著者 : 名無しさん@ピンキー ID:FdLUIyEJ 氏

その3 ー >>366
開始:05/11/02
最終:05/11/10
その3 − >>422

【 良乱 】

日が暮れ、空が茜色に染まる頃。
夕餉の香りが立ち込める天道家の台所には、かすみとあかねの姿があった。
あかね本人は食事の支度を手伝うつもりなのか、
世話しなく包丁を振るい、歪な形をした野菜が皿に盛り付けられる。
かすみにとっては邪魔以外に何者でも無かったが、仕方無いといった表情で手伝うあかねを軽く嗜める。

全ての食卓が居間へ運ばれ、家族全員が集まった頃合、
乱馬一人だけ見当たらないのにあかねは訝しげに顔を歪めた。

「…おっかしいなぁ…、おじさま、乱馬知りません?」

「ぱお〜ぱおお〜〜〜」

玄馬に問うもパンダの姿なので真っ当な返答さえ、否、会話すら出来ない。
マーカーペンでボードに何か書こうとしていたが、あかねは無視しなびきに聞いた。

「乱馬君ならさっきお風呂場に行く姿を見たわよ」

なびきが口を割った直後、天を貫くような女の悲鳴が響いた。
らんまの声だ。
あかねは一目散に風呂場に走り、湯気で曇っているガラス戸を乱暴に開ける。
そこには女の姿のまま、湯舟に浸かるらんまの姿があった。

「ら、らんま!?あんたどーしたの!?」

血相を変えて驚くあかねの声色に、らんまは身体を小さく震わせあかねの方を向いた。

「………お湯に浸かったのに…男に戻らねー…」

今にも泣き出しそうな表情で訴えるらんま。


けたたましく廊下を走る音が聞こえ、
後を追って駆け付けた早雲と玄馬は、そのらんまの姿に目を丸くする。
早雲は涙をハンカチで拭うと、洗面器で湯を掬いらんまの頭からそっと流してやった。

「うう……らんま君…可哀想に…安心していいよ、家からお嫁に――」

「やめんか!」

あらぬ事を言う早雲の言葉を遮り、らんまは拳を震わせながら叫んだ。

「そういえば…前にもこんな事あったわね」

あかねの言葉に以前の悪夢が蘇る。
そう、中国から来訪したハーブとかいう麝香王朝の末裔、
その時は姿を留めておく桶水止を浴びせられ、男の姿に戻れなかった。
だが今はどうだろう、桶水止の水も浴びてなければ、とっくに利き目も切れている筈。
らんまは訳が分からず、ただ頭を項垂れるだけだった。

「兎に角、猫飯店にでも行ってみたら?おばあさんなら何か知ってるかもよ」

頭を抱え込むらんまを見兼ねて、あかねは敢えてシャンプーの処へ行くよう促した。
智恵が豊富な彼女な何か知っているだろう、唯一の頼みの綱だ。
覗き込むあかねの顔がやたら心に染み、らんまは小さく頷いた。


「あいやー、らんま私に逢いに来てくれたあるな!」

猫飯店に入るや否や、シャンプーは歓喜の表情で瞳を輝かせ、
ゴロゴロと猫のようにらんまの胸元へ飛び付く。
そんな様子に、あかねは怒気を帯びた瞳でらんまをきっと睨み付けた。
その冷たい目線に身を縮こませ、軽くシャンプーをあしらうらんま。

「ばあさんに話しがあんだよ」

言うや否や、奥からコロンが現れた。
早速、らんまは湯に浸かっても男に戻れない旨を話し始める。
コロンは静かに相槌を打つと、ちょっと来いと言って奥の部屋にらんまだけを招き入れた。

シャンプーも驚いた様子でらんまの話を聞いていたようだが、
何か解決の策があるようで二人は不思議そうに顔を見合わせる。

暫らくすると、らんまの悲鳴ともつかぬ可笑しな声が聞こえ、二人は慌てて奥の部屋に走った。

「来るな!!絶対に来るんじゃねー!!」

刹那、叫ぶらんまの声に脚が竦み、二人は立ち止まる。
どのくらい経っただろう、
コロンと共に戻って来たらんまは頬を僅かに紅潮させ身体をもじもじと捩じらせている。

「…何だったの?可笑しな声したけど…」

尋ねるも、らんまは依然と身体を捩じらせ、恥辱に満ちた表情で口を割ろうとしない。
今まで見た事も無いらんまの異様とも言える表情に疑惑を覚えるあかね。

「婿殿は――」

「あああああ!!」

変わりにコロンが口を割ろうとするが、それをらんまが遮った。

こんな事、絶対あかねに言えねぇ……。
思い返すだけで虫唾が走る。


それは、今日の出来事――まだ太陽が照り付ける白昼に悲劇は起こった。
朝、天気予報では雨マークなんて一つも無かったのに夏特有の通り雨に打たれ、
傘を持ち合わせていなかったらんまは勿論女になった。

すぐに雨は止み、瞬く間に雲間から覗く太陽に苛立ちさえ覚えながら家路までの道を歩いていると
背筋に悪寒が走り擦り返ると案の定、悩ましげな顔で立つ九能の姿があった。
いつものように「おぉ、逢いたかったぞ、おさげの女〜〜」と言ってらんまの懐へ飛び付く九能。

