「まったく…なんで私がこんな格好を…私は月警官の長であり、厳しく…ぶつぶつ…」

朧(おぼろ)に渡された服に袖(正確には袖の無い…いや、それ以前に凄まじく面積の少ない服だが)を通しながら、誰に言うでもなく私…神無は鏡の前で愚痴を零してしまう。

『今日は百年に一度の祭りの日よ。今回は特に迦具夜(かぐや)様もご参加して頂けるし、先の戦の事もあるから…ね?』

脳裏に、今しがた見に付けた破廉恥(はれんち)な服を渡してきた朧の言葉が過ぎる。
確かに今日は百年祭の中でも特に千年に一度だけ参加して下さる迦具夜様がいらっしゃるのだし
千年前はとある事情で迦具夜様は参加されなかった。
そして先の戦い…

「横島どの…」

愚痴が止まり、静かになった部屋に響く私の声。

横島どの

確か、『横島忠夫』という地球人。
我ら月神族の住まう月に侵入してきた悪漢『メドーサ』と『ベルゼブブ』を倒した者。
そしてその後、ソロモン72柱の一柱であり六大魔王の一在である『アシュタロス』を屠ったとも耳に聞く地球の勇者。

そして…私の…


10000ヒットリクエスト短編「百年祭」

「神無ぁ〜 着替え終わったー?」
「うぉわ!?」

いきなり後ろから聞こえる朧の声に驚いてしまい、膝が抜けてしまう。
情けないとも思うが…

「お、朧! 部屋に入るときはノックくらいしろと何度も…」
「ん〜? はっは〜ん…さては、横島どのの事でも考えていたんでしょう?」

『にまぁっ』とまるで小悪魔のような笑みを浮かべながら聞いてくる朧の言葉に思わず…

「あーっ 真っ赤になってる〜…図星? もぉ〜神無可愛いっ」
「や、やめんかぁぁぁっ」

私と同じ格好をした朧は『きゃーっ』と言いながら私に抱きついてくる。
昔からの親友であり、抱きつかれること自体は嫌いではないのだが

「ん…こ、こら…どこ…さわっ…「あれ、神無…ちょっと濡れてる?」…っ!」

私の胸やら股間辺りを遠慮なく触る朧の顔がみるみる内に、地球に住む『チェシャ』という種類の猫(とは言ってもデータ上でしか知らない)の様な表情になっていく。
自分の顔が真っ赤になっていくのが嫌というほど判ってしまう。

「わ、わ…じょーだんだってばぁぁ…そんな首掴んで引っ張らないでぇぇ…」

口で朧に勝った事は無い。この色ボケを正すには…
そう考えつつ、朧の首に腕を回して迦具夜様の部屋へと向かう。
そうなのだ、朧を叱れるのは迦具夜様しか…

「迦具夜様! この色ボケを何とか…」
「おっ?」
「…え?」

盛大にドアを開き、大声で叫ぶ私の声が詰まる。
ドアは間違えていない。ここは迦具夜様の部屋。

なのに…

お尻にはふわふわの丸いしっぽ
網のストッキングに黒いレオタードに似た…まるで、先の戦いにメドーサという魔族が来ていた服に似ている服
そして、頭にある兎の耳を模した髪飾り

そう、私や朧と同じ『祭り専用の制式服』に身を包んだ迦具夜様の姿だった。

「わぁぁ…迦具夜様、ばにーすーつ良く似合ってますよーっ」
「あ、あらそうかしら?」

何時の間にか私の腕の拘束から抜けた朧が迦具夜様に寄り添い、迦具夜様を絶賛している。
これでは、迦具夜様に叱って頂く事もままならない。

『ぴんぽんぱんぽん…朧様、神無様…お時間が近くなりました。一階、迎賓ホールにお集まりください…繰り返します…』

「わ、もうそんな時間!? いーそーがーなーきゃぁぁぁっ」
「わ、わ…お、朧! 迦具夜さまぁぁ…失礼しましたぁぁぁ…」

まるで兎の様に飛び跳ねた朧に、今度は私が首を掴まれ引きずられてしまう。
ここは女王の部屋だというのに…
私の声が届いたのか、遠く小さくなっていく迦具夜様が手を振って下さるのが見えたのが唯一の救いか。


「…神無、準備は良い?」
「あ、あぁ…」

迎賓ホール入り口のドアの前。朧のおちゃらけた雰囲気が払拭され、官女の顔に変わる。
どんなに色ボケでも官女は官女なのだと…いや、それだけ朧が優秀な官女なのだという事なのだろう。
気を引き締めて、私はドアを開…

