新世紀エヴァンゲリオン 外伝 超少女アスカ
第53話
「ただいま〜。」
夜11時頃になって、ミサトが帰ってきたわ。あら、なんて早いのかしら。かなり高い確
率で、どこかに泊まってくると思っていたのに。加持さん、もっとしっかりしなさいよね。
「おかえり〜。どう、今日のデートは楽しかった?」
まったく、ミサトったら、ニコニコしちゃってさ。分かりやすくていいわね。
「まあね。」
ミサトは、無難に答えたんだけど、ちょっとイタズラ心がおきて、少しだけ攻撃したの。
「それにしちゃあ、早かったわね。朝の5時頃に帰ってくると思っていたのに。」
「あのねえ、アスカ、明日は仕事なのよ。そんなに遅くなるわけないでしょ。」
あら、次の日が仕事じゃなければ帰るのが遅くなるのね。覚えておこうっと。
「それより、ねえ、アスカ。シンちゃんは?」
「シンジはもう寝ちゃったわよ。」
正確には、気絶したんだけど、正直に言う必要はないわよね。
「あっ、そう。じゃあ、丁度良かった。アスカと今後のスケジュールについて、話してお
きたかったのよ。もちろん、シンちゃんのこともね。今、ちょっと時間とれるかしら。」
「ええ、良いわよ。」
アタシが頷くと、ミサトは椅子に座ったの。だから、アタシも椅子に座ったわ。嫌だな、
長い話になりそうね。
「単刀直入に言うわね。正直言って、今のシンちゃんの扱いについては、内部で異論が多
いのよ。訓練時間が全然足りないとか、訓練内容が悪いとか、そういう意見が多いのよ。」
「なんですって!冗談じゃないわ。アタシはねえ、シンジにとって最善の訓練を行ってい
るのよ。何も知らない素人に、いちいち口をはさんで欲しくないわね。」
何よ、頭きちゃうわね。
「でもね、アスカ。やっぱり不安に思う人が多いのも事実なのよ。」
「ふうん、じゃあ、ミサトはどう思うの?そんな馬鹿どもを安心させて使徒に負けるのと、
馬鹿どもの言うことを聞かないで、使徒に勝つのと。」
そうよね、馬鹿どもを安心させるのがアタシの任務じゃあないのよね。必要なのは、結果
よ、結果。
「そりゃあ、アスカの言うことの方を信じてるわよ。でもね、このままじゃあ、アスカ達
のテニス部への入部も許可出来なくなるかもしれないの。」
「ぬあんですって!冗談じゃないわっ!せっかく、シンジの心が癒されて、上手くいきか
けているのに。シンジを訓練漬けなんかにしたら、精神的にまいっちゃうわよ。そうした
ら、使徒に負けちゃうじゃないのよっ!」
アタシは、真っ赤になって怒ったわ。
「まあまあ。アスカ、聞いてよ。私もそんなのは嫌だけど、なんて言うかさ、みんなを納
得させるような材料が欲しいのよ。で、アスカの知恵を借りたいのよ。」
ふうん、そういうことね。出来ればミサトだけで何とかして欲しかったけど、ミサトには
ちょっと荷が重いようね。それに、アタシにちゃんと相談してくれたことや、一人前に扱
ってくれる点は、ミサトに感謝ね。勝手にやられて、変な結果になっても困るもの。
「そうねえ、こんなのはどうかしら。チルドレンの訓練内容を検討する会議を開いて、そ
こにアタシが参加して、ぐだぐだ言う連中を言い負かすっていうのは?」
「でも、大丈夫かしら。言い負かすことが出来るの?」
「なによお、ミサト。簡単じゃないの。アンタの言うことは机上の空論だ、実績を見せろ。
アタシ以上に優れたチルドレンを見せろ、そう言えば良いのよ。」
「ああ、なるほどねえ。」
んもう、簡単に納得しないでよ。そんな単純な問題でもないんだから。説明すると長くな
るから、ここでは言わないだけなのよ。でもまあ、ミサトがアタシのことを信頼している
っていう風に理解しとくけどね。
「アタシとエヴァのことで議論して勝てるのは、リツコ以外にはいないわよ。もちろん、
リツコは味方に出来るんでしょうね。」
「それは大丈夫だと思うけど、念押ししておくわ。」
「じゃあ、この件は一応解決ということで。」
まあ、何かあったら、アタシが出張ればいいのよね。
「そうなると、これからの具体的なスケジュールなんだけど、アスカは、ファーストチル