そのまま、蹴りを入れて天高く突き飛ばしてやれば良かったものの、
真剣な面持ちで話しがある、と九能が言い出すので
らんまは仕方なく引かれる腕を払う事が出来ずにに九能家に脚を踏み入れた。

案内された九能の部屋は、不必要な家具など無く綺麗に整頓され、埃一つ無い。
壁際に懸かる自分のでかいポスターに目がいくも、素知らぬ振りをしてらんまは畳に腰を降ろした。

「んで?用って何だよ」

「まぁ、そう急かすで無い。まずは茶でも飲んで落ち着くのだ」

差し出された冷緑茶は乾いた喉に心地よく流れ込み、火照った身体を少しだけ冷ましてくれた。

「どうでもいいけど…俺急いでんだよ、早くしてくんねーか?」

なかなか本題に入ろうとしない九能に苛立ちが募り、らんまは乱暴に口を割る。

刹那、急速に身体の自由が奪われていくのが分かった。
手足が思うように動かず、持っていた湯飲みが畳に転がると同時に視界がぐらぐらと歪む。

――茶に何か入ってた?


「ははっ…どうやら効果覿面のようだな、我が妹が作った痺れ薬は」

「……っ…九能…どうゆうつもりだ……」

「……天道あかねとあさげの女、どちらに愛を捧げるか迷った。
だが!僕は決めたのだ。おさげの女だけを愛すると」

相変わらず鳥肌が立つような言葉を投げかけて来る九能に、らんまは少しなが恐怖心を覚える。
九能の瞳は炎が滾るようにギラ付き、気持ち悪いのには変わりないが、
何処かいつもと違う九能を垣間見た気がした。

言う事を聞かない身体を尻目に九能はせっせと寝床の準備をしている。

本気でやばい、と思った。
でも、身体が動かない――意識がはっきりしているだけに酷く嫌悪を感じる。

「さぁ、おさげの女…」

九能はらんまの華奢な身体を軽々と抱き上げ、そのまま布団の上に組み敷いた。

「やっ…離せ…!やめろ・・・!」

僅かに指先が動く程度で、とてもじゃないが逃げ出すなんて出来やし無い。
鼻先が触れ合うくらいに九能の顔が間近に迫り、吐き気さえ伴う感覚を必死で抑えるのがやっとだった。

「はぁ・・・ん」

九能の唇が触れたと思ったら、すかさず舌が乱入し小さい口腔内を犯され、
ねっとりとした唾液と九能の体温が嫌でも伝わる。

げぇ・・・吐きそう・・・・・・・。

執拗に長い口付に眩暈を起こしそうになるも、
混じり合った唾液が首筋に伝うのが分かり、更なる吐き気を誘う。

息を切らし、瞳をギラ付かせる九能は盛りの付いた雄犬さながらだ。


九能の長い指が胸元に掛かるのと同時に左右に開かれ、
下着も付けていないらんまの豊満な胸が露になる。
その双丘に指を滑らしきつく揉みしだくと、痛みを伴う悲鳴を上げ身体を仰け反らせるらんま。

「いいぞ、おさげの女・・・もっと喜ぶのだ」

「痛いんだよ・・・!馬鹿やろう!」

何を勘違いしているのか、九能は更に力を込め、
片方の手でらんまの胸を揉み、空いている方の手で胸の先端にある小さな突起を指先で弄ぶ。

「あぁっ・・・・・・ぁん・・・」

自分の口から喘ぎのような声が漏れた事にはっとするらんまだが、
襲う快楽に声を押し殺す事は出来ず、
今の現状とは裏腹に僅かながら感じている自分に腹が立つ。

そんならんまを諭してか、九能は彼女の僅かに尖った突起を口に含むと舌で転がし先端で刺激した。

更に艶を増す甘い女の声に九能の欲は駆り立てられるばかりで、
らんまの悲痛な表情も手伝ってか
増長する想いを止められなくて、愛撫していた指先を下腹部へと移動させる。
彼女の身に纏っている衣服をさっと剥ぎ取ると、色気の無いトランクスが目に付く。
だが其れさえも愛しく思える程、九能はらんまに溺れていた。

下着も剥ぎ取るとらんまの、
おそらく今まで誰も触れた事が無いであろう綺麗な桜色をした秘所が露になる。
それは部屋の中とは言え、白昼のもと鮮明に九能の瞳に映し出された。
指先で割れ目をなぞると僅かに濡れており、九能の指先に妖艶に光る液体が絡み付く。

「・・・身体は正直だな・・・見ろ、おさげの女・・・もうこんなに濡れているではないか」

「ち、違う!・・・頼む、頼むからやめてくれ!」

恥辱に顔を歪め懇願するるらんま。
だがその願いも虚しく、九能の指はゆっくりと体内に侵入する。

「ああぁ・・・!痛いっ・・・!」

初めての感覚と味わった事の無い痛みが広がる。
指が奥に進むにつれ、痛みは増すだけだった。


指を2本、3本と増やされ、淫らな水音を立てながら体内を弄られる。
痛みが広がる中、おかしな今まで味わった事の無いような
快楽とも呼べる感覚が生まれるのをらんまは必死に堪えた。
そんならんまの様子に九能は気色悪い笑みを漏らし、意地悪く指を激しく動かす。

