著者 : 名無しさん@ピンキー ID:Wxh3ScBz 氏

その3 ー >>315
開始:05/10/09
最終:05/11/12
その3 − >>433

【 無 題 】


「このへたくそ! こんなん痛いだけやん!」
 
ばちーんと良い音が響いた。ショーツ一枚しか身につけていない右京が、
腕で胸を隠すようにして横座りしている。
 
「お前のその張り手もかなりおれには痛かったんだけどな……。右京。」
 
同じくパンツ一丁の良牙が頬を押さえて痛みを堪えている。
意外にも流行に敏感な良牙は、ボクサーブリーフをはいていた。
 
「男がうだうだゆーとる場合か? もっとしっかりせえな。ほんまに。」
 
 
 
そこはお好み焼き屋「うっちゃん」の二階の一室だった。
偶然道に迷って店の前をうろついていた良牙を、右京は部屋に引き入れたのだった。
目的は、「セックスの練習」。
 
良牙は最近できたばかりの彼女、雲竜あかりとの何度目かのデートに向かうところだった。
当然、約束の期日はすっかり過ぎているのに、未だ待ち合わせ場所にたどり着けないでいたのだが、
良牙は今度のデートでもう一歩進んだ段階に進もうと考えていた。
そんな良牙に、右京は提案した。
 
「あんた、どうせ初めてでへたくそやろ? うちが練習台になったる。」
 
最初は良牙は拒んだのだった。
 
「ば、ばか言うな! おれは初めてはあかりちゃんかあかねさんに捧げると決めて……。」
 
右京はちっちっちと舌打ちしながら指を振った。
 
「男があんまりにもへたくそやと女は幻滅するで。やった途端ふられてもええんか? 
 想像してみ? 上手くできんかったときのことを。」
 
そう言われた良牙の脳裏にあかりの声が響く。
 
『良牙さま……。ごめんなさい。あかりは良牙さまみたいに下手な方とはもうお付き合いできません。』
 
「だああああああっ!! あ、あかりちゃん、待ってくれ、あかりちゃーん!!」
 
想像してみただけで苦痛だった。屈辱だった。
良牙はやむなく右京の誘いに応じた。
 
「安心せえ。キスはせえへん。最後までもやらん。ただ前戯だけやってみるだけや。」


良牙は手元に落ちていた男性雑誌の最新号を拾い上げた。
その雑誌はどちらかと言うとファッション関係の記事が多いのだが、たまにセックスに
関しての特集記事などを載せていたりする。
 
「えーと、『最初は後ろから抱きかかえるような姿勢が楽かもしれません。彼女の
 胸を後ろからそっと揉んであげ』……。」
 
雑誌をじっくり読もうとしていた良牙に、右京の声が飛んだ。
 
「そんなんほうっとき! 本ばっか読んだって上手くはならんよ! 
 ここに本物の女がおるやん? 実践あるのみやで!?」
 
良牙は不服そうな顔をしながらも、雑誌を捨て、右京の背後に回り、その体を抱きかかえた。
今度は先ほどのようにいきなり乳房をつかんで握ったりなどせず、胸全体をそっと
撫でるだけにする。
 
「う、うん……。そ、そうや。優しくな、優しく。」
 
良牙は胸だけではなく、下の方にも手を伸ばしてみる。
一方の手で胸を撫で、一方の手では腰を撫でてみたり、太ももに触れてみたりする。
段々感じがつかめてきた良牙は、指で乳首の周りに円を描くようになぞったり、
手の平全体で脚や腹の辺りを撫でたりしながら、右京の首筋にそっと唇を当ててみる。
 
「あ……んっ……。くっ……。はぁっ……。」
「感じてきたみたいだな。」
「うっ……か、感じてなんかおらんよ……。はぁん……。」
 
強がりを言ってみても、声が出てしまうのは抑えきれない。
息を荒くし始めた右京の姿に、良牙も段々興奮してきた。


「嘘つけ。我慢すんなよ。」
 
そう言うと良牙は右京の耳元にふうっと息を吹きかけた。
右京の体に緊張が走る。
 
「あ……あかんて……そんなんしたらうち……。あんっ……。」
「何が悪いんだ?」
「へ、変になりそうや……。体が熱くなってきよった……。」
 
良牙は確かに右京の体が熱を帯びて来るのを感じていた。
触り心地の良い、きめ細やかな肌だ。触れているだけで心が落ち着く。
あかりやあかねの肌もこんな感じだろうか? 良牙の脳裏にふとそんな考えがよぎったが、
今はそんなの関係なかった。ただ目の前にいるこの女を激しく鳴かせてみたい。
 
