「まさか…」

薄暗い自室の中でパソコンのモニターに映る彼女を見ながら俺…横島忠夫は小さく呟いた。

着る物一つ与えられず、目隠しをされている写真。
その下に書いてある現在の値段

彼女…花戸小鳩は売られていたのだ。


1000ヒットリクエスト短編「Bird Cage」


小鳩と知り合ったのは確か高校の時なので、今から5年ほど前になる。
俺はその時美神令子除霊事務所でアルバイトをしており、その関連で彼女と知り合う事になった。

5年の付き合いだが、色のある付き合いというわけではない。
言うなれば友、といった所か。
魅力的な女性なのだが、互いに『今更』という感じが先に来てしまい男女の関係になる事はなかった。
無かったが…恋心が無いと言えば嘘になる。

それが…俺が美神令子事務所を辞めて新しい個人の事務所を開く日…そう、昨年の今日に忽然と姿を消してしまったのだ。
直ぐに見つかると軽く思い、仕事の合間に軽く探して居たのだが、今の今まで見つかるどころか手がかりすら見つからない始末。

半ば諦めかけていた時に、元自称ライバル現親友の西条輝彦からの情報で大きく進展する事となった…
西条はICPOの霊能犯罪の部門に所属している腕利きのGSなのだ。


そう、それは一週間前になる
何時も利用させて貰っているレストランで西条と食事をしていた時の事だ。

「Bird Cage?」

直訳すれば『鳥かご』か。西条が持ってきた、『人物売買』のサイトの名前らしい。

「あぁ。花戸君だったかな? キミが渡した写真に瓜二つの女がそのサイトに載っていたんだ、見てみるといい」

一般には全く知られない裏のサイトであろう筈なのに、よくよくこの男は何処から得た情報なのか掴んで来てくれる。
A4の用紙にプリントアウトされた白黒のデータを見せられる。せめてカラーに出来なかったものだろうか。

十数枚に及ぶ紙束。それの凡(およ)そ7割に女性の情報と値段、そして写真が犇(ひし)めき合っていた。

「8枚目の3段目の奴だよ」

言われた女性をよく見る。確かによく似ているが目隠しをされている上に白黒のため判別し辛い。
だが、違ったとしても・・・

「横島君」

思考の波に飲まれ掛けた所で西条が話しかけてくる。
珍しく、強い視線だった。

「まさかとは思うが、助けに行こうなんて思ってないよね」
「思ってるさ」

戦いは三度の飯より好きなこの男にこんな事を言われるとは思わなかったが、次の言葉で絶句してしまった。

「止めておいた方が良い。相手は人間じゃない。」
「ーっ!」

淡々とした口調に俺は苛立ちを隠せないが、どうも西条は内情に詳しいらしい。
声を抑えながら説明してくれた。

長い話であったが、端的に言うとすれば
夜魔族(インキュバスやサキュバスも該当する種族)が中心となって人身売買をしているらしい。それも、人間では出来ない限度ぎりぎりまで調教開発し尽くした愛玩用として。

数年前の俺ならば『魔族だろうと!』と意気込む所だが、老けたのか…それともずるくなったのか思いよりも考えが先に来てしまう。
相手が魔族ならば出し抜くことは難しく、特に人間に対して特化した能力を持つ集団である夜魔族ともなれば不可能に等しい。

勿論『倒す』事は不可能ではない。
だが『助ける』事は不可能だ。

相手は人間に対して『慈悲』はないのだ。
突っ込んでいった瞬間に『商品』は洗い浚い『処分』して魔界に姿を眩ますのは明白なのだ。


「でも確実に、その女を助ける方法が一つだけある」
「何!?」

思わず声を荒げる俺とは対照的に、西条は目を閉じ、冷静にコーヒーを口に含んだ。

「その女を、買えば良いのさ」
「 だ、だがそれでは根本的な…「キミは組織を潰したいのかい、女を助けたいのかい、どっちだね?」」

テーブルを叩きながら反論する俺の声を静かな口調で被せてくる。
小さいが、はっきりとした声。

「言っておくけど、組織を潰した所で第二第三の組織が新たに生まれるだけだぞ。相手は人では無いのだからね」

言われてみればそうなのだ。
相手が魔族ならば人の常識や法律など無いに等しい。
特に夜魔族にとって人間は『食事』を意味する場合もある。
人間が家畜の牛や豚を食べる事はあっても、家畜の苦情を聞いて食べるのを止める事は無いのと同じなのだ。

「考えてみるんだ横島君。はした金を払うだけで確実に、五体満足で引き渡してくれるんだ。…それともその子は、はした金すら躊躇する程度なのかい?」

正論がここまで辛いと感じたのは、アルバイト先であった美神令子事務所所長の美神さんに言われた時以来か。

『横島君。世の中には力で解決しない事など、掃いて捨てるほどあるのよ』

脳裏に、あの時に美神さんに言われた言葉が流れてくる。
重く苦く圧し掛かってくる重圧を払い除ける様に、俺は呟いた。

「そのサイト…教えてくれないか」


流行ってない訳ではないが、高額依頼は全て美神さんに流していたので一般人よりあるにしても西条の言う『はした金』すら無いのが現状なのだ。
ICPOに勤める西条に頼み込み、高額依頼を受けたのが丁度5日前。
終わったのは今から数時間前だ。