「絶えるでない、身体に良く無いぞ」

「…っ…絶えてねーよ……!!」

らんまの心情とは裏腹に身体は真逆の反応を示しているらしく、
九能の指に滴る液は量を増すばかりだ。

「強情な奴め」

九能は言うや否や、秘所の少し上部にあるらんまの小さな蕾を指で摘み、愛撫し始める。

「ひゃあぁぁっ……!」

一番敏感な部分を予告も無しに弄ばれ、らんまは高い声を出し身体を捩った。

「あぁっ…ひゃ…ぁっ…ん」

女のような甘い声に自分の耳を疑うも、
体内を弄られるよりももっと激しい痺れるような快感に、疼く身体を堪える事は出来ない。

「いい声で鳴くでは無いか」

九能は満足げに微笑みながらも、らんまの秘所を愛撫し続けた。
きっと九能を睨み付けるが、それ以上の抵抗は皆無であって、そんな自分が酷く情けない。

男の俺が何でこんな女みたいな目に逢わされなきゃなんねーんだよ。

今すぐ蹴り倒して顔面に拳をぶち込みたい所だが、痺れ薬の所為で身体の自由を奪われている。
情けなさと屈辱感が込み上げ、目尻に薄っすらと涙を浮かべるらんま。

「……なんて可愛い奴め、泣くほど嬉しいのだな」

「アホか…!嬉しい訳ねーだろ!!状況見ろよ!嫌がってんだよ!」

相変わらず自分の都合の良い解釈しかし無い九能の耳には、
反する都合の悪い言葉は耳に入らないらしく
馬鹿みたいに頬を染め、照れたようにらんまを抱き締めた。

気色悪いを通り越して…もう、言葉も見つかんねー…。


一人で満足した九能は、らんまを抱く腕を自分の袴へとやった。
あっという間に腰紐を解くと、張り詰めた九能の自身が露になる。

そのさまはグロテスクと言っても過言では無く、
男のものなんて見慣れているらんまでも背筋が凍るぐらいだった。
これが今から自分の体内に入るなんて考えるだけで鳥肌が立つ。

「さぁ、あさげの女、やっと一つになれるのだぞ」

「おまえいい加減にしろよ!!やめろって言ってんだろーが!!」

何度拒絶しても暖簾に腕押しだ。
らんまは思いついたように咄嗟に甘い声で女のように可愛く振舞った。

「せんぱぁい……怖いから止めてくださぁい…」

潤んだ瞳で訴えかけるが、やはり逆効果だったらしく。

「怖くはないぞ、おさげの女。気持ちいいだけだ」

と言って既にらんまの秘所には、ちきれんばかりの自身を宛がう九能。
刹那、激しい痛みと共に異物感が体内奥深く貫いた。

「ああぁぁっ…!!いやっ…!痛いっ!!」

あまりの痛みに意識が飛びそうになるも、必死にそれを保とうと僅かに動く指先でシーツに爪を立てる。

「あぁっ…!!」

情けない事に上擦る声でしか言葉を発せず、虚しく部屋にこだまするだけだった。
九能はゆっくりと腰を動かし、肌を打ち付けるようにらんまの体内に自身を突き立てる。
繋がった箇所からは混ざり合った体液とらんまの血が厭らしくも艶かしく滴り落ち、シーツに染みを作った。

「いいぞ、いいぞ、おさげの女」

鼻息を荒げながら興奮する九能の姿に酷く嫌悪を抱いてしまう。
故に、自分も女を抱くときはこんな気持ち悪い姿なのであろうか。

擦れあう粘膜の音がやけに鼓膜を刺激し、
吐き気と頭痛、眩暈さえ覚える中、
押し寄せる痛みに身体が持たず、らんまの意識はそこで途絶えた。


目覚めた時、一番に目に入ったのは木目が浮かぶ高い天井で、
覚醒するかのように一気に身を起こすも九能の姿は何処にもなかった。

薬の効果はとうに切れたようで、なんら違和感も無く動く手足。
何も纏っていない自分の姿を見て先程の光景が脳裏に鮮明に映し出された。
あの九能の姿、顔、どれを取っても身の毛がよだつ。
同時に陵辱された事に怒りが込み上げ、拳を震わせながららんまは重い腰を上げた。

「てっ…」

その瞬間鈍い痛みが腰に響く。
らんまは仕方なく腰を支え、
さっと衣服を纏うと気だるい身体を引き摺りながら部屋を後にした。

脚を進める度に股間に妙な違和感を覚える。
何かが体内から伝っている気持ちの悪い感触に耐え切れず、
衣服に手を入れ太腿辺りを指で拭った。

「げぇっ…!なんじゃこれ!?」

見れば、白濁色をした液体が指にこびり付いているでは無いか。
もう、頭がどうにかなりそうで、怒りよりも恥辱の方が遥かに大きく、
何故か九能と顔を合わすのが嫌で、らんまは逃げるように広すぎる九能の屋敷から走り去った。

