私は目立たず普通の学園生活を楽しみたいだけなのに…。
第17話 お昼ごはん。
「!お昼ご飯一緒に食べようよ。」
「うん、いいよー。どこで食べるの?」
「は窓際に近い席だし、そっちのほうで食べよう!」
「じゃあ、英二に机借りようか♪」
授業が終わってお昼休みになり、私と亞江香はご飯を一緒に食べることにした。私は机を借りようと英二に声をかけた。
「英二!机借りてもいい?」
私がそう聞くと、英二は不思議そうな顔をして首をかしげながらいってきた。
「……?俺たちも一緒に食べようと思ってるんだけど…ちゃん窓際の席がいいのかにゃ?」
(…………はい?今さっきこの子はなんていったのかにゃ?また私が睨まれそうなことをさらっと言ってのけたような気がするんだけど…?)
私は思わず心の中で菊丸言語を使ってしまった。著作権は大丈夫だろうか…?
たぶん聞き間違えではないのだろうけど、私は念のためもう一度英二に聞き返した。
「一緒に食べるの…?英二と周助が、私と亞江香と一緒に…?」
そう聞き返してやると、英二はうれしそうに笑って頷いた。どうやら私はこのクラスの女の子に嫌われそうである……亞江香は別として。私は英二に気づかれないように小さくため息をついた。英二は私に「不二を探してくるにゃ♪」と言い残して廊下に出て行った。不二はさっき先生と一緒になんか運んでた気がするんだけど…
「ハァ、平和な時間が…。」
私が愚痴っていると亞江香は二人が一緒に食べることを知っていたのか、くすっと笑っていた。私は恨みがましい視線を亞江香に送りながら話しかけた。
「じゃあ、このあたりの机適当に借りようか…。」
「そだね。手伝うよ。」
「当たり前だし…。」
「何でそんなに目立つの嫌がるかなぁ?苛められたりしたら私が助けてあげるから安心しなさい♪」
「助けてあげるって言われても…。私は普通の学園生活を平和に暮らして生きたいだけなのよ。」
私と亞江香はガタガタと机を向かい合わせながら小声で話をした。私の言葉に亞江香はプッと噴き出し、「無理、無理っ!!最初に周助と私に気に入られた時点で平和な学園生活なんてできないよ!あははっ♪」などとのんきに言ってきた。
(ひ、人事だと思って……!!!しかも亞江香に気に入られても平和な生活は送れないって…自分で自覚あるところが恐ろしいよ。まあ、影でこそこそ人の悪口いってる人とは比べ物にならないくらい大好きな性格だけどさ。)
机も並べ終わって椅子に座り、私は亞江香と話しながら周助と菊丸を待っていた。
「ごめんっ!待たせちゃったね。先に食べててくれてもよかったのに。」
そういって入ってきた周助は走ってきたのかわずかに乱れた制服を整えていた。
(ぐはっ!!!色っぽい……。女より色っぽいってどういうことよ!?電車とか乗ったら絶対痴漢にあうよね…。まあ、痴漢の命はないだろうけど。)
私は周助のフェロモンにやられそうになりながらも視線をそらして周助に答えた。
「いえいえ…。先に食べてるなんてそんなとんでもない(恐ろしいこと私にはできません…)!!!」
「…?心の声、聞こえてるよ。僕をなんだと思ってるの。そんな簡単なことで怒ったりしないよ?(開眼)」
「そ、ソウダネ…ゴメンネ?」
(怒ってるじゃん!!!!っつーか最近読まれないコツがわかってきてたのに!さっきは気を抜いちゃったよ…不覚。怒ってても笑顔だから余計に怖い…)
私は周助に心を読まれないように気をつけながらそんなことを思っていた。そして、ふと英二の姿がどこにも見当たらないことに気付いて周助に聞こうとした。
「そ―――「ねえ、菊ちゃんは?さっき周助を探しに出て行ったんだけど…?置いてきたの?」
しかし、私の声は物凄いタイミングでさえぎられ、亞江香が私の聞きたかったことを周助に聞いた。
(もしかしてかばってくれたのかな?そうならタイミングがずれているよ…。)
周助は少し考えてにっこりと笑い、こう言ってきた。
「……ああ、英二が僕の代わりに先生のところで手伝ってるよ。すぐに戻ってくるんじゃない?」
((コイツ…!絶対押し付けたな…!!!!))
