタロスに名を呼ばれ、咀嚼を止めてアシュタロスの顔を見上げる。
優しい笑顔を湛えたまま、優しく呟いた

「オーディンの奴、孫が生まれたらしい。さっきから念波で『見に来い』と煩いのだ」

『行くぞ』と私を抱き上げて言う。
私に『否』は無い。する必要も無いが、落ちぬようにアシュタロスの身体に手を這わせる。

少しばかりの風を頬に感じれば、ここは何処だろうか
碧眼の男がそこにいた。

普通ならば凄まじい威圧感を感じるのだろう。
だが、アシュタロスに抱かれた今では何も感じることは無い。

「おぉおぉ来たかアシュタロス」

その碧眼の男はアシュタロスの顔を見た途端破顔する。
言葉からすれば恐らくこの男がオーディンなのだろう。

オーディン…かつて巨人族を束ねた人神。
人でありながら神になった男。

その男の孫ということは…

「ワルキューレはどうした」
「む? あぁ、娘なら向こうの部屋で倒れておる」

『慣れない子育てで疲れたのだろう』と、思考の波に飲まれる私を置いて
アシュタロスと二人で笑いあっていた。

・・・これが、魔族の本来の姿なのだろうか。
人間と変わらないではないか。

「あ、アシュタロス様っ!?態々いらっしゃって頂きまして…すみません」

柱の影から現れたワルキューレが、ふら付きながらこちらに向かって一礼している。
顔を上げた瞬間に私と目が合う。その目には、何とも複雑な色をしていた。

「はっはっは。子育て程度で音を上げているようでは旦那に愛想尽かされるぞ」
「ち、父上っ!?」

みるみる内にワルキューレの顔が真っ赤になっていく。
こんな顔、今まで見た事が無い。

でも、ワルキューレの夫って誰だろう…
その頭に浮かんだ疑問は直ぐに解消される。私にとって最悪の形で。

「忠夫は私の事を想ってくれています。愛想を尽かすなんてそんな…」

『ぐじゅっ』と半泣きになるワルキューレを、オーディンが優しい笑みを浮かべながら頭を撫でている。

今…なんて…いった…?

た・・・だ・・・お・・・?

不安の種が大きくなる
思考を塗りつぶしていく

でも…
アシュタロスの手が私の頭を優しく撫でてくれる

「あ、み・・・美神!」

私の身体が『ビクリ』と震えた。
今、ワルキューレが私の事を…

この魔界に来て一年、誰も私を『美神』と呼ばなかったのに。
でも、それを肯定してはならない。私は…

「私の名前はメフィスト。 その名前で呼ばないで」

そう凛とした声で言ったつもりなのに、掠れて殆ど声になっていなかった。
私はメフィスト。私は美神ではない。

美神令子は、この魔界に来た日に死んだのだから。


「気になるか、メフィスト?」

魔王城に戻ってすぐ言われたアシュタロスの言葉。
何が、と言わなくても判る。

そして、恐らくアシュタロスは知っていたのだ。
知っていてなお、私を会わせたのだ。

何も言わない私の目の前に透明な玉を一つ浮かび上がらせた。
直ぐに何かが映り始める。

それは…横島君とおキヌちゃんだった。
幸せそうに手を繋いでいる。
よく見ればおキヌちゃんのお腹が大きい。恐らく横島君との…

・・・?

ちょっと待て、横島君はワルキューレと夫婦になったのではないのか?

私の心情などお構い無しに場面が変わる。
どこかのマンションだろうか、その一室にタマモとシロと…確か花戸という娘。
魔鈴めぐみに、それと名前は判らないけど目つきの悪い小柄の娘に金髪碧眼の娘。
確か化け猫の美衣と…小竜姫様に冥子まで居る。

何なんだこの大所帯は

「あの青年の妻たちだ」
「はぁっ!?」

アシュタロスに言われて、食い入るように見れば
確かに横島君も居た。大人数の子供と共に。

私が居なくなって、たった一年でこれだけの女性を落としたというのかあの節操無し(おとこ)は。

「そうではない。お前が居なくなった次の日から次々に告白されたのだよ」
「うそ・・・」

頭は否定するも、魔王であるアシュタロスが嘘など付ける訳は無いし
そもそも私に嘘を付く必要すらないのだ。

逆を言えば、私が居た所為であの男は彼女が出来なかったという事なのだろうか。

確かに私は横島君のことが好き。
でも、私は嫉妬深いし独占欲が強い。

私が居たら絶対にああいう状態にはならなかっただろうことは容易に想像が付く。

私は…居ない方が良かったの…?

