新世紀エヴァンゲリオン 外伝 超少女アスカ
第110話
「ただいま〜っ、アスカ。リツコ達も連れてきたわよん。」
しばらくして、ミサトが帰ってきたの。加持さん、リツコ、マヤ、青葉さん、日向さんを
引き連れてね。その頃にはアタシ達はデザートタイムになっていたから、リビングに移動
していたんだけど、みんなの相手はシンジに任せてアタシがミサト達を出迎えたの。
何で加持さん達が来たかというと、焼き肉の道具を調達してくれたのが加持さんだったの。
そりゃあそうよね。いくらなんでも、普通の家でおいしく焼き肉を食べるためには、それ
なりの器具が必要なのよ。
でも、アタシは何がいいのか分からなかったから、加持さんの助けを借りたって言うわけ。
加持さんは知り合いから焼き肉の道具を借りてくれたんだけど、そのお礼に焼き肉を召し
上がれっていうわけなのよ。
加持さんに声をかければ、ミサトやリツコの耳にも入るから誘わないわけにはいかないし、
そうなるとマヤや青葉さん、日向さんも声をかけることになるのよ。アタシにしてみれば、
こういう時に恩を売っておいて、いざという時に返してもらおうかなんて考えているんだ
けどね。
「さあ、みなさんどうぞあがってください。そして、好きなだけ焼き肉を召し上がれ。」
アタシがにっこり笑うと、リツコは少し遠慮がちに言ったの。
「悪いわね、アスカ。」
加持さんはいつものようにひょうひょうと。
「やあ、アスカ。ごちそうになるよ。」
マヤは少しもじもじしながら。
「アスカちゃん。誘っていただいてありがとうね。」
日向さんは少し真面目な顔して。
「アスカちゃん、ありがとう。ごちそうになるよ。」
青葉さんは気さくに。
「アスカちゃん、悪いねえ。」
てな調子だったわ。
「さあさあ、早く座ってね。」
アタシは、とりあえず冷えたビールを人数分×2本、冷蔵庫から取り出してテーブルの上
に置いたの。そしたらみんなの反応は上々だったわ。
「おおっ、いいっすね〜っ。」
「やっぱり、暑い時はこれに限るな。」
「よ〜しっ、今日は飲みまくるわよ〜っ。」
「そうですよね、最初はビールですよね。」
「マヤ、2杯目からはワインもあるらしいわよ。」
「至れり尽くせりだなあ。」
そして、直ぐに乾杯して飲みだしたわ。アタシは別の冷蔵庫から日本酒とワインを出して、
テーブルの上に数本置いてから大きな声を出したの。
「は〜い、ちょっと聞いてね。ビールは冷蔵庫にあるから勝手に取ってね。酒は日本酒、
ワイン、ブランデーしかないけど、冷蔵庫にある分ならいくらでも取っていいわ。野菜は
テーブルの上にある分しかないけど、肉はたくさんあるから欲しい時は声をかけてね。」
そしたらみんな頷いて、さっさと肉を焼き始めたの。それを横目にして、アタシはワイン
とブランデーを持って、リツコの側に寄って行ったわ。
「ハーイ、リツコ。ワインがいい?それともブランデーかしら。」
「そうね、ワインを頂くわ。マヤはどうする。」
リツコがマヤに聞くと、マヤは慌てて言ったわ。
「えっと、私もセンパイと同じワインでいいです。」
「二人ともワインね。分かったわ。」
アタシは、食器棚からワイングラスを2つ持ってきて、二人にワインを注いだの。
「それじゃあ、食べる前に一口頂こうかしら。」
「わ、私も。」
二人はワインを一口飲んだんだけど、揃って驚いた顔をしたわ。
「ア、アスカ。こ、これってなんていうワインなの?」
「へっ。そんなの知らないわよ。子供に何を聞くのよ。」
あらやだ、変なことを聞くわね。もう酔っぱらったのかしら。
「これって、物凄くおいしいんだけど。一体どこで買ったの?」
「良く分からないけど、知り合いにワイン好きな人がいて、その人の勧めるワインをフラ
ンスから直輸入したのよ。」
「で、一体いくらしたの?」
「えっ、値段のこと。10万くらいじゃないかしら。」
「本場で10万なの?なら、日本で買ったら50万はするわね。超高級ワインよ、これは。
マヤ、もう一生飲めないかもしれないから、心して飲みなさい。」
