著者 : 携帯から失礼します 氏

その5 ー >>615
開始:06/11/16
最終:06/11/18
その5 − >>629

【 無 題

「早乙女乱馬!天道あかねから離れるのだ!」
「おめーも懲りねえやつだな」

早乙女乱馬16歳。九能帯刀17歳。
風林館高校のいつもの朝の光景である。

「少なくともおさげの女のことはあきらめるんだな。一生女と付き合えねえぞ」
「失礼な!ぼくも一度くらい交際したことはあるぞ!」


『 え ぇ え ぇ え ぇ え ぇ え っ ! ? 』


全校生徒が驚き、校門付近の九能たちに注目する。

「な、なんだってー!」「おいおい」「今何て言った?」
「あの九能が!?」「マジで!?」「交際してたって!?」

もう、学校中が大騒ぎだ。

「号外〜!号外〜!」
いつの間に印刷したのか、学校新聞の号外が舞う。
「ニュース速報をお伝えします」
放送部も負けずに対応する。
「現場から緊急リポートを行います」
機材が運びこまれる。
もう授業どころではない。

「ほう…詳しく聞かせてもらおうじゃねえか」
「出会いは去年の入学式、一目惚れだった…」
九能は語り始めた。


「何しやがんだこの妖怪じじい!」
「おのれ、師匠に向かって何ということを!」


――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――


「ったくもう、嫌んなるぜ」
猫飯店で昼食を摂りつつ、愚痴る乱馬。

「いい方法あるぞ」
シャンプーには何か考えがあるようだ。

「何だ、教えてくれ」
「こっち来るよろし」
シャンプーは乱馬を住居の自分の部屋へと案内する。

「服脱いでベッドに寝る」
「お、おい。早まるな!なんでいきなり!」
「何勘違いしてるか」

シャンプーの手にはモグサとライター。

「男を寄せ付けないフェロモンでも出す灸か?」
「んー、ちょと違うね」

シャンプーは乱馬に灸をすえ始めた。

「らんま、これでもうハッピーに襲われない」



――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――


具体的な説明もないまま、乱馬は猫飯店をあとにする。
(シャンプーのやつ、一体何しやがったんだ?)

そのとき。突然、雨が降りだした。天道家へ急ぐ。
しかし気のせいだろうか。なんだか妙に体が軽い。

「ただいま」
「おかえりなさい。らんまくん、お風呂わいてるわよ」



――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――



「あーーーっ!!」

脱衣所でらんまが叫び声をあげる。

「どうしたの」
あかねが飛んできた。

「お嫁にいけない…」            しくしくしくしく。
「何バカ言ってん…の、よ?」

あかねの視線はらんまの胸に。
「み、見ないでくれ!」

いつもなら悔しいほど大きく形も良いらんまの胸だが、
そこにあるのはほんの僅かの膨らみであった。

「男なのに胸が小さくなったくらいで落ち込んでどうするのよ」
「ははは…そうだよな…」

笑ってみせるものの、元気がない。



――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――


翌朝。

「らんまちゃ〜ん!」

八宝斉がらんまめがけてバケツの水をかけ、素早く胸に飛び込む。
が、しかし、胸がない。
男物のタンクトップからいつもなら見えない乳首がのぞいている。

「…な、なんと!」
ほぼ平になってしまったらんまの胸をぺたぺたと触る八宝斉。
「乳はどこに消えたんじゃ」

ぺたぺた。

「てめえが今触ってんのが乳なんだよ!!」
「そんなぁ〜…らんまにこのブラジャーをつけてもらうのがわしの夢じゃったのに!」

本来なら胸が小さくなった本人が一番がっくりするはずだが、
八宝斉もひどく落ち込んでいるようだ。
一応は成功といえるのだろうか。


「おい、シャンプー!」
猫飯店の戸を勢いよく開けて怒鳴り込む。
「シャンプーなら出前じゃ。何事か」

「これを見ろ!」
乱馬はそばに置いてあったバケツの水をかぶる。

「ほう…貧乳虚脱灸じゃな。
本来は部分やせのために用いるのじゃが、部位と程度を誤ると不幸を招くという…」

「元に戻す方法はあるんだろ?」
「ない」
きっぱりと言い切る。

「マッサージでもするんじゃな」
「な、女になって胸を揉むなんて、それじゃおれが変態みてえじゃねえか!」
「婿殿。おぬし、それほど女の姿を気に入っておるのか」
「ばっか…おれは…」
反論できないらんま。

