新世紀エヴァンゲリオン 外伝 超少女アスカ
第125話
今日は、シンジの誕生部の前日。テニス部の練習が終わった頃、アタシはシンジに先に帰
るように頼んだの。
「ねえ、シンジ。今日は先に帰ってよ。」
「うん、いいけど。どうしたの？」
「ちょっとね、ヒカリやユキとデパートで買い物するのよ。」
そう、明日の誕生会のための買い物をね。
「ふうん、そうなの。それなら、トウジ達と一緒に遊びに行こうかな。」
「いいんじゃない。そうしなさいよ。」
もっとも、ジャージとメガネにはシンジを誘うように言い含めてあるから、間違いなく遊
びに行くことになるはずだけどね。シンジは、知らぬが仏よ。
＊＊＊
さて、ヒカリやユキと連れ立って来たのは、前も来たデパート地下の食品売り場よ。
「うわあっ、ここって凄く高いですね。我が家じゃ、こんなに高いものなんてとてもじゃ
ありませんが買えませんよ。」
いきなりユキの目が丸くなったわ。
「やっぱり、ユキもそう思うでしょ。やっぱりアスカって、金銭感覚が普通の人とは違う
のね。」
ヒカリでさえも、これだもの。止めてよね。
「あのねえ、アタシだって滅多にここには来ないわよ。普段の食事は食材配送サービスを
利用してるし。明日は誕生会だから奮発するんじゃない。それに…。」
アタシは、ヒカリとユキに手招きをして、小声で囁いたの。
「こないだも言ったでしょ。アタシとシンジが何をしているのか。そのおかげで、結構な
額の給料を貰っているのよ。１年働けば、家が買える位のお金をね。」
「「ええっ。」」
まあ、今は戦闘に出て危険手当てが上積みされるから、実際は数カ月位だけどね。でも、
アタシが言ったことだけでも二人は驚いちゃったみたい。身体が硬直して動かなくなっち
ゃったのよ。
「よう、アスカ。お待たせ。」
そこにやって来たのは加持さん。今日の荷物持ち。今日は大量に買い込むつもりだから、
か弱い女の子３人だけだと運べないのよ。もちろん、加持さんは車付きよ。
「加持さ〜ん、良く来てくれたわ。ありがとね。じゃあ、早速カートを持ってきてね。」
「ああ、お安い御用さ。」
加持さんは、さっと素早くカートを持ってきたわ。これで準備万端ね。この前のお料理会
の時は、当日に配送してもらったけど、今回はＮＧ。だって、万一届くのが遅れたりした
ら、スケジュールが全部狂っちゃうのよ。そうなったら目も当てられないわ。
だから、今日の内に目ぼしい食材は買い込んで、マンションの別室に確保してある冷凍庫
や冷蔵庫で保管しておくのよ。
「さ〜て、最初はステーキを人数分の２倍買うわよ。そうね。とりあえず、このサーロイ
ン１００枚でいいかしら。」
「えっ、惣流さん。多くありませんか。それだけでも、５０万円もしますよっ！」
ユキの顔は、真っ青になっている。えっ、でもこれって１枚５千円でしょ。松坂牛のヒレ
だったらこれの３倍はするじゃない。大したことないじゃない。でも、確かに女の子には
多いかもね。他の料理もあることだし。
「じゃあ、これは半分にして残りはヒレにするわよ。」
「ア、アスカ…。ヒレって、１枚８千円もするんだけど。」
ヒカリも声がうわずっている。なによ〜っ、みんな。ケチケチしないの。でも、良く見た
ら加持さんまで冷や汗を垂らしていたわ。でも、まあいいか。アタシは、更にシンジやネ
ルフの幹部用にと、最高級のヒレ肉を買い足したの。やっぱり高くて、１枚２万円也。
「に、肉だけで１００万越えてますよ…。」
ユキったら、震えちゃってどうしたんだろ。もう、や〜ねえ。
「はいはい、ここはもういいから次は豚肉よ。」
アタシは、ヒカリ達を引きずるようにしてその場を去ったわ。
