新世紀エヴァンゲリオン 蒼い瞳のフィアンセ


第5部 仕組まれた戦争



第95話 世界大戦の予兆

アスカは、ぐっすりと眠っていた。久々にカールに会って嬉しかったため、2時間ほど前 までシンジと喜びを分かち合っていた−と言うと聞こえは良いが、シンジに対してアスカ が一方的に嬉しい嬉しいと言いまくっていただけだった−のだが、話し疲れてしまったら しい。 すると、シンジがゆっくりと動いてアスカの様子を伺う。アスカの寝息を聞いたり、アス カの太股をさすったりして反応を見ていたが、ぐっすりと寝ていると判断したのか、少し 大胆な行動にでた。 「アスカ、寝てるの。」 小声で囁くが、何の反応がない。すると、シンジの右手がアスカのタンクトップの裾から、 左手がタンクトップの胸元から差し込まれた。ほどなく、アスカのタンクトップの胸の辺 りが揺れ始めた。シンジは、アスカを後ろから軽く抱きしめながら耳元で囁く。 「アスカ、大好きだよ。アスカ、僕の大好きなアスカ…。」 そして、さらに行為はエスカレートしていく。 「RRRRR…、RRRRR…、RRRRR…」 そんな時、急に電話が鳴ったため、シンジはビクッと体を震わせた後、固まってしまう。 「ん、なあに。」 アスカは眼を覚ました。 「あっ、電話ね。」 何か違和感があったが、夜中の電話の方が気になるため、アスカは素早く電話を取る。 「あっ、惣流か。悪い、寝ているとこ。」 声の主はケンスケだった。 「なによ、用件は。」 時間は、夜中の2時だった。アスカは、少し不機嫌な声で応えた。 「実は、変な情報を掴んだんだ。それで、一応惣流に伝えておこうと思って。」 「ん、何よ、その情報って。」 くだらないことだったら許さないわよ、そう思っても声には出さない。いくら寝惚けてい ても、そんなことを言うほどアスカは愚かではない。とにかく、相手の持っている情報を 残らず聞き出すまでは、情報の価値について判断するのは早いのだ。 「俺が独自の軍事マニアのネットワークを持っていることは知ってるよな。そこからの情 報なんだけど、トルコ軍に奇妙な動きがあるんだ。」 「どういうこと?」 アスカは、何かを感じて一気に眠気がとんだ。 「1週間前くらいから、目立たないようにイラク国境に兵力を集めていたらしいんだ。」 「それ、確かなの。」 「ああ、確かだ。」 「で、兵力は?」 「あまり自信が無いけど、20万から30万ていうとこかな。かなりの大兵力らしい。」 「どういうこと?ネルフではそんな情報、全く掴んでいないわよ。」 「それにもう一つ。トルコ軍の中に、どうやらマケドニア兵やギリシャ兵が混じっている らしいんだ。」 「なんですって!」 アスカは飛び起きた…つもりだったが、シンジがしがみついていたため、ちょっと動いた だけで直ぐに元の位置に戻ってしまった。 「俺、もう少し情報を集めるよ。もう少し詳しいことが分かったら、また連絡するよ。」 「いえ、待って。直ぐにネルフへ向かって。そして、パイロット全員に非常招集をかけて ちょうだい。」 「えっ、ほんとかよ。こんな時間にか。」 「ええ。状況は一刻を争うわ。多分、もう間に合わないとは思うけどね。」 「一体、何が間に合わないんだよ。」 「それは後で話すから、とにかく急いで。ヒカリやユキも叩き起こしてちょうだい。食堂 が開くまで、目一杯料理を作ってもらいたいから。」 「ああ、分かった。それじゃ、後で。」 そう言って、ケンスケは電話を切った。電話が切れたことをアスカは念入りに確認すると、 少し大きな声で言った。 「シンジ、今の聞いてたでしょ。さっさと本部に行くわよ。」 だが、シンジは震える声でトンチンカンなことを言ってきた。 「ごめんね、アスカ。怒らないで。」 「はあっ、何よ。いいから、アタシから離れなさいよ。急いで本部に行かなくちゃ。」 「でも、アスカ。ごめんね、悪気は無かったんだ。本当だよ。」 相変わらずシンジの声は震えている。 「いいから、早く離してね。絶対に怒らないから、ねっ。」 アスカは努めて優しく言った。こういう時のシンジに、怒鳴り声や不機嫌な声は逆効果だ と分かっていたから。 「えっ、ホント?」 シンジは、しっかりと抱きしめていた手を緩める。アスカが『絶対に怒らない』と言えば、 その約束はほぼ守られると分かっていたからだ。 「変なシンジ。まあ、いいけどね。」 そう言いながら立とうとしたアスカをシンジが止める。 「あっ、ちょっと待って。今、拭くから。」 シンジは、ティッシュでアスカの太股の付け根辺りを拭いた。