「それなら胸がなくても何ということもないはずじゃがの」


トラブルは意外なところでも起きていた。

「これはどういうことだ、天道なびき」

一度受け取った写真を、九能はなびきに突きつける。
そこに写っているのは胸が小さくなって気を落としているらんまだった。

「おさげの女ではないではないか」
「でもこれ、本物なんだけど」

休日でもこの二人は写真のやりとりをしている。

「おさげの女はこんな貧乳ではないぞ」
「痩せたのよ」
「ぼくの目は節穴ではない!これはよく似た別人だ!買わんっ!」

そう、なびきの最大の顧客である九能がらんまの写真を買わなくなってしまったのだ。
もっとも、九能以外の男の中には買う者もいたが。
彼らに言わせると「貧乳萌え〜」だそうだ。


「乱馬くん、ちょっといいかしら?」
なびきは乱馬を自分の部屋に入れる。

「胸が小さくなったの、気にしてるでしょ」
「なんでだよ、男のおれがそんなこと気にするわけ…」
ばしゃっ。

言い終わる前になびきがコップの水を乱馬にかける。


「揉んであげるわよ。お金はいらないから」
「なびき、おめーそういう趣味あったのか」
「何言ってるの。元の大きさにに戻してもらわないと私が困るのよ」

らんまはすぐにその意味を悟った。
半ば強制的にらんまの胸を揉むなびき。
しかし限りなく平らに近く、揉み甲斐がない。
なびきは下のほうに手をのばし、らんまのトランクスの中へ…

「そ、そこは関係ないだろっ!」
らんまがわめく。

「関係あるわ。女性ホルモンの分泌が促進されれば胸も大きくなるのよ」
「わ、わかった。でも、これ以上は駄目だ。あとはおれ一人でするからよ」


夕方。
天道家にたどり着いたPちゃんは風呂場に向かっていた。
洗濯籠に乱馬の脱いだ服が入っているのを確認すると中に入る。

「ぶきっ!?」

Pちゃんは目の前の光景に言葉を失った(もともとブタは喋れないが)。

らんまによく似た赤い髪の少女が、片手でその小さな胸を揉み、
もう片手では性器を弄っている真っ最中であった。
息は荒く、途切れ途切れに声が漏れる。

「良…牙?」

らんまは鼻血を出して倒れているPちゃんに気付くと桶に冷水を汲み、その中に放り込んだ。

「おい、良牙!大丈夫か?」

Pちゃんに必死で呼びかける。
冷やされて鼻血も止まったPちゃんは目を覚まし、浴槽に飛び込んだ。

「何者だ。ここで何をしている」
「何者って…おれのこと忘れたのか?」
「早乙女らんまに似ているが…」
どうやら良牙も九能と同様にらんまとは別人だと思い込んでいるようだ。