「あっ…」

軽い眩暈(めまい)と共にぐらりとバランスが崩れる
スローモーションの様にゆっくりと床に落ちていく私の身体が
『ふっ』と空中で止まる。

アシュタロスの力。この力がある限り私が傷つく事は無い。

「辛いか?」

再びアシュタロスの膝に戻った私が声無く泣く姿を見ながら優しく囁いてくる。

「私を…抱いてくれませんか」

馬鹿な事を言ったと自分でも思う。
ただ、寂しさを紛らわせる為だけに求めるなど…父であり創造主であるアシュタロスに…

でも、そんな私の願いすらもこの魔王は叶えようとするのだ。


「先に言っておく。私と肌を重ねればお前の魂が呼応して、魔族化してしまうが…構わんな?」
「・・・はい」

もう、私が人である理由は無いのだ。
脳裏の片隅にあったかすかな希望すらもなくなった今では…

私が真(ほんとう)の『私』になる。
私が、私であるために。

「ん…」

ベッドに組し抱かれ触れるだけの優しいキスをしてくる…けど…

「・・・どうした?」
「いえ…」

こう…何というか…
いきなりアシュタロスの身体全体から触手が生えてぬるぬるのぐっちゃぐっちゃにされて
最低丸一日は快楽漬けにされると思っていたから。

でも、そんなこと言えるはずも無い。
頬を染めて否定するだけ。

「あ…は…っ」

ゆっくりと頬から首筋にかけて舌が這っていく。
胸を優しく愛撫してくる

稚拙なのではない
そもそも私はこういった経験は無いのだ。

でも…少しだけ…

物足りないと感じてしまう。


「んっ…」

ドレスを脱がし、乳首を口に含ませて転がしてくる。
甘い快楽が身を這うが…

やっぱり物足りない。
さっき少しだけ見てしまった横島君たちの情事の凄まじさが脳裏に浮かんでしまうのだ。

優しくしてくれているのかもしれない、いや多分そうなのだと心に言い聞かせる。

気持ち良くない訳ではないのだ。
自分でするより何倍も気持ち良いのは確かなのだから。

「ん…」

『くちゅ』と秘部にあてがわれ、私の身体が『ぴくり』と震える。

やはり…上手いのだろうと思う。
ゆっくりと破瓜の時を過ぎていくにも拘らず
大して痛みを感じないのだから。

ゆっくりと深呼吸し、目を閉じて膣内(なか)に在るアシュタロスの感触を感じる。

『トクリ』と心臓が…止まった…

血が…騒ぐ…

「あ…はぁ…ふぅ…」

私が『私』になっていく
夢に近い記憶だったメフィストの記憶が『美神』の時の記憶を押しやって前に出てくる

「ぁは…さぁ…犯してください、アシュ様っ」

魔族になった興奮からか、全身を愉楽が突き抜けている。
少しでも動かれれば絶頂(イ)ってしまうだろう。

滅茶苦茶に突かれて、何度も絶頂(イ)かされる自分の姿を想像して興奮が高鳴っていく…

「はぁっ…あぁ…」

膣口から一気に貫かれ、子宮を押し上げられる感覚に
二度三度と絶頂が襲ってくる。

『たらり』と悦楽に歪んだ私の口から涎が流れ、アシュ様が舐めとってくれる
私はアシュ様の頭を抱き締め、荒々しく唇を奪って舌を絡めていった。

「ん…はぁ…アシュ様…アシュさまぁっ」

『きゅっ』とアシュ様のモノを締め付ければ、『ぐぅっ』と押し返して…

「う…うぉっ」

そのまま私の中に吐き出していった…


…ごめんアシュ様…
早いよ…


何度も絶頂(イ)かされた身で何をと思うかもしれないが、興奮が止まらないのだ。
今なら何十回でも絶頂を味わえる気分である。

・・・なのに、アシュ様ってば息が絶え絶えでぐったりしてる。

・・・・・・・・・・もう歳?

いやいやいや、魔王に寿命はないのだし。

もうちょっと、こう…興奮させてあげて…
そう考えた私の耳に水音が聞こえてくる。
あと、くぐもった声も。

私はアシュ様の頬に軽くキスすると、ベッドを降りて勢いよくドアを開けた

「ひぁぁぁっ!?」

ドアに背を預けていたのだろう、ドアを開けた瞬間に悲鳴を上げながらベスパが室内に倒れてきたのだ。

ベスパの顔が丁度仁王立ちしている私の足の間に来た時

「あっ…あぁっっっ」
「あらあら、はしたない娘(こ)」

膣内射精(なかだし)されたアシュ様の大量の精液が私の秘所から『べちゃべちゃ』とベスパの顔に掛かる。
それを嫌がるどころか、逆に絶頂(イ)ってしまっているのだ。

『ひくひく』と精液塗れのままに絶頂の余韻に浸っているベスパの腕を引き摺ってベッドに戻り。

「愚妹も仲間に加わりたいみたいよ、アシュ様」
「みかっ…ね、姉さん!」

そう。物足りないなら、満足するように自分でやればいいのだ。
『一緒に舐めましょう』と真っ赤になるベスパを促して、アシュ様のモノを舐めていく。

大きいなんて物じゃない。私の腕ほどはある。
こんな凄まじいものが私の中に入っていたのかと思うと…

さらに興奮してっ

「ん…はぁ…ちゅ…んん…」
「はっ…アシュ様…これが…アシュ様の…はむ…んっ…」

私達に舐められて興奮したのか、どんどん固く大きくなっていくのを見て身体がどんどん熱くなってくる。
『びくびく』と暴れるアシュ様のモノを、胸で挟もうとするが大きすぎて全部入りきらない…

「ベスパ…ほら、貴方も」
「えぇっ…あ、えと…こう?」

二人掛りでなんとか埋めて、全身を使ってゆっくりと扱き始める。
最初はぎこちないベスパの動きもだんだんと私に合わせて動くようになって…

あら?

