新世紀エヴァンゲリオン 蒼い瞳のフィアンセ


第4部 ネルフ再生



第76話 新たな下僕

「シンジ様。さあ、私と一つになりましょうよ。」 ナスターシャはそう言いながら、シンジのブリーフに手をかけた。だが…。 「くっくっくっ…。」 どこからともなく、何者かの笑い声がした。 「誰っ!」 「どこにいるのっ!」 「なによっ!」 ナスターシャ達は、辺りを見渡した。すると、パーテーションのドアを開けて、思いがけ ない人物が入ってきた。 「なっ!アスカさんっ!」 「どうしてここにっ!」 「うっそ〜っ!」 ナスターシャ達は、次々と驚きの声をあげた。 「ふんっ!アタシが誰の奴隷になるですって!黙って聞いてりゃあ、好き勝手言いやがっ て!ふざけんじゃないわよっ!」 ギン!という音がしそうなほど、アスカは3人組を睨み付けた。だが、3人組の中で一番 強気なナスターシャが反論した。 「あら、遅かったわね。愛しのシンジ様は、私達のものよ。証拠の写真もあるわ。言って おくけど、カメラの中のデータを壊しても無駄よ。無線で別の場所に送ってあるもの。」 勝ち誇るナスターシャに、アスカは笑った。 「はんっ!アンタ、もうお芝居はいいわよ。」 「はあっ?何を言ってるの、アスカさん。」 ナスターシャ達は、首を傾げた。 「はははっ、そのシンジをもう一回見てみなさいよ。」 「「「えっ!」」」 3人同時にシンジを見た…つもりだったが、そこにはシンジとは似ても似つかない、別の 人物がいた。 「よっ、ジャネット。お久しぶり。」 「あ、あなたは、ケーシー。どうして、こんなところに…。」 ジャネットは腰を抜かさんほどに驚いた。ケーシーは、日本行きのメンバーには選ばれず、 今はアメリカ第3支部にいるはずだったからだ。 「そいつはね、レッドアタッカーズの中隊長なのよ。そしてね、変装のエキスパートでも あるの。だからね、シンジに変装して、アンタ達におびき出されたフリをして、魂胆を知 ろうっていう計画だったのよ。それに、間抜けなアンタ達は、見事に引っかかったってい う訳よ。」 そう、レッドウルフは、アメリカ第3支部では、普段はケーシーと名乗っていた。そのレ ッドウルフは、特に変装は人並み外れた能力を誇っていたのである。それをジャッジマン から聞いていたアスカが、今回のこの作戦を思いついたのだ。 「そ、そんなあ。」 「シ、シンジ様じゃなかったなんて…。」 「パ、パイロットの座が遠のく…。」 3人とも、今まで乳繰り合っていた男が憧れのシンジではなかったと知って、呆然として しまった。 「ふんっ!説教して許してあげようと思っていたけど、気が変わったわ。アンタ達がアタ シをどうしようと思っていたか、よ〜く分かったわ。だから、同じ目に合わせてあげるわ ね。」 アスカが指をパチンと鳴らすと、ミリア、アールコートに加えて、研修生達のクラスの担 任である、メルフェイス先生とレイリィ先生が入ってきた。いずれも、サグのメンバーで ある。 「こいつらの、ものすご〜く恥ずかしい写真を一杯撮ってよね。頼むわよっ!」 アスカはそう言うと、くるりと背を向けた。 「いやあ〜っ!許して〜っ!」 「ごめんなさい〜っ!」 「すみませんでした〜っ!もう、しませ〜んっ!」 3人組の泣き声が聞こえてきたが、アスカは振り返らずに立ち去った。 「ふう、シンジが引っかからなくって良かったわ。」 アスカは、会議室を出ると胸をなでおろした。おそらく、シンジだったら簡単に落とされ ていただろう。替え玉作戦は大成功である。 「でも、さっきは本当に驚いたわね。」 アスカは、つい先程の出来事を思い出した。 *** (こいつらっ!アタシを罠にかけるなんて、許さないっ!) 会議室に閉じ込められたアスカは、即座に戦闘体勢に入ったが、ザナドは大いに慌てた。 「アスカ様!すみませんっ!」 「「すみませんでしたっ!」」 ザナド達は、自分達の頭を地面にこすりつけて、アスカに謝った。おそらく、アスカに対 して害意が無いことを示すためであろう。 (なっ、なんなのよっ!こいつらはっ!) アスカは、ちょっと調子が狂ったが、それでも臨戦態勢を崩さなかった。だが、ザナド達 は何度も何度も謝り続けた。 「アスカ様!こんなところにお呼びして、すみませんでしたっ!」 