「なははーっ! えぇぞねーちゃーんっ!」
「だぁっ!?」

…いた瞬間力が抜けて、その場の床に顔面から突っ込んでしまった。
この気の抜ける声。間違いない。
…気が抜けるだけだぞ?
安心したわけでは…って、そうではない。
迎賓ホールの中央にある大きなソファーに座っている横島どのの姿。


「な、何で横島どのがここにいるんだ」
「…え?」

小声で朧に聞くと、まるで『何故知らないんだ』という顔で見詰め返されてしまう。

「神無、今日が何の日か知ってるわよね?」

憮然とした顔。 何かひっかかる顔である。
確かに『祭りである』という事しか知らないのは確かなのだ。
私は今回参加するのが初めてなのだし。

中々応えない私を見ながら、朧は盛大なため息をつく。
馬鹿にされている? いや、実際に馬鹿にしているのだろう。

「あのね…今日は…」
「はぁ!?」

『ごにょごにょ』という擬音が聞こえそうな小声で、耳元に囁かれる。
『百年祭は、主賓(地球の男)を呼んで子種を貰う日』なのだと

そういえば周りに居る沢山の月神族は皆、私と同じ祭り用の服を見に纏っている。
横島どのの視線の先には官女たちが艶やかな踊りをし
横島どの両方には…あれは月警官の『への八号』と『への九号』だな
二人とも横島どのに背中を預け、横島どのは左側に座る八号の胸を触りながら…
右側に座る九号の…秘所を…

それだけではない、横島どのの前に立つあれは官女…官女が横島どのに跨り…
そういえば、横島どのは服を着ていない。

盛大な音楽に隠れるように、その官女の嬌声が耳に届いてくる。

「神無、あっちを見て」

横島どのと官女の睦事から眼を逸らす、私の肩に手を置いた朧の指す先
そこに居たのは、沢山の月神族。

皆裸で、暗くて表情は詳しく見えないが…あの顔は…

「そこに居るのが『終わった娘』よ。…うん、あの娘で最後みたいね」

朧につられる様に視線を戻せば、先ほどの官女が横島どのに跨ったまま『がくがく』と全身を痙攣させていた。

ゆっくりと崩れ落ちる官女を、横島どのに散々弄られていた二人の月警官が…朧の言う『終わった娘』が居る場所に連れて行く。

「ほら、次は私達の番よ」
「ま…待っ…」

朧に手を取られ、横島どのの前まで引き摺(ず)られる様に連れて行かれる。
到着する頃には、横島どのの向かいにソファが添えられており
そこに私達は座ることになった。

足を曲げ、まるで目の前に座る横島どの挑発するように…

「か…神無!?」

横島どのが私の名を呼ぶ。びくりと震える横島どの…なのだが、何か…

そうだ、横島どのはソファに座っているのではなく
ソファに『括り付けられ』ていたのだ。

「ほら、神無。ちゃんと横島どのを興奮させないと…」

そう言いながら朧は服の上から、まるで指で秘所を開くような
そしてその開いた秘所に指を這わせる様な動きを始める。

横島どのに直視されて動けない私とは正反対である。

「はぁ…ん…ふぅ…んく…」

控えめな朧の喘ぎ。朧の視線は横島どのに向けられている。
遠くでは見えなかった横島どのの…あ…あれ…が…

「神無ぁ…こっちが恥しくなるくらいに横島どののおちんちんを凝視しないでよぉ…」
「ばっ…ち…ちがっ…うわ!?」

顔が熱くなるのを感じながらも否定しようとする私を、神無が腕を横島どのの方へと引っ張る。
元々普通の座り方をしていなかった私は、横島どのへと倒れ掛かってしまう。
倒れた先が横島どのの胸なら多少は良かったかもしれない。

