新世紀エヴァンゲリオン 外伝 超少女アスカ

第113話

「さあてと、試合はあと2つね。頑張りましょ。」 アタシは、ヒカリの前でガッツポーズをしたわ。 「うん、アスカ。頑張ってね。頼りにしてるわ。」 ヒカリはもちろん応援してくれるわ。でも、ユキはまだ怒っているみたい。 「惣流さん、ひどいですうっ。ううっ…。」 でも、なんで怒るのかしら。おかしいわね。 「あのねえ、ユキ。いつまでも怒らないでよ。相田君は一応恋人でしょ。キスくらいして も構わないじゃない。」 そしたら、ユキは目を細めたの。そして、いつになく冷たい声で言うのよ。 「それじゃあ、惣流さんもみんなの前で碇君とキスしてくださいね。」 ううっ、そりゃあちょっとね。あんな冴えない奴とキスするなんて、アタシの沽券に係わ るじゃない。冗談じゃないわ。でも、本当のことは言えないわね。 「遠慮するわ。アタシはいいけど、シンジは小心者だから。」 アタシが首を振ったら、ユキはにんまりしたわ。 「そんなことないですよ。碇君からはOKを貰っていますよ。て、言うか。是非そうした いって言ってましたけど。」 「な、なんですって!」 アタシの顔が、一気に青ざめたわ。ま、まずいわ。アタシとしたことが、ユキなんぞに先 手を取られるなんて。 「これで、何の支障もないですよね。」 ユキは、ニコニコしながら迫ってきたわ。しょうがない、覚悟を決めるか。 「ユキ、ごめんなさい。アタシが悪うございました。許して下さい。」 アタシは、潔く頭を下げたの。そしたら、却ってユキが慌てだしたの。その間、アタシは 必死に言い訳を考えたのよ。 「そ、惣流さん。何もそんなことしなくても。」 「いいのよ、アタシが悪いんだし。でも、みんなの前ではシンジとキスなんか出来ないの。 そんなことしたら、シンジがもてない男どもからやっかみを受けたり、嫌がらせを受けた りするかもしれないじゃない。そうしたらシンジが可哀相だもの。」 アタシが言うと、ユキの顔色が変わったわ。 「そ、惣流さん。ごめんなさい、そこまでは考えませんでした。そうですよね、惣流さん みたいな凄い美人と公衆の面前でキスなんかしたら、相手の男の子は他の男子から目の敵 にされますよね。ちょっと言いすぎました、ごめんなさい。」 「じゃあ、許してくれるかしら。」 良かったわ。ユキがちゃんと分かってくれて。 「ええ、分かりました。惣流さんにはいつもお世話になっていますし、相手が相田君でし たし、さっきのことは綺麗さっぱり忘れることにします。」 アタシは、俯いた顔にニヤリと笑いを浮かべたんだけど、直ぐに自然な笑顔になって顔を あげたの。 「良かった。許してくれてありがとう、ユキ。」 「いいえ、私も言いすぎましたし。」 でもね、ユキ。アンタは少し人が良すぎるわ。まあ、アタシにとっては都合がいいけどね。 *** 準決勝ということもあり、次の試合はかなり際どかったわ。立て続けに負けて、もうこれ までかと思ったほどよ。でもね、アタシが圧勝してから流れが変わったの。たまたまアタ シの対戦相手が向こうの部長だったらしいのよ。それが、アタシの打つボールに触れるこ とも出来ずに完敗したもんだから、相手はお葬式みたいな雰囲気になっちゃったのよね。 で、相手の士気が落ちたところを逃さずに、一気に畳みかけて攻めたの。それが功を奏し たらしく、アタシの後の人はみんな勝利したのよ。 「やったわっ、アスカ!これで県大会に出場よ!」 ヒカリがアタシに飛びついてきたわ。えっ、いまのは準決勝じゃないの。アタシが怪訝そ うな顔をしたら、ユキが教えてくれたの。 「惣流さん、地区大会の優勝校と準優勝校が県大会に行けるんですよ。」 ふうん、なるほどねえ。それで、みんながこんなに喜んでいる訳ね。 「じゃあ、次は負けても大丈夫なのね。」 アタシが、ふうっと気が抜けたようなことを言ったら、ユキが血相を変えたわ。 「だ、駄目ですよ〜っ。うちで必ず勝てそうなのは、惣流さんだけなんですから。