はぁ、みんな頑張ってるねえー。
第11話 男子テニス部 (後編)
私はみんなの練習をなんとなく見ていた。ルールぐらいは知っているけどそのほかはまったく素人同然なので(とはいってもキャラたちの技名はばっちり覚えている)見学していても普通には楽しめるがあの人はどうだとかこの人はこうだとかはよくわからない。ただひとつ、私には気になる事があった。
(……どうみてもレギュラー陣とそうでない人たちの実力差がひどいよね。まあ、あんな片隅に追いやられてたらレギュラーと差がつくのも無理ないけど…。)
私は奥のコートで練習しているレギュラー以外の二、三年生を見ながらつらつらといろんなことを考えていた。
(今は三年のレギュラーがいるから戦力あるけど今の三年が引退したらまともに戦えるのは…桃城君に海堂君にリョーマだけじゃない?団体戦だと確実にやばいよね…。ちゃんと考えてるのかな、そういうこと…。って私がそんなこと考えててもしょうがないし。)
私は自分がずいぶん男テニの将来を心配していることに気づいて苦笑した。
「15分間休憩!各自水分補給をするように!」
疲れを微塵も感じさせない手塚のりんとした声がコートに響くと、おのおの思いどおりの場所に移動し、休憩を取り始める。まさに鶴の一声だなぁなどと考えていると不二と菊丸とリョーマ、それに興味津々と言った顔の桃城が私の周りに集まってきた。
(な、なんておいしい!!!全国のテニプリファンの皆さん!!!私は今、とっても幸せだあぁぁぁーー!!!!)
などと頭の中で悶絶していると、不二と菊丸が話しかけてきた。
「ちゃん!ちゃんと見てくれた?」
「時々ボーっとしてたよね?何考えてたの?」
私は不二が私の心を読める条件がわかってきていたのであまりあわてずそちらに顔を向けた。
「ん?ああ、ちゃんと見てたよ菊丸君。アクロバティック…だっけ?凄いよね。お疲れ様。不二君もお疲れ様。私、ボーっとしてた?真剣に考えてたつもりなんだけどなぁ。」
笑いながらそういうと、次はリョーマが私に話しかけてきた。
「って…3年生だったんだ?1年か2年だと思ってた。これからは一応、先輩って呼ばないとね…。」
かなり失礼なやつである。しかも同い年ぐらいに思われていた……。ちょっとショックを受けてしまった。すると桃城が少し大げさすぎるんじゃないかと思うくらいに反応してリョーマに質問した。
「えっ?越前!!この人と知り合いなのかっ!?」
「それは僕も知りたいなあ。」
「俺も知りたいにゃーーー!!!」
一気に質問されたリョーマは私のほうに「ホントのこと言ってもいいの?」っていう感じの視線を送ってきたので私は口パクで「異世界から来たことは言わないで。」って返した。
するとリョーマは少しうれしそうに「了解」と口パクで返してきたあと、質問の答えを待っている先輩たちに説明し始めた。
「先輩がこっちに越して来たすぐ後ぐらいに公園で遇然出会って、いろいろ話したから知ってるんッス。そうっすよね先輩?」
「うん!そうだよー。あの時はいろいろ世話になったね。ありがとね、リョーマ君。」
リョーマに適当話をあわせていると不二はともかく菊丸と桃城は納得したように「おちびずるいニャー。」とか「へえー。珍しいこともあるもんだなあ。」とか言っていた。不二もなんとなく怪しみながらも納得してくれたようだ。
(それにしても、手塚君のときもこんな感じだったなあ。……っと、いけない。桃城君に名前聞いとかなきゃ。いつかボロが出ちゃうよ。後で海堂君にも聞いとかなきゃ。)
「ところで、そこのつんつん頭の子、名前教えてくれない?あっ、ちなみに私は よ。よろしくね。」
「あっ、まだ名乗ってなかったっすね!桃城 武ッス!よろしくお願いします。」
「桃城君ね…。よし!インプット終了!」
「あははっ、先輩って面白いっすねえ?」
「そう?ありがとう。」
などと二人の世界を作っていると桃城の後ろから物凄く不機嫌な声が聞こえてきた。
「おい、こんなところででかい図体が突っ立てんじゃねえよ。タオルが取れねえだろーが。早くどきやがれ桃城。」
海堂がそういうと、桃城は海堂の言い方が気に入らなかったらしく海堂に食ってかかり、けんかを始めてしまった。
「あーあ、また始まっちゃったよ…。いつも走らされてるのに懲りないやつだなぁ。」
「ほんとだにゃ!あの二人はいつも喧嘩してるにゃー。」
「よく飽きもせずに喧嘩するよね……。」
といいつつも不二や菊丸は楽しそうに二人のけんかを見ている。リョーマは興味なさそうだが…。私は海堂君に名前を聞けそうもないので不二に聞くことにした。
「ねえ、不二君。桃城君と喧嘩してる子って名前なんていうの?」
すると不二は少し目を開いてからかうように言ってきた。
「知らないの?知ってるんだと思ってたけど?菊丸のときは知ってたみたいなのにね……ふふっ。まあいいや。あの子は海堂 薫って言う名前だよ?」
(聞く人間、間違えた……)
私は不二に聞いたことを激しく後悔しながら、いまだに喧嘩してる二人に話しかけた。もうそろそろやめないと手塚の制裁が加えられるだろうから…。
「桃城君に海堂君?喧嘩するほど仲いいのもほほえましいけどそろそろやめとかないと向こうにいる手塚君が切れそうだよー?」
私の呼びかけに対して二人は異様なほどの反応を見せた。
「「誰がどうやってみたらこいつと仲いい事になるん(すかっ?!)(ですかっ!?)」」
「そうやって息ぴったりなところからして…?」
私のその言葉は二人には逆効果だったようで、また「お前真似してんじゃねー!」とか「うっせえ!誰がお前の真似なんかするかよ…。」などどけんかを始めてしまった。
(あーあ。もう知らないよー?)
そんなことを思った瞬間、手塚の怒りの声がコートにこだました。
「桃城!海堂!部活中に喧嘩するなと何度言ったらわかるんだ!!部の雰囲気を壊した罰としてグラウンド20週だ!!!!!!……、休憩時間は終わりだ!ほかのものは練習に戻れ!!!」
私はグラウンドに出て行く二人を見ながら可愛そうになぁ。とかのんきなことを考え、不二を引き止めてもうそろそろ帰らなくちゃいけないことを話した。
「今日ちょっと用事あるからもう帰るね。楽しかったよ。ありがとう。皆にもご迷惑おかけしましたって言っといて。あっ、レギュラー陣だけじゃないよ?みんな私が気になってあんまり集中できなかったみたいだし……。それじゃ、また明日。」
「え、もう帰るの?用事なら仕方ないね…。……でもがそこまで皆を見てるとは思わなかったよ。うん、ちゃんと伝えておくよ。気をつけてね。」
「…………マネージャーに向いてるね。後で手塚にお伺いでも立ててみようかな…?」
私は不二に手を振ってすぐにきびすを返して歩いていったので、その後に不二がつぶやいた言葉をしらなかった。聞こえていたら激しく不二を止めていただろうに………。
まあ、止めたところで私の運命は変わらなかったのかもしれないけどね………。