「う…」

横島どののくぐもった声。
頬に感じる熱く硬い…そして滑った感触と、女特有の淫臭。そして、横島どのの…
私は横島どのの股間へと顔面を突っ込んでしまったのだ。

「横島どの…横島どの…横島どの横島どの横島どの横島どの…」

その瞬間、私の中で何かが切れた…
思えば、横島どのの最後の逢瀬からどれだけ経ったのだろう。
あの日から、一日たりとも横島どのの事を想わなかった日はなかった。

横島どのの活躍を聞くたびに胸が躍り
横島どのに会えぬ日々が過ぎるたびに胸が引き裂かれそうになった。

「はぁ…ちゅ…ん…はぁむ…んぷ…よほひま…ほの…ちゅる…」

横島どののを口に含めば他の女達の淫水の味に紛れる様にある、唯の一度の逢瀬に味わった横島どのの味が口に広がっていく。

そう、ただの一度…一度だけだった。
その時に私は、横島どのに初めて…純潔を捧げたのだ。

「ん…ちゅ…んっ…んっ…はぁ…んちゅ…ん…ちゅる…」

袋を優しく撫でながら横島どののを喉奥まで導き、舌で愛撫していく。
硬くなった横島どののは、口の中でびくびくと振るえ…多分、気持ち良くなってくれているのだろう。

「もぉ…二人だけの雰囲気作らないでよぉ…オナってる私がバカみたいじゃない…」

頭の上から朧の声が聞こえる。
私の上を通って行ったのだろう。

それって、つまり…

「ほら、横島どの…見えます? 前に横島どのに初めてを貫かれてから、まだ誰も侵入を許していない私の…ぁは…横島どのに見られてこんなに濡れてますよ」
「っ!」

よくよく考えてみれば判る話である。
横島どのに会うまで朧も男を知らなかったのだ。
私より先に横島どのに興味を持っていた朧が横島どのに純潔を捧げていたとしても何も不思議ではない。

耳に届く朧の嬌声。どうやら横島どのに秘所を舐めて貰って…
それと同時に聞こえる音。

淫音でも嬌声でも無い。
視線を横島どののから視線を上に…とは言っても横島どののは咥えたまま…向けると、ソファの背もたれが倒れており、横島どのの顔に跨る朧のお尻が見えた。
一瞬『朧がソファを壊した?』と思ったが、おそらくそういう構造のソファなのだろう。

「ほら神無、そろそろ入れてあげたら? 神無だって、もう我慢できないでしょう?」

どうして朧はこんな言葉が簡単に出てくるんだ…
一心に朧の股間を舐め続ける横島どのの顔を…

「っ!?」

目が…合った…
確かにこっちを…

「ん…ぁ…くっ…うぅ…」
「ちょ、ちょっと神無! 久しぶりなんだからそんな一気に…って、聞いてないわね」

横島どのと視線が絡んだ瞬間…その…すごく…したくなって
朧の静止も聞かず、一気に奥まで迎え入れた。

まるで初めての時を思い出させるような貫く激痛が
それと共に身を、脳を焼く…初めて味わう悦楽か

最初の時はこんなに気持ち良いなんて判らなかった。
地球の本にあった『星を数えている間に終わる』という一節、まさにその通りで
痛みに耐えている内に終わってしまったのだ。

これなら、多少余裕に横島どのに貫かれる感覚や横島どのの感触が…

「神無…凄いえっちな顔してるわ…見てよ、横島どのったらさっきから神無の方ばっかり見てるのよ…って、少しは聞きなさいってばぁ」
「横島…どの…ぉ…すごっ…あ…んんっ…くぁ…はふ…」

悦楽に身を任せ、ぼうっとした頭で身体を動かす。
身体が熱い…脳髄がびりびりとしていて何も考えられ…

「んむっ!? ん…ちゅ…ちゅる…んっ…んっ…はぅ…」

突然唇に感じる柔らかい感触。
一瞬横島どのかとも思ったが、横島どのの頭には朧が跨っている。
ということは…

私の口から含(くぐ)もった嬌声が上がる。
胸に感じる痛みと快感。
朧だ…朧が私にキスをし、胸を弄っているのだ。

「…はぁ…神無、私のも…ん…さわって…」
「あ、あぁ…わか…んぁっ!…よ、横島どの…ぉ…そんな激しっ…くんっ!」

互いに気持ちを高ぶらせるためだろう、朧が私の手を自分の胸へと導き愛撫させようとした瞬間に
横島どのが…わ、私の尻肉を鷲掴みにして激しく私を貫き始めた。

強い悦楽ながらも何とか動けた先ほどとは違う、まさに蹂躙(じゅうりん)され犯される快感。
違う…犯されるのではなく…横島どのに…愛…されているのだ。

もう、朧を愛撫する余裕など無かった。
ただただ身を焼く悦楽に翻弄され、朧にしがみ付きながら嬌声をあげる他なかった。

身体が振るえ
全身にぞくぞくとした感覚が広がり
身体が浮き上がるような感覚
眼の裏で火花が散っている

「な…これ…んぁっ…こわ…るぅ…っしまど…壊っ…だ…だめ…だめぇっ」

抱き付いている所為か、私の耳元で朧が嬌声を上げている。
朧の方は前も後ろも、小さく硬くなっている所も一緒に愛してくれているようだ。
もう、自分の身体が自分の物ではないような、そんな…