私たちは周助の笑顔の裏に隠された事実に気付き、青ざめた。その瞬間、
がらっ
と勢い良く扉が開いたかと思うと英二が憤慨しながら教室に入ってきた。
「不二っ!!!先に帰るなんて酷すぎるにゃ!!もう一生手伝ってやんないからね!!」
「やだなあ…。英二が『俺、やります!!』って言ったから僕が譲ってあげたのに…心外だよ。」
(((鬼だ…鬼がここにいる。)))
私たちはその瞬間心がひとつになった。周助はそんな私たちの心の声が聞こえたらしく、さらににっこりと微笑みながら、
「誰が鬼だって…?」
といってきた。私たちは蒼白になって激しく首を左右に振り、一生懸命アイコンタクトをしながら話をそらした。
「ふ、二人ともご苦労様!」
「は、早くご飯食べないと時間なくなっちゃうよ!?」
「そうだにゃ!!早く食べようよ不二!!!」
「………まあ、いいや。許してあげるよ。そうだね、早くご飯食べようか。あ、は僕の横ね…(開眼)」
そういってくる周助に逆らえるものはいなかった…。
「「いっただきまーす♪」」(亞江香&英二)
「「いただきます。」」(&不二)
それぞれ手を合わせてあいさつをし、私たちはご飯を食べ始めた。私は自分で作った弁当に舌鼓を打ちながら、周助に言っておかなければいけない事をいった。
「あっ、周助。言うの忘れてたけど、私、水曜日と金曜日はマネ出来ないから。」
それを聞いたみんなは不思議そうな顔をし、周助がみんなを代表して聞いてきた。
「どうして?」
「これ、誰にも言わないでよね?……バイトするのよ。」
「バッ…むぐっ!!!!」
「英二、声が大きいよ?」
私の言葉に驚いた英二が叫びそうになった瞬間、周助が英二の口の中に大きなパンをねじ込んだ。ちなみにそのパンは亞江香のパンである。亞江香は「あっ!!」っと声を漏らしたが、周助のにらみによって静かになった。
「亞江香…。私のでよかったら分けてあげるから元気だしなよ…。」
「!!!大好きよ!!!!!」
不二は目をウルウルさせて喜んでいる亞江香にかまわず何事もなかったように再び話しかけてきた。ちなみに英二は必死にパンをジュースで飲み込もうとしている。
(おー…。なんだか菊ちゃんのその表情も可愛いと思うあたり、私は大分腐ってるね☆頑張れ菊ちゃん!!!)
私が英二が悶えて(違っ)いる姿を見ながらひそかに萌えていると横から周助が声をかけてきた。
「それ、学校の許可とってるの…?」
「心配ご無用!ちゃんと許可は取ってあるよ♪」
(くっ!…久しぶりに白い周助を見た気がする!!悩ましい表情もまたいいですなあ……)
心配そうに聞いてくる周助に内心腐ったことを考えながら、ひらひらと手を振って見せた。すると周助は笑顔に戻って「よかった。ちょっと心配だったんだ。」といってきた。私はあまりにあっけなく認められたのでちょっと拍子抜けしたが、周助に絡まれないならそれにこした事はないと思い、それ以上何も言わなかった。
その後、亞江香と英二にいろいろとバイトのことを聞かれたが、私はのらりくらりとかわしながらご飯を食べ終えた。バイト先まで来られたらたまったもんじゃない…。
「「「「ごちそうさまでした!」」」」
(…。亞江香って結構大食いだ。多めにご飯作っておいてよかった…。)
私たちはその後の昼休みを他愛もない話をしながら過ごした。女の子達の視線を気にさえしなければ、結構平和な昼休みだったんじゃないだろうか…?
女の子達の視線に早くも慣れてきている自分に苦笑いしながらも、この3人のそばにいることが心地よいと感じ始めたお昼の1コマであった……――――。