「ふっ!……ふっ!……」

静かに木刀を正眼に構え、振り上げ…そして、振り下ろす。少しだけ空気が粘つく。
この第97管理外世界には『ツユ』と呼ばれる雨季があるらしく、恐らくそれが近いせいだろう。

「すぅ……はぁっ!……はぁ……」

少しづつ朝日の昇りが早くなっている。
6時はまだ過ぎていないはずなのに、空が白み始めていた。

「ふっ!……ふっ!……」

常に行ってきた鍛錬。私の日常とも言っても過言ではないこの朝の鍛錬は、私の身も心も引き締めてくれる。
しかし、最近の私はおかしい。

「はっ!…はっ!…はぁっ!!……くっ……すぅ……はぁ……」

気付けば、一定の間隔で振り下ろしていたはずの木刀が
何時の間にやら数倍の速度で縦横無尽に…まるで何かを倒さんとばかりに振られている。

軽く歯噛みをし、ゆっくりと心を落ち着ける。
心を落ち着け、身を引き締めるための行為なのに。何をやっているのだと自問し、深呼吸を始めた。

「ふっ!……ふっ!……」

しかし心のざわつきは収まらず、肌に張り付く空気のように
私の心は収まることを知らなかった。


「……何の用だ」
「精が出るな、将」

背中に微かに感じる気配に振り向かぬまま、姿勢を崩さぬままに問う。
少なからず、心がささくれ立っているようだ。自分自身の声の荒さに気付き、さらに苛立ちが増してくる。
そんな私に気付いているのだろう、皮肉めいた声が返ってくる。

クレマチス

我らが主より享(う)け賜(たまわ)った名。騎士である私たちを差し置き、管理プログラム『風情』が。
そう考え始めている自身に揶揄(やゆ)し、少しの間だけ目を瞑(つぶ)る。
一体どうしたというのだろうか、私は。ここまで心かき乱された事など無かったはずだ。

確かに私たちは皆、主に召喚されたのが『1回目』である。
しかし、『経験と記憶』は『原本』と同じ。流石に『闇の書』になった後の経験は無いにせよ、それでも『夜天の魔導書』であった頃の記憶と経験はある。

常に凛々しく、清く、正しく、誠実に。ただ只管(ひたすら)に主に仕えてきた。
それに何も疑問も、疑念も、疑惑も無かった。

だが今はどうだ。心はざわめき、ささくれ立ち、管理プログラムの含めた言葉に苛立ちすら感じている。

「あの将が、ずいぶんと人らしくなったものだ」
「まるで私のことが全て分かっている様な口振りだな」

ゆっくりと木刀を構える。しかしさらに心はざわめく。これでは鍛錬にならない。
私の答えに『当然』と答える管理プログラムの顔が見れない。
見れば、きっと私は激昂するだろう。『管理者風情に何が分かる』と叫びながら。

