貴女と初めて出会ったとき俺達はすぐにでも跪きたくなった。
俺達の細胞自身が、貴女が絶対的存在であることを知っていたんだ…
俺達は出会った瞬間に貴女に心を奪われていた…―――――――――
貴女に忠誠を 3
「「お帰りなさいませ」」
「ただいま」
私は玄関で私を迎えてくれた比呂士と精市に微笑みながら挨拶し、そこに一番の問題児がいないことに気付いた。いつもなら一番に抱きついてくるのだけど…。
「滋郎は?」
「さあ。またその辺で寝てるのではないでしょうか?」
「ミーティングするから起してきてくれる?………いえ、いいわ。久しぶりに私が起しに行く」
私はそういって玄関から大広間を突っ切って客間を通り抜け、中庭のほうに移動した。
(この辺にいると思うんだけど…)
私はスリッパを履き、中庭に出てぐるりとあたりを見渡した。ちょうど日が優しく当たる場所に、滋郎の金色の頭が見えた。
(ホント、良く寝るわね〜…。尊敬してしまうのは私だけかしら?)
私はゆっくりと滋郎に近づき、しゃがみこんで滋郎の頭を撫でながら話しかけた。
「ジロー。起きて?ミーティングするから集まって欲しいの」
気持ちよさそうに私の手に擦り寄ってきていた滋郎は私の言葉にうっすらと目を開き、眠たそうな声で返事してきた。
「う〜…。まだ眠いC〜。もうちょっとだけ…駄目?ご主人様も一緒に寝ようよ〜」
「あっ!ちょっ?ちょっと!こらーーーーっ!!!」
私は頭を撫でていた手を急に引っ張られバランスを崩して滋郎のほうに倒れこむと、滋郎はそのまま私を抱きしめてまた夢の中に戻っていった。
「誰か〜…」
私がため息をつきながら小さくつぶやくと、景吾と比呂士がすぐに駆けつけてきた。
(ああ。この子達の聴力の凄さを忘れてたわ。………ということは滋郎も私の足音に気付いて寝てる振りしてたのね?しょうがない子ね…)
「マスター!!!どうかなさいましたか!?」
「無事ですか!?………オイ!滋郎!何やってやがる!?マスターを離せ!」
比呂士は私たちの状態を見て呆れたようなため息をつき、景吾はこめかみをピクピクとけいれんさせながら滋郎を強引に私から引き剥がした。
「うーーーっ!!!うるさあああいぃっ!!!」
景吾に強引に起こされて豹変した滋郎は、がばっと勢い良く起き上がると滋郎から解放されて伸びをしていた私に再び抱きついてきた。
「ジロー…。起きた?」
「うるさい奴のせいで起きたC〜…」
私はむすっとした表情のまま抱きついている滋郎に苦笑し、なだめるように頭を撫でながら滋郎に話しかけた。
「ほら。いい子だからそんなに怒らないの。ちょうど良かったじゃない。ミーティングに行こう?」
「うん。わかった〜♪」
私に抱きついたまま笑顔にもどった滋郎を見て、それを見ていた二人が滋郎を睨んだ。
「マスター。甘やかしすぎですよ。滋郎…いい加減にマスターから離れろ!!!マスターはお疲れなんだぞ?負担を増やすな!!」
「滋郎君。そのように甘えるのは感心できませんね。」
二人にそういわれてしぶしぶ私を解放した滋郎はこれ以上何か言われる前に逃げようと思ったのか、「それじゃ、ご主人様、先に行ってるね〜」といいながら中庭を出て行ってしまった。
「大丈夫ですか?マスター」
「大丈夫よ。ありがとう。それより景吾に比呂士…。仕事以外のときに私をマスターって呼ばないでって言ってるでしょう?」
「「…申し訳ありません」」
「今度からは気をつけてね」
私は二人が頷くのをみてにっこりと微笑み、二人の手を取った。
「「様!?」」
「いいじゃない、たまには♪」
二人が驚いたように手を引こうとするのを笑顔で阻止して、私は二人と手を繋いだままミーティングルームに向かった。たまにはこういうのもいいかもしれない。この子達は特に甘えてこないから…。
「それじゃ、明日からの計画を立てるわ。」
私はみんなを見渡しながら言った。
「今回の仕事はボディーガードよ。依頼人本人とその息子を守るわ。期限は相手を突き止めて危険が及ばないようにするまで。」
「危険が及ばないっていうのは具体的にはどういう状態になるまでなのですか?」
私はすぐに質問してきた比呂士に視線を向け、その問いに答えた。
「手を出してくる余裕をなくせばいいらしいわ。つまり逆に潰せってことよ。」
「今回は結構危険じゃのう。ま、俺達が普通の敵に負けることはないんじゃけどな」
不適に笑う雅治に「油断は禁物よ」といって微笑み返してから私は話を進めた。
「明日から任務に就くのだけど、役割を決めておくわ。まず近江会長をガードするのが私と仁王。ご子息をガードするのが景吾と滋郎よ。侑士はフリーで状況によって動いてもらう。それと、精市、比呂士はブレーン(頭脳)的役割をしてもらうわ。情報を集めて逐一報告して頂戴。」
「「了解(ぜよ。)(や!)」」
「「「わかりました」」」
「わかったぁ〜…zzZ」
私の言葉を聞いてみんなが頷いたのを確認した後、私はさらに詳しく説明していった。説明するべきことはたくさんあるのだ…―――――――――
「………最後に、みんな自分を犠牲にしたりしないように。そんな仕事の完遂の仕方は最低よ。一秒たりとも気を抜かないこと。わかった?」
「大丈夫です。任せてください」
「様は心配性じゃのぅ」
「誰にも傷つけさせへんから安心してや」
「早く終わるように情報も頑張って集めないとね…ふふふ。」
「様も、ご無理をなさらないでください。私はそのほうが心配です」
「zzZ…がんばるC〜」
約一人はどうも寝言のような気がしてならなかったが、それぞれ頷いてくれたので私はみんなににっこりと笑ってミーティングの最後の言葉を言った。
「これからしばらく頑張りましょう。ミーティングはこれで終わり。各自必要なものを用意しておくこと。それじゃ、解散!」
俺達はそれぞれの思いを胸に貴女に従う。あなたは自分を犠牲にするなといってくれるけど、俺達は貴女を守るためなら命をも投げ出すだろう。唯一にして絶対の貴女を守るために…―――――――――