新世紀エヴァンゲリオン 蒼い瞳のフィアンセ


第83.5話 アブカイクの激戦

「イラク軍に向かって、撃てーっ!」 アブカイクの守備隊長の命令で、戦車や野戦砲などから次々と砲弾が撃ち出され、イラク 軍の戦車に向かっていった。 ここ、アブカイクには、サウジアラビア軍が集結しつつあった。アブカイクは、ダンマー ムとフフーフの中間にある町である。ここを抜かれると、首都のリヤドまでは守備の拠点 となるような都市はフフーフしかない。 だが、そのフフーフにしても、ドーハから攻め込んでくるイラク軍を相手にせねばならず、 ここが抜かれると、フフーフの守備隊は両方向からの敵を相手にすることになる。そこで、 この町は重要な戦略拠点となっていたのである。 とはいっても、この町が陥落するのは時間の問題であった。着々と戦争の準備をしてきた イラク軍は、兵器や兵士の質量共にサウジ軍を圧倒していたからである。 また、制空権もイラクに奪われつつあったし、ペルシャ湾も完全にイラク軍の支配下にあ った。このため、仮に援軍が来ようとも、なかなかアブカイクまでたどり着けないような 状況であったのだ。 *** 「司令官閣下。アブカイクは陥落寸前とのことです。」 「そうだな、あと一押しか。」 アブカイクを攻撃している、イラク第3軍の司令官は、ダンマームで指揮を執っていた。 第3軍は、バスラを出発し、クウェート、カフジ、サファーニーヤといった都市を次々と 制圧してきた。そして、数日中にフフーフを制圧し、1週間以内にはリヤドを制圧する気 であった。 一方、第2軍はマナーマやドーハを制圧した後、ハラド、ディラムを経てリヤドに攻め入 る手筈であった。第4軍は、トゥライフやバダナといった北側のパイプライン沿いの都市 を制圧している。 ドバイやアブダビは、旧イランを統治しているクサイの軍が、マスカットは旧アフガニス タンを統治しているウダイの軍が制圧しつつある。したがって、側背を突かれる恐れはか なり低く、一直線に力押しすれば良い状況であった。 「このままだと、リヤド陥落にあと1週間もかからないな。」 司令官はにやりと笑った。ここまでは、順調過ぎるくらいに順調である。後は、リヤドに 一番乗りをするのが、自分か第2軍の司令官のどちらなのかということが心配の種ではあ るが、それも贅沢な悩みであろう。 だが、司令官の頭に引っかかるものがあった。 「アメリカや国連の動きはどうなんだ。」 そう、アメリカや国連がどう動くのか、それによってはこの作戦の成否が大きく左右され る。特に、現在日本に配備されているという、エヴァンゲリオンという兵器の存在は不気 味であった。 「はい。先程発表がありまして、おおよそ2週間後にエヴァンゲリオン1体、パイロット 数名及びその支援部隊。それに加えて実戦部隊が1個中隊ほどがメッカに派遣されます。 それ以外にも各国から支援部隊が続々と集結しつつあるそうです。」 「ふん、遅いな。」 司令官は笑った。 「はい、そうですな。2週間後には、我々はメッカを制圧していることでしょう。しょせ ん、戦争を知らない連中が決めたこと。国連軍の奴らは、サウジの地を生きて踏むことは ないでしょうな。」 副官も、司令官と共に笑った。 だが、二人とも知らなかった。ネルフの中に、戦争の天才が三人もいることを。そのうち の二人、ジャッジマンとレッドウルフがやって来ることを。そして、最後の一人、超天才 のアスカが作戦を立案していることを。 既にアブカイクには、アスカの指示で大量の武器弾薬が数カ月前から送り込まれており、 そう簡単には陥落せず、今後も激戦が続くことを。
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―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――― 2003.10.27 written by red-x



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