ドレンのことを知っているかしら。」
「いいえ、全然。ドイツでは、本部の情報は全然入ってこないし、こっちに来ても、紹介
すらしてくれなかったわよね。」
「へへへっ、ごみん、アスカ。エヴァのパイロットはね、3人いるの。ファーストが綾波
レイ、セカンドがアスカ、サードがシンちゃんね。でね、レイはエヴァの起動実験に失敗
して、大怪我をしていて、やっと今週中には退院出来るようになったのよ。」
「へえっ、じゃあその子、まだエヴァを動かせないんだ。」
本当は、予知夢で知っているんだけど、すっとぼけて聞いたわ。ミサト、騙してごめんね。
「そうなのよ。」
「本部の訓練の結果がそうなのね。そんな訓練なんて、願い下げだわ。」
「まあまあ、アスカ。抑えてね。それで、私としては、何とか3人でうまくチームを組ん
で欲しいのよ。そのためのスケジュールをどうするのか、アスカに相談したかったのよ。」
「そうねえ、アタシとしては、アタシとシンジ2人での訓練を優先したいわ。それに、そ
の綾波さんとシンジは会わせない方がいいわね。エヴァに乗っただけで怪我しちゃうなん
て、シンジが知ったら、エヴァに乗らないなんて言いかねないわよ。」
「ううん、それもそうかもね。」
「シンジがエヴァに乗らないなんて言い出したら、チームを組んでの訓練なんて、夢また
夢になるわよ。」
「そうね、分かったわ。じゃあ、当分の間は、アスカにシンちゃんを任せるわ。」
「そうねえ、1カ月位あれば、シンジを何とか1人前に出来ると思うわ。それに、アタシ
と2人でチームを組むのも可能ね。3人チームの練習は、それからだとして、早くても2
カ月後位になると思うわよ。」
「ねえ、アスカ。もう少し早くならないかしら。」
「でもね、ミサト。どんなに訓練しても、シンジは絶対にミサトの言う通りには動かない
わよ。ミサトはシンジがどう言えば動くか分からないでしょ。シンジも、ミサトが何を言
っているのか、分かるのには1年はかかるわよ。」
「アスカ、それって言い過ぎじゃない。シンちゃんだって、司令の息子さんなんだから、
結構優秀だと思うけど。」
「じゃあ、聞くけど。ミサトが14歳の時に、いきなりエヴァに乗せられて、軍人の上司
に色々命令されたとするじゃない。1年やそこらで、ちゃんと動けるようになったと思う
の?アタシは、かなり希望的な観測を言っているのよ。」
「う〜ん、確かにそう言われると、返す言葉もないわ。」
「でしょ。だから、ミサトの言うことが理解できて、シンジがどう言えば動くのか、間を
つなぐ人間が必要なのよ。それが、アタシっていう訳よ。アタシは、シンジの側にへばり
ついて、シンジに何を言えばどう動くか理解するようにするわ。今は、そのための時間が
必要なのよ。それが出来て、初めてチームとしての訓練が可能になると思うけど。」
な〜んてね。本当は、シンジがアタシの言う通りに動くようにしちゃうんだけどね。
「う〜ん、分かったわ。アスカに任せるしかないようね。」
さすが、ミサト。理解が早くて助かるわね。
「じゃあ、決定ね。アタシとシンジは、週に2回は本部に行って、リツコの実験に付き合
う。それ以外の時間は、2人で秘密特訓、ってことで良いわよね。」
こうして、アタシとシンジの2人だけで特訓することが決定したわ。これで、シンジとレ
イが出会うのを遅らせることが出来そうね。レイからシンジにちょっかいをかけることは
無いと思うけど、不安定要素は少ないにこしたことはないものね。
ふふふっ、シンジがレイにチルドレンとして出会う前に、アタシとシンジの仲を磐石のも
のにしてみせるわよっ!
つづく(第54話へ)
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あとがき
今のところ、アスカの思い通りに話が進みそうです。シンジがレイやマナと出会う前に、
シンジを完全にモノにしようとの魂胆のようです。でも、すでにシンジは、アスカに夢中
だと思うのですが。
2003.1.4 written by red-x