「は、はい。」
おっかしーい。マヤは首をカクカクしてる。
「何言ってるのよ。また何かあったら呼ぶから、その時はこのワインを用意しておくわ。
それにまだ10本余ってるから、気兼ねせずに飲みなさいよ。1週間もあれば空輸出来る
から、遠慮しなくていいのよ。」
「あら、お言葉に甘えてもいいのかしら。」
「もちろんよ、リツコ。世の中、モチでもたれてでしょ。リツコには最近お世話になった
みたいだし、これからもお世話になるかもしれないしね。」
「アスカ、持ちつ持たれつよ。なんだ、分かってたのね。」
ありゃ、間違えた。ちょっと恥ずかしいわね。でも、気付かなかったフリしよっと。
「そりゃあね。ミサトだけでは荷が重いことくらい分かるわよ。」
「実際は、日向君がやってたのよ。」
「でも、碇司令への根回しはリツコがやったんでしょ。それ以外のことも。」
日向さんて、真面目だから細かい根回しは苦手のようだし。誰かが手助けしたはずよ。
「凄いわ、アスカ。良く分かったわね。」
「種明かしをすると、頼れるお兄さんからの情報でした。」
アタシはペロリと舌を出したわ。何でも加持さんのせいにしておけば、リツコは信じるは
ずよ。加持さんのことだから、仮にリツコに問い詰められても上手くかわすでしょうしね。
「なるほどね。でも、意外だわ。アスカは本当にシンジ君が好きなのね。」
「ちょ、ちょっと、いきなり何を言うのよ。」
ヤバイ。話が変な方向に行きそうだわ。
「だってそうじゃない。シンジ君と二人でテニスしたいからって、そこまでするなんて。
アスカって、そんな子だったかしら。」
「まあ、そういう話は恥ずかしいからしないでよね。おいしいお酒と、おいしいお肉で、
綺麗さっぱり忘れてちょうだい。ほら、そろそろ肉が焼けてるわよ。」
「あら、もう焼けたの。それじゃあ、いただこうかしら。」
リツコはさっと箸で焼き肉を掴んで、タレをつけて食べ始めたわ。
ふう、なんだか話が変な方向に行きそうだったけど、上手く話を逸らせることが出来て良
かったわ。しっかし、やっぱりリツコが影で助けてくれていたのね。リツコには何度かお
弁当を作ってあげたことがあるけど、あれが役に立ったのね。
それともあれかしら。エヴァゲームのデータを全部リツコに渡してるんだけど、シンジだ
けじゃなくて、みんなのも渡しているのよね。そっち方面の協力の方がポイントが高かっ
たのかしら。
***
結局、夜10時までリツコ達に付き合ったもんだから、シンジ達と一緒に遊べなかったわ。
リツコとマヤは、良いワインをたくさん飲んだから、上機嫌で帰って行ったわ。加持さん、
日向さん、青葉さんも、食べきれないくらいお肉を食べて、これまた上機嫌で帰ったわ。
男の人は、肉のおいしさに驚いていたわ。で、おいしい、おいしいって、一杯食べたのよ。
もちろん、機会があったら是非また呼んで欲しいって言うもんだから、にっこり笑ってま
たお呼びしますって言っておいたの。
こうしておけば、いざっていう時にみんなの協力が期待出来るわ。あんまり無理なお願い
は聞いてくれないだろうけど、ちょっとしたお願いだったら喜んで聞いてくれるはずよ。
それに、シンジの方も大丈夫で良かったわ。アタシ抜きでみんなに溶け込めるかどうか心
配だったけど、何ら問題がなかったようなの。これで、アタシはシンジのお守りばかりす
る必要は無くなったと考えていいわね。
さあて、明日は朝早いから、今晩は早く寝よっと。
つづく(第111話へ)
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あとがき
テニスの件で手助けをしたのは日向だけではなくて、リツコもかなり助けてくれたよう
です。そのお返しにアスカは高級ワインを買っておいたのでした。お値段は10本で10
万ユーロ。リツコは1本10万円と勘違いしたようですが、実際は1本100万円もする
のでした。
2004.7.22 written by red-x