苛立つ。苛立ちが苛立ちを呼び、一瞬…ほんの一瞬…脳裏に今朝の情事が浮かんだ。

−は…ん…ぷ…ちゅ…んっ…んっ…ぷちゅ…んちゅ…ちゅる…−

安らかに眠る主の猛るモノを口一杯に頬張り、愉悦と悦楽に染めたヴィータの顔が。

「…フン」

右手から『バキリ』という音がした。視線を向ければ、握る木刀の柄の部分が砕けてしまっている。
どうやら力を込めすぎていたようだ。

折れて使い物にならなくなった木刀を『空間』に投げ捨て、苛立ち紛れに鼻を鳴らす。
今日は苛立ちが収まらぬままに、主の前へと立たねばならないようだ。



雪夜1000HIT企画 第一位「雪兎 x クレム(シグナム)」
「脱! ロリコン宣言!?」



それから暫く、心の苛立ちが収まるまで外に居ようかとも思ったが…既に日は昇りきっている。
時間からすれば6時半といった所。もう主が朝食を作って居る筈だ。

「只今戻り…あっ!?……主、おはようごひゃぅっ!?」
「おはよう、シグナム。 今日も朝錬か。精が出るな」

玄関を開け、一目散とシャワー室に向かう。
向かおうとする目の前に、主が立っていた。

夜天の魔導書の主。我らが騎士の主。有馬雪兎様が。

まさか突然会うとは思っても居らず、一瞬私らしからぬ声を上げてしまう。
すぐさま冷静さを取り戻し、挨拶をしようとした時だった。

避ける間も、抵抗する余裕すらなく…私は主に抱きしめられていた。
予想できたことの筈なのに、何も出来ず。まるでシャマルの様な『女』の声を上げてしまい、顔が熱く感じてしまう。

「あ、あのあのっ…あ、あるっ…あるっ…わたっ…あ、あせっ…はひゅあっ!?…あわあわわ…」
「んー…ちゅ…凄い濃いシグナムの匂いがするな。シャワー浴びるんだろ? もうすぐ朝食が出来るから、急ぐんだぞ」

混乱しきった頭ではまともに喋れない。
しかしそんな私など気にもしないとばかりに、『何時もの様に』私の首筋に唇を這わせてきていた。
朝錬で、体中汗臭いはずなのに。
そんな私の心境などお構い無しに、主は腕を解いて私の頬を軽く撫でる。
いつもの優しい笑みを浮かべ、私の心見通す様な瞳で私を見る。

射竦められるわけではない。
まるで、兄や父が居たらこんな感じなのだろうか…それとも、惚れた弱みなのかとは思うが
少なくとも主は、私に安らぎを与えてくれていた。

主は私達限定…だと思うが、抱き癖がある。近付く者、皆を抱きしめるのだ。
無論、抱くだけでは済まない。

頬や唇で済めば御の字だが、大半は首筋や鎖骨にまで口付けをしてくる。秘部にこそ無いが胸や背中、お尻や足に手を這わせてくる。
それが…主を敬愛する私たちにとって堪らなく嬉しい行為であると同時に、凄まじく恥ずかしい行為でもあるのだが。

「主…」

ものの数秒で消えた主の温もりが、少しだけの寂しさを纏う。
しかし心のざわつきは、まるで魔法を掛けられたかのように消え失せていた。
それこそ、主だけが使える魔法といえるだろう。

台所へと向かう主を視線で追ってしまう。無意識に呼んでしまう。
しかし、それで主がこちらを向くことは無い。呼び止めるための声ではなく、ただ…心にある『何か』に押されて出た小さな声なのだから。
主の後姿に一礼し、足早に風呂場へと向かう。料理の匂いがしたからだ。もう、あまり時間も無いのだろう。




「随分と量が増えたな…主の胸に抱(いだ)かれ、首筋に唇を這わされただけで『これ』か…」

脱衣所で服を脱ぎ、手早く洗濯機へと放り込んでいく。
ブラを外し、ショーツに手を掛ける。
外したショーツは、汗を含み重くなったシャツよりも濡れきっていた。

これが汗ではない事は重々承知している。
握れば『ぐじゅっ』という水音と共に溢れる粘度のある液体に、気恥ずかしさを覚えながらも嬉しさが溢れてきているのは確かだ。

これは、主が私を『作り変えた』証であり、主が私を『女』にした証であり
そして…私自身が主を求め、主に反応し、主に抱かれる事に幸せと、喜びと、そして情愛を感じている証拠なのだから。

「ちゅる…ん…随分と濃いな。 起き掛けに水分をとらなかった所為か」

ぐちゃぐちゃに濡れたショーツを洗濯機へ居れ、粘つく手に舌を這わせる。

己の女の味。

魔法生命体であり、騎士であり、将であった私。
それ以上でもそれ以下でもなかったこの私に、主は新しい『私』をくれた。

しかし、それは私だけではなく全員だ。

管理プログラムも、シャマルも、そして…

−んっ…んんっ!!…んっ…んく…んく…ぷぁ…ぁ…はぷ…ちゅ…−

「くっ…」

なんだ。この苛立ちは。
ヴィータが主の精を口に受け、飲み干す姿が脳裏に浮かんだ瞬間だった。
再び心の中に苛立ちが立ち上がってきたのだ。

「…深く考えるな、シグナム。今の私はどうもおかしい」

自身に言い聞かせるように呟きながら、風呂場へと足を向ける。
熱いシャワーを浴び、主の作ってくださる朝食を食べればきっと…この苛立ちも消えうせるだろう。
そう、信じながら。





