著者 : 名無しさん@ピンキー ID:4bCkqyQn 氏
その5 ー >>337
開始:06/10/26
最終:06/10/27
その5 - >>351
「天道あかねー!おさげの女ー!」
ある日の放課後。
九能帯刀17才は焦っていた。
「天道あかねとおさげの女はどこだー!」
「あかねたちならもう帰ったわよ」
九能が探している天道あかねの姉、なびきである。
「む。天道なびき。…ええい、このさい仕方がない。急ぐぞ!」
強引になびきの手をとり、九能は走り出す。
「ちょっと。どういうことなのよ、九能ちゃん」
九能はなびきにことのいきさつを説明した。
それは20分ほど前のこと。
九能は校長室へ呼び出されていた。
「ダディー、いったい何の用だ」
「今日はタッチィーに重大な話がありまーす」
「重大な話だと?またくだらんことを思いついたのか」
「ノー。これはタッチィーの人生に大きく関わることなのでーす」
自分の人生に大きく関わると聞くと突然、九能の表情が変わった。
「実は明日、タッチィーの許嫁が日本にやって来て明後日には祝言をあげまーす」
許嫁など人事だと思っていた九能にはそれはとんでもない話だった。
校長がハワイにいた頃、ひょんなことから知人と約束してしまったのだという。
「い、許嫁だと!?ふざけるな!!ぼくには愛する人がいるのだ!」
「それはほんとーのことですかー?」
「ああ、…そうだ、ぼくはその人と婚約している!顔も知らぬ許嫁などと結婚などしない!」
当然である。九能の頭の中にはあかねとおさげの女のことしかないのだ。
勿論、婚約というのは出まかせである。
「オー。タッチィーにはフィアンセがいたのですかー。
それなら話は別でーす。タッチィーのフィアンセを今ここに連れてきてくださーい。
タッチィーにふさわしいかどうかミーがジャッジしまーす」
「ぼくにふさわしい婚約者ならば許嫁は解消してくれるのだろうな」
「もちろんでーす。フィアンセとの結婚を認めまーす」
「…というわけだ」
「それで、私に婚約者のフリをしろと?」
「そういうことだ。勿論タダとは言わん。金ならいくらでも出す」
「わかったわ」
以前、東風の婚約者のふりをしたなびきにはたやすいことであった。
二人は地下にある校長室へと向かった。
「連れてきたぞ、ダディー」
「オー!これはミス・テンドーじゃーありませんかー!
ユーがタッチィーのフィアンセだったのですねー。ではさっそくジャッジしまーす」
そう言って校長はなびきの肩に手をまわし、接待用のテーブルと椅子へ…
「オー、ノー!」
突然、校長が叫ぶ。
「タッチィーはフィアンセが他の男に触られて平気なのですかー?」
九能は一瞬ひるむ。が、爽やかに笑顔で返す。
「ははは!天d…いや、なびきはすぐにダディーとも家族となるんじゃないか!」
「そうよ、お義父様。そんなに帯刀さんを怒らないで」
「オー!そうでしたかー。アイアムソーリー」
広いトロピカルな校長室内を移動し、応接セットにたどり着く。
なびきがソファに腰かける。
すると突然、頭上からカニが降ってきた。
「危ないっ!」
九能はとっさになびきをかばう。
「フィアンセの身を守るのは当然でーす」
まったく、油断ならない。
「ユーはタッチィーのどういうところにひかれているのですかー?」
「帯刀さんはとても強い人です。勝負に負けたとしても何度も挑戦するし、
何事も諦めないし、一途で、いつも私のために尽してくれるんです」
「なびきもいつもぼくのために、必要なものは用意してくれるんだ」
確かに嘘は言っていない。
こんな調子で話は進んでいく。
どれだけ時間が経っただろう。
あらゆる罠を乗り越えつつ、やっとのことで話が終わったようだ。
「わかりましたー。ミーについてきてくださーい」
二人も立ち上がり、校長に続いた。
しかし連れてこられたのは何の変哲もないただの壁だ。
「この壁が何だというのだ」
「この先の秘密の部屋にはグレートなプレゼントが用意してありまーす。
しかーし、その前にユーたちの愛をここで証明してもらいまーす。
タッチィーはミス・テンドーを永遠に愛することを誓いますかー?」
「ああ」
「それでは誓いのキスをしてもらいまーす」
二人は向きあい、顔を近付ける。九能は非常に困惑している。
(天道なびきとキスをすればぼくは解放される。しかし本当にこれでいいのか?