天道家に着くと怪しまれないように平然を装い、女の姿でいるのに酷く嫌悪を感じ風呂に向かった。
でも、湯に浸かっても何故か女の姿のままで――猫飯店に脚を運ぶ羽目になるのだが。


先程コロンに奥の部屋へ案内された時の事。
いきなり服を脱げとコロンに言われ、らんまは呆気に取られた。

「は?何寝惚けた事言ってやがんでぇ、ばばあ」

木杖が後頭部へ入るや否や、コロンは「早くせんか」と言ってらんまを睨み付けた。
言われた通り仕方なく衣服を脱ぐと、まだ纏っている下着さえも脱げと言われ、
嫌な予感がするもらんまはのろのろと下着を脱ぎ、肌を余す事無く曝け出した。

「うむ。まあ察しが付くが……横になれ」

勿論嫌なのには変わり無いが、コロンの威圧かかった言葉に逆らう術も無く、
らんまは言われるがまま全裸で横になり、その様子をコロンは鋭い視線で眺める。

「な、何なんだよっ…!」

言った刹那、コロンの皺がれた腕がらんまの元へ伸び、閉じていた太腿を左右に開かれた。
そして、それと同じような指がらんまの秘所をなぞり、体内へ軽く侵入する。

「ひゃあああぁぁあ!!」

先程あかねとシャンプーが可笑しいと思ったのはこの時の声だろう。

「い、いきなり何すんだよ!!気持ち悪い事してんじゃねー!」

「婿殿…おぬし、さては男と交わったな?身体が悲鳴を上げとる」

「な、な、なっ……」

図星を付かれたようで、らんまはバツの悪い顔をし僅かに頬を紅潮させながら言葉を詰らせる。
らんまの表情を汲み取ってか、コロンは平坦に話し続けた。


「所詮まがいモノの女体。形、姿はおろか、中身まで本物の女体に変わりないが元は男の身体。
無理に男と交わった事で身体が拒絶反応を起こしとるのじゃ。
湯を浴びても男に戻らなかったのはその名残がある為じゃな」

「何だよそれ、訳わかんねー…、どうしやいいんだ?」

「うむ、もう一度男と交わったら免疫が付いて、たちまち男に戻ろう」

コロンの有り得ない言葉にらんまは大きく目を開き言葉を失う。

何言ってんだ……。んな馬鹿みたいな話し誰が信じるってんだよ。

「そう驚くでない、ここに文献がある。良く読んでみい」

何処から持って来たのか、コロンは古びた本をらんまの目の前に置いた。
開いたページには難しい漢字ばかり並んでおり、日本語では無く中国語で書かれているのが分かる。
読めないらんまを諭して、コロンが変わりに読み上げた。

「じゅせんきょうで呪いの泉に落ちし物、
誤って紛いの姿で他者との交わりを持ってした時、再び交われば本来の形に戻る――」

…………。

「こんなすちゃらかな掟があってたまるかー!!」

「やむを得ん、男に戻りたくばもう一度交じわるしかない。嫌なら一生女のままでおるが良いわ」

「…っ…くそっ」

再び九能と身体を重ねるなんて死んだ方がましなんじゃねーか?
あぁ!!思い出しただけで吐き気が。

「ばあさん…それって他の奴でも問題ねーのかな?…やっぱその、あの…」

らんまは指をもじもじさせ、小さい声で言いにくそうに言葉を吐いた。

「そこまでは書いて無いから特に問題なかろう。だが念を入れるなら同じ男の方が良いかもな」

どもるらんまを遮って、さっくりと言い放つコロンの言葉に
地獄へ落とされたような感覚を覚え、らんまは肩を重く下げた。

衣服を身に纏い、あかね達の元へ戻る。
妙な気分と重い気分が交差する中――今に至る。


あかねとシャンプーはしつこいくらい勘繰って来たけれど、
何とか話を上手く反らし、あの悪夢のような出来事を話さずに事を終えた。

帰りの際、コロンはこっそりとらんまだけを呼び止め、ポケットの中に小瓶を差し入れた。
親指サイズの小さな瓶の中には薄いピンク色の液体が入っており、
香水かとも思ったがどうやら違うらしい。

「辛くなったらこれを自分に吹きかけると良い」

それだけ言ってコロンは踵を返すと奥の部屋へと去って行った。

俺自身に使って何か効果あんのか…?
小瓶の中の液体が何かは解らぬが、九能との行為を避ける事は皆無であり、
らんまは暗い表情で重い脚を引き摺りながら帰りの路地を歩いた。

「ねぇ、本当に何でもなかったの?」
「あぁ、、暫らくしたら男に戻るってよ」

尚も理由を聞きたがるあかねを軽くあしらうも、
尋常では無い心境の変化が顔に出ているのだろう。
心無しか重い空気が漂うのは気の所為だろうか、あかねの顔を直視する事が出来ず、
並んで歩いている事にすら引け目を感じて、らんまは思い出したように言葉を吐き出した。

