これはいわゆる…嫌がらせ?
変化の始まり
「…………。」
いやまぁ、わかってはいたのだ。むしろ今までソレがなかったことが奇跡に近かったのだし…。
私の手には一通の手紙。可愛いものではなく。黒の便せんに赤の紙である。
いわゆるあれだ。不幸の手紙的な、アレだ。
「今日の昼休み、屋上に来い。ね…」
しかし、こんな何をされるかわかりきった呼び出しにホイホイと出ていくやつがいるのだろうか。
私の答えは決まっている。
(私に会いたきゃテメーで来いや!!!)
しかもご丁寧にカッターの刃入りとは。
嬉しすぎて涙が出そうだよ。キミ。
「アホくさ…」
群れないと何もできない人にはイライラする。
都合のいいようにリーダーをまつりあげ、チヤホヤして操った挙句、都合が悪くなったら決まってこういうのだろう。
「○○さんがやれって言ったから。」
都合の悪くなったリーダーを捨て、新しいリーダーをまつりあげるのだろう。リーダーというか生贄だ。
(まぁ、自分も群れないと何もできてなかった頃があるんだけどね…)
手紙を鼻で笑ってゴミ箱に捨てた後、そんなことを思いながら私は教室に向かった。
テニス部の人と一緒のときじゃなくてよかった。優しい彼らに心配をかけてしまうだろうから。
私は決意したのだ。
彼らの傍で見届けると。可能な限り一緒にいて、苦痛と喜びを共有するということを。
今更誰に何を言われようが、この決意を覆すつもりはない。
「〜!遅かったにゃ?後片付けでもしてたの?」
「。もうすぐHR始まるよ。」
教室に入った私を見つけて英二と周助が声をかけてくる。
「うん。ちょっと用事があってね♪ごめんごめん。」
私が席に着くと、タイミングを謀ったかのように担任が入ってきてやたらハイテンションで今日の連絡事項なんかを言っている。
それをなんとなく聞きながら、次の授業の宿題の確認しようと、ノートを取り出すために机の中に手を入れた。
「……っ!!サイアク…。」
じわりと指先が痛んで、赤いものがにじみ出す感触が伝わってくる。
結構深いかもしれない。
(油断してたなー…。)
「じゃ、何か質問事項はないかー?」
「はーい先生。カッターで切っちゃったので保健室いってきまーす。」
だらだらと血が流れているほうの手を上げ、先生に宣言する。
先生はぎょっとした表情で「は、はやくいけ!!」と言って教室の扉を開いてくれる。
ありがとう先生。初めて役に立ったね。(酷)
「「「…」」」
私は立ち上がりながら心配そうに声をかけてくる仲良し3人にへらっと笑って手を振り、教室を出た。
「…くっ」
教室を出て気が抜けた私の口から笑いが漏れる。
私は手を挙げたまま持っていたハンカチで止血点を縛りながら歩く。
「こういうの久しぶりだから、油断しちゃったや。……でもまぁ、こういうのは笑えないなぁ」
私がケガをすると心配する人がいる以上、ケガは出来るだけ避けなければ。
これはどうも相手さんも本気のようだし、私の体のためにも早めに決着をつけないといけないだろう。
それに…と私は考える。
(ここまで喧嘩を売られたら買わないと女が廃(すた)る!!)
何を勘違いしているのか知らないけれど、私はやられたら絶対にやり返すタイプだ。
相手がつぶれない程度にだけど。
「めんどくさぁーー…」
私はため息をつき、それ以上暗い方向に思考が行くのを止めた。
保健室につく頃には出欠は止まっていたから、大したことはないだろう。
保健室で手当てをしてもらった後、途中から授業に出るのも面倒だったからその足で屋上に行く。
(バトルフィールドになりそうな場所は下見しておかないと…ね。)
やるなら勝つ。やると決めたら徹底的に。
それが私のモットーだ。
何事も中途半端だとよくない結果を招きかねない。
(黒い自分も嫌いじゃないんだよねー。時々皆の白さがまぶしいけれど。)
色々と下見が終わったころに、授業の終了を知らせるチャイムがなった。
屋上から見える青い空を見上げ、大きく伸びをすると、私は教室へと戻って行った。
こんなに空は澄んでいて青いのに、私は黒く汚れてしまっている。
でも私は貴方達と共にいよう。
貴方達が私を求めてくれているから。
でも、白い仮面をつけることを、許してください。
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〜後書き〜
第二部、いよいよ動き出します。
私の中では第一部は前書きのようなもので、この第二部が本篇です。
徐々に明らかになるヒロインちゃんの本当の姿と変化していく周りの状況。
そしてヒロインちゃんの変化を描いていけたらと思っております。
シリアス風味が長くなるかもしれませんが、お付き合いいただけたら幸いです☆
2007,8/24