「…なぜ私を見る」
「なぜ? 我が妹の成長を喜んでいるのさ、当然だろう」

朝食が終わり、私がソファーに座って少し心を落ち着けている時だった。
管理プログラムが再び私を見つめてきたのだ。今回は正面から。

しかし、言うに事欠いて『妹』か。『姉』にでもなったつもりなのだろうか、こ奴は。
しかも…まるで全て理解していると言わんばかりの表情が、私の苛立ちを増長していた。

「随分と人らしくなった、それは喜ばしい。とても喜ばしい限りだが…」
「何が言いたい、管理プログラム」

管理プログラムの勿体振った言い回しに、意識しないままに声が荒んで来る。
何が分かる。何を知っている。貴様に何が分かる。そう意識しながら強く睨むが、奴はどこ吹く風とばかりに気にせず
『にやにや』と嫌らしい笑みを、その端正な顔に張り付かせていた。

「なぁに、まだまだ『子供』だな、とね」
「貴様っ!!」

私は弾かれるように立ち上がっていた。管理プログラムを睨みつけ、今にも殴り掛からんとばかりに息巻いて。
しかし奴の態度は変わらない。いや、さらに神経を逆なでする憎たらしい笑みを貼り付けていく。

「管理者風情が、私の事を分かっているような口を利くなっ!!」
「管理者だからこそ、分かるのさ。今までの将ならば、そうやって声を荒げることなど有り得なかった。その心の苛立ちだって、ある筈が無かった。違うか、将」

言葉が詰まる。
激昂し、叫ぶ私を飄々とした顔で返してくる奴の言葉に。

図星、だからだ。

私がここまで感情を露(あらわ)にした事など一度も無かった。
ヴィータやシャマルが殺された時だって、ここまでの怒りは感じなかっただろう。

私は弱くなった、という事…そう言いたいのか、こ奴は。

「くくっ…そうやってネガティブに考える事も無かった。全てが新しい事だらけだ。お前は見た目だけで中身は子供なのだよ、将」
「くっ…ぐぐっ…」

確かに今の私は、自分自身の感情を持て余している。振り回されている。
確かに初めてなのだ。初めての感覚だから、どう対処して良いのか分からないのだ。

「お前は…ヴィータに嫉妬しているのさ。お前は雪兎様を取られて不安になっているのだよ、将」
「嫉妬…あっ…」

嫉妬という言葉に、ストンと…まるでピースが填ったような感覚が沸いてくる。
自分自身の感情が理解できたのだ。

これは、嫉妬ではない。
不安…そう…そうなのだ。

主がヴィータやフェイトといった、どう考えても子供が産めないような女児相手に興奮している姿に不安を感じていたのだ、私は。
何と言ったか…そうだ、『ろりこん』という奴だったはずだ。

ヴィータやフェイト等といった『女児』に、性的魅力を感じるようになり
私やシャマル、入れる必要も無いが管理プログラムの様な『女性』に魅力を感じなくなるのではないかと。

「ふむ、合点が入った。という顔だな、将」
「あぁ、貴様に正答されるとは思っても見なかったがな」

奴のは100パーセントの正答ではなかったが、それが切っ掛けで理解できたのだ。『お陰』と言っても過言ではないだろう。
『そうか』と目を細めて笑む奴の顔は、本当に『姉が妹を見る姿』に見えてしまい少しだけ不本意だが…
今回だけは感謝してやるとしよう。

さて、するべきは今夜だ。




「主、失礼します」
「ん?シグナムか。どうした、こんな遅くに」

皆が寝静まってから主の部屋のドアを静かに開く。
早く起きる主のことだからもう寝ているかとも思ったのだが、どうやら起きていたらしい。
なにやら書き物をしているみたいなのだが、ベルカ文字ではないため読むことは出来ない。