「…俺、ちょっと用事あるから先に帰っててくれ」

あかねの返答も聞かず、らんは暗闇の中にさっそうと消えて行った。
ちょっと待ちなさいよ!と怒気を帯びたあかねの声が聞こえた気がするが振り返らず走り続けた。

息が上がる程全力で逃げるようにしてあかねの元から走り去り、
気が付いたら九能家の方向へと向かっている事に気が付いた。
男に戻る為なら仕方無いと割り切るしか無いのだろうか、
目の前の角を右折すれば九能の家は目の前だというのに脚が動かない。

少し考えてからでも遅くは無い、否、考えても結果は同じだろうが、
成るべくなら九能との行為を避けたかったらんまは、来た道をとぼとぼと歩きいつもの空き地へと向かった。


「なんでぇ、誰かいんじゃねーか」

空地に着くと先客がいるようで、小さなテントが目に入り、
らんまは不審な面持ちでテントから離れた空地の隅に腰を降ろした。
蒸し暑い夜空のもと、重い溜め息ばかりが漏れる。

未だ昼間の行為の残骸が残っているようで、下半身は鈍い痛みと言いようの無い気だるさに覆われていた。

「…らんまじゃないか」

ふと背後から聞き覚えのある声がし、振り返るとそこには良牙の姿があった。

「なんだよ、あのテントお前のだったのか?」
「あぁ…あかねさんに土産を渡そうと思ったんだけどな、どうやら道を間違えてしまったようだ。
でも貴様がここにいるって事は…天道道場は近いのか?」
「……すぐそこだよ」

どうせいつもの迷子だろっと軽く溜め息を吐くらんまだが、その瞬間脳裏にある考えがよぎった。
先程のコロンの言葉を思い返えすが、別に他の男でも問題ないという素振りだった。
勿論男に戻る可能性が高いのは九能であるが、僅かな可能性がある限り九能とは避けたい。
無論、良牙であっても嫌な事には変わりは無いのだが、九能と比べるとなると話は別だ。
覚悟を決めたかのようにらんまは重い口を開いた。

「……あのよ…変な頼みごとするけど…勘違いすんなよ…あ、あの…えっと…」
「なんだよ」
「……抱いて」

顔を赤らめ、蚊の鳴くような小さな声で言うらんま。
だがはっきりと聞き取れた。
良牙は一瞬呆気に取られた顔で目を見張るが、
すぐに怒気が込み上げて来たのか握られた拳が震え、怒気を帯びた空気が広がるような気がした。


「ぁ……違う、勘違いすんなっ…これにはわけが――」
「アホか!らんま!お前!人をからかうのもいい加減にしろ!!」

らんまの言葉を遮って、良牙の罵声が飛んだ。

「いくら俺でもお前みたいな男女と――!!」
「だからー違うっての!話しを聞けよ!!これには深〜い、海よりも深いわけがあるんだよっ!」
「うるさい!!お前の言葉なんて聞きたくも無いわ!
人をからかいやがって!もてない俺を蔑みやがって!!」

話しを聞こうともせず、いつものように怒りに狂う良牙に腹が立ち、
らんまは先程コロンに貰った香水のような液体を、良牙の頭から顔に向けて振りかけた。
怪しい薬を自分に使うのが嫌だったという理由も一理あるが。

「…っ…くせっ!なんだよこれ!?」

その液体は見た目のまま、香水のような甘い香りがし、二人の鼻腔を酷く突いた。
良牙には頭から降りかかり、むしろ良牙から匂いを発しているようなものだ。
どんな品かは解らないが暫らくすると効果が出て来るだろう、
未だ怒りの熱が冷めやらぬ良牙はブツブツと文句を言いながらテントの中へ戻って行った。

どのくらい経っただろうか、良牙の馬鹿みたいにでかい声が耳に響き、
少しうとうとしていたらんまははっと目を見開いた。

「らんま!!お前何かけやがった!!」


何やら尋常では無い様子の良牙だが、その表情は声とはうって変わって意外なものだった。
僅かに紅潮した頬と、虚ろな瞳、暑いのか薄っすらと汗が滲んでいた。

「……どうかしたのか…?様子おかしいぜ」

言うも香水の効果だと目に取るように分かる。
媚薬のようなもんだったのか……?とりあえず、自分にかけなくて良かったぜ……。

「くそっ…何か身体が変だ…頭がクラクラして…」

言った刹那、良牙の瞳に睨まれ、そのまま腕をきつく捕まれたと思ったら
引き摺るようにテントに連れ込まれた。

「ちょっ…!良牙!おいっ…!」
「……らんま…さっき言ってた事…忘れて無いだろうな…」

気付くと、狭いテントの中で組敷かれているではないか。
確かに自分から申し出た事ではあるが、良牙の瞳は尋常では無い。
飢えた獣のように鋭くギラ付き、覗く彼の八重歯がより一層恐ろしさを引き立てている。

媚薬には変わり無いが…何か違う…男に使ってはいけない物だったのか!?

