……これはもしや、羞恥プレイ?
第22話 手をつないで
今日、私は遅刻しそうになって電車で来たため、部活の後にのんびりと歩いて駅まで向かっていた。
「!待って!!一緒に帰ろう。」
後ろから声をかけられて私が振り向くと、こちらに走ってくる周助が目に入った。
(ここで断ったら女が廃る!!っつーかむしろどんどん来なさい!)
「うん!いいよー♪」
「お待たせ。じゃあ、邪魔者がこないうちに行こうか。」
そういって私の横に立って歩き始めた周助を横目で見ながら、私は周助に声をかけた。
「とうとう明日、地区予選だね。…頑張ってね。」
「くすっ。ありがとう。でもも一緒に頑張るんだよ?僕はの応援があれば負ける気なんてしないからね。」
「そりゃ頑張るともさ!でも、……私の応援があれば負ける気がしないって…あのねぇ、そういうことは好きな子に言うものだよ?」
私は珍しく白い周助に戸惑いながらも、くどき文句に取れなくもない言葉を言ってきた周助に、一応注意しておいた。
(私は勘違いしないけどほかの女の子は勘違いするだろうしね。しっかし、今日の周助は恐ろしいぐらいに白いな…。天変地異の前触れか?)
「以外の女の子に言ったりしないよ。………ところで、ずいぶん酷いこと思ってくれるじゃない?いい根性してるよね…(開眼)」
「ひぃっ!!!!!ごめんなさい!ごめんなさいぃぃっ〜〜〜!!!!!」
周助のあまりの白さに心をガードするのを忘れていた私は、周助に脅されて物凄い勢いで誤った。周助はそんな私を見つめてにっこりと(黒く)微笑んで、私に死の宣告をした。
「…駄目。許さないよ?罰として…」
(ば、罰!?今日はやたら厳しくない!?怖いよう…魔術の生贄とか…?いやでも黒魔術は使えないって言ってたし…。なに?何をされるんだ私っ!!!!!)
「な、何…?」
「うーん。何にしようかなぁ〜♪」
私が怯える様子を楽しそうに見ながら周助はもったいぶってなかなか言おうとしなかった。
「何!?なんなんですか!?早く言ってくれないと私の心臓は今にも止まりそうですよ!」
私が極度の緊張に耐え切れなくなって周助にそういうと、周助はポンッと手を打って、にっこりと笑ったままこっちに手を差し出した。
「じゃあ、手。貸して?」
「は?」
「だから、手。」
「いや、私の手はあいにく取り外し可能ではないですよ…?」
「…………ぷっ!あははっ。ってホント、面白いっ…!普通そんなこと考えないって!」
周助は真っ青になってそういった私を見てひとしきり笑った後、もう一度私に手を差し出して笑って震える声で言ってきた。
「そうじゃなくて、手をつなごうって言ってるんだ。」
「へ?それが罰…?」
「うん。それが罰。さ、早く。」
周助にせかされてとっさに手を出すと、周助は壊れ物を扱うように私の手をやんわりと握り、嬉しそうに微笑んだ。
(おいコラちょっと待て!なんですかそのめちゃんこ可愛い初恋の人と初めて手をつなぐ小学生みたいな純粋な表情は!!!!こっちのほうが恥ずかしくなってくるし…。)
私は周助の行動に思わず赤面し、うつむいた。そして照れを隠すためにコンクリートの上に転がる石の数を必死に数えていた。
「?どうしたの?」
「………何でも、ない。」
「…?あっ、もしかして、照れてるの?」
「違います!!!」
「可愛いなぁ…。」
私がバッと顔を上げ、周助を見つめると、周助は物凄く切なそうな、嬉しそうな顔で私を見つめていた。私は今度こそ頬が熱くなるのを感じて、うつむいたまま周助を引っ張って歩き始めた。
「、怒ったの?」
「ちっ、違うよ。」
「こっち向いてよ。」
「……いやだ。」
周助は嬉しそうにクスクス笑いながら私に並んで私の顔を覗き込もうとする。私は半ば意地になって顔を伏せていた。
(は、恥ずかしい!!!普通の罰ゲームより恥ずかしいし!!!ああ…。穴があったら入りたい…!!!!)
周助のからかうような声と、そんな私たちが他人にどう見られているのかが気になって恥ずかしくて顔など上げる余裕はなかった。
(腐女子魂が!!腐女子魂が目覚めてくれない!!!!こんなおいしい状況なのに!腐女子としての名が廃るぅ〜〜〜!!!!)
「………いつまで続けるんデスカ?」
「ん?」
「手、いつまで繋ぐの…?」
「うーん…。の家まで?」
(はあっ!?)
周助の言葉にびっくりして顔を私を見て、周助はふんわりと微笑んで「やっとこっちに向いてくれた」と言って来た。
「冗談だよね…?」
「さあ、どうかなぁ?」
そういってはぐらかす周助に、文句を言っているうちに、私は周助と手を繋いでいることを忘れていた。
「じゃあ、また明日。」
結局マンションまで送ってくれた周助が、名残惜しそうに私の手を離したのを見て、手を繋いでいたことを思い出した。
(………まさか!!ずっと繋いでたまま!?ありえない!!!何ですっかり忘れてるんだ私は〜〜〜〜〜〜っ!!!!!)
「?大丈夫?」
「はっ!大丈夫だよ!そ、それじゃ、また明日〜!!!」
そういって急いでマンションに入っていった私を周助は暖かい目で見ていた。……自分のことで精一杯な私は気付きもしなかったけど。
さっきまであった周助の体温がなくなった私の左手は、いつもより少し寂しい感じがした……――――――――