さて、どうしたものかと考える。後ろ手に持った獲物(モノ)を弄びながら。
本来ならば許されざる行為だ。出来れば行った後に起きて頂くのが良かったのだが、背に腹は変えられないというもの。

「主…御免っ!…秘技『主の服脱がし!(下着はそのまま)』」
「んなぁっ!?」

騎士と管理者の皆で考え編み出した『主の服脱がし』。寝たままの主のズボンを起こさぬままに脱がす方法から始まったこの技は、今では1秒かからず全身の服を脱がせてしまう程の『秘技』へと昇華されている。
今回は下着は脱がしては居ないため、『主の服脱がし』のアレンジバージョンといえるだろう。
因みに『あるじのふくぬがし かっこしたぎはそのままかっことじ』と読む。
律儀というかなんというか、シャマルと管理者がどうしても引かなかった一線が括弧の発音だった。
…と、今はそんな事を考えている場合ではないか。

驚いている主をさらにもう一つの『秘技』を使わねばならないのだ。

「さらに、秘技『主専用捕縛術!』」
「バインドじゃないのかよっ!!」

後ろ手に持っていた『初心者SM用緊縛ロープ』を使って主を縛り付ける。
『縛り付けていく』ではなく、『縛り付ける』だ。後ろ手から放って縛り終わるまでに約2秒。
これはシャマルから借りたものだ。何かとこの世界の文化を知ろうとしているからか、シャマルは色々な道具を持っている。
悔しいかな、これはシャマルの方が上手い。シャマルであれば1秒すらかからずに、しかも私より上手く縛れるだろう。
しかし混乱した主であれば、2秒という時間は一瞬でしかない。
律儀な正確も幸いして、主が『ツッコミ』という『カンサイ』という国の国技を披露している間に縛り終えてしまうことが出来ていた。

確か、シャマルの話では『キッコウ』という種類の縛り方らしい。
幾重にも菱形に織られ縛られ、大きな主のものがさらに強調される縛り方である。
両手足も背中の方で縛ってしまったため、主は床の上で暴れ始めていた。
しかし暴れれば暴れるほど縄が食い込むのがこの『キッコウ』の特徴らしい。

下着で覆われているとはいえ、強調された主の股間の部分に思わず『ごくり』と生唾を飲んでしまう。
よくよく考えてみれば…主より寵愛を頂く時、私は自分で動いたことは無かった。
全て主が中心に動き、私はその動きに翻弄されるだけだった。

それが、今日は…今夜は…私が主体で行うのだ。

「えーっと、これは何の真似なのか…教えて欲しいかなぁ…?」
「へぁっ!?…あ、はい。実は…」

いけない。気付けば手段と目的が逆転しようとしてしまっていた。
今回、縛ることや私が攻めることが目的ではないのだ。
主が暴れたり抵抗したりしないよう…『ろりこん』という病気になると『きょにゅう』と呼ばれる胸の大きい女性に恐怖と嫌悪を抱く…とシャマルが買っていた雑誌に載っていた…するためであり
私が攻めるのは…まぁ、私も楽しむという意味が無いとは否定しないが…
そう! 大人の女というものを、本来セックスとは大人の男女がするものだというのを再認識してもらうため。
大人の魅力というものを再認識してもらうためなのだ。

「いやいやいや、俺はロリコンじゃ…ない…と…思…いや、アリシアが来てから最近…うーん…」
「そういうところが危険なんです、主。 主、ろりこんは病気です。 治るんです。 私が…な、治して…はぁ…はぁ…な、治して差し上げます」

シャマルが『主様は女性に見られると興奮するんですよ』と言っていたが、どうやら本当のようだ。
もしくは、私とセックスする事を想像したのだろうか。それだと嬉しい限りなのだが…
主の股間は、下着の上からでも判るほどに膨らみ始めていたのだ。

