私がいつからあなたの事を好きだったか、知っていますか?

私があなたの事をどれだけ好きか、知っていますか?


アンケート企画 第二位 氷室キヌ短編「キヌの想い −それは…生粋という名の狂気−」


私があなたを好きになったのは…そう、あなたを初めて見たあの日からです。
あなたは山道に蹲(うずくま)る私を見た時だと思うかも知れませんが、実はもっと前なんです。

山道に入る時、あなたは美神さんに怒られて車から蹴り落とされてましたね。
半泣きになるあなたを見て、私は一目惚れしてしまったのです。

おかしいですか?
あの時、確かに運命を感じたんですよ。

きっと、この人なら永遠に私と一緒に居てくれるって。

ですから、あなたを殺そうとしたのに…
持ち前の幸運で死を免れ、それだけではなく私を赦して…

本当に、美神さんなんて関係なかったんです。

ただ、あなたの傍に居たかった。

強く、格好良く成長していくあなたを傍(かたわ)らで見るのはとても楽しかった…
あの時は、傍らに居るだけで幸せだったんです。


それから暫くして、私が生き返る事が出来るようになりましたね。
死津喪比女という妖怪の事、勿論忘れていませんよね。

私が生き返るとき、実は自分に呪いをかけたんですよ。

『あなたを思い出さなければ死ぬ』 って

だって、あなたとの記憶の無い私なんて私ではありませんから。

あっ、嬉しいですか? ありがとうございます。
私はあなただけの物なんですよ。

あはは…でも、その呪いの所為で肉体と魂の繋がりが希薄になっちゃって迷惑かけてしまいましたね。
沢山の幽霊たちが私の身体を求めて…なぁんて言うとちょっとえっちに聞こえますね。

そう、私の体を乗っ取るためにレギオン(意識集合体)となって襲ってきたんですよね。
それでもあなたは諦めず、私を助けてくれました。

実は、あの時体を渡しても良かったのですが、折角自分の体に戻れたんです。
欲が出たんですよね。

あなたとの、子供が欲しい
あなたと、結婚したいって

きっと、身体を持った私にあなたは欲情してくれると思ったのに
何なんですか? 『おキヌちゃんにセクハラするとシャレにならない』って

洒落で済ませるつもりだったのですか?
本気で来てくれるのであれば、例え衆人観衆の前であっても好きに触って良かったのですよ?

ふふっ…やはりあなたはえっちですね。こんな言葉だけでも興奮してくれています。

でしたら、こんな雌豚などに色目をかけずに私だけを思ってくれれば良かったのに…

そうです。あなたは結局

私ではない女と話し
私ではない女の所へ行き
私ではない女に恋をし
私ではない女を抱き
私ではない女と結婚したんです

まぁ…この雌豚も、最後にあなたを子を身篭れて幸せだったでしょう。
もちろん、生むことなんて許しませんが。

どうしたんです? そんなに震えて…

あっ…今夜の事でも考えているんですね。 もぅ…えっちなんですからっ

さっさとこの肉を屠殺場の人に持って行って貰わないと、臭くて堪りませんね。
あぁ大丈夫です。後数分で着てくれますから。

今の屠殺の人は親切なんですよ。
ちゃぁんと、お掃除までしていって下さいますから。

どうしたんです、俯(うつむ)いて?
あっ、お腹空いたんですね。

ふふっ一緒ですね。私も丁度お腹が空いて来たんですよ。
今…美味しい美味しい、とっておきのご飯作りますから。

だって、今日は私達の結婚記念日ですからね。

え、戸籍?
大丈夫ですよ。ほら。ちゃんと私の名前があなたの名前の下にあるでしょう?

もちろん、あなたの結婚暦に『ばつ』はありません。
私との結婚が初婚ですしね。

じゃあ、大人しく待っててくださいね。
私の料理姿を見て欲情してはだめですよ。

知ってるんですから。
私が台所に立つ後姿を見ながら、あなたはえっちな声を殺して自分を慰めてたって。

もう、そんな寂しい事しなくて良いのですよ。
今日から私が全部受け止めてあげますから、ですから今だけ…我慢してくださいね?
私だって我慢してるんですから。


くすっ はい。

愛してますよ、忠夫さん…永遠に。



はしがき

というわけで、アンケート企画第二位のおキヌちゃん(黒バージョン)をお送りします。

何で黒いんだよ!?

って投票した方の中には思う方も居るかもしれませんが…
ほら、書いてる唯一のおキヌちゃんの話が黒い方でしょう。
もしかして、こっちの方を望まれているのかなぁと。

大丈夫ですよ。次回は黒と白で『別人』としてカウントしますから。

では、また次回に
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