著者 : ◆p3zPcqJFDE 氏

その6 - >>428
開始:07/03/21
最終:07/03/21
その6 - >>434

【 なびき×乱馬 】


「な、なあ、やっぱりやめねえか? なびき。こんなの良くねえだろ……」
「ここまで来ておいて今更それはないんじゃないのぉ? 乱馬くん」
 
ベッドの上で重なり合っているのはなびきと乱馬だった。
しかも、バスタオルを巻いただけの姿で上に乗っているのはなびきの方だった。
まるで桜貝のような形の良い爪を、乱馬の首筋から鍛え上げられた肉体の上に、
触れるか触れないかの微妙なタッチで滑らせていく。
 
「それともなあに? 私に逆らえるとでも思っているの? 渡さないわよ、写真」
 
部屋は薄暗く、妙な雰囲気を醸し出していた。
突飛なデザインの笠をかぶった裸電球だけが、淡いオレンジ色の光を放っている。
 
「わ、わーったよ! その代わり、これが終わったら……」
「はいはい、約束するわよ」
 
暑くも無いのに背筋に汗が伝う。
ごくりと唾を飲み込むと、乱馬はなびきの身体を強く抱き寄せ、
位置を入れ替えるように広いベッドの上を転がった。



その日の一ヶ月ほど前から、なびきは焦っていた。
 
(早くしないとあの日が来てしまう……。あの日を処女のまま迎えるなんて屈辱よ……)
 
しかし、なかなか相手が見つからない。
男を金づるとしか利用して来なかったなびきの知り合いは、
金は持っていても、見た目はぱっとしない男ばかりだ。
何よりも金が好きな彼女とは言え、女のプライドというものがある。
そうそう変な男を相手にはしたくない。
 
「まず、九能ちゃんはないしー、クラスの男もいまいちなのよねえ」
 
夕食前、かすみの手伝いをするわけでもなく、居間のテレビでニュースを見ながら、
なびきは聞こえない程度の声で独りごちていた。
 
「あいつくらい……なのよねぇ……」
 
視線の先には、いつものように八宝斎に追い立てられている乱馬がいた。
水の入ったバケツの攻撃から器用に逃げている。
また女の姿でブラジャーをつけろと迫られているのか。
 
(変な体質だけど、そこらの男よりはまともな顔してるし……)
 
しかも、格闘で鍛えているだけあって、引き締まった良い体つきをしている。
問題は、乱馬があかねの許婚であるということだ。
更に、最初は嫌がっていた二人も、段々とお互いを意識し合うようになっている。
乱馬の方は、毎日のように様々な女性に言い寄られていても、
あかねのことしか目に入らないようで、傍から見ているといじらしいくらいに一途だ。
 
(さて……どうしたものかしらね)
 
焦って色々と探してはみても、良い相手など見つかるはずもなく、
なびきの心は次第に乱馬へと傾いていた。
しかし、大事な妹の相手を奪うという行為に罪悪感がないわけでもない。
そうやって、なびきがあれこれ考えているうちに、乱馬は女の姿にさせられてしまっていたが、
下着をつけさせられる前に逃げ出していた。



彼女にとっての好機は意外にも早く訪れた。
はやる気持ちを抑えながら、しっかりとその現場をカメラに収める。
 
「あ〜あ。ポラロイドよりデジカメ用意しておくんだったわねぇ。そうすれば加工も楽だし」
 
まだ絵が浮き出て来ない紙切れを、顔を扇ぐようにヒラヒラと振りながら、
なびきは風呂場にいる人物に声をかけた。
シャッター音に気付いて振り返った彼の首には、裸のシャンプーがぶら下がっていた。
 
「な、ななななななびき!? 何してんだよ、そこで!」
 
猫姿のシャンプーにまとわりつかれた乱馬は、ちょうど湯船の中に逃げ込んだところだったのだ。
湯の中で元の姿に戻ったシャンプーは、当然何も着ていない。
乱馬は服を着てはいるのだが、裸のシャンプーと抱き合っているところを撮られては、やはり焦る。
それを見たあかねに嫉妬されるのは慣れていることとはいえ、良い気分になるはずがない。
 
「まあ、これでもいっか。コピーしよーっと」
「ちょ、ちょっと待てっ! 誤解だ、これは!!」
「私と乱馬の記念写真ね!? なびき、私もそのコピー欲しいね」
「はいはい、一枚3000円ね〜」
「冗談じゃねぇっ!!」
 
水浸しの服のまま、風呂場を飛び出し、乱馬はなびきに追いついた。
そして、一方的に乱馬の方が怒鳴りたて、なびきの方が冷静に拒絶する、という形の
口論をしばらく続けた後、珍しくもなびきの方から折れた。
 
「仕方ないわね。あげても良いわよ。但し、引渡し場所はここね」
 
なびきは赤いペンで印をつけていた地図を乱馬に渡した。



乱馬がはめられたと気付いたのは、部屋に入ってしまってからのことだった。
初めての場所で少し迷いながらも、乱馬がそのいかがわしいホテルにたどり着いて間もなく、
なびきに建物の中に引っ張り入れられたのだった。
彼女いわく、「こんなところでうろちょろしてて、変な噂を立てられても知らないから」とのこと。
だが、その中に入ればもっと深みにはまってしまうことになるのだった。
 
部屋に入ってすぐに、シャワーを浴びに行ってしまったなびきを、止めることができなかった。
シャワーを浴びているなびきを見捨てて、帰ってしまうこともできなかった。
乱馬は頭を抱えながら、ただ待っていることしかできなかった。
 