さきほどからべっとり付い ていた、何か生暖かいものが拭き取られる感じがした。するとその時…。 「イタイ!」 アスカは思わず叫んだ。拭き終わった時に、シンジが誤ってアスカの体毛を一本抜いてし まったからだ。 「ご、ごめんね。アスカ、ごめんね。」 シンジは今にも泣きそうな声で謝る。ここで怒れば、シンジは2〜3日は使い物にならな くなるので、アスカは怒れない。心の中では般若のような顔をしていたが、表面上は優し い顔をした。 「いい、シンジ。10分以内にシャワーを浴びて着替えなさいよ。出かける準備も整えて ね。そうしたら、綺麗さっぱり今のことは忘れてあげるから。」 「えっ、本当なの?」 シンジの顔が、少し明るくなる。 「アタシが嘘を言ったことがあるかしら。無いわよね?アタシのことが好きなら、それく らい分かるでしょ。」 「う、うん。そうだよね。分かった、シャワー浴びてくるよ。」 シンジは、急いで浴室へと向かった。 「よし、じゃあアタシも。」 立ち上がって、アスカは気付いた。 「何でアタシ、裸なのよ。くっ、シンジのヘンタイ!」 アスカの首にタンクトップが巻きついていたが、それ以外はアスカは何も身に着けていな かった。シンジが異様に怯える理由がやっと分かった。だが、シンジが居なくなって気付 いても、後の祭りである。 アスカは、ため息をついて首を横に振ると、リツコを起こしに秘密の抜け穴を通って自分 の家へと戻って行った。 だが、アスカはやはり寝惚けていたようだ。もし、シンジが何をしたのか気付いていたら、 シンジは無事では済まなかっただろう。シンジは運が良かった。 *** それから15分後。アスカ達はリツコの運転する車に乗り込んだ。 「さあ、リツコ。早く車を出してちょうだい。」 「ええ、いいわよ。でも、アスカ。何で非常召集なんてかけたのよ。説明してほしいわ。」 リツコの問いかけに、一緒の車に乗っていたマコトとシンジもその通りと頷く。カヲルだ けが我関せずといった感じだった。 「それじゃあ、運転しながら聞いてちょうだい。アタシが得た情報によると、とある国に 不穏な動きがあるわ。目的は、おそらくイラクへの侵攻ね。」 「そんな、バカな。周辺諸国は、イラクへの侵攻自体反対していたじゃないか。」 アスカの爆弾発言に、マコトが驚く。 「それは知ってるわ。でも、アタシの集めた情報を分析したら、その国がイラクに侵攻す る可能性が高いとの結果が出たわ。それも、おそらく24時間以内にね。もしかしたら、 既に侵攻した後かもしれないわ。」 むろん、分析したのはアスカの頭脳であるが、それはあえて言わなかった。すると、シン ジがほっとしたような顔で言った。 「良かった。味方が増えたんなら、今回の戦争もすぐに終わるよね。」 だが、アスカは首を横に振った。 「そんな単純なことじゃないのよ。その国が味方になるとはかぎらないのよ。それどころ か、その国がイラクに代わって中東の覇権を握ろうとしているのかもしれないのよ。」 「そうなると、国連の敵がまた一つ増える可能性があるっていう訳ね。」 リツコは僅かに眉間に皺を寄せた。 「そうだね。最悪、国連は2つの敵を相手にすることになる。もしくは、イラクとその国 の勝者とね。でも、アスカちゃん。複雑な状況にはなるけれど、今の話しだけだと緊急事 態には思えないんだけどな。」 「そうですか?日向さん。良く考えて下さい、まだ頭が寝ているでしょ。何でその国がイ ラクに攻め込んだんだと思います?」 「そうだね。イラク軍の約3割がネルフによって壊滅したこと、イラク本国の兵力が手薄 になっていること、エヴァがサウジアラビアから撤退したこと、そんなところかな。」 「う〜ん、30点ですね。動機の説明が無いし、理由も弱いですね。」 「じゃあ、アスカちゃんはどう思うのかな。」 「それじゃあ、今の時期になって攻め込む理由から言いますよ。 第一に、ネルフへのテロがイラクの仕業だと言われているからです。今ならイラクを攻め ても、周辺諸国やネルフも表立ってその国を非難しにくいですよね。 第二に、ネルフのエヴァを4体も損傷させたからです。今なら出撃出来るエヴァは、対外 的に2体になっていますよね。実際は3体ですけど。 最後に、これが大きな理由ですが、おそらく敵は何らかの新兵器を開発したものと思われ ます。ですから、今になって攻め込んだんだと思います。」 「何よ、アスカ。その新兵器って?」 「リツコなら分かるでしょ。少数の兵力でもイラク軍に打ち勝つことの出来る兵器よ。」 「ええ。でも、まさかね。」 「おいおい、アスカちゃん、赤木さん。