「主…主ぃ…」
「い、いや待て、シグナム。目が少し怖いぞ」

まるで頭が熱病に侵されたような感覚。心臓が痛いほどに脈打ち、身体が走りこみをした時の様に熱い。
主が何か言っているようだが、今の主は何も出来ない。抵抗すら出来ない。
私は服を脱ぐ事すら億劫に感じるほどに手早く…それでも脱ぐのに1秒すらかからないのは『主の服脱がし』の賜物(たまもの)というものだろう。

「主ぃ…ある…ん…ちゅ…ありゅ…じぃ…ちゅ…ちゅ…ちゅるっ…はぁ…んちゅ…」

この時の私は既に我慢というものが、理性というものが無くなっていたのだと思う。
床に倒れたままの主に覆い被さり、乱暴に…思うが儘(まま)に主の唇を奪っていた。

なんて甘美なのだろう。そう思うのが最初だった。
主と唇を合わせる程に身体は熱く火照り、積極的に私の口内に入ってくる主の舌に絡ませれば
私の身体はまるで全身を主に弄(まさぐ)られているかのように、『ひくひく』と震え始めている。

あぁ…早く入れたい。主の堅く、大きく、雄々しいモノで貫かれたい。
そう思って腰を動かすも、布一枚が邪魔をしてくる。だれだ、こんな布を残した奴は。

それでもどうにかならないか、と腰を押し付ければ
ずるり…ずるりと少しづつずれてきたのだろう。主の熱い先端が『くちゅくちゅ』と私の秘所を行き来している事に気付く。
そう、このまま腰を一気に…

「って、何をやっているんだ私はっ!?」
「いきなり素に戻るのかよ!?」

主、情欲に負けた私をお許しください。今回は主の『ろりこん』という病気を治す事こそが大事。
なのに…欲望に負けて、己の快楽を先(せん)じようとするとは。騎士として、将として情けない限りである。

「う…」

見た…見てしまった。主の『入れたい』という表情を。
少しだけ潤んだ瞳。少しだけ見上げて、なにかを訴えるかのような視線。
思わず身体が…主に下腹部を中心に『きゅぅぅ』と締め付けられるような快感が襲ってくる。
『ぞくぞく』とした快感に、思わず絶頂してしまいそうになっていた。

「ごくっ…はっ!?…あ、主…今回は主に…お、大人の女性…と、いうものの魅力を、ですね…」

少しだけ言い訳がましくなってしまったのは仕方ないというもの。
私の愛液だけではない。主のモノの先端から『ぷくっ』と溢れている先走りが見えてしまったのだ。
下着の中など狭いと、隙間から雄々しく孤立したモノを見てしまったのだから。

「で、ですので…この…胸っ…で…」
「し、シグナムの胸っ!…なんと…」

性行為にはセックスだけではなく、胸を使った行為がある…とシャマルの持つ雑誌から情報は得ている。
すでに管理プログラムが実践したのか、方法はデータとして貰っているので問題ない。

どうやら胸の谷間に挟んで扱くようなのだが…正直な話…気持ち良いのだろうか?
困惑している感の強い主を見ていると少しだけ不安を感じてしまうが、雄々しく孤立しているモノは萎える様子が無い。
少なくとも期待はして下さっている…と、楽観視しても良いのだろうか。

「で、では…失礼します」

足の部分を解いて主を手早くベッドの上に仰向けに寝かせる。
主の股間がベッドの縁にくるように寝かせているので、上手く主のまたの間に膝立ちすることが出来ていた。
恐らくこれで良いはずだ。

後は胸を持ち上げ、主のモノを間に挟み込むようにゆっくりと下げて…

「んっ…ぁ…」

意外と…気持ち…良い?
いやいやいや、私が気持ち良くなってどうする。
主を興奮させるのが重要なのだ。快感と共に、大人の女の魅力を再認識してもらわなければ意味が無い。