混乱するらんま、今から予想される行為は無理強いの気がしてならない。
再び痛い目を見るかと思うと気が遠くなるのと同時に、
昼間の酷く苦痛だった交わりを思い出さずにはいられなかった。


経験も無く、性の知識に乏しい良牙は欲だけが走る。
服の上かららんまの身体を弄り、その音と良牙の荒い吐息だけが狭いテント内に響いた。
衣服の上からでも分かる良牙の僅かに膨張した自身は彼が身体を動かすたびに
らんまの太腿に擦れ、硬くなったそれを嫌でも感じずにはいられなかった。

尚も良牙の瞳は、微かに炎が滾るかのように鋭く妖しい。
危険を感じずにはいられなかったらんまは、咄嗟にポケットに手をやり先程の香水を取り出した。

こんな事なら自分に使っときゃあ良かったぜ・・・・・・・・・。

軽く後悔するも、今更どうする事も出来ない。
せめて自分にもかけて・・・・・・と思うが、その小瓶の中身を見て血の気が引く。
元から量の少なかった液体は、先程良牙にかけてしまった事で物の見事に空っぽになっていた。

げぇぇ!?まじか!?・・・くそっ・・・単純馬鹿良牙なんかに使うんじゃ無かった・・・・・・。

「なんだよ」

様子のおかしいらんまに気付いたのか
良牙の低い声がすると同時に小瓶を握っていた手をきつく掴まれた。

「ふぅん・・・これがさっきの変な香水か・・・。こいつの所為で今俺の身体はおかしいんだよな?
・・・・・・・・・責任取って貰うぜ。お前なんかとやるなんて嫌だが・・・そうも言ってられん」

どうやら良牙の身体は限界のようだ。
天地がひっくり返っても吐かないような言葉をさらりと言うと、らんまの肩を乱暴に押し付けた。

言い出したのは自分であり、今は良牙とは異なり華奢な女の身体だ。
拒む理由は無いと言っても過言だが、
すんなりと受け入れるのは癪であり抵抗せずにはいられない。

「離せよ!!」
「自分から誘っておいてそれは無いだろう」

腕をバタ付かせ、一応否定の言葉を浴びせるが、
この状況では無意味な事でそれ以上言葉を発せずに
らんまは抗う事を止め、布団の上に両腕を虚しく落とした。
その細い腕を良牙は乱暴に掴み、彼の髪が顎から首筋にかけて擽るように触れた。


「ぁ・・・っ・・・」

良牙の下手な愛撫は快楽の中に淡い痛みを伴う。
恐らく歯を突き立てて愛撫しているのだろう、彼の尖った犬馬が更なる痛みを誘う。

「お前っ・・・さっきから・・・下手なんだよ!もっと優しくやれよ!」
「お前なんぞに優しくしてられるか」

当然のように良牙の低い声に遮られるが、
下手という言葉が突き刺さったのか、先程よりも乱暴に愛撫されている気がした。

順番に衣服のボタンを外し、少しずつ露になるらんまの白い肌。
浮き上がる鎖骨に歯を立て、かじるように貪り付くとらんまの声が一層高くなった。
痛いのか快楽なのかどちらとも付かない声で喘ぐらんまの反応が、
愉快でたまらなく良牙は更に歯を突き立てる。
何時の間にか白い肌には良牙の歯型が赤く刻まれていた。

女を汚していくような、自分の所有物にしていくような妙な感覚が湧き上がり、
脳髄から下腹部まで一気に熱が走ったかのように只々欲だけが滾る。

目障りな衣服を肌蹴ると豊満な胸が露になり、その勢いで下の衣服も引き裂くように一気に脱がせた。
今まで初めて見る女の身体に良牙は息を呑む。
華奢な肩と男には無い豊満な胸、くびれる腰、丸味を帯びた身体。
何より、絹を練ったような白い滑らかな肌。
あくまで女の身体だが、何処か幼さ残るその身体に魅了されるばかりだった。

「じろじろ見てんじゃねーよ!!」

恥辱なのか、頬を紅潮させるらんまにさえ興奮してしまう。
彼女の白い肌が薄っすらと桜色に染まり、
僅かに湿っている事に欲は駆り立てられるなかりで留まる事を知らない。

・・・・・・らんまなんかに興奮するなんて・・・頭どうかしてんじゃないのか・・・・・・。

勿論、媚薬の効果が大半を占めているだろうが、
意識がはっきりしているだけにそう思わずにはいられなかった。
軽く胸を揉みしだき、桜色をした突起を口に含むとまた歯を立てて愛撫した。


「んっ・・・あぁっ・・・ぁっん」

痛みの中で広がる快感に声を上げるらんまは本当に女のようで、
その甘い声が誘っているようにも感じられ、良牙はたどたどしく舌と歯を使い、乳首を刺激した。

ねっとりとした唾液と共に感じられる良牙の熱い体温が肌に伝わり、
欲に溺れてい自分を止める事が出来ない。
良牙は薬の効果であるにしろ、
自分は何の効果も手伝わずに喘いでいる事に酷く嫌悪を感じてしまうが
押し寄せて来る快楽に抗う事は出来ず、ただ良牙に身体を預けるだけだった。

暑さの所為でおかしくなったのかも、と思うがどうでも良い。
今、頭の中には良牙の事も九能の事も男に戻る事も何も無い、
先程まで頭の中にあった抵抗という二文字すら消え失せ、
只貧欲に欲を求めるだけの無様な姿だけを曝け出している。

