いつもと変わらない休日の午後。穏やかな日差しが差し込むリビング。ソファに座り新聞を読む由紀斗。
「あら?もうロボット作り終わったの?」
さっきリビングにきた時にはダイニングテーブルを散らかしていたのに、テーブルの上は何事もなかったかのように片付いている。
「んー。」
新聞を読んでいるときの由紀斗は人の話を聞いているのか聞いていないのかきわどいところだといつも思う。さっきまで作っていたロボットにしてもそうだ。毎週火曜日に発売されているらしいのだが、平日は仕事があるため触らず、休日を楽しみにしているらしい。その分さらにロボットを触っているときは回りのことに気が付いていない。
それでも、ロボットを作っているときの由紀斗の姿はとても好きだった。真剣なまなざしに、器用に動く指先。決して細くはない指が、繊細に動く。
「由紀斗さんって指先器用よね。」
白いふわふわのワンピースのすそを気遣いながら由紀斗の隣に座る。さっきまで細かい作業に勤しんでいた手を取り、じっと眺める。自分よりも一回りほど大きい手。そして、長い指。
手をとられて、ようやく新聞から目を離す。
「そうか?葵の方が器用だろ?細かい作業とか得意じゃないか。」
確かに不器用な方ではないだろう。しかし、指は由紀斗ほど太くもない。
「まぁそうだけど・・・私由紀斗さんの指とか、手好きだな。」
両手で持った手に頬を寄せると、その指が頬を撫でる。
「くすぐったいわ。」
言いながら手を離そうとしない。そんな姿を見て由紀斗の顔に自然と笑みが浮かぶ。
「葵。」
捕われた手が、葵の顎をとらえ、引き寄せる。視線を絡めれば、自然と唇が重なる。
「あんっ・・・駄目よ・・・耳が弱いの知ってるくせに・・・」
髪をかきあげるようにして触れた耳に、過剰に反応する葵。もっともっととねだるような甘さがその声にはあった。
再びくちづけたまま、腰を引き寄せ、耳から首のあたりを弄る。
「駄目だってば・・・ねぇ・・・」
駄目としか言わない唇をふさぎ、耳元を弄る事を止めない。葵が好きだと言った指先は、本人が意識する以上に細やかな動きをする。葵を追い詰める指先。
腰を引き寄せた手は背中を撫で始める。押し返そうとした葵の手は、形ばかりの抵抗を示すが、力が入っていないのは明らかだった。
長い長いくちづけ。いつまでも続くのかと錯覚してしまいそうなくちづけは葵の思考力を奪うには十分で、名残惜しそうに離れる頃には、ボタンを外され、ワンピースをはだけさせた葵が、潤んだ目で由紀斗を見つめていた。
「ばかぁ・・・駄目って言ったのにぃ・・・」
ばかと言われても腹が立たない。腹が立つどころか、むしろ誘惑されているような気さえする。
「ねぇ・・・もっとぉ・・・」
甘ったるい声でねだる葵。普段とはまったく違う雰囲気に気圧される。ゆっくりと唇を合わせ、くちづける。深く絡み合い、お互いの境目がわからなくなる。
その間にワンピースは服としての用途を失い、ソファから落ちていく。
白いワンピースの下には白いベビードール。白いブラとショーツと、白いガーターベルトに留められたオフホワイトのストッキング。
白一色の姿は清純さを思わせる。
「真っ白だね。」
微笑を浮かべ囁く由紀斗。
「そんなにじっと見ちゃ恥ずかしいわ。」
頬を赤く染めると、一層可愛さが引き立つ。
恥じらいに頬を赤く染めた純白の天使。
恥ずかしさを誤魔化すかのように、葵は由紀斗の頬を両手に包み込むようにしてくちづけ、そして頭を胸に抱いた。
「頭を抱きしめるって何でこんなに落ち着くのかしら・・・」
下からくぐもった声が聞こえてきた。
「うれしいけど、窒息しそう・・・」
頭をしっかりと抱き締められると身動きが取れない。ましてや、顔を柔らかい胸に埋めると真綿で首を絞められているように酸素の供給が滞る。
酸欠の訴えは何事もなかったかのように流され、葵の手が緩む様子もない。
「ひゃぁっ!」
背中からわき腹を撫でる指先に跳ね上がる葵。緩んだ腕から、酸素を求めて由紀斗が顔を出す。肺が新鮮な酸素を満喫する間も、指先は葵の身体を這いまわる。
「んんっ・・・だめぇ・・・くすぐったいってば・・・」
酸素を得た由紀斗と入れ替わりに、今度は葵の酸素供給が滞り始める。途切れる息遣いに誘われる。
甘い吐息に吸い寄せられるように、再び唇を合わせる。どうしてこんなにも可愛いのだろうかと、由紀斗はおぼれる自分を再確認する。今までに何度も繰り返してきた思考なのだけれど。
「ねぇ、葵?ココ・・・どうなってるかわかる?」
そっとショーツの中心を撫でてやると可愛い鳴き声があがった。
葵は頬を赤く染めながら、普段あれほどストイックな雰囲気の由紀斗がどうしてこうもイヤらしくなるのだろうと頭の片隅で思った。
「もぉ・・・そんなこと言って・・・ゃぁんっ・・・」
横からするっと忍び込んだ由紀斗の指先は、ココでも本人が意識する以上に細やかに動き、葵を追い詰める。くちゅくちゅと水音をたてながら奥へ奥へと誘い込まれる。