「乱馬の親戚か?」
いつもならここで「乱馬くんの従妹なの〜」とでも言って良牙をからかうらんまだが、そんな気力もない。


「おれだ!」
らんまは叫んで浴槽に飛び込む。
落胆する良牙。

「するとおれはおまえの…その…あれを見て鼻血を出してそのうえ…」
「やっぱ、見てたのか?」
「乱馬ッ!おれは悔しいぞ、どうしてくれる!」

立ち上がった良牙の下半身は勇ましく、はちきれんばかりに勃起していた。
乱馬を瞬時に浴槽からひきずり出して水をかける。

「なにしやがる!おい、はなせ、ばか!浴場で欲情する気か!!」
こうなってはもう止められない。


「 ひ い ぃ ゃ ぁ あ ぁ あ ぁ あ 〜 〜 〜 !」


らんまの悲鳴が家中にこだまする。

「何事だね?」
すぐに早雲が飛んできた。固まる3人。

「乱馬くん…きみという男は…」
あまりにショックで寝込む早雲。


その夜、天道家は沈んでいた。

(乱馬の馬鹿…)
(1ヶ月あたり約10万円の収入減だわ…)
(おとうさん…)
(うーん、うーん…)
(乱馬よ、父は情けないぞ…)
(わしの夢がぁ…)

そして屋根の上にも重い気が。
(ああ!らんまめ、なんということをしてくれたのだ…おれはもう、終わりだ…)


まさに悲劇。
貧乳虚脱灸は本人ばかりか周りの人間まで不幸にしてしまったのだ。



夕食が済むとあかねは乱馬を部屋へ呼んだ。

「ねえ、どうしちゃったのよ…心まで女の子になっちゃったの?」
「なんでだよ、おれは男だ」
「だったらどうして良牙くんを誘惑したりしたのよ。好きなんでしょ?良牙くんのこと」

あかねはとんでもない誤解をしている。これがなかなか大変だ。
特に、乱馬と良牙とでは全く扱いが違う。

確かに良牙はらんまの自慰行為を目にして襲ってきたのだ。
しかし、決してらんまは良牙に対して恋愛感情など抱いてはいない。
それに第一、誰かに見せるつもりは全くなかった。

「なんでおれが良牙なんかを誘惑しなきゃならねえんだよ。
だいたいこんな色気のねえ体で誘惑するかよ!」
「じゃあ、良牙くんが自分かららんまを襲ったとでも言うわけ?」
「まあ、そういうことだな」
「ふーん…」

そう言い、あかねはうつむく。
目には涙を浮かべている。
「お願いだから、本当のことを言って!」

まさか、自慰行為に耽っているところを見られたなんて言えない。
それに、良牙が風呂に入ってきたことはどう説明するのだ。
下手したら良牙がPちゃんであるということがばれてしまうかもしれない。
絶対に言えなかった。


「どうすりゃいいんだよ…」

翌日、乱馬が途方に暮れていると、何やら随分と重たい小包が届いた。
呪泉郷案内人からだ。
箱を開けてみると、中にはペットボトルに入ったミネラルウォーターらしきものが。
中国語で書かれた手紙も同封されていたが、何と書いてあるのかわからない。

「そうか、これは男溺泉か!?」

良牙やムースに知れては大変だ。玄馬も寝ている。
男溺泉を浴びるなら今しかない。
軽やかな足取りで風呂場へと急ぐ。

ペットボトルの蓋を開けて桶にあけ、頭からかぶる。

やっと元のらんまの姿に戻った。
しかし…

「なんで娘溺泉なんだよー!?」

乱馬ではない。元のらんまの姿に戻ったのだ。
ちょうどそのとき、電話が鳴った。

「乱馬ァ?娘溺泉届いたか?」
シャンプーからだ。

「ありがとな。でも、なんで娘溺泉なんだ?」
「それ、私の娘溺泉ね」
「どういうことだ?」


シャンプーは呪泉郷案内人と娘溺泉の水を送ってもらう約束をしていたのだ。
しかし呪泉郷案内人が間違って住所を天道道場にしてしまったのだという。
手紙が中国語だったのも猫飯店に送るつもりだったからである。

「今から取りに行くね」
「あっ、おい、シャンプー!」

娘溺泉の水を全て使ってしまったと伝える前に電話を切られてしまった。




「シャンプー、すまない!」

らんまはことのいきさつを説明した。

「に゛ー!に゛ー!」
「ね゛ご〜〜〜!!」







おしまい。




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