「あ…あ…」

何か、何かが『ぷつっ』と切れる…そんな感覚。
記録映像で見た、地球の洪水…もしかしたらそれに似た感覚なのかもしれない。
私には表現する術が無い。

ただ、全身を痙攣させ
生まれて一度も出した事の無い声で横島どのの名を叫び

私の意識は落ちていった…



「…っは!」

意識が戻り飛び起きる。
耳に届くシーツの音。少し暗い…ここは、私の部屋。

「は…はは…当たり前だ…あれは、唯の夢…私の願望が作った…ただの…ひっく…ただの…」

知ってしまえば何の事は無い。
あるのは虚無感だけ。

愛(いとお)しい…
身を焦がすほどに…

「横島どの…横島どの……横島ど「神無、ちょっとごめん!」…へ?」

泣きながら横島どのの名を呟いていたら、本当に横島どのが私の部屋に入って来た。

「いやぁ、追われるってのも中々…ってうぉわ!?」
「横島どの…横島どのぉ…お慕い…申して…ひっく…ひっく…ぐすっ…」

身から溢れる横島どのへの想い。
ドアを背に立つ横島どのへと飛びつき、縋りつくまで数秒と掛からなかった。

身体に感じる横島どのの温もり、匂い…
そして…

「おぉ…俺の魅力は神無まで落としたのかっ!」
「・・・まで?」

一気に冷めた。

「そういえば横島どの、一体何の理由で逃げておられたのですか?」
「あぁっ…今までの砂糖吐きそうな甘いシーンはどこに!?」

『がーん』という擬音を背負いながらのオーバーリアクションをする横島どのを片手でベッドに投げたら、横島どのは物凄い勢いでベッドに隠れてしまう。
何に追われているのかは判らないが、どうも勘が働く。聞き出せと。
私はベッドにゆっくりと近付き…

「ちょっと神無! 横島どの見かけなかった?」
「朧、どうし…「横島どのを我ら月神族の王に迎え入れ様としたら逃げて…」…あぁ、横島どのならベッドの中に居るぞ」
「って、速攻バラされてるし!?」

私のドアを蹴り飛ばしながら入って来たのは朧だった。
月警官達が拘束しようと雪崩込んでくる。
横島どのを見れば逃げる準備を既に始めていた。

「横島どの、もう逃げ…「まて朧」…なに?」

月警官たちも制止し、一人横島どのの前に立つ。
横島どの…顔が引き攣っているな。そんなに嫌なのだろうか。

いや…嫌かどうかで動く男ではないか。

「横島どの…」

横島どのの眼を正面から見、小さくもはっきりした声で伝えた。

私達が嫌いなら、直ぐにでも地球に送ると
だが、好いて…いや少なくとも嫌って居ないのであればここに居て欲しいと

私の頬を伝う涙も拭かずに…




結果から言えば、夢だと思ったあの祭りは本当の事だった。
私は睦事の後に気絶してしまい、私が意識を失っている間に横島どのは迦具夜様とも交わったらしい。
その事が切欠(きっかけ)で横島どのは人と神の間の存在『人神(ひとかみ)』となったのだ。
時を同じく生きる上に、月神族の皆に好かれた横島どのは王…つまりは迦具夜様の夫になって欲しいと皆に詰め寄られ…
逃げた横島どのは意識を取り戻した私の部屋に来た…というわけらしい。

「ねぇ神無、聞いた?」
「…何をだ?」

粛々と行われる迦具夜様と横島ど…いや忠夫様の結婚式。
参列する私に、朧が耳元で囁いてくる。

「何って…側室の事よ。正室は迦具夜様だけど、側室は忠夫様に見初められれば誰でもなれるからって…」
「んなっ!?」

驚く私の顔を見ながら朧が『くすり』と笑っている。
眼が、『もちろんあなたもでしょ?』と言っている。

何を馬鹿な事を、そんな思いが先にたつ。
忠夫様は本日より我らが月神族の王となられた方。
守るべき御方であり、そんな不躾な想いを…

「まったく…考えてる事が判り易過ぎ。神無は堅過ぎるのよ。じゃ、代わりに私が神無の分も一緒に愛して貰おうかなぁ」
「くっ…卑怯だぞ朧」

『何とでも言いなさい』そう言う朧の笑みは、朧と友となった今までで


一番、良い笑みだった



はしがき

というわけで、10000HITSSをお送りしますゆめりあんでござります。
途中で出張は来るわ自宅残業だわで、遅くなりました…

それ以前に、朧と神無のキャラ設定をスッパリ忘れていた所為もありますがっ!?

お陰で全巻買っちゃいましたよ…アハハ…

キャラ設定の薄い事薄い事。ほぼ一発屋のレベルですもん。原作読み直してびっくりでしたよ。


エロは…どうなんでしょ?
色々と判りやすくしたつもりですが、場所が場所なもので…
説明と朧の心情描写で文章の長くなる長くなる…

まだまだ精進が足りませんねぇ…

さて、現在2008/05/03ですね。本日はっかい。様に先行公開しまして
一週間後の2008/05/10に一般公開することとなる予定でござります…
2008/08/12:はっかい。様より頂きました絵を2枚掲載しました。

では、また次のキリリクにて…
キリリクの部屋へ

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