新世紀エヴァンゲリオン 外伝 超少女アスカ
第31話
「アスカ、悪いが先に帰っていてくれないか。俺達は、ちょっと酔いを醒ましてから帰る
よ。」
「そういう訳だから、お願いね、アスカ。」
加持さんとミサトはそう言ってアタシ達と別れたわ。無論、これは大嘘なの。二人は、こ
のホテルのスイートルームで明朝に朝食を食べることになっているのよ。でも、シンジに
そんなことを言ったら、どうなるのか分からないから一芝居打っているのよ。
えっ、何で知っているのかって。だって、スポンサーはアタシだもの。ミサトの幸せのた
めに一肌脱いだって言う訳よ。これで加持さんとミサトの仲は元通りになって、めでたし、
めでたしってなる訳よ。
アタシの予知夢によると、シンジの心の支えだった加持さんが死に、ミサトがおかしくな
って、シンジにもその影響が悪く出たのよね。だから、それだけは防がないと。今のうち
から二人のヨリが戻っていれば、おそらく結末も変わるはず。
加持さんもミサトに内緒であれこれやらなくなるんじゃないかしら。出来れば結婚させた
い位だけど、そこまでは流石に無理ね。婚約でも大きな進歩ですものね。これで流れが少
しだけど確実に変わったわね。
でも、これでアタシは今夜一晩中、貞操の危機に怯えることになるのよね。えっ、だあれ。
シンジの貞操の危機だなんて言う人は。冗談じゃないわ。アタシだってか弱い乙女なのよ。
シンジに襲われたら、抵抗出来なくなるかも。ああ、どうしましょう。すっごく、心配だ
わ。
ちょっと不安を感じつつ、アタシとシンジは家に帰ったわ。
***
「キャーッ!シンジのエッチ!」
「あ、ごめんよ、アスカ。」
「んもう、気を付けてよね!」
「うん、本当にごめん。」
ああ、またお約束の事態になっちゃったわ。お風呂上がりのアタシがタオルを巻いただけ
の状態で歩いていたら、シンジと廊下ですれ違ったのよ。そうしたら、はずみでアタシの
タオルがはらりと落ちて、シンジに見られちゃったっていう訳なのよ。
シンジのあの様子から見て、絶対アタシの体を余す所無く全て見たわよね、そうに違いな
いわ。ああ、これでアタシはお嫁に行けない体になってしまったのね。えっ、もう婚約し
ているのにふざけるなですって。いいじゃない、今はそういうノリなんだから、細かい事
は言いっこ無しよ。
でも、アタシもシンジもお互いに変に意識するようになっちゃったじゃない。この分だと、
今晩は眠れそうにないわね。ああ、どうしよう。
けど、悔しいわね。本当は、思いっきり頬に紅葉を作ってやりたいけど、婚約者がそんな
ことをするなんて、絶対におかしいものね。我慢するしかないわね。はぁ〜っ、人類の未
来を救う為とはいえ、辛いわよね。ストレスがたまっちゃうわ。
その後は特に何事も起きなくて、眠る時間になったわ。さあてと、さっさと眠ることにし
ますか。
「シンジ、お休みなさい。」
「うん、アスカもお休み。あれっ、でも毎朝と毎晩、心臓マッサージをするんじゃなかっ
たっけ。」
げっ、そういえばそんなことを言ったわね。ちっ、シンジの奴、スケベなことは絶対に忘
れないんだから。でも、言ったその日に決まりを破るなんて、アタシの信用に関わるから、
やるしかないわね。本当は、さっきのタオルはらり事件の後なんで、恥ずかしいから嫌だ
ったけど、観念するしかないかしら。
「ああ、そうだったわね。それじゃあ、始めようか。」
アタシは覚悟を決めて、上半身裸になったわ。それを見て、シンジの目が輝いたの。そし
て、本当に嬉しそうな顔をしたわ。もうっ!男って、なんでこんなにスケベなのかしら。
「うん、じゃあ人工呼吸からだね。」
シンジは少しぎこちなかったけど、及第点をあげられる人工呼吸をしたわ。
「じゃあ、次は心臓マッサージだね。」
そうシンジが言った瞬間、シンジの喉が小さく鳴ったわ。
「ええ、うまくやってね。」
もう、こうなったら、なるようになれよ。
「じゃあ、行くよ。」
シンジは、その後しばらくの間、真っ赤な顔をしていたわ。
***
「ねえ、アスカ。ミサトさんは、何時頃に帰って来るのかな。」
マッサージが終わった後、横になって直ぐにシンジが聞いてきたわ。
「何でそんなことを聞くのよ。」
「えっと、何となく知りたくなって。」
「もうすぐ眠るんだから、別にいつだっていいじゃない。あと10分位で帰って来るかも
しれないし、30分後かもしれないけど、もうその頃は寝てるでしょ。」
「うん、実はアスカと話したくて、でも迷惑かな。」
「ううん、そんなことはないわ。で、なあに?」
「出来れば、明日のお昼は、アスカと一緒に食べたいなあって思ったんだ。でも、アスカ
が嫌ならいいんだけど。」
「正直言うと、嫌よ。」
「そ、そうだよね。」
「でも、シンジが思っているのと、違う理由よ。」
「えっ、どういうこと?」
「シンジは、誰か一緒に食べてくれる男の子を探した方が良いと思うからよ。やっぱり、
同性の友達がいた方が良いでしょ。いきなりアタシと一緒に食べたら、友達が出来なくな
るかもしれないじゃない。」
「良いんだ。前の学校でも、友達なんていなかったし。ここでも友達なんか出来ないかも
しれないんだ。僕は前の学校では、いつも一人でお昼を食べていたんだ。それが当たり前
だと思っていたけど、この家に来て、ミサトさんやアスカと一緒にご飯を食べるようにな
ってから、一人で食べるのが、何となく淋しいなと思って…。」
あら、そうなの。シンジも暗いわねえ。まあ、そういう理由ならしょうがないわね。
「じゃあ、こうしましょうよ。シンジが誰からも誘われなかったら、アタシと一緒に食べ
ましょうよ。でも、もしかしたら、誰か女の子が一緒になるかもしれないけど、それでも
良いかしら?」
シンジは少し考え込んだ後に返事をしたわ。
「う〜ん、そうだね。大勢の方が良いかもしれないね。うん、それで良いよ。」
でも、アタシは少し心配になって、こう言ったの。
「ねえ、シンジ。もし、嫌な奴がいたら、アタシに言ってよ。やっつけてあげるから。ア
タシはシンジの味方だから、遠慮なく言ってね。」
「いや、流石にそこまではしなくても良いよ。」
「良いのよ。シンジの敵は、アタシの敵だから。」
アタシはシンジの手を握ったわ。
「アスカ、ありがとう。」
シンジも手を握り返して来たわ。大丈夫よ、シンジ。シンジはアタシが守って見せるから。
アタシは心の中でそう誓ったわ。
この後、アタシ達は直ぐに眠りに落ちて、ぐっすりと眠ったの。
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2002.7.30 written by red-x