今日は初バイトの日なのです!!
第18話 バイト
放課後、人の少なくなった教室では自分もさっさとバイトに行くべくせっせと帰る準備をしていた。
(バイトっ、バイト♪たっのしいバイト〜☆)
まだ楽しいかどうかわかるはずのないがなぜバイトが楽しいと決め付けているのか。それは、のバイト先がスポーツ店だからである。つまり、は期待しているのだ。他校のテニス部と会えることを…。
(千石君とかに会いたいな〜♪あとはいつもぼやいてる人とかリズムに乗ってる人とか。一番会いたいのは立海の人たちだけど流石に遠いし無理だろうなあ…。)
そんなことを思いながら帰る用意をしていると周助が背後から声をかけてきた。
「あれ…。、帰るの?バイト?」
「うひゃぅ!!!!しゅっ、周助!!いきなり背後から声かけないでよ!!!!」
「驚いた…?」
そういって悪ぶれもせずにっこりと微笑んでくる周助には怒る気も失せ、質問に答えた。
「普通の人は驚くわよ…。……。そうよ。今日からバイトなの。だからマネは明日からね。」
「そう…。今日みんなに紹介しようと思ってたんだけど…。バイトならしょうがないね。それより、……なんで他校のテニス部の名前知ってるのかな?」
は後半の周助の発言に動きを止めた。
(ヤヤヤ、ヤバイッ!!!!読まれてた!!どうしよう。どうすりゃいいの!?)
私がだらだらと冷や汗を流しながら必死に打開策を模索していると、周助はさらに私の退路を断ってきた。
「転校してきたときも菊丸の名前知ってたよね…?何でかな?今教室には僕としかいないんだから…教えてくれるよね?(開眼)」
「……し、しかしながらしゅう――「おしえてくれるよね…?」
「は、はい…。喜んでお教えします…。」
周助の恐ろしさに耐え切れなくなったは、異世界から来たこと、この世界はの世界で漫画として存在していることなどをかいつまんで教えるつもりで話し始めた。
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「ふうん…。不思議なこともあるんだね。特にその神様とかね…。」
かいつまんで教えるつもりだったは、周助の鋭い質問によってすべて話してしまったことにショックを受けた。なんだか負けたような気分になったのである。
(こ、こんなはずでは…。)
「よくわかったよ。話してくれてありがとう。君に不思議なものを感じる理由がわかったよ。でも、それはほかの人には話さないほうがいいと思うよ?」
(当たり前だ!!!周助さえ聞いてこなければリョーマ君以外にこのことを話す気はなかったのよ!!!!!!ああもう!そんな綺麗な笑顔でうれしそうにしてんじゃない!!………襲うよ?)
は周助がふんわりと微笑んで顔を傾けながらこちらを見てくるのにごまかされそうになりながら、心の中で罵倒していた。周助に読まれないように…。
は何気なく時計に眼をやり、蒼白になった。
「時間がヤバイ!!!!バイトに遅れるぅ〜〜〜〜〜〜!!!!!周助!さっき話したこと誰にも言わないでよねっ?!それじゃ、また明日!!!」
「言わないよ。気をつけてね、。また明日。」
そういって手を振ってくる周助に手を振り返す余裕もなく、私は全速力で自転車をこいでバイト先に向かった。
「ま、間に合った…。死ぬかと思ったよ。」
はぜえぜえと肩で息をしながら店の中に入っていった。呼吸を整えながら店長を探していると向こうのほうにいた店長がに気付いてこっちに来てくれた。
「おはようございます。今日からよろしくお願いします!」
「ああ、おはよう。早速だけど、これに着替えてきてくれるかな?スタッフルームはあっちだよ。」
「はい!」
は笑顔の素敵な店長さんに促されてすばやく制服からスタッフジャージに着替え、店長さんのところに戻った。
「店長!着替えてきました。何をすればいいですか?」
「今日は仕事を覚えてもらうから私の仕事を見ながら手伝ってくれるかな?ああ、あとレジ担当といっていたんだが、ほかの仕事もしてもらうことになったよ。いいかい?」
「レジ以外でもご教授していただければ大丈夫です。私に出来ることならおっしゃってください!」
「そうか、ありがとう。すまないね。じゃあ、いまからどこに何があるか覚えてくれ。お客様に聞かれた時に案内できないようじゃ困るからね。大体覚えたら戻ってきてくれ。」
「はい。それでは失礼します。」
は早速どこに何があるか覚え始めた。記憶力はもともとかなりいいほうなので店内をふた周りする頃には大体の配置を覚えていた。
(うん、いい感じ♪ここならうまくやって行けそうだー!!)
その後も順調に店長から言われたことをマスターし、はこの仕事に手ごたえを感じながら、3時間ほど働いた。店長もの覚えの早さに驚きながらも満足そうな表情をしていた。
とにもかくにも、の初バイトは仕事を一通り覚えて終了した。
「それじゃ、次からは一人でやってもらうことになるけど、何かわからないことがあればわからないままにしないですぐに聞いてくれ。今日はもう上がっていいよ。」
「はいっ、お疲れ様でした!お先に失礼します。」
は制服に着替え店長に挨拶したのち、店を出て近くのスーパーに買い物に行くべく、自転車をこぎ始めた。
(バイト、これからが本番よね!頑張らないと!!!今日のご飯は何にしようかな〜♪)
すっかり日の落ちた夜道に、街灯に照らされたと自転車の陰が映し出されていた。