「豊富なアイテム、壮大な世界観、多様な職業、感情がより伝わりやすいチャットシステム・・・etc」
チャットのシステム?
よくはわからないけど、何だか楽しそうでちょっとだけウキウキした。
ゲームの事を考えるだけで、その日一日はあっという間に過ぎて行った。
翌日、遅めに起きるとすでにパソコンは届いていた。
自室にそれを運び、ネットに繋ぐための設定をその後来た業者の人に全てやってもらう。
「では接続しますね」
業者の若い男性がにこやかに笑いながら、そう言った。
そのあまりの笑顔の明るさに、ほとんど男性に免疫のない私はドキドキして
気のきいた返事もできず、ただ頷くだけだった。
「使い方は説明書お渡ししますが、何か他に質問や
『これを使ってみたい』とか『パソコンでこれがしたい』とか何か希望ありますか?」
あいもかわらずその彼は、優しげな笑顔をこっちに向けた。
「メールと・・・」
『ゲームを』と言葉を繋げたかったが、何故か先に恥ずかしさがこみ上げてきて
そこで言葉を区切った。
「じゃあメール設定しておきます。アドレスは後で変更できますからね」
「はぁ・・・」
「あ、それ、ネットゲームの雑誌ですね。ゲームとかやられるんですか?」
机の脇に置いてあった雑誌に気がついたようで、軽やかにそう言った。
「ちょっと、興味が・・・」
「ではそれも設定しておきますね。どれか希望とかありますか?」
「いや・・別に」
つい、言いたいことを隠してしまう。
「では、今人気のある大手のゲームだけダウンロードしておきます。
後は慣れたら簡単に、他のゲームもできますから」
そう言うと、慣れた手つきでカチャカチャとキーボードを打つ。
「もしわからなかったら、会社の方に連絡していただければお伺いします」
「そうですか・・・」
「アフターケアも仕事の内ですので」
少しだけ、またこの人に会えるかもしれないと思うと嬉しくなった。
「これで大丈夫だと思いますが、何か不都合やわからない事があったらこちらまで電話してください」
そう言うと、名刺を一枚手渡してくれた。
「ではこれで失礼します」
「あ、はい」
帰り際、またあの笑顔を見せて彼は帰って行った。
私は名刺とパソコンを交互に見ながら、何故か幸せな気持ちになった。
高樹さん・・・か―――――――ちょっと素敵だったな・・・
いつの間にか、ゲームで知り合う未来の恋人のイメージを
彼、高樹さんに重ねていった。
←noveltop Next→