僕にはそれがエヴァだっていう風に聞こえるんだ けどな。そんなことないよね。」 「いいえ、日向さん。敵は、おそらくエヴァを開発したんでしょう。それが最も可能性が 高いと思います。」 「でも、ネルフ以外にそんなことの出来る組織なんて…。」 「ゼーレが出来たことですよ。他の組織が出来ても不思議じゃありません。」 「まあいい。仮にその組織がエヴァを開発したとしよう。それが何で…。あっ、そうか!」 「分かりますよね、日向さん。」 「ああ、そういうことか。確かにとんでもない緊急事態だ。」 そこにシンジが首を捻りつつ口を出した。 「あの、どうして今の話が非緊急事態につながるの?」 「それはね、シンジ君。単にイラクを攻めるだけなら、エヴァに頼る必要はないからなん だよ。敵の目標は、イラクの征服とネルフの打倒だよ、きっと。」 「えっ、そんなあ。」 「だけど、動機は分からないな。アスカちゃんの考えでは、第一と第二の理由は敵が仕掛 けた罠だってことだよね。」 「さすが、日向さん。良く分かりましたね。」 「アスカちゃんが分かりやすく解説してくれたからだよ。アスカちゃんに言われるまで、 全然気付かなかったけどね。」 今でも気付かない者が約2名いるが。 「では、動機を言います。ここからは推論ですけど、おそらくは世界の支配が目的です。 中東の産油国を支配下に置いて、経済的に世界を支配しようとしているのでしょう。中東 の石油を一手に握られたら、経済的に対抗出来ることは不可能です。」 「そうだね。サウジアラビア、イラク、旧イラン、クウェート、アラブ首長国連邦、この 5か国の石油埋蔵量は、世界の5割から6割を占めていると言われている。今でも石油は 重要なエネルギーだから、1国でこれを押さえられるとなると、物凄い政治力・経済力を 持つことになる。」 「政治力・経済力に加えて、エヴァという軍事力を持てば、まさに無敵ですよね。」 「でも、アスカ。全然分からないよ。その敵っていうのがイラクを倒せば、イラクがサウ ジアラビアを攻める前の状態に戻るんじゃないの?」 「そんなわけ、ないでしょ。イラクを倒したら、中東全域を支配するに決まってるじゃな い。」 「でも、それならイラクがサウジアラビアを攻めても同じじゃないの。」 「全然違うわよ。イラクがサウジアラビアを攻めた時、国連には無敵と思われたエヴァが あったわ。だから、当然国連軍が勝利するものと考えて、各国はイラクを攻めるなとか、 悠長なことを言っていたのよ。でも最悪の場合、国連には使えるエヴァは2体。敵にはそ れ以上ってことになると、大変な事態になるわ。」 「ど、どうなるのさ。」 「シンジ君。それには僕が答えるよ。ドイツ育ちのアスカちゃんには言いにくいことだか らね。おそらくアメリカとヨーロッパが連合して中東に攻め入るだろう。今まで自分達が 築いた権益が無に帰する恐れが高いからね。それも、最大規模の戦力を投入するだろう。 そうなったら…。」 「第三次世界大戦になるわね、間違いなく。」 リツコが締めくくった。 (第95.5話へ)

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―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――― あとがき  単なる中東の地域紛争に過ぎなかった今回の事件ですが、世界を巻き込むような大事件 になりそうです。もし、中東に一大国家が出来て、それが米国の国益を損なうことなると、 米国は外交努力は行うにしても、軍事力を使うことをためらわないでしょう。また、他の 欧州諸国にしても、自分達の首が締まるとなると、米国に加勢することになるでしょう。 そうなると、欧米諸国対アラブ諸国という図式になります。  今回の話は、アラブ諸国にトルコとエヴァなどが加わります。このため、双方の軍事力 が拮抗し、その結果として凄まじく強大な軍事力が衝突することになるでしょう。ロシア と中国がこれにどう加わるかによっては、戦火が世界中に広がる可能性があります。  これを防ぐためには、国連がリーダーシップをとる必要があります。今まではエヴァが あったために国連の意向を無視する国はありませんでしたが、国連が無力と見なされれば、 各国は次々と戦争へと突入していくでしょう。 2004.8.16  written by red-x



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