主のモノが胸の間で『ぴくぴく』と震えているのが肌に伝わってくる。気持ち…良いのだろうか。
気持ち良くなって…私の胸で気持ち良くなって下さっているのだろうか。

「ん…ん…はぁ…こんな…んっ…感じ…でしょうか…はぁ…ん…どう…ですか?」

恐る恐るといった風でゆっくりと胸を持ち上げつつ身体を動かしていく。
シャマル位の胸では大きく身体を動かさないと無理だろうが、私の胸では問題なく包めているから動きに支障は無い。
問題なのは、主が気持ち良くなって下さっているかどうか、興奮して下さっているかどうかなのだ。

しかしベッドに寝かされている主の顔は、股間の所に膝立ちになっている私にはよく見えない。
ただ、動かすたびに『ぴくっぴくっ』と震える主のモノを感じるだけだ。

「えーっと…この縄は…」
「ダメです、主」

やはりあまり気持ち良くないのだろうか。幾分か冷静を取り戻したような声だった。
それはそうだろう。セックスと比べれば稚拙極まりないこの行為が気持ち良いとは到底思えない。
しかし『ろりこん』を治すには胸を使った行為が良いと書いてあった。
主に抱かれた事以外無い私にとって、シャマルが貸してくれる本は重要な情報源だ。
本になるほどの物。著名な研究者と作者によって作られたのは間違いないといって良い。
医者に対して『本当にこの方法で怪我は治るのか』と聞くようなものなのだから。

主を縛る縄を解けば、私は5秒と経たずに組み抱かれるだろう。
そして抵抗する余裕すらなく…いや、抵抗するどころか全身で受け入れるだろう。
主の寵愛はそれほどに魅力的なのだから。
だが、涙を呑まねばならない。主を矯正するため、『脱ろりこん』を目指すために。

「あのさ、そろそろ…」
「はい…」

やはり気持ち良くないのだろう。少し早めつつ小刻みに両側の乳房を少しランダムに動かしたりと色々したのだが…
やはり情報だけでは無理なのか。

そう思った時だった。
何かが顎を叩いたのだ。胸の中で踊ったのだ。

「え…ぁ…あっ…あぁ…」
「あー…えーと…すまん…」

顎から喉に伝う暖かい液体の感触。一瞬何が起こったか理解できていなかった。
主は…私の胸の感触で射精して下さっていたのだ。

「あ…主…主ぃっ…はっ…あっ…ん…ちゅ…ちゅる…ぢゅるるっ…」
「ま、まてっ!…で、出たっ…ばかりっ…でっ…ぐぁっ…」

嬉しさが込み上げて来る。全身が『きゅぅっ』と締め付けられて、絶頂が…良い。来い。
喜びと幸せと共にくる絶頂に身体を翻弄されながら、私は未だ震える主のモノを口に含んでいた。

初めてだった。初めて、自分から口に含んだのだ。
主に求められて口に含んだことはあっても、自分で含もうとは思わなかった。
私の口程度で気持ち良くなるなんて思えなかったからだ。

だが、今はそんな事は関係ない。
ただ、ただ嬉しかった。私の胸を感じてくれたことが、射精して下さったことが。

そう、私は何も気付いていなかったのだ。
私の胸がどれほど快感を与えるのか、私の口がどれほど快感を与えるのか。
私が主で興奮すると同じく、主も私に興奮している事に。

「んっ…んっ…ちゅ…ちゅるっ…んぶっ!?…んんっ!!…んっ…んっ…んく…んく…ちゅ…ちゅるっ…ぢゅるるっ!」
「待てっ! ま、待てぇっ!! 流石に3連続はっ…つらっ…む、胸も動かすなっ!!…うぐっ…くぅっ!…くっ…動けないから抵抗もっ…いやいや、折角シグナムが頑張ってくれるのだからこのままでも…しかしっ…あぁ、悩ましいっ!!」

1分とかからずの二度目の射精。喉を打たれ、思わず吐きそうになるのを必死に押さえ、落ち着いてからゆっくりと舌で味わいながら溜飲していく。
もっと、もっと感じて欲しい。そう思いながら私は口と胸を持ち上げた手を動かしていく。