「「すみませんでしたっ!」」 「お呼びしたのは、アスカ様にお願いがあるからですっ!」 「「お願いがあるからですっ!」」 「どうか、話を聞いて下さいっ!」 「「聞いて下さいっ!」」 (う〜ん、どうしようか。) アスカは少し悩んだ。罠のような気もするが、サーシャからはザナドのことは色々と良い 話を聞いていたため、とりあえず話を聞いてみることにした。残る二人の顔が見えなかっ たのが気がかりだったが、今のところはどうも危険はなさそうなので、距離をとって話を 聞くことにした。 (まあ、アタシに何かしようっていう訳じゃないみたいだから、話しだけでも聞いておこ うかしら。) 「まあ、いいわ。聞いてあげる。」 「あっ、ありがとうございますっ!」 「「ありがとうございますっ!」」 「実は、僕達3人とも、アスカ様の大ファンなんです。それで、2つお願いがあります。」 「お願い?」 「はい。僕達は、それぞれの国でアスカ様のファンクラブを結成しているんですが、アス カ様公認ということにしたいので、お許しをいただきたいのです。」 「へっ!ファンクラブですって!」 (う〜ん、そういや、ユキもそんなことを言ってたっけ。) アスカは、数日前にユキが似たようなことを言っていたことを思い出した。確か、アスカ は承諾した記憶がある。だが、ユキの言っていたファンクラブは、メンバーは女性のみと いう話しだった。 「どうでしょうか?」 「う〜ん、ちょっと考えちゃうわね。」 「そうですか…。では、アスカ様と碇シンジ君の交際を祝福するようなファンクラブでは どうでしょうか?」 「アタシとシンジの?そんなのに入る人がいるの?」 「はい、大勢います。」 (う〜ん、それならいいかなあ。シンジも反対しないだろうし。) ユキがアスカのファンクラブを結成するという話を、最初にシンジのところに持っていっ たらしいのだが、シンジはメンバーに男が入っていることに難色を示したらしく、それで 結局メンバーを女性のみにした経緯があるのだ。 だが、自分とシンジの交際を祝福するようなものならば、シンジは男が入っていても気に しないかもしれないと、アスカは考えた。 「う〜ん、シンジに相談してみる。シンジがいいなら、前向きに考えてもいいかなあ。」 「あっ、ありがとうございますっ!」 「「ありがとうございますっ!!」」 「まだ決まった訳じゃないのよ。分かってるの?」 「いえ、即座に却下されなかっただけでも嬉しいです。では、次のお願いですが、僕達3 人を、アスカ様の下僕にして下さいっ!」 「「下僕にして下さいっ!」」 「はあっ?」 アスカは、意外なお願いに驚いた。少し魅力を感じないわけでもないが、シンジが何てい うのかが気にかかる。だが、男の下僕は相田だけではちょっと物足りないのも事実ではあ るが。 そうやって考え込むアスカを見て、ザナドは次なる提案をした。 「アスカ様。机の上を見てください。」 「ん、どれどれ。」 アスカが机の上を見ると、ミニアルバムが数冊置いてあった。 「なによ、これ?」 「はい、僕達が本気であることを知っていただくため、僕達の恥ずかしい写真を多数用意 しました。もし、僕達がアスカ様を裏切るようなことがありましたら、その写真をどうぞ 公開してくださって結構です。1から5までありますが、5が一番恥ずかしい写真です。 ですから、1から見て下さい。」 「ふうん、どれどれ。」 アスカは、アルバムを開いてみた。 「ぶっ!何よ、これっ!ぎゃははははっ!」 アスカは、その写真を見て大笑いした。アスカの想像を絶するような恥ずかしい写真が、 たくさん入っていたからだ。普通の人なら、こんな恥ずかしい写真を公開されたくはない だろう。それだけに、この3人が冗談や半端な気持ちではないことがうかがえた。 「でも、どうしてこんな写真なんかにしたのよ。もっとやりようがあったでしょうに。」 「はい、アスカ様のために命を懸けるとか、体に一生消えない傷を付けるとか、色々考え たのですが、アスカ様が嫌がるかもしれないと思いまして、このような手段を選びました。 この方法なら、アスカ様が嫌がるならば、写真を捨てれば済む話ですし、うまくいけば、 アスカ様の笑い声が聞こえると思ったからです。」 