(くっそー……なんでおれがこんな目に……何考えてるんだよ、なびきのヤロー……)
 
軋む音と共にシャワールームの扉が開くのを乱馬は気配で感じた。
お湯の温かさで頬を赤く染めて出てきたなびきに、不覚にも心を揺り動かされてしまった。
しかし、目を閉じ、顔をそらし、見ないようにする。健全な高校生男子には刺激が強過ぎるのだ。
 
「は、早く服着ろよ。帰るぞ、なびき。」
 
そう言って向けた背に柔らかな感触が当てられ、思わず乱馬は目を開けてしまう。
 
「駄目。私の言う通りにして」
 
乱馬は回された腕を振り解こうと手をかけた。
しかし、自分の指が震えているのか、なびきの腕が震えているのか、
心臓にも届きそうなほどの振動が伝わってきて、乱暴に離そうとする気力は萎えた。
 
「私を女にして欲しいの。お願いよ、乱馬くん」
 
乱馬が言葉に迷っている間に、なびきは彼の手を引き寄せ、ベッドの上に押し倒した。
着ている服の前を素早く器用に開き、男にしては毛も薄い胸部を露わにさせる。
そして、時は冒頭部分に戻る。



「これってウォーターベッドよね。気持ち良いわね、乱馬くん」
「うるせえ。ごちゃごちゃ言うな。こっちは緊張してんだぞ」
「あら、私だって緊張してないわけじゃないのよ。初めてだもの」
「どこがだよ。余裕しゃくしゃくじゃねえか」
 
なびきはむっとした。黙って自身の体に巻いていたバスタオルをはらりと落とす。
白い肢体が現われ、馬乗り状態になっている側の乱馬が焦る。
 
「お……おまっ……ちょ……まっ……!?」
 
何を言えば良いのかもわからず、まともな台詞にならない。
乱馬は不覚にも鼻血を噴き出してしまっていた。
情けない。シャンプーに裸で抱きつかれてもこんなことにはならないのに。
 
「ぷっ……。 乱馬くん、もしかして興奮しちゃった?」
 
失笑を小指で押さえるなびき。
しかし、その瞳は優しく、蔑むような心は一切感じられない。
 
「べ、別にそんなんじゃ……ねぇ……」
 
乱馬は手探りでティッシュを探し、ちぎって鼻の穴に詰めた。
彼の男性自身は既にはちきれんばかりに膨張していたが、
冷や汗をかきながらも必死に悟られまいとしていた。
そんな姿を見てなびきは乱馬を抱き寄せ、唇に唇を重ねた。



「ふふっ。血の味がする……」
「わ、悪かったな」
 
なびきは微笑んで乱馬の手を取り、自身の胸へと導いた。
暖かい感触に、乱馬は一瞬手を引っ込めようとするが、なびきの手は固く掴んで離さない。
 
「ね……? お願い……」
 
乱馬はごくりと唾を飲み込んだ。
なびきの体は、シャンプーやあかねたちとは違い、格闘によって鍛えられてはいない。
だが、女性として相応しい程度の丸みを帯びており、スタイルも悪くない。いや、むしろ良い。
その彼女の真っ白な双丘の上に申し訳なげに薄紅色のつぼみが乗っている。
 
「こ、後悔しても知らねえからな」
「後悔なんてしないわ」
 
乱馬は覚悟を決め、なびきの乳房をぎゅっと掴んだ。
なびきは微笑を浮かべたまま、逆らわない。
何故だろう? 攻めているのは乱馬のはずなのに、主導権を握っているのはなびきの方だ。
そんな空気が悔しくて、乱馬はなびきの乳首に吸いつき、すすり上げた。
 
「ああっ……!」
 
たまらなくなってなびきは乱馬の首に回した腕に力を込めた。
男の唇に胸を蹂躙されると言うのはこんなに気持ちの良いものなのか。
なびきは貪欲にも乱馬に何度も同じ動きを求めた。
 
そしていつしか、自身の体の中に乱馬の体の一部が入っているのをおぼろげな意識の下、感じていた。
波のように体をくねらせ、全身で初めての快感に浸っていた。
 
(これでやっと女として誕生日を迎えられる……)
 
なびきは十分に満足していた。



後日。
 
「5000円!」
「安い。1万円。」
「じゃ、じゃあ、6000円!」
「まあ、9000円まで下げてやっても良いけど」
「うーん。間を取って、8000!」
「ちっ、手を打つか」
 
居間の片隅での乱馬となびきとの会話だった。
ただし、いつもと違うのは、なびきが金を出す側だということ。
例の件で、乱馬との行為がすっかり気に入ってしまったなびきは、
甘美なひとときを大事な金で買うようになっていたのだった。
 
契約が成立し、連れ立って歩き始めたところで、あかねとすれ違う。
そのとき乱馬が切なく投げかけていたその視線に、
なびきの中でかすかな罪悪感と嫉妬心が沸き起こった。
 
「いつかお金抜きの関係になってやるんだから」
 
ぼそっとこぼした独り言を乱馬は聞き逃したりしなかった。
冷やかすように笑ってなびきの頭をぽんぽんと叩く。
 
「なんだぁ? やっぱ金が惜しいのかよ。あれだけ稼いでるくせにケチな女だな」
「……っ!?」
 
(人の気も知らないで。ほんっと鈍感なんだから、この男は……)
 
なびきは妹のあかねが抱いていた感情と同じ種類の感情を心に宿すようになっていた。
 
(これもまた……宿命ね……)
 
だが、後悔は微塵も無かった。
二人の奇妙な関係はまだ始まったばかりだった。









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