「せっかくの可愛い下着だし、脱いでしまおう。」
ニヤリと笑った顔もセクシーだと思ってしまう葵は、やっぱり由紀斗中毒。しかも手の施しようもない末期患者に違いない。
由紀斗の為すがままにショーツもブラもソファに落として、残ったのはベビードールとガーターとストッキング。上気した頬にちょっと幼い表情。純白の天使を思わせるのに、色っぽい中身が透けて卑猥ですらある。
そんな姿を由紀斗が堪能している間、葵の指先は彼のジーンズへと伸びていく。由紀斗が先ほど指摘したとおり、やはり彼女の指先もまた器用に動き寛げていく。
ひんやりとした葵の白い指先が由紀斗の熱に絡みつく。
お互いに器用だと褒める指先がお互いを翻弄し、追い詰めていく。
「ちょっ・・・やんっ・・・だめぇっ・・・っっ・・・」
葵がびくびくっと体を震わせてたのを見て、由紀斗が耳元で囁いた。
「そのまま、今すぐ入れてよ。」
ちょっとかすれた声にさらにゾクゾクさせられる。
腰に添えられた由紀斗の指先に導かれ、降ろされていくのに合わせるように、絡み付いたままの葵の指先がゆっくりと綻んでいく。
ぎゅうぎゅうに締め付けられながら奥へと押し入っていく感覚に声もでないのはお互い様。最奥までたどり着けば、どちらともなく溜め息がもれる。
葵の指先は由紀斗の頬をなぞりくちづけをせがむ。それに応えてやりながら、由紀斗の指先は葵の背中をなぞったり脇腹をくすぐったりしている。葵のナカは由紀斗の指先が動く度に、ぎゅっぎゅっと応える。
「ね…動いても良い?」
頬を上気させ、うっとりとした目は、我慢出来ないと訴えている。この表情がとても可愛くて愛おしいなどと言えば、恥ずかしそうに俯くだろうか?
「姫君のお望みのように。」
にっこりと笑顔で促され、葵は動き出す。自分ばかりが余裕がないみたいで悔しいとも思うけど、そんな思いはすぐに散ってしまう。
ゆっくりと動き出した葵の腰を両手で掴み、動きをサポートする。葵の手は首に回され、ぎゅっと抱きついている。腰の動きに合わせて、引き締まった由紀斗の胸板と柔らかな葵の胸が擦れ合う。
「あんっあんっあんっ・・・いやっ・・・深いぃ・・・」
頭をイヤイヤとするように左右に振りながら乱れていく葵を見ると嗜虐心が煽られる。
「いや?いやなのか?」
尋ねながら腰を掴んでいた手を離し、ごろんと後ろに倒れる。由紀斗の動きはぴたりと止まり、動いているのは上で跳ねている葵だけ。
「だめぇ・・・いやじゃないからぁ・・・やめないで・・・」
刺激が減って物足りないようで、恨めしそうに睨んでくる。葵は睨んでるつもりなのだろうが、目が潤んでるので睨まれている気がしない。
「わがままだなぁ・・・葵は・・・」
いぢわるな笑みを浮かべながら、起き上がった由紀斗の指先が動き出す。後ろに回した手にお尻を鷲掴みにされて、甘い吐息が漏れる。魔法の指先は少し動くだけで葵を翻弄する。
「葵、ぎゅぅぅってしがみついて?」
葵の手足が由紀斗に絡みつく。由紀斗の手も片手はお尻を掴んだまま、一方は腰を抱きしめる。密着したままごろんとソファに横たわる。
抱き潰すぐらいにぎゅっと抱き締めて、深くぎゅっと絡まった足を締められる。視線を絡ませればくちづけて、こちらも深く絡み合う。
「んんっ・・・すごい・・・ひとつって感じ・・・」
嵐のような激しい快楽ではなく、穏やかに与え合うような心地よさが広がっていく。心まで溶かされてひとつになっていゆくような。
穏やかな波に飲まれるようにして葵が体を震わせると、その振動と締め付けに由紀斗も飲まれ、葵の奥へと放った。
じんわりと熱の広がってゆく感触に、葵はうっとりと目を閉じて由紀斗にくちづけた。このまま溶け合って微睡んでいたい。
プルルルルルル…プルルルルルル…プルルルルルル…
ビクッ
電話の音に葵は体を震わせた。しかし無視を決め込むようなので、由紀斗も気にしないことにした。用事があるならまたかけてくるか留守電にメッセージを残すだろう。
ピロロン…ピロロン…ピロロン…
ピタッ
今度は由紀斗の携帯が無機質な音を立てている。
タータタッタ♪タータタッタ♪タタタタタタタタタッ♪
さらに葵の携帯がパ○リロの着メロを奏ではじめる。この着メロは翔(愚弟)限定のはず・・・。
ピンポーン…ピポピポピン・・・ポーン
とどめに狭山家のチャイムが鳴り響く。二人とも大きなため息をついた。起き上がり体を解くように葵がゆっくりと腰を上げる。
「・・・・・・んはっ」
甘いと息を漏らしながら離れていく姿を見ると、引き止めてしまいたいなんて思う。名残惜しいキスをして、しぶしぶ離れた。葵はインターフォンに、由紀斗はジーンズを拾って携帯に向かう。
「げ・・・ちょっと待って、わかったから待ちなさいよ。」
葵の驚いた声がリビングから聞こえてくる。どうやら来客は知人のようだ。さて、俺の携帯は・・・仁科先生???