「ちょ、ちょお、何すんねん?」
 
良牙は体の向きを変え、そっと右京を横たわらせると、自分はその腰の上あたりにまたがった。
そして、少し大きめの二つの乳房の間に顔をうずめ、横から揉みほぐしはじめる。
 
「練習だろ?」
「そ、そうやけど……。」
「なら、これが感じるか感じないかだけ教えてくれよ。」
「わ。わかった……。」
 
胸の先端に濡れるような熱を感じた。右京は、恥ずかしさに目をそらし、じっと良牙が
舌で自分の体を蹂躙していく感触に耐えている。
 
「う……ふん……。はぁっ……。あんっ……。」
「感じるか?」
「う……うん……少しは……。」
「本当か? 強がるなよ。」
「あっ……はぁぁぁんっ! う、うそや……めっちゃ感じる……めっちゃ気持ち良い……。」
 
良牙が乳首を強く吸ったのだ。その快感にたまらず右京は叫んだのだった。
そして良牙の愛撫は休むことなく続き、右京のあえぐ声も途切れることがない。


「なあ……右京……。なんでお前おれと……?」
「はぁっ……はぁっ……さ、最初はめっちゃ痛いし、ほとんど感じないって聞いたんやもん……。」
 
右京は、絶え間なく与えられる快楽に顔を歪ませ、熱い息を吐き続ける。
 
「乱ちゃんにうちが痛いだなんっ……て……あんっ! 顔……見せたない……はあんっ!!」
 
良牙はそんな右京の顔を眺めながら、胸の奥から湧き上がってくる何とも言えない感情に気付く。
それは乱馬への嫉妬心だった。そんなことのためだけに、右京は好きでもない自分なんかに
体を開いたのだろうか? そんな些細なことのために……。
 
「乱馬だって……おれとこんなことした女となんて嬉しくねーんじゃねえか?」
「せ……せやかて……もう後戻りでけへん……やってしまったもんはやってしまったもん……。」
「そうだな。もう始めちまったんだから、続けるしかねえよな。」
 
良牙は体を起こし、右京の脇に座った。
そして、横から右京を抱き上げ、自分のひざの上に乗せた。
 
「ちょ……ちょお! どこ触っとんねん! 良牙!」
 
右京が声をあげても、良牙は手を休めない。
体を支えている方の手では乳房を包み、もう一方の手ではショーツの上から右京の最も大事な部分に
触れていた。
 
「練習だろ? ここの触り方も教えてくれよ。」
「あ……うん……。」
 
練習を口実にされては、右京も拒みようが無かった。
触られたその部分は、ショーツの中で少し湿り気をもっていた。

 
「どんな感じなんだ?」
「べ、別に何も……恥ずかしいは恥ずかしいんやけど、何も感じひん……。」
「ここは?」
「う、うーん。別に……。」
「じゃ、ここは?」
「な、何も……。」
 
良牙はショーツの上から色んな触り方をしてみるが、まるで効果が無い。
右京の中ではなんだかじれったいようなほっとしたような複雑な感情が入り混じる。
 
「そういうものなのか?」
「そういうもんなんかもしれへん……。慣れてこないと感じひんのかも……。」
「そうか。」
 
良牙はやむなくそこに触れるのをやめ、胸の方に手を伸ばす。
それで解放されると思っていた右京は焦ってしまう。
 
「りょ、良牙!」
「何だよ?」
「も、もうええんちゃう? あんた上手くなってきたわ。だ、だから……。」
「いや、まだだろ。右京はまだそんなに感じてないんだろ?」
「か、感じてるって。十分や……。」
「まだ濡れてないんだろ?」
「そ、そんなことないて。はぁんっ……。」
 
横抱きにされた状態で胸をまさぐられ、一方で脚に触れられる。
吐息が甘く切なく漏れ出るのを止められない。
そして、自分のその淫らな声が脳内で更に自らの感情を昂ぶらせることに右京は気付いていた。
肌を通じて、鼓膜を通じて、体全体に押し寄せる官能の波に溺れないように、
必死に自我を保とうとする右京だったが、良牙の愛撫は容赦なく襲い掛かってくる。