胸だけではない、口の中も気持ちが良い。これならもっと奥に入れても良さそうだ。





チュンチュン…と、『スズメ』という鳥の鳴く声が聞こえる。朝の声だ。
どうやらもう朝が来たらしい。

「ん…ん〜…っちゅ!…はぁ…あ、あぁ…まだこんなに…主、申し訳ありません。朝の鍛錬の時間となってしまいました。名残惜しいですが、続きは…また今度…」

まさか口と胸で主に奉仕しているだけで朝が来てしまうとは思わなかった。
主もまだまだ足りないのだろう。最初と同じく…いや、尚猛々しく孤立したモノを見ると腰が砕けそうになる。
いや、主の精を口内に受けながら何度も絶頂したのも一因だろう。このまま主のものを秘所に銜え込み、爛れるほどに腰を振りたくなる。
しかし、騎士として…将として朝の鍛錬は欠かすことは出来ない。

手早く主の縄を解こうと思ったが、どうやら私の縛り方が甘かったのだろう。
既に緩く解けてしまっていた。
それでも動かぬ主は、恐らく眠いのだろう。『はへ…』という気の抜けた声。空ろな瞳を見れば明らかだ。

「では、暫くごゆっくりお休みくださいませ、主。ちゅ…で、ではっ…失礼!」

いつも主にしてもらうように私は、主の頬を撫でて唇に口付けを交わす。
少し落ち着いてきた胸の動悸が、また少し強くなってしまっていた。





いつもの様に屋上で木刀を取り出し、正眼に構える。
ゆっくり持ち上げ…一気に下ろす。

「…ふっ……ふっ……ふふっ…」

凄い。一晩寝ていなければある程度の集中は欠いても仕方ないと思っていたのに、気力が充実しているのだ。
主の恩恵とでもいうべきだろうか。それとも、憂いが少しは減ったお陰だろうか。
思わず口元に笑みが浮かんでも仕方のない話だ。
それでも、今までの中で一番気力が乗った素振りが出来ている。

「充実しているみたいだな、将」
「貴様のお陰…とでも言いたそうだな。実際そうだが、礼は言わんぞ」

管理プログラムが…いや、気分の良い今くらいはクレマチスと呼んでやろう。クレマチスが縁に座って『にやにや』と昨日と同じ笑みを浮かべている。
奴が居るのは私の右斜め後ろ。しかし気力の充実している私には、真正面に見据える程に奴の動きが見えていた。

「ふむ、まだまだ子供か…それもまた一興、といったところか」
「フン、何とでも言え」

奴がどれ程長い時を生きているかは知らない。私を子ども扱いする程度には長く生きているのだろう。
それ位は認めてやろう。子ども扱いすることも含めて。

そう、それだけの…それほどの余裕が出来てる。

「オイコラ手前ぇっ! 昨晩ご主人さまに何しやがった!!」
「将相手に『手前』とは良いご身分だな、ガキンチョ」

乱れた気が近づいてきたと思ったら、怒気を孕んだヴィータだった。
見ろこの不安定ぶりを。私が子供なら、ヴィータなど幼女ではないか。
大方ヴィータは、主の寝込みを襲って『朝の一番絞り』でも狙ったのだろう。
しかし、大人の女の魅力を再確認した主では、ヴィータに魅力を前ほど魅力を感じなくなっているだろう。
その『原因』となった私に『イチャモン』というものをぶつけてきた訳だ。

「ネタでも冗談でもなく、本気(マジ)で何発抜きやがった!! 今シャマルとフェイトが全力で治療してんだぞ!!」
「そんな筈はあるまい」

まさかシャマルとフェイトを引き合いに出してくれるとは思いも余らかった。
優しい二人に『口裏を合わせて欲しい』とか頼み込んだのか。

『主、ご気分は如何ですか?』
『あー、少しだるい位だ。いや…気持ち良かったよ、シグナム。だが、今度から縛るのはナシで頼む』

『フッ』と鼻で笑ってしまった。ヴィータは騙るに落ちたわけだ。主は少しだるいだけとのこと。
少しばかり多く射精して頂いたせいもあるだろうが、それも私の奉仕が良かったからと褒めて下さっている。
流石に縛られるのは嫌だったらしい。上手く縛ると気持ち良いらしいので、単純に私が下手だっただけだろう。
今度シャマルにやり方を正式に習うのもいいか。