「ふうん、少しは考えているんだ。さあて、どうしようかな。」 アスカは考えた。 (下僕が増えるのはいいことかもね。それに、裏切られたらこいつらの写真を公開すれば いいし。でも、最初は様子見かしらね。) アスカの頭の回転は早い。短時間で結論を出すと、口を開いた。 「すぐにOKという訳にはいかないわ。当分の間、相田の弟子になりなさい。それで働き が良ければ考えてやってもいいわ。」 「あっ、ありがとうございますっ!」 「「ありがとうございますっ!」」 「僕達、アスカ様の下僕です。何でも言う通りにいたしますっ!」 「「いたしますっ!」」 「何でも言いつけて下さいっ!」 「「言いつけて下さいっ!」」 「分かったから、顔を上げなさいよ。」 そう、3人ともずっと頭を床にこすりつけていたのだ。 「「「はいっ!」」」 だが、そのうちの一人を見て驚いた。 「アンタ、テリーじゃないのよっ!」 それを聞いたテリーは、バツの悪そうな顔をした。 「すみませんでした。アスカ様を慕うあまり、余計なことをしてしまって。でも、心を入 れ換えて頑張りますので、お許し下さい。」 そう言って、テリーは深々と頭を下げた。 「じゃあ、聞くけど、なんでマナなんて利用したのよ。」 「はあ、マナちゃんの話を聞くかぎりでは、碇君は浮気性で、アスカ様にはふさわしくな いと思ったんです。それに、アスカ様は碇君のことを単なる同居人だと言っていたという 話しだったので、まさか本当に好きだったとは思わなかったんです。」 「うっ。」 アスカは返答に詰まった。シンジのことが好きではないとは言えないし、さりとて、ここ で反論しないと、アスカがシンジのことを好きだという話が広まる可能性もある。 「テリー、言っておくけど、アタシが誰を好きかなんて話は、金輪際しないこと、絶対に ね。分かった?」 「「「はいっ!」」」 3人の少年達は、声を揃えた。 「あっ、そうだ。隣の部屋に、アスカ様を襲おうとしていた奴らを縛って捕まえてあるん ですが、どうしましょうか。」 「好きにしていいわ。」 「分かりました。」 そこに、アールコートからの連絡が入り、ナスターシャ達がシンジに変装したレッドウル フを呼び出したことを知った。 「じゃあ、アタシはもう行くから。後は、相田にちゃんとあいさつして、弟子入りするの よ、分かった?」 「「「はいっ!」」」 こうして、一件落着となった。だが、アスカが去った後…。 「やった〜っ!上手くいったぜ!」 「うわあ〜いっ!やったなっ!」 「大成功だっ!」 「「「でも、アスカちゃんって、本当にかっわい〜なっ!」」」 3人の少年達は浮かれて喜んでいた。 一方、部屋を出たアスカは、ミリアに呼び止められた。 ミリアは、アスカの護衛役であるため、学校内とネルフ内では必ずアスカから少し離れた ところにいる。今も、アスカの身に何かあれば、体を張って助けるべく待機していたとこ ろである。 ミリアから少し離れたところには、これまたサグのメンバーが3人待機していた。普段の アスカのガードは、ワイルドウルフが2人、レッドアタッカーズが2人、合わせて通常4 人いるが、学校とネルフでは危険はあまりないため、それらのガードはつかない。 このため、学校内ではミリアのみがアスカガード役であるが、ネルフ内ではそれに加えて 3人のアスカ専用のガードがついているのだ。だから、アスカを襲撃しようと思う者がい ても、事実上不可能に近いのだ。 「ああ、ミリア。お役目ご苦労さん。で、何の用なの?」 「ああ、先程から葛城諜報部長達が、惣流さんの居場所を必死に探しているようだ。それ で、教えてもいいかどうかを確認したい。」 「ああ、そういうことなら、アタシが連絡するわ。」 アスカは携帯電話を取り出して、リョウジと連絡をとった。 「ああ、加持さん。アタシよ、アスカ。えっ、アタシを狙っている奴らがいるって?ああ、 大丈夫よ。撃退したから、心配しないで。」 電話の向こうで、リョウジが安堵の声をあげるのを聞いて、アスカはなんだか嬉しい気分 になった。 *** 「さあて、アンタ達。十分反省したかしら。」 「「「はい…。」」」 翌日、アスカはナスターシャ達を呼び出して説教をしようとした。だが、ナスターシャ達 は、3人とも目に涙を浮かべている。 