＊＊＊
結局、豚肉と鳥肉で合わせて１００万、寿司ネタと刺身で１５０万、カニが５０万、海老
に５０万、ロブスターは別途注文済みだからここでは買わなくて、その他食材に５０万、
合計５００万も買っちゃったわ。
「そ、惣流さん。いくら何でも買いすぎですよ。」
「そうよ、アスカ。絶対に半分以上余るわよ。」
そんなもんだから、ヒカリもユキも半分キャンセルしろってしつこいのよ。まあ、そうな
るのは分かっていたから、加持さんにあらかじめ言い訳を頼んでいたの。
「大丈夫さ。余ったら、全部俺が引き取ることになっているんだ。これ位の量なら、ちょ
いと多めに友達を呼べば直ぐに無くなるんだよ。大人の男の食べる量を甘くみないでくれ
よな。」
「「は、はい…。」」
てな訳で、二人ともあっさりと納得。ジュース類は既に買ってあるから、今日の買い物は
これでおしまい。運搬は全部加持さんに任せて、アタシ達は一休み。でも、そこでも話題
は食材のこと。
「そ、惣流さん。一人当り１０万以上もかかっていますよ。本当にいいんですか。」
「そうよ、アスカ。誕生日プレゼント、買い直さなくちゃ。」
あちゃあ。こりゃあ、本当のことを言わなくちゃいけないかしら。
「あのね、実はあれは明日の分だけじゃないのよ。」
「「えっ？」」
二人とも、顔に？マークを浮かべたみたい。
「明後日にね、アタシやシンジが日頃お世話になっている大人の人を呼ぶつもりなの。加
持さんもそのうちの一人なの。だから、あまり安い物は出せないし、かといって片方を安
く済ませる訳にはいかないのよ。そういうのって、シンジが嫌がるようだから。だから、
前から頼んでるじゃない。次の日も手伝って欲しいことがあるって。忘れてないわよね？」
「ああ、そういうことだったんですか。それなら分かります。それでも、一人当たり５万
はしますよね。」
最初に立ち直ったのはユキ。うん、大体その通りよ。
「食事についてはそうなるわね。でも、飲み物は全然違うわよ。明日はせいぜい数万円だ
けど、明後日は高いお酒を出すから、予算はとてもじゃないけど言えないわ。」
そこで、アタシはおチビちゃん達のことを思い出したの。
「あっ、その日はユキとヒカリはもちろん、おチビちゃん達も来てもらうつもりよ。もち
ろん大人と一緒っていう訳にはいかないでしょうから、子供専用部屋で遊んでいてもらう
ことになると思うけど。」
「えっ、いいんですか？」
「いいの、アスカ？実は、お姉ちゃんも来たいって言ってるんだけど。もちろん、料理は
手伝うわ。」
「うん、いいわよ。但し、シンジには一切秘密だから、それだけは守ってね。それに、料
理を手伝ってくれる人が増えるのは大歓迎よ。クラスの女子だって、料理の苦手な人がい
るみたいだから。それに、さすがに明後日は、あれだけの量をこのメンバーで料理するの
は厳しいものね。」
「はい、それじゃあ料理の材料分働くことをを目指します。」
「私もそうね。でも、家族の分が入ると厳しいわね。」
「あっ、そうですね。どうしよう。私なんて、３人分×２日ですか。ええっ、３０万円に
なるじゃないですか。そんなに働くなんて、無理ですう。」
ユキが涙目になったもんだから、慌ててアタシは慰めたわ。でも、これで明日の誕生会の
準備はバッチリね。
つづく（第126話へ）
目次（目次へ）
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あとがき
ネットで調べたら、２枚で１万円なんてサーロイン肉が売っていました。デパートでも
同じような値段なんでしょうね。
2006.1.16 written by red-x