「ベスパ、もしかしてアシュ様のをパイズリしながら感じてる?」
「ちっ…ちちちっ…ちがっ…」

真っ赤になる顔がなんとも可愛らしい。
1年前までは敵だったベスパ。

今では可愛い私の妹。
そういえば、ルシオラやパピリオも私の妹になるのよね。

・・・しっかり横島君の子を身篭ってたけど。

「あっ」
「きゃっ」

アシュ様がいきなり身体を起こしたので、私達は抱き合ったままベッドに倒れこんでしまう。
ぐいっと、上になっている私の尻肉をアシュ様が掴んでいる…

「全く…どこでそんな知識を覚えてきたのだお前たちは…」

呆れたアシュ様の声。
私のお尻がアシュ様の手でぐにぐにと揉まれて…凄い気持ち良い…
ベスパの羨ましそうな顔…本当に可愛い。キスしてあげよう。

「んむっ!?…んーっ!!…んっ…んっ」
「ほら、ベスパ…舌出して…んちゅ…ん…はっ…」

アシュ様の愛撫が伝わるように、と荒々しくベスパの口内を犯していく。

「んーっっっ!!!!」
「いたぁっ!? ちょっとベスパ、舌を噛ま…」

何と思い切り私の舌を噛んできたのだ。
私は怒ってベスパを怒鳴ろうとしたが、噛みたくて噛んだわけではなく

「あ…さ…アシュ…さっ…いきなっ…はげっ…ぎっ…」

泣き喘ぐベスパの表情。
そう、ベスパのまだ誰も迎えた事の無い秘所にアシュ様のあの大きいモノが貫いたからなのだ。
だがアシュ様は先ほどの余裕が感じられない荒々しい腰の動き。
上に乗っている私にもその動きが伝わってくる。

「ね…さ…っシュ…さ…頭…訳わかっ…あ…やっ…いっぱ…出てっ…あぁっ」

・・・もう出てる
ベスパに入れて30秒と持ってない。

ベスパは満足そうな顔をしているけど…やっぱり物足りない。
待ってても私に入れる気配も、ベスパを続けて犯す気配も無いのだ。


10分位経っただろうか、息を上げたアシュ様の横で幸せそうに寝るベスパを見て私は頷いた。

「アシュ様…」
「む、どうした?」

今思っている事を・・・あ、いや・・・早漏とかそういう事じゃなくて、ね?

「結晶、ここに置いておきますね」

私の胸から取り出した魂の結晶を近くの棚に置く。
これで、ここに居なければならない理由はなくなったのだ。

「アシュ様の優しさ、凄く嬉しかった。私はアシュ様を愛しています。でも・・・」

でも・・・やっぱり・・・

「優しいだけじゃ物足りないのよーっっ!!」
「なぁぁっ!?」

『遊びに行ってきまーす』と言い残して大急ぎで部屋を出る。
翼を広げ、魔界の空へと。

そうだ、これが私なのだ。
私はアシュ様が好き。でも、横島君はその1000倍は好き。
多分…ううん、きっと魔族になった私でも横島君は愛してくれる。

「待ってなさいよ…貴方の美神=令子=メフィストが今行くわーっっ」

遠くに聞こえるアシュ様の私を呼ぶ声を聞きながら、高らかに叫んだ。

私が私らしくあるために



はしがき

はい、3万ヒットリクエストをお送りしますゆめりあんでございます。

えぇ。やっぱり私は横島君が好きなんだなと、書いてて思いました。
でも、リクエストとしてはどうなんでしょうか…

とある漫画で『魔界はエッチがマンネリ化してる。人間界のエッチは凄い』というフレーズがありまして
あーこれで行くか、とっ!

美神が美神らしくあるためにはどうしたらいいのか
やはりそこが一番難点でしたね。

メフィストらしさと美神らしさ
違うようで同じような二つの姿。それを重ねたのが最後の美神=令子=メフィストの姿です。

父親であり創造主であるアシュと肌を重ねるなら、絶望させるしかないなと。
アシュには別の意味で絶望してましたけどね…

いやはや…やはり難しかったですねぇ…好き嫌いはいけないのですけど…ね。

出来ることならもう少し短くしたかったものです。

では、次のリクエストにて…
キリリクの部屋へ

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