ぼくがキスをするのは天道あかねとおさげの女だけと決めていたのだ。
いくらあの二人と交際するためとはいえ、天道なびきとキスなど…)
長い沈黙。九能があれこれと考えているそのときだ。
ちゅっ。
九能の唇に柔らかいものが触れる。
(何!?しかも天道なびきのほうから!?)
ガムテープはない。
校長はにやりと笑い、怪しげなリモコンのボタンを押した。
「コングラッチュレイショーン♪」
すると次の瞬間、二人の足元には床がなくなっていた。
落下していく二人。
「何なんだ、この校長室は!」
大きく水しぶきをあげて二人は池の中に落ちた。
水深は160cmくらいだろうか。九能には余裕だがなびきは足がつかない。
「大丈夫か、天道なびき」
「うん…」
九能はなびきの身体を抱きかかえ、池からあがった。
『オー、服が濡れてしまいましたねー。これは大変でーす。着替えないといけませんねー』
校長の声が聞こえてくる。壁に取り付けられたスピーカーからだ。
「ダディー、どこにいる!」
『その前に冷えた身体を温めてくださーい』
九能を無視して校長が喋る。こちらの声は校長には聞こえないようだ。
目の前のドアを開けるとそこは脱衣所で、その先には浴室があるようだ。
【婚約者同士で入ること】と張り紙がしてある。
「ぼくはこのままでいい」
「だめよ。風邪ひくじゃない」
なびきに促され、九能は渋々服を脱ぐ。
しかし最後の一枚はやはりなかなか脱げない。
「…いかん。いかんぞ!」
「早くしてよ」
なびきはいつの間にか全て脱いでいた。
「うう…許せ、天道あかね!おさげの女!」
九能は覚悟を決め、最後の一枚も脱いだ。
二人で浴室の戸を開けて中へと入る。
「こ…これは!」
なんと壁がすべて鏡張りではないか。これでは落ち着かない。
しかし驚きはこれだけではなかった。
先程二人が入ってきた入り口が封鎖されてしまったのだ。
つまり密室である。
「…どうする」
茫然と立ちつくす九能。木刀は脱衣所に置いてきてしまった。
壁には自分達の身体が映っている。
「とりあえずお風呂に入って、それから考えるのね」
確かになびきの言うことも一理ある。風呂に浸かって考えることにした。
九能はなびきに背を向ける。なびきは九能の大きな背中を見つめる。
婚約者どころか恋人でもないのに一緒に入浴とは。
二人ともじつに不思議な気分であった。
「すまない。演技とはいえ、キスしたうえにこんなことまで」
「謝らなくていいのよ。私は気にしてないから」
「金のためなら裸にまでなるのか?」
「あら。九能ちゃんだからよ」
愛は金では買えない。それはなびき自身がよく知っていた。
これまで数々の男たちにいくら貢がせてもなびきの心は満たされなかった。
「どんな金持ちの男にいくら出されてもキスだけはする気にはなれなかった」
九能の気が揺らぐ。
(金のためではない?ぼくだから?)
「考えても無駄よ」
(嗚呼、今までぼくは何をしていたのだ。
天道なびきがこんなにもぼくのことを想ってくれていたなんて)
「こっち向いて」
九能が無言でうしろをふり向くとなびきが身を乗り出し、唇を重ねる。
(やはり、そうなのか。
ぼくが本当に愛すべきは天道あかねでもおさげの女でもなく、天道なびきだったのだ)
今度は重ねた唇を割って舌が入ってくる。どちらが先かはわからない。
互いの舌を受け入れ、からめあう。
「ん…」
なびきの身体を九能が抱き寄せる。なびきは身体を九能にあずける。
長いキスをしながら、互いの身体に触れながら抱き合う二人。
自分たちの身体に起こっている異変には気付いている。
「九能ちゃん…私、なんだか変な気分」
「ぼくもだ」
「…」
「…」
沈黙。少し気まずい。
ざばっ。
沈黙を破り、なびきが立ち上がった。
「どうした?」
「身体洗うのよ」
この浴室にはシャンプー、リンス、ボディーソープ、石鹸が完備されている。
先になびきが身体を洗い、終わると九能と交代する。
しかし九能が泡を洗い流そうとしたそのとき。
気のせいだろうか。浴室が動いているような気がする。
しばらくして、動きが止まった。
そして封鎖されていた戸が開いた。
そう、この浴室は時限エレベーターだったのだ。
配管は一体どうなっているのか等は深く考えないことにしよう。
二人は風呂から上がると、脱衣所にあったバスローブを羽織って外に出た。
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