著者 : 名無しさん@ピンキー ID:FdLUIyEJ 氏

その3 ー >>522
開始:05/12/08
最終:05/12/08
その3 − >>525

【 良牙×らんま 】


肌に刺す風が冷たくなって来た今日この頃。
通い慣れた道に並ぶ木々も、すっかり葉を落とし何処か殺風景で、
寒くなっていくと同時に目に映る全ての物が色を失っていくように見えた。

寂しい季節と言えば誰もが共感してくれるのだろうか。
しかし、この寂しい季節とは裏腹に心に住む蟲は益々大きくなって行くばかりだ。

「寒いわね、今日雪でも降るんじゃない?空も変な感じだし」
「あー、降るかもな。天気予報でも夕方から雪って言ってたぜ」

空はいかにも雪が降りそうな怪しい雲行きで、
らんまとあかねは脚を早めながら家路の道を歩いていた。

「そういや、最近良牙君見ないわね」
「あ〜?良牙?どうせ迷子にでもなってんだろ」

あかねに言われるまでも無く、最近良牙とは顔を合わせていない。
あの蒸し暑い夏の終わりに起きた、今では幻覚とも思える行為は
良牙の名を聞いただけでも鮮明に蘇るのだ。

いっそ、幻だったと思えればどんなに楽だろうか、
良牙自体に記憶が無いという事が、
この靄がかる心を更に掻き乱して行くようで、
自分ばかりがこんな気持ちになるのが苛立たしくて、歯痒くて仕方が無い。

心に住み着く小さな蟲は、苦しいまでに蠢いている。


家に着くなり、冷えた身体を温めるべく、らんまは風呂へ向かった。
冷えきった肌に突き刺さるように染みる熱い湯が心地よい。
天道家の広い風呂桶から立ち込める白い湯気を
ぼーっと眺めているとあかねの声がした。

「らんまぁ、Pちゃんも一緒にお風呂に入れてくれない?冷えきってるみたいだから」

一瞬、ずっこけそうになった。
暫らく見ないと思ったらちゃっかりPちゃんの姿で天道家にいるではないか。
しかし、冷静になってみると風呂で良牙と二人というのは何処か気まずい。
以前はこんな事微塵も思わなかったのに、やはりどうかしている。

らんまの返答が余りに遅い為、あかねはそそくさと脱衣所から去ってしまった。
間も無く、自らガラス戸を引いてPちゃんが風呂場に入って来た。

「よう、久しぶりだな、らんま」

「久しぶりだなじゃねーよ、
見ないと思ったらPちゃんの姿であかねに近づきやがって、
どうせあかねと風呂に入る魂胆だったんだろー」

「ふっ……寒い日は人肌が恋しくなるもんだ」

悪びれもし無い良牙の頭を殴り、らんまは風呂から出て行った。
これ以上風呂場にいるのが酷く恐ろしかったというのもある。
水を浴びればたちまち女になってしまい、平素を保てそうになかったからだ。

そんならんまの複雑な心境なんて知る訳も無く、
良牙は花歌を歌いながら湯舟に浸かっている。
益々、苛立ちが募る。


「あれ?良牙君じゃない、こんばんわー。暫らく見かけなかったわね」
「あ、あかねさん、お久しぶりです!……これ、お土産です!」

夕食時、いつもと何ら変わり無い、良牙とあかねのやり取り。

「良牙君、今夜泊まって行きなさいよ、雪が積もるだろうから」

あかねが言う通り、外は雪が絶え間なく振り続いている。
地面が薄っすらと白く染まるくらい積もり、このままだと朝にはかなり積もってそうだ。

僅かに頬を染め上げ笑顔で会釈をする良牙に、また蟲が大きくなる。



その晩、ふと目を覚ますと隣りで寝ていた筈の良牙の姿が無い。
どうせあかねの所だろ、と思いらんまは慌ただしく部屋を後にした。

「あ、お前!良牙!」

丁度あかねの部屋の前でPちゃんを発見した。
逃げようとする良牙の頭を押さえ付け、らんまは風呂へと向かった。

「お前いい加減にしろよ!」

「うるせー!たまには良いだろうがっ!
お前なんて毎日あかねさんと一つ屋根の下で過ごしやがって!」

「そういう問題じゃねー!お前に下心があるってのが気に喰わないんだ!!」

「関係ねぇだろう!俺はPちゃんになるっ!!」

どうでも良い口論が続いた後、良牙はシャワーを手にし、
それをらんまが必死に食い止める。
水が飛び出すシャワーはらんまの顔面に勢い良くかかった。


「ぶわっ…!冷めてぇ!」

勢い良くかかった水はらんまの顔から上半身をずぶ濡れにし、
下着も付けていない身体のラインが薄いパジャマの下に浮き彫りにされた。

「ぅ…寒!」

ガチガチと歯を音立て、寒さに震えるらんま。
湯舟に脚を入れようとした刹那、
良牙から更に腹立たしい言葉が飛び出した。

「貴様には全く欲情し無いぜ…まぁ、オカマみたいなもんだから仕方無いか」

らんまの身体を一瞥した後、
良牙は鼻で馬鹿にしたようにふっと笑った。

「俺はオカマじゃねー!それに俺を馬鹿みたいに求めてたのは誰だよ!
あんな必死になって、無理矢理抱きやがって!
お前の所為で俺はおかしくなったんだよ!!」

カっとなって、つい出てしまった言葉にはっとするらんま。
勿論、良牙には何の事だか理解出来ないだろう。

「…何馬鹿みたいな事言ってんだ?
気持ち悪い事言い出しやがって……頭おかしくなったんじゃねーのか。」

「……っ…そうかよ…そうだな…忘れたってんなら…思い出させてやるよ…」

良牙の言葉に苛立ちが限界を迎え、心に住む蟲が轟くようにうねっている。
そして、自分から望んだ、
あの忌まわしいとも言える記憶の蓋をこじ開けようとしているのだ。



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