「かわいいな。」
 
唐突に耳元で囁かれ、右京はぴくっと身を縮めた。
 
「お前がこんなにかわいい女だったなんて知らなかったぜ。」
「あ、あほぉ……。そんなん、あんたに言われたって……。んっ……。はぁっ……。」
 
精一杯の虚勢だった。
たとえ好きな相手でなくても、男からそんな褒め言葉を受ければ、女として嬉しくないはずがない。
だが、嬉しい気持ちを認めてしまえば、もう引き返せないような気がしてならなかった。
 
「そうか。でも、何度でも言ってやるぜ。お前はかわいいよ。すごくかわいい。」
 
良牙は手を休めることなく、優しく語り掛けてくる。
その手の動きはゆっくりとしたものになってきている。
だが、右京の呼吸も、鼓動も、それに逆行するかのようにその速度を増していた。
身体全体が熱を帯び、その上を滑る良牙の指先の感覚に、
肌が悦びの声をあげているように感じられる。
心の中では、耳元で囁かれた言葉を反芻してしまう。
 
(かわいいて……ほんまなんやろか……? ほんまにそう思ってんの……?)
 
良牙が嘘をつけない性格であることはわかっていたが、どうしても疑い深くなってしまう。
それまでお互い、男と女を意識したことなど無かった。
二人にはそれぞれに別の片思いの相手がいたわけで、そういう感情が生まれる状況には無かった。
お互いの利害が一致するため、手を組んで策を弄したこともあった。
同性同士の友情に近いようなものはあっても、お互い異性として考えるような対象ではなかった。
なかったはず……だったのだが……。
 
「ちょ……ちょおっ……! まっ……!!」


胸部からまっすぐに滑り下りた良牙の指先が、そのショーツの中に入り込むのを感じ、
さすがに右京が抵抗の声を上げた。
だが、当然のように良牙はそのまま指を進める。
茂みに覆われたその部分に、初めて触れられる感覚に、
得体の知れない恐怖と、とてつもない羞恥心が入り混じる。
加えて、ほのかな期待と柔らかな快感が体中を覆い尽くしている。
 
「か、かんにんして……そこは……そこだけはあかんて……。」
 
甘い息を吐きながらも、右京は必死に抵抗するが、良牙の手は止まらない。
茂みをかきわけ、柔らかい肌をたどり、濡れる粘膜を捜索する指先の感覚。
右京はなけなしの理性で必死に気を張っていたが、それを崩そうとするかのように、
良牙も執拗に迫ってくる。
右京は今更ながら、良牙に男の恐ろしさを感じていた。
 
「も、もう……ええやろ? こ、これ以上はあかんやん……、な?」
 
そう言って、右京が愛撫していた良牙の手を自分の身から剥がそうとしたときだった。
良牙は右京を畳の上に仰向けに押し倒すと、唯一右京の身体を覆っていた一枚の布を
右京が気付くより早く取り去ってしまっていた。
 
「男が途中で止まれると思うなよ。最初に誘ったのはお前の方なんだからな。」
 
右京はひっ……と小さく息を呑んだ。
男勝りで大抵の男には喧嘩負けしたことのない右京も、
良牙に本気で襲われては拒みきれるはずもない。
右京は身体をしっかりと逃げられないように押さえつけられた。
あまりのことに混乱して、何が何だかわからないままだった右京が気がつけば、
良牙も既に下着を着けていないようだった。
怯えた瞳で見上げても、良牙の心には届かない。
普段であれば、女相手にこのように手荒な真似をできるような男ではないのだが、
一度火がついてしまった以上、良牙はただ雌を求める雄に成り下がってしまっていた。
そんな良牙の猛々しくそそり立ったの男の象徴が、右京を一気に貫いた。

 
「くっ……。」
 
あまりの痛みに悲鳴をあげることすらできず、右京は顔を歪めた。
大きな涙の粒が、頬より少し上の辺りをまっすぐに耳に向かって流れていく。
様々に変化する右京の苦悶の表情を見下ろしていると、
良牙の中にもわずかばかり、戸惑いが生まれてきた。
 
「痛いのか……?」
「い、痛いに決まってるやろ……。初めてやのに……。」
 
良牙は腰をゆっくりと動かしながらもこっそり指で結合部に触れて確認する。
少々性急にことを進めすぎたが、どうやらあるべき場所には収まっているらしい。
だが、愛液と共にわずかばかり指先にくっついてきたほのかに赤い液体を眺めていると、
良牙の中に更なる加虐心が湧いてきた。
身体を繋げたまま、右京の柔らかな身体を優しく包み込むように抱きしめると、
その耳元で、良牙は囁いてみる。
 