報酬は、5億

これだけあれば何とか
そう思ってサイトを開いたのが数分前。

そして

『Sold Out』
と『売り切れ』の文字が張られた小鳩らしき女性を見たのが今

「遅かったのか・・・」

いや、まだだ

落札金額は五千万
手持ちは五億ある

十掛けならばと、連絡先の電話番号に一縷の望みを掛けた。

「No.1624345の『小鳩』という女を落札金額の10倍で買いたいのだが」


結果から言えば大丈夫だった。
電子口座から5億の入金を終え、ふと考える。

受取日はどうなるのだ、と

それらしきものは書いてないのだ。
そう思うが早いか、家のチャイムが鳴り響いた。

「人間の常識は効かない、か…」

流石に即日即時とは思えなかった。

玄関へ行き、ドアを開ける。
黒いマントに『笑顔』の仮面という姿の『存在』が立っていた。

微かに臭う瘴気、西条の情報は間違っていなかったらしい。

「お買い上げ、ありがとうございます。当店としたしましては非常に例外な事でありましたので少々遅れてしまいました。」

そう流暢な日本語で語りかけてくる。
入金して数分しか経っては居なかったが、こいつらにとってはこれでも遅かったのだろう。

「いや、気にしてない」
「左様で…では、横島様が落札された商品にございます」

マントをばさりと扇ぐと、内側から女性が現れる。
目隠しをされ、首から下を白いマントに覆われた女性。

その女性はふらふらと前進し、俺にぶつかると『あっ…』と小さい声を漏らしそのまま身体を俺に預けた。

「あなたの探していた子はその子で間違いありませんよ」

何もかもお見通し。そう言わんばかりの口調で静かに呟くとそいつは空気の溶けて消えてしまった。


取り敢えずはと、彼女を中に招き入れる。
リビングのソファに座らせ目隠しを取ると、彼女はゆっくりと目を開いた。間違い無い。

「小鳩・・・か?」
「はい、ご主人様」

かつての向日葵(ひまわり)のような元気のある笑みではなく、薄く貼り付けたような笑みを浮かべて頷く。

「横島だよ、覚えてないのか!?」
「はい、承知しております。横島様は私をお買い上げ下さいましたご主人様です。小鳩はご主人様だけの愛玩具です。ご主人様の…」

淡々と、まるで録音テープを再生しているかのような口調で喋る小鳩が居た堪れなくて、強く…強く抱き締めた、その瞬間だった

「ん…あぁっ」

何とも艶のある嬌声をあげながら『がくがく』と身体を震わせたのだ。
瞬く間に頬は朱に染まり、ほぅっと溶けた表情を浮かべ始める。

「申し訳ありません。小鳩はご主人様の逞(たくま)しい腕で強く抱き締められだけで絶頂(い)ってしまいました」


『横島君、何があっても絶望だけはしては駄目だ。その子がどんなに変わっていたとしてもね』


判ってる。判ってるよ、と脳裏に浮かぶ西条の言葉に頷く。
恐らく小鳩は元に戻らない。西条の言葉だが、『人在らざる手段』を用いて仕込んであるのだ。

「ん・・・」

思考の海に沈んでいる間に小鳩の姿が視界から消えていた。
気付けば下の方から声が聞こえる。それと同時に聞こえるファスナーの音。

視界を下げれば、小鳩は両手でベルトを外しながら、ズボンのファスナーを口で開けていたのだ。

「ご奉仕…させて頂きますね」

上目遣いにこちらを見上げながら笑み、まるで猫の様に鼻先をトランクスに摺り寄せ始めた。

耳に届く小鳩の匂いを嗅ぐ音
トランクス越しに感じる熱い吐息

「ん…はむ…んふ…ん…」

トランクスの中でペニスを上に向かせ、右手で先端を押さえると左手で袋を揉みつつ竿の部分に唇で愛撫を始める。

まるで長年水商売を続けている熟年然とした卓越した動き。
明らかに感じるところを知り尽くしている感があり、確実に感じる部分を強く弱く攻めていく。

だが、快楽の虜になるわけにはいかない。
例え『買った』としても、彼女の現状を知る唯一の人なのだから。

だがそんな思いも空しく、どんどんと硬度を増し大きく太くなっていく。
所詮は『男』なのだ、と痛感させられる。

「わぁ…ご主人様の…おっき…」

上を向かせながら刺激していた所為か、亀頭の部分が上側からはみ出ていた。
それを小鳩は『くすり』と笑みを浮かべながら、まだ隠れている竿の部分を摩っていく。

「ご主人様…もっと…小鳩で気持ち良くなってください」

何かをする度に小鳩は横島の目を見ながら笑みを浮かべ呟く。
小鳩の淫靡な動きから、もう目が離せない。

「ふふっ…ご主人様気持ち良さそう…はぁむ…ん…」

段々と息を荒げ始める横島に笑みを浮かべると亀頭を口に含み、ゆっくりと奥に導きながら両手でトランクスを下げていく。

「うっく…うぁっ!」

ある程度は経験のある横島だが、他の女性とは比べ物にならない程の悦楽に『がくり』と膝が折れてしまう。
だが、小鳩はそれを予測していたのか、一緒に倒れこんで更なる愛撫を続けていく

「ん…ぷ…はぁ…ご主人様…私の胸も、感じてください」

小鳩の唾でべとべとになったペニスをゆっくりと胸の間に埋没させ始める。
『にちゃっ』となんともいやらしい音が胸の間から聞こえる。

ぞくぞくとした感覚
胸に挟まれる柔らかい刺激

「わぁ…ご主人様のおちんちん…おっき過ぎて私の胸に入りきらないです…はむ…ちゅる…」

胸からはみ出た亀頭に軽くキスをして、唇で愛撫を行い
手を使って胸を互い違いに揺らしていく

「んっ…んちゅ…ちゅ…ん…はむ…ちゅっ…」

小鳩の亀頭を舐め吸う音と、胸に竿を扱かれる『にちゃにちゃ』という淫音に頭が痺れてくる。

足の裏に冷やりとした感覚

膝が振るえ、腰ががくがくと震えてしまう

限界が近い

止まれ、そう心の中で叫ぶも空しく、あっさりと限界を迎えてしまう

「うっ…っくぁ…!」

今まで感じた絶頂は嘘だったのかと感じる、まるで腰が抜き取られてしまうかのような強烈な快感が襲ってくる。

まるで壊れた蛇口の様に噴出しているのを感じる。
だが、小鳩は

「んんっ…ん…んー…んふ…」

うっとりとした表情で口内に受け、さらには射精の余韻を伸ばす様にと柔い刺激を続ける余裕さえあるようだ。

「はぁ…みへ…くらはい…ほんはに…ん…」

横島に顔を近づけ、小鳩は口を開ける。
むあっと臭う雄の性臭。口一杯に白い、横島の吐き出した欲望が見える。

小鳩は横島が見たのを確認してから、溢すまいと思ったのか両手先を口元に当てて『くちゅくちゅ』と音を立てながら味わい、ゆっくりと飲み干していった。

「はぁ…ご主人様の…濃くって…美味しかったです」


何が…悲しかったのだろう

何を…悲しむのだろう


横島の頬に、冷たい涙が伝った。


「今度は…こちらで、気持ち良くなってくださいね」

覆いかぶさる小鳩を見る。
濁り切って光を映さぬ瞳。そこには横島の顔は映っては居ない。

「ん…はぁ…んっ…んぅ…ご主人様の…かたくて…おっきくって…凄い…気持ち…いっ…」

横島の物を膣奥に導き、ねっとりとした表情を作り律動を始める小鳩を抱き締める。

小鳩の嬌声が耳を打つ

得も知れぬ悦楽が身を焼く

なのに

涙が止まらない

「ご主じ…さまぁ…ごしゅ…さまぁっ!」

小鳩の声が、まるで迷子の子供が泣きながら親を探す声に聞こえる


絶望はしてはいけない


心砕け、記憶すら失ったのなら


そう、また・・・


「小鳩…愛してるよ」


また、作れば良い。



はしがき

1000ヒット記念リクエストSSをお送りしますゆめりあんでございます。
偽バルタン様に先行公開を行いまして、その一週間後…えっと一般公開は2008/04/05になるはずです。
偽バルタン様にとっては、予定。一般様が見るときには事後報告になりますね。

えぇ、難産でした。

プロット自体は今週頭に出来て居たのですが、書く暇が無くて放置していたのです。
そしたら穴があったりで、プロット書き直すこと早4回。それでも納得できる域になるまでが遠かったですね。
今回にしても、前半のシリアス部分をばっさり削ってエロを増やそう(今回消してる本番シーン)とも思ったのですが、話に重みを持たせるために珍しく短編で時代背景を書いたりしてみました。
その分バランス取りのために、ラストの本番が消えてしまったわけですが…

ハードエロ…どうなんでしょうね…ハードなのは小鳩設定だけの気もしますが…

えぇもう、まだまだ実力不足ですね。
お茶濁しとばかりに胸ネタを突っ込んだだけという…

小鳩の壊れっぷりも上手く表現できたでしょうか?

今回初ですね。えぇ本当に。


電波無しでGS書いたのはっ

なんて阿呆な事を言いつつ。

また、次回に。

キリリクの部屋へ

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