ある程度まで進み、作業が一段落すると佳代がそのゲーム雑誌を私に渡す。
「これ、いらないから読むならあげるけど・・・どうする?」
「ん?え・・あ、うん・・・読もうかな」
「そう?じゃあ置いてくね・・・結構萌え〜なキャラもいるから、麗も気にいると思うよ〜」
佳代は私の事を「麗」と呼ぶ。
同人でもその名前で活動しているが、名前のイメージから「かなりの美人」と思われるらしく、
売上は上々で、その時ばかりはこの名前も悪くないかなと思う。
「そういえば・・・瑶子とさ、今度遊ぼうって話になったんだけど・・・麗もどう?」
私は・・・少し返事に困った。
仲が悪いわけじゃない・・・。
でも・・・彼女の華やかで積極的な所が少し苦手だった。
あまりにも正反対すぎたから・・・。
「・・・そうだね・・・久し振りだしね、いいよ」
気の弱い私は断る事なんかできるわけもなく、佳代にそう返した。
「なんかね、瑶子の彼氏がこの近くの飲み屋さんで働いてるんだって」
つい『彼氏』という単語に敏感に反応してしまう。
女子高だったのにも関わらず、瑶子には高校時代から彼氏がいた。
それも私から見れば不思議で羨ましく、どうしようもない気持ちになった事が何度もある。
「まぁ・・・いつになるかわかんないけど、決まったら麗に連絡するね」
「・・・わかった」
私は、原稿から顔を上げず声だけで返事をした。
「えっと・・・じゃあこれで・・・印刷して・・・大丈夫だね」
出来上がった原稿を、佳代がまとめて枚数を確認する。
「仕事あるから早めにできてよかったよ〜。これでイベは大丈夫・・・っと」
それを大事そうに鞄に入れながら、安堵した表情でそう言った。
「んじゃそろそろ帰るね〜。またイベ前に連絡するからさ」
「うん、わかった。印刷よろしくね」
私の言葉を聞き終わると、佳代はいつものようにバタバタと階段を賑やかに下りて行った。
しばらくは片付けをしていたが、視界に佳代が置いていった雑誌が目に入る。
最初はパラパラとめくりながら、佳代の言っていた『萌えキャラ』なんかを見ていた。
と、気になる記事を見つける。
ネットゲームについての記事で、それにはあまり興味も沸かなかったのだが、
そこにあった「ネット恋愛」という見出しが私の心を揺さぶった。