「由紀斗さんっ急いで身繕いしてリビング片付けてっっ!!」
悲鳴に近い葵の声に手早くシャツのボタンを留める。リビングの片付け・・・ベランダに続くガラス戸を開けて喚起をしつつ、ソファの位置を直す。
葵がデニムのスカートとTシャツに着替え、来客のためにロックを外していた。一体誰が来たのだろうか?そういえば葵の携帯も鳴ってたよな?しかもパタリロ・・・。
葵が少し困ったような笑みを見せてから玄関へと向かおうとしたのを見て、由紀斗はつい腰を抱き寄せてくちづけてしまった。まださっきまでの雰囲気を残していて困ったようなのに色っぽかったから。
「んっ・・・ダメ・・・ぁ・・・」
すぐに来客が玄関に迫ってるのにくちづけは終わりそうにもない。さっきまでの濃厚な空気が戻ってきてしまいそう。
「来ちゃう・・・からぁ・・・んんんっ・・・ぁっ!!」
ガチャッ
「こんにちはー♪」
ドタドタドタドタドタ・・・
「いらっしゃい・・・って君か。」
何故か床にうずくまる由紀斗が来客を出迎える。
「はーい。美央ちゃんです。うきゃっ!」
美央が押しのけられて前につんのめったのを、翔がなんとか後ろから掴んで玄関とのキッスは免れたようだ。
え、誰が押しのけたかって?
「あらぁ〜?どうして玄関の床にうずくまってるんですか?佐山センセ?」
「あゃ・・・仁科先生、まずはちゃんとご挨拶してください。突然お邪魔してすみません。ご無沙汰してます、佐山先生。」
美央を押しのけて玄関に顔を突っ込んだのは仁科亜矢子先生。そしてそれを諫めて首根っこを掴んで後ろに引っ張ったのが松川宏久クン。亜矢子はじたばたとするが身長差も体力差もあって敵わない様子。
「おぅ。松川、久しぶり。元気にしてたみたいだな。」
すっと立ち上がり由紀斗は松川と向かい合った。亜矢子は意識的に無視。もちろん(笑)
「ちょっとぉ、宏久っ放しなさいよっ!!!」
「人の家の玄関でやかましいわっっ!!騒ぐなら出て行けーっっ!!」
奥から顔を出した葵がキレた。
由紀斗はその様子をやれやれと苦笑しながら見ていた。
そんなこんなな狭山家のある休日でした。ちゃんちゃん。
さてさて、この後なんでこのメンツがやってきたのかが明らかになるわけだが、それはそれ。指先とは関係もないので別のお話ということで。
♪あとがきとう名の戯言?言い訳?♪
皆様ご無沙汰してました。本当に。二年ぶりですか?地下室の更新。いえ、2年ぶりでもやめずに良くやったと褒めてください(平身低頭)
さて、この作品でようやく18のえっちvのお題半分できました。まぁ一つに5つも詰め込むなんて荒業かましてるんで作品数は4つ目なんですが(汗)この調子でのらりくらりとやっていきたいと思います。3年がかりで9つですから、きっと後3年以内には完遂できるのではないだろうかなんて、安直に考えていたり…。
えぇっと、題名ですが(仮)です。といいますのも、『指先で描く休日』『指先に愛を乞われて』『指先で愛を詩って』『愛をささやく指先』『愛を紡ぐ指先』と、5つほど案を挙げたのですが、どれも盟友のお眼鏡に適わず…ぐすん。新しく思いつかず、かといっていつまでも更新しないわけにもいかない…というわけで(仮)です。もしかすると今後題名のみ差し替えということもあるかもしれません。トホホ。
なにはともあれ、こんなところまで読んでいただいてありがとうございました。
ご意見ご感想いただければPCの前で舞い上がって喜びますし、もしかすると筆の遅さに良い薬になるかもしれません。
ではでは、失礼いたします。
20060125 響万音 参る
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