「ん?どうしたのよ、アールコート。」 アスカは、3人組を連れてきたアールコートに尋ねた。 「昨日は、かなり凄い写真を撮られていましたから…。」 「ふ〜ん、そうなんだ。ちょっと見せてよ。」 「はい。1から10まであって、10が一番凄いんですが。」 「じゃあ、1を見せて。」 アスカが見てみると、1でも超恥ずかしい写真が満載だった。 「は〜っ、これは凄すぎるわねえ。ちょっと公開するのはためらっちゃうわねえ。」 「お願いします。そんな写真、誰にも見せないで下さい。」 「もう2度とあんなことはしませんから、許して下さい。」 「反省してます。本当にすみませんでした。」 3人とも、涙ながらに謝った。深々と頭を下げながら。 「まあ、いいわ。で、次はと。」 2と書かれたミニアルバムを見たが、さっきよりもさらに恥ずかしい写真になっていた。 「ねえ、アールコート。これって、誰が考えたの?」 「それは、先生達です。」 「そうか、大人のセンスっていう訳ね。」 アスカは次々に写真を見たが、3までで止めてしまった。アスカの感覚では、ついていけ ないレベルになっていたからだ。 「そうだ、アンタ達、本当に反省してる?」 「「「はい。」」」 「じゃあ、こうしましょうか。3人とも、ヌード写真集を相田に作ってもらうこと。一番 出来の良い写真集を作った人は、許してあげるわ。そして、そうねえ。この、10と書い てある写真は返してあげるわ。」 「「「ええっ!」」」 「嫌ならいいわよ。どうするの?」 「「「分かりました…。」」」 ナスターシャ達は、ガックリと肩を落とした。全部返して欲しいのが本音だが、今はそん なことを言える雰囲気ではないことは分かっているらしい。 「ああ、それと、アンタ達。今付き合っている男はいるの?」 「ええ、ドイツにいます。」 ナスターシャは怯えながら言った。すると、アスカの目が少しつり上がった。それを見た ためか、後の二人も怯えながら小さな声で言った。 「いません。」 とソフィー。 「私もいません。」 とジャネット。 「ふうん、じゃあ、ナスターシャ以外の二人は、もう1冊作ること。それは、男の子と絡 むシーンだけにすること。付き合っている男がいないならいいわよね。」 「「え〜っ!」」 途端にソフィーとジャネットが大声を出す。 「実は、私は付き合っている人がいるんです。」 「私もです。」 ソフィーとジャネットが言ったが、アスカは顔をしかめた。 (こいつら、この期に及んで嘘を言うなんて。まだ反省してないっていう訳ね。) 「それ以上言ったら、3人以上の男と絡むこと、いいわね。」 それを聞いたソフィーとジャネットは、うつむいて沈黙するしかなかった。 ***  その後、ロシア支部のエカテリーナ、ドイツ支部のハンナ、オーストラリア支部のジュ リアの3人組も同じようにレッドウルフが変装したシンジに引っかかった。 ブラジル支部のエドナ、インドネシア支部のクリスティン、中国支部のフェイの3人組も、 同様に、まんまと引っかかった。 だが、特に汚い手段を用いた訳では無かったため、説教されただけで許された。 なお、イギリス支部のイライザ達だけは、結局色仕掛けではなく、シンジの家来になりた いと頭を下げただけだった。このため、特にお咎めを受けることは無かった。 こうして、シンジの与り知らぬところで、シンジとアスカの襲撃作戦はことごとく失敗し た。そして、アスカの新たな下僕が3人生まれたのである。これによって、研修生達の勢 力図が大きく変わることになった。 (第76.5話へ)

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―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――― あとがき  アスカにかかったら、研修生達は赤子の手をひねるようなもの。それに気付かなかった ナスターシャ達は、反対に死ぬほど恥ずかしい目に遭いました。イライザは、なぜか上手 く切り抜けたようです。 2003.6.14  written by red-x



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