いつしか、良牙も衣服を剥ぎ取っていたのか、今の自分とは異なる男の身体が瞳に写し出された。
鍛えられたがっしりとした腕に、針金を通したかのように浮き上がる血管。
腹には余分な脂肪は無く、くっきりとまでは行かないが割れており、男を感じずにはいられなかった。
露になった良牙の下半身は予想していた通り、
はちきれんばかりにそそり立ち、先端からは先走りの液が薄っすらと光っていた。

「お、おいっ!」

言った刹那、自身を宛がう良牙。
愛撫も無しでまさかな・・・とは思ったものの相手は良牙だ。

「待てよ!!いきなり射れんじゃねーって!」

必死に言葉を紡ぐも、
良牙は未だ欲の滾るギラ付いた瞳を輝かせ、らんまの方を不思議そうに見つめた。


「・・・・・・なんだよ、望み通り射れてやるってんだろ。何か文句でもあるのか?」
「阿保か!順序ってものがあるだろー!いきなりなんて誰もやんねーぞ!」

同じく経験の乏しいらんまだが、先程の九能との行為でなんとなく分かった。
前程も無しにいきなり挿入されては先程と同じ、否、それ以上の痛みを伴う可能性がある。
良牙は不服そうに顔を歪ませるも、そうか・・・と言ってらんまから身を引いた。

良かったぜ・・・・・・こいつが馬鹿で・・・・・・。
何とかほっと胸を撫で下ろすが、一瞬だった。

「ひゃぁっ・・・!あぁぁ・・・・・・っ」

すぐに良牙の指が体内に侵入したのか、らんまは声をあらげた。
昼間のあの痛みが脳裏に霞む、だが二度目という事もあり昼間よりは幾分ましのような気がする。

「濡れてるぜ」

良牙の言葉もどれを取っても卑猥にしか聞こえない。
ごつごつとした男の骨ばった指が肉壁を押し広げるように奥まで侵入してくる。
身体を捩らせ、言葉にならないらんまの喘ぎ声はどんどんと艶を増し、テント内に響きわたった。

「おいおい、布団まで濡らすなよ」

秘所から流れる液体は指を増やされるごとに量を増していたらしく、
良牙の布団までくっきりと染みが出来るぐらい溢れていた。

「ふ・・・無様な姿だな、らんま」

嘲笑うかのような良牙の声が聞こえた刹那、
鈍い痛みと指よりも遥かに大きい質量が体内を貫いた。


「ああぁぁっ…あっぁあ…っ…」

体内を抉られるような感覚に、只唯声をあらげる事しか出来ない。
昼間の九能と交わった時よりも深く、子宮にまで届きそうな勢いで貫かれる気がし、
欲に飢えた凶暴な良牙を物の見事に表してるかのようだった。

酷く乱暴に犯されている中、二度目の行為という事も有り、
その痛みが何処か快楽へと繋がる気がした。
頭では拒絶している筈なのに、圧迫される体内が悦びを感じているのだろうか、
らんまの秘所から漏れ出る液と、同じように良牙から漏れ出る液が混ざり合い、
それが潤滑油となり、割と滑らかに交じり合っている気がした。

「ぁあっ…ん…はぁん…」

こんな声何処から出て来るんだろう、と不意に思うが
自然に漏れるそれを押し殺す事は出来ず、らんまは欲望に流されるまま声を上げた。

「もっと声出せよ」

十分と言って良い程声を上げているというのに、
良牙はこれ以上何を望んでいると言うのだろうか。
普段やられてばかりのらんま相手に、
形は違うにしろ征服している事に優越感を感じているのだろうか。
薄笑いを浮かべ嘲るような声で言う良牙に、当然のように腹が立つが今の状況では仕方が無い。

くそ…男に戻ってからぼこぼこにしてやる…!

朦朧とした意識の中で強く願わずにはいられなかった。


欲だけが迸る中、必死に腰を動かし、快楽を貪る良牙。
初めて味わう女の身体は自慰行為なんかと比べものが無く、
その大きな快感に只溺れて行くだけだった。

腰を上下に動かす度に擦れ付く女の肉壁は、まるで生き物のように自身に絡む。
粘膜が擦れ合うやらしい音も、繋がってる箇所から溢れ出るらんまの液体も何もかもが
良牙の欲を更に掻き立て、初めて経験する行為に瞳を輝かせ興奮するしかなかった。

その感覚をもっと味わいたくて腰を打つのが自然と早まる。
乱暴にぶつかり合った肌と肌は無機質な音を立て、らんまの白い肌は薄っすらと赤く染まっていた。

ただでさえ狭いこのテントはお互いの熱と火照る身体、混じり合う汗で一段と咽返るように暑い。
蕩けてしまいそうな感覚の中、気付くとだらしなく開けられたらんまの口元が目に入った。
甘い声が漏れるその唇は、さくらんぼの様に紅くぷるんと潤っている。
良牙は引き寄せられるようにらんまの唇を塞いだ。
一瞬驚いた顔で目を見開くらんまではあったが、素直に良牙の唇を受け入れる。

