フムフム…今の時間軸はこの辺なのね。














               第21話 可愛いあの子はワカメ頭













「……越前は来ていないのか?」




私がせっせとマネ業をこなしていると、激しくどこかで聞いたことのあるセリフが耳に入ってきた。




(これって、もしかして…。うん。時期的にもこれくらいの時期だよね…?)



「さあ、知らないにゃ〜。」



「まだ来てないみたいっすよ。」




手塚の質問に対して首を振りながら答える二人を見ながら私は頭をフル回転させていた。




「まあいい。練習を続けるぞ!」




そういってカラーコーンを使った例の練習を再開したみんなを見ながら、私はコッソリとコートから抜け出した。




(コートの中でする仕事は大体終わったから洗濯物を干しに行くついでにその辺見てこよう……!!!!)












「ふう。後はあそこまで運んで干すだけ♪」




私は真っ白になったユニフォームを見て満足げに頷きながら、それを洗濯籠に入れてよろよろと運び始めた。




「ねえ、そこのアンタ。テニスコートってどっちにあんの?」



(来た!!!!!私の読みは正しかったのね!?)




私は心の中で激しくガッツポーズをとりながら洗濯籠を持ったまま振り向いた。態度の大きい彼に少々お灸を据えてやるために。




「それは人に物を頼む態度じゃないわよ?」



「……!へえ。アンタの名前は?」



「人に名前を聞くより自分から名乗ったらどう?」




私はにっこりと微笑みながら彼に言ってやった。彼は小さくヒュ〜と口笛を吹き、私が言ったように名乗ってきた。




「俺は立海大付属中、2年の切原 赤也!よろしくな。」



「…3年の よ。よろしくね、赤也君。」




私が「3年」というのを強調して言うと、赤也君はすぐに反応した。




「げっ!先輩だったんっすか!?俺てっきり同学年か、年下だと…」



「………どういうことかな、切原君?(黒笑)」




私が額に青筋を浮かべながらもさらににっこりと微笑みかけると切原君は必死に手を振りながら弁解してきた。




「ち、ちがうっス!!!洗濯物とか持ってたから新人なのかと思っただけっス!!!決して先輩が幼く見えたとかじゃないっすからね!?」



(よたよた歩いてたのがいけなかったのかしら…?私はどっちかというと年上に見られやすいんだけどね…。)



「そう。まあいいわ。それじゃ、頑張ってテニスコート探してね〜♪」



「えっ!?教えてくれないんっスか?」



「うん。私のことを年下に見た罰♪じゃあねー。」




私は両手に洗濯籠を持っていて手を振れなかったが、後ろで「そんな、酷いっスよ!」とか言っている切原君に首を後ろに曲げて有無を言わせずにっこりと微笑み、さっさとその場から去っていった。




(だってねぇ?ここで私が案内しちゃったら私がマネだってばれちゃうし。どうせちゃんと来れるんだから、そのときに驚かせたいよね〜♪)




そんな鬼のようなことを考えながら私は洗濯物干し場にたどり着き、おいしい場面を見逃さないようにマッハで洗濯物たちを干していった。











(よっしゃ!間に合っ……てない!!微妙に間に合ってない!!)




私はフェンスの前で切原君と大石君が話しているのを発見し、なんとなく近くにあった木に隠れながら聞き耳を立てた。




「………立海中。神奈川県代表が何の用かな?」



「ウィッス!ちょっとばかしスパイに…」




頭を掻きながらそういった切原は、周りをきょろきょろと見回し、手塚を見つけて指差しながら嬉しそうに声をかけた。




「おっ、見つけた!アンタ手塚さんだろ?ウチの先輩も一目おいてる!」




そういって獲物を見つけたといわんばかりに笑いながら近づきながら、切原はさらに手塚に声をかけた。




「いやー、ちょっとお手合わせしたいなあ!!去年の関東大会の団体戦でうちの先輩を破ったのあんただけだし♪」




手塚は大石の静止も聞かず自分に話しかけて来た切原を、冷静な目で一瞥し、冷たい一言を投げかけた。




「部外者は出て行け。」




その一言にカチンと来たらしい切原は、その後も手塚を挑発するような言葉を吐いていた。




「ちょっと、切原君。いい加減に…「おいコラくせっ毛!」



「あっvせんぱ…「うちの部長に失礼なことしてんじゃねえよ!!」



「とっとと出て行け!!」



「バカ!荒井!!!」





漫画で知っているといえどもあまりのいいように注意してやろうとかけた私の声は、どっかのバカによってさえぎられた。私が思わずそっちを見ると、ボールが凄いスピードで飛んできているのが見えた。




(あんのクソボケ!!!!ノーコンめ!!!私のほうに飛ばしてどうするっ!?ぶっ殺!!!)




ボールから目をそらせず、固まったまま近づいてくるボールを見ていると、切原君が私の前に立って一瞬のうちに荒井の球をイナした。




「俺のショットをイナした!?」



(……もっとほかに言うことあるだろ!?謝れバカ井!!!)



「……危ないじゃん。横から口挟まないでくれる?」




切原は荒井のほうを一睨みし、すぐに私のほうを向いて話しかけてきた。




「ゴメン!先輩!すぐ終わらせるからちょっと待ってくださいッス!」




私にそういった切原君は再び手塚のほうに向いてイナしたボールで遊びながら手塚に話しかけた。




「手塚さんさあ、別に深い意味じゃなくて一、二球交えようって言ってるだけじゃん。そんなシカト気分悪いなあ。アンタ……潰すよ?」




切原君と手塚君の近くにいる人間が二人の一触即発の空気を感じ取り、ごくりと生唾を飲み込む音が聞こえた。手塚は表情を変えることなく切原をみている。




「なーんてね。」




切原はニカッと笑ってその場に流れていた空気を払拭させ、ラケットで遊んでいた球を一際高く打ち上げた。




「おーい、新井君。ボール返すぜ!!」




そういって放たれたボールは、例のごとく荒井ではなく桃城にヒットし、桃の手からラケットがきれいな放物線を描いて飛んでいった。



ガゴッ!!




「いでっ!!」




あまりにも漫画どおりの展開に呆然と立ち尽くしていた私は、切原君の呟きによって我にかえった。そのときにはもう海堂君の頭にボールが当たっていた…。




(あ〜あ。防げるかな〜と思ってたんだけどなぁ。……みんな頑張って走ってね〜。)



先輩!やばそうなんで俺帰るっス!それじゃ、また。」




私が明鏡止水の心でみんなを見ていると、切原君が私の耳元でそうささやいてコッソリとコートから出て行った。




ぎゃあぎゃあと騒ぎ始めた部員をいつもより無表情で見ていた手塚は、大きく息を吸い込んだ。




「全員グラウンド30周して来い!!!!」




グラウンド全体に聞こえるほどの手塚の怒号でその場は収まり、みんな仲良くグラウンドを走りに行った。








私は誰もいなくなったコートに転がったボールを拾いながら、今日はおいしい一日だったわ!とか思っていた。








(こういうイベントがあるならマネも捨てたもんじゃないわね♪)













の暴走はいつまで続くのだろうか…それは神のみぞ知る。









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