新世紀エヴァンゲリオン 蒼い瞳のフィアンセ


第93.5話 レッドウルフとゼウス

「おい、レッドウルフ。お前、ゼーレのカール将軍のことを覚えているか。」 ジャッジマンから急に問われて、レッドウルフは訝しげに答えた。 「ああ、覚えているさ。それが何か。」 「彼がな、ネルフに来るそうだ。」 「な、何っ!それは、本当か?死刑は免除になったのか?」 レッドウルフは、興奮してジャッジマンに詰め寄った。 「おいおい、待てよ。そう急くなって。それより、俺は聞いておきたいことがあってな。 お前とカール将軍のことだ。以前お前は、少しばかり因縁があるって言っていたよな。い ずれ話すとも、勝てば話すとも言っておいて、未だに教えてもらっていないよな。そのこ とを是非聞きたいんだがな。」 「そのことか。いいよ、話すよ。彼はね、多分、僕の母親の命の恩人なんだよ。」 「どういうことだ?」 「僕が生まれて間もなくのことだったらしいけど、僕の母親が入院していた病院がテロリ ストに襲われてね。病院にいた人は皆殺しにされたみたいなんだけど、僕の母親はカール 将軍に助けられたみたいなんだ。ほら、カール将軍は青竜部隊っていう、要人警護部隊の 元隊長だったろ。その時のことらしい。」 「ほう、それは浅からぬ因縁だな。でも、多分っていうことは、カールが助けたのかどう か、はっきりしないのか。」 「いや、そうじゃない。僕はその時母親と離ればなれになったんだ。そして、偶然近くを 通り掛かった今の養父に拾われたんだ。僕の母親はゼーレの要人だったらしくて、公式発 表では全員死亡ってことになってた。だから、養父は僕を育てることにしたんだ。」 「そうか。それは災難だったな。で、お前の母親はどうなったんだ。」 「僕が3歳か4歳位の頃だったと思う。事故で他界したそうだ。僕がそのことを知ったの は、つい最近のことだ。」 「そうか、それは残念だったな。で、母親の名前は?墓参りは出来たのか?」 「それがあいにくとね、名前までは分からなかった。ぼやけた写真だけしか手に入らなか ったし。」 「そうか、それをカールに聞きたいっていう訳だな。」 「出来ればね。でも、個人的なことだし、急ぐつもりはないよ。」 「そうか、何かあったら俺に言えよ。俺に出来ることがあったら手伝うぜ。」 「ああ、ありがとう。じゃあ、聞きたいことがあるんだけど。テロリスト達の組織の名前 は、『ゼウス』っていうらしい。そんな名前の組織を聞いたことがないか?いくら調べて も分からないんだ。」 「『ゼウス』か。う〜ん、聞いたことはないな。だが、一応調べておくな。」 「ああ、頼む。恩に着るよ。」 「なんか、今日のお前は素直だな。調子狂うぜ。」 「やっぱりね、僕もそう思うよ。」 それを聞いてジャッジマンは大声で笑い、レッドウルフもつられて笑った。こうして、二 人はしばらくの間、大笑いした。 *** 二人が大笑いしていた頃、ゼウスで大きな動きがあった。 「ランブロ様、良い知らせです。」 暗い部屋の中で、声が響いた。 「なんだ、アリよ。」 アリは、にこやかな顔で報告した。 「例のモノですが、ようやく完成したそうです。これで、我々の悲願がかなうでしょう。」 ランブロは、思わず身を乗り出した。 「本当か?本当に例のモノが完成したのか。」 「ええ、本当です。これで、準備万端整いました。後は、決断するだけです。」 「よし、良くやった。これで長年の我々の悲願が叶う日も、そう遠くないだろう。」 「はい、そうです。これで、人類の明るい未来は約束されたようなものです。」 そして二人は大きな声で笑った。 (第94話へ)

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―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――― あとがき  レッドウルフは、テロによって幼い頃に母親と離ればなれになりました。そのテロを仕 掛けたのは、ゼウスだったのです。   2004.7.19 written by red-x