全力で 戦ってもらわないと。」 それに、ヒカリも迫ってきたわ。 「そうよ、アスカ。1試合たりとも手を抜いちゃだめよ。」 げえっ、そりゃあないわよね。ただ勝つだけなら楽勝なんだけど、圧勝するのは簡単じゃ あないのよ。そう思って膨れていたら、いつの間にか次の試合になっちゃったの。 「「「惣流さ〜ん、頑張ってえ〜っ!」」」 どうやら、今度の相手も相手中学の部長みたい。とはいえ、地区大会の優勝者と準優勝者 の力量は分かっているから、今度の相手の力量も知れたものよ。 「は〜い、頑張るわよ〜っ!」 アタシが笑顔で応えたら、1年生の女子が顔を赤くしていたわ。げっ、マジ?アタシは、 ズーレじゃないんだからね。変な反応はしないでよね。もっとも、アタシのファンが増え るのは悪いことじゃあないわ。シンジに悪影響さえ無ければ大歓迎だわ。 *** で、試合なんだけど、もちろんアタシの圧勝。ついでに、チームも優勝したわ。それで、 話の流れの必然として、祝勝会をやろうっていう話しになったのよ。そこまでは良かった んだけど、話が変な方向に行っちゃったのよ。 「「「「「惣流さんの家でやりた〜い!」」」」」 なんて、みんなが言い出したのよ。まったく、首謀者はヒカリかユキね、きっと。 「ええっ、準備が出来ないわよ。」 アタシが難色を示すと、1年生達が寄ってきて、自分達がやりますって言うのよ。 「でも、うちにはシンジがいるし…。」 そう言って断ろうとしたら、みんな構わないって言うのよ。そうこうしているうちに、男 子も優勝したから合同で一緒に祝勝会をやろうって言われちゃったのよ。アタシは迷った 末に、シンジが良いって言ったらOKだって返事をしたの。 おそらく、ヒカリやユキの指令を受けたジャージとメガネに首を無理やり縦に振らされる のは目に見えてはいたんだけど、シンジがOKを出すと、周りのみんなが喜ぶと思ったの よ。そうすると、シンジも悪い気はしないじゃない。 周りのみんなが喜ぶと、シンジもなんだか良いことをした気分になると思うのよ。それは、 シンジにとっていいことだと、なんとなく思ったのよね。 あっ、そうだ。忘れるとこだったわ。首謀者を確定しておかなくっちゃね。アタシはユキ の側に寄って、こっそり囁いたの。 「もう、昨日の肉はないのよ。それでもいいの?」 「え、ええ。私は何でも構いませんけど。」 やっぱり、ユキはシロかしらね。アタシはヒカリの側に寄って、同じように囁いたの。 「もう、昨日の肉はないのよ。それでもいいの?」 「ええっ、本当なの?がっかりだわ。」 これで、クロが誰か決定ね。 「何よ、ヒカリ。焼き肉が好きなの?」 「ううん。鈴原がまた食べたいって何度も言ってたから…。」 「しょうがないわねえ。昨日よりは少し落ちるけど、そこそこの肉を用意しておくわ。」 「ありがとう、アスカ。恩に着るわ。鈴原には、私から言っておくわね。」 ニコニコしているヒカリを見て、アタシは怒る気にはなれなかったわ。 「ねえ、加持さん。お願いがあるんだけど。」 意を決したアタシは、こっそりと加持さんに電話をしたわ。えっ、何を頼んだのかって。 もちろん、焼き肉の道具なんかよ。これで、2日連続の焼き肉が決定したわ。 つづく(第114話へ)

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―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――― あとがき  焼き肉が大好きなトウジの意を汲んだヒカリの策略によって、2日連続の焼き肉が決ま りそうです。アスカはあまり焼き肉が好きではなさそうですが、ヒカリのいじらしさに負 けたようです。   2004.8.3  written by red-x   



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