新世紀エヴァンゲリオン 蒼い瞳のフィアンセ


第84.5話 夜襲

 ダンマームが制圧された日の夜、ダンマームとは海を隔てているマナーマのイラク軍は、 まだのんびりとしていた。歩哨達の会話の中にも、あまり緊張感は無かった。 「おい、ダンマームが落ちたようだぞ。聞いたか?」 「ああ、第3軍の司令官は、命からがら逃げ出したって言うじゃないか。これで、出世競 争には敗れたな。我が第2軍の司令官が有利になったっていう訳だ。」 「はははっ、そうだな。そうなると、俺達にも何かいいことがあるかもな。」 「おうっ、そりゃあいいや。」 などという会話を交わしていたのである。だが、ある男が急に真剣な顔つきになった。 「うん、あの光は何だ?」 その男が言うとほぼ同時に、大きな爆発音が響きわたった。 「敵襲だっ!」 「応戦しろっ!」 兵士達は、敵を求めて右往左往するが、敵の姿は全く見当たらない。それにもかかわらず、 自軍の戦車が、艦艇が、砲台が、次々と火を吹いていった。 「なっ、なんてこった…。」 兵士達は呆然とするしかなかった。 その夜、襲撃されたのはマナーマだけではなかった。ダンマーム近郊のイラク駐留軍全て が軒並み襲撃を受けたのである。 このため、サウジアラビアの首都リヤドへの進撃がかなり遅れることになったのである。 *** 「隊長!ネルフからの吉報です!ネルフはさきほどをもって、ダンマームを完全に制圧し たそうですっ!」 「何っ!本当かっ!」 急な部下の報告に、アブカイクの守備隊長の顔がみるみるうちに明るくなっていった。 「はい、本当です。しかも、現在ダンマームからマナーマ、ドーハ、アブダビなどの各都 市のイラク軍に対して、攻撃を仕掛けているそうです!」 部下の顔は、喜びで紅潮していた。 「よし、そういうことなら俺達も攻勢に出るぞ!全軍で総攻撃だっ!」 隊長は立ち上がった。 「はいっ!ネルフに対しても、支援を要請しますっ!」 部下は、急いですっ飛んで行った。 そして、1時間後にアブカイクを包囲するイラク軍に対して、ダンマームからポジトロン ライフルが撃ち込まれた。このため、イラク軍は背後からの攻撃に慌てふためいた。その 機に乗じて、アブカイクの守備隊が総攻撃を仕掛け、イラク軍を見事撃退したのである。 この日を境にして、イラク軍の侵攻はその歩みを止めることになった。
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―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――― 2003.12.4 written by red-x



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