「プッ…クックック…」
「おい、クレム! お前ぇも笑ってないで何とか言えよ! お前ぇも見てンだろうがっ! つかシグナム! 無視すんじゃねぇ!!」
「残念ながらあと20セット終わるまでは止められんな、それからは付き合ってやるから大人しく…いや…フッ…子供らしく待ってろ」

デバイスを起動して突っ込んでくるヴィータの攻撃を半身で避け、通り過ぎるヴィータの後ろ頭を木刀で少しだけ強く叩いてやる。

主の懐の深さ故、ヴィータを筆頭とする幼児体系の者達への寵愛が無くなる事はないだろう。
しかし、主はもう『ろりこん』ではない。正しく女性の魅力を感じることの出来る男なのだ。

私で興奮し、私で感じ、私で絶頂して下さる。
私に魅力を感じてくださる人なのだ。

「前々から気に入らなかったんだ、一発位は食らっとけぇぇっ!!」
「全く、だからお前は子供なのだよぞ、ヴィータ。少しは成長したらどうだ」
「くっくっく…私から言えば…ぷっ…どっちもどっちだと思うがな…くくっ…」

含み笑いをするクレマチス、殆ど本気で突っ込んでくるヴィータ。
ご飯が出来たのだろう、少し疲れた感のあるフェイトが呼びに来ている。

「ヴィータ! 力を貸すよっ!」
「っしゃあ!! スーパーヴィータ様の力…見せてやんぜぇぇぇぇっ!!!」
「魔力の差が戦力の決定的な差ではない事を、子供たちに教えてやらんとな」

融合騎士となったアリシアがヴィータに力を貸しているが、なんら変わりない。
どんな暴風とて、当たらなければそよ風でしかない。それは、子供である二人には判らないのだろう。

含み笑いをしながらもクレマチスが結界を張ってくれているからというのもあるだろうが、SSSランクオーバーの火力を持ちながらこの程度とは…
ジュエルシードの一件が終わったら数ヶ月暇があるらしいから、少しは鍛えてやらんとな。

「「そのニヤケ面ぁっ! 泣いてごめんなさいさせてやるぅあぁぁぁぁっ!!!」」

ヴィータ…いや、スーパーヴィータの纏う暴風は烈風に変わり、大量の雷(いかずち)がグラーフアイゼンに纏われる。
紅い髪は金色に染め上げられ、ヴィータの怒りを表すかの様にゆらゆらと大きく揺れている。

私は木刀をデバイスに換え、構える。
気付かぬ内に、私は笑みを浮かべていた。

楽しい、と感じていた。
それを下さったのも、全て主だ。

あぁ、主。我が主。私の御主人様。雪兎様。
今少しだけで構いません、この幸せを…

願わくば、もう少しだけ…

「爆雷!轟雷!大激雷!! 必殺必中!ライジング・ツェアシュテールングスハンムァァァァァッッ!!!」
「ミッドとベルカの混合魔法か。相手にとって不足無しっ! いざ、参るっ!!」





お疲れ様でした。
長いお話になっちゃいました、夢璃杏でございます。

まさか冷却ファンが死ぬとは思いませんでした…
遅れました事を、深くお詫び申し上げます。

ほんと、長くなりました。一位だから良いかなーなんて思いつつ。

コンセプトは、純粋にして純情。情が深く、故に嫉妬深い。
頭も固いが、結構世間知らず。
頭が固い故に、何事にも理由を必要とする。ちょっと面倒くさいあほの子です。
ぼーっとしているようで、いろんなことを考えているんです。うちのシグナムさんは。

次はクレムですね。こっちは問題なく来週アップ出来るはずっ!
コンセプトは、爆乳娘がスクミズで泡踊りっ!!

お楽しみに♪


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