まさか良牙とも口付する羽目になるとは…性欲というのは心底恐ろしい。
良牙も同じように思ってるかも、と考えると変な感じがした。

気付けば良牙の口付は交わってるのと同じように乱暴だった。
これもまた初めて味わう感覚、女の唇の柔らかさに感動し、食いつくように凶暴に唇を交わす。
良牙のたどたどしい舌の動きを捉えるかのように、らんまの舌が絡み、
行き場を無くした唾液がつぅーっと彼女の首筋を伝って流れ落ちた。
その唾液の跡を辿るように舌を這わせ、再び貪るような口付けをする。

良牙の荒い口付けに呼吸さえままならず、苦しい。
良牙の犬馬が唇に擦れたのか、微かな痛みと同時に口中に鉄の味が広がった。

口腔内を犯されている中、下半身も同じように良牙に塞がれている。
唇と同じ、否、それ以上に激しく腰を打つ良牙。
隙間無く密着した肌と肌からお互いの鼓動と熱を感じずにはいられなかった。


「あああぁっ…もうっ……」

いつしか痛みは消え失せ、快楽だけが広がる中、らんまは限界を迎えたのか、
一段と高い声をあらげると同時に身体を仰け反らせた。
刹那、良牙も苦痛に満ちた顔で眉を歪ませ、腰を何度か痙攣させると
らんまの体内奥深くに欲望を吐き出し、脱力した身を彼女の身体に投げ出した。

未だ荒い吐息が漏れる中、らんまは良牙の重い身体を除け、
繋がった箇所からゆっくりと身を引いた。

「げっ……」

頂点を迎える瞬間感じた、体内に放出される異物感。
その白濁色をした液体は、糸を引くように良牙の自身から伝い厭らしく垂れ落ちた。

やっぱ気持ち悪りー……。

昼間の行為が蘇ると同時に、今の今までの光景がより鮮明に浮かび上がる。
自分の淫らな行為を思い返すと、
急に恥ずかしくなってらんまは頬を赤らめながらさっと衣服を羽織った。

もしや…あの薬…俺にも効果あったんじゃねーか?だって匂い嗅いだんだし…。

良牙程効果が強いわけでは無かったが、何処か身体がおかしかった気がする。
どっちにしろ、薬の所為にしずにはいられなかった。

不図良牙を見据えると未だ肩で荒い呼吸をしている。
顔を合わすのがなんとなく嫌なのと、この妙な匂いが立ち込める狭いテント内にいるのが嫌で
らんまは軽く衣服を羽織っただけで部屋を跡にしようとした。


「らんま」

刹那、良牙の声がしたと同時に足首をきつく捕まれる。

「りょ、良牙…、今日の事は忘れてくれ!…誰にも言わないし俺も忘れるから!」

一瞬睨まれるが、良牙は未だ熱の覚めやらぬ瞳をギラ付かせ、
らんまの細い足首を乱暴に引っ張った。

「お、おい!」
「…逃げるなよ、一人だけ満足そうな顔しやがって…」

まるで先程よりも欲が滾っているのでは無いかと思うほど、
良牙の獣のような瞳とすでに張り詰めた自身。
背筋に冷たい汗が流れ、再び感じる危険。
良牙は仰向けになったらんまの背に覆い被さるとそのまま衣服を剥ぎ取り、
前程も無しに後から突き上げた。

「ひゃぁぁんっ…!りょう…がぁ!…やっ…ん…お前っ…いい加減にっ…」
「もうめんどくさい前程なんていらんだろう、なぁ…らんま」

余りに大きな屈辱感に目尻に涙を浮かべるも、良牙は素知らぬ振りで腰を打ち付ける。
後から突かれることによって先程より圧迫され、言いようも無い快感が身体全体を襲う。


媚薬の効果は絶大で効果が切れるまで良牙に犯され続けた。
何時間とも思える身体の交わりは、時間が追うごとに苦痛に変わり、
らんまは息も耐え耐えになりながら、その悲痛な時間を我慢した。

こんな事だったら九能の方がマシだったかも…な。

後悔するも後の祭り。
誘ったのは自分の方ではあるが、女の身体の味を覚えた良牙はとてつも無く恐ろしく感じる。
まるで何かが取り憑いたように、只唯貧欲に欲だけを貪り尽くす。

こいつ…犯罪とか犯すんじゃねーか……。

馬鹿げた事を考えるが、今の良牙を見ているとそう思わずにはいられない。
そして、女の姿であろうと抵抗すれば良牙に抗えるのに、
それをしようとしない自分にも酷く嫌悪を感じる。

結局俺も同じか……。

だがお互いに身体だけを重ねる淫らな関係だけには絶対なりたくない、否、ならないだろうが。
――心から祈らずにはいられなかった。


地獄のような夜が明け。
天道家に戻り、速攻で風呂に向かい湯を浴びるとたちまち男の姿に戻った。
もう女の姿にはならん、と心に決めるも昨夜の光景を思い返すと妙な気分になる。

「らんま?何処行ってたのよ?…あれ?ちゃんと男に戻ってるじゃない」
「……うん、だから暫らくすると戻るって言っただろ」

只、今は良牙の顔だけは絶対に見たくなかった。
あの咽返る狭いテントの中での淫らな自分と、
狂ったように自分を求めるあの鋭い瞳が、鮮やかな情景となり俺を苛ませるから。



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