「うっちゃん……。」
 
声質はあまり似ているわけでもないし、良牙の声真似は上手くない。
だが、その呼び方だけで右京を刺激するには十分だったらしい。
右京は痛みから来るものとは違う涙をぽろぽろとこぼし始めた。
浅はかな提案をしたことを後悔し、深く自己嫌悪に陥っていた。
 
「ああ……乱ちゃん……どないしよ……。うち……うち……んんっ!?」
 
自分が誘導したにもかかわらず、聞きたくない言葉を聞いてしまい、
苛立った良牙は、右京の口を唇で塞いで黙らせた。
口を塞がれた右京は声を上げない代わりに、必死に頭を振って呪縛から逃れようとする。
そのあまりの激しさに良牙は一旦は口を離すものの、
しっかり両手で挟み込むようにして右京の顔を押さえると、今度はじっくりと味わうようにキスをした。


「キスはしないって……ゆうたやん……。」
 
ほぼ無呼吸状態だった苦しい時が過ぎ、唇が離れると、右京は顔を背けて愚痴を吐いた。
良牙は、「お前が言っただけだ」などとは言わず、右京の首筋に顔を埋めると、
しぼり出すように声を発した。
 
「あんな奴のどこが良いんだよ……。」
 
右京は答えない。答える必要も無い。
また、良牙だって別にそんな理由を聞きたいわけでもないのだ。
ただ、今この場には居合わせない男が、右京の心を支配しているという事実、
それが悔しくてたまらないだけなのだ。
良牙の方はといえば、片思いの相手のことも、付き合い始めた彼女のことも、
記憶の隅にさえ存在していない。
 
良牙は本能に身を任せ、動きたいように動く。
やがて、良牙の動きが一段と激しく、速くなった直後、
身体のどこかでどくどくと大きな血管が脈打つような感覚に、右京の胸の奥がすうっと冷たくなった。
 
「ちょ、ちょお……まさかあんた……!?」
 
右京が気付いたときには遅かった。
既にそのときには、右京の小さな胎内では貯め切れない分の液体が結合部から漏れ出していた。


出すものを出してしまい、熱くなった身体も冷えてくると、良牙は急に冷静さを取り戻した。
乱れた長い髪、涙の乾いた跡の残る顔、荒い呼吸と共に上下する胸。
それまで見たこともない右京の艶かしい姿態を見下ろしながら、自分のしたことの重大さにおののく。
 
「す、すまん! さ、さっきはかーっとなってなんか自分でもよくわからなくて……。」
 
小さく萎んだものを右京の身体からそっと引き抜くと、部屋の隅の方まで素早く下がり、
冷や汗をかきながら平謝りをする良牙の姿を、起き上がった右京が見下ろしている。
その眼差しは、良牙が未だかつて感じたことのないくらい、冷ややかなものに感じられた。
 
「あっ……謝って済む問題でもねえよな……。で、でもその……、とにかく、すまん!」
 
畳に頭をこすりつけている良牙の傍に、右京が無言で近寄り、寄り添う。
気配を感じて良牙が頭を上げ、身を起こすと、右京はそっと横から胸にもたれかかってきた。
その身にはその辺にあった上着を軽く羽織っているだけで、ほとんど裸も同然のままの姿だ。
 
「今度は……、乱ちゃんの真似なんかせんといて。」
 
その甘えるような声の響きに驚いて良牙は右京の方を向く。怒ってはいないのだろうか? 
心なしか顔に赤みがさしているように見える。
そして、ついつい顔より下に視線を下ろしてしまうと、先ほど散々触れた乳房が目に入る。
まるで花を咲かせる間際のつぼみのように、その先端は赤く、つんと立っている。
その土台は瑞々しい白さで視覚を刺激してくる。
あの柔らかな感触をもう一度味わいたい。だが、ぐっとこらえる。
こらえて右京に言葉の真意を問う。
 
「今度……?」
 
右京は長い睫毛を伏せ、ためらいがちに答える。
 
「う、うちも……良牙のことだけ考えるさかいに。」
 
今度は見間違いではなく、確実にわかった。右京は赤面している。
それも、耳まで赤くなっている。
 
(か……かわいい……。)
 
昂ぶった感情が見せる幻覚ではない。本当に右京を可愛らしく思った。
そして同時に、先ほどまで忘れていた二人の女性の存在も思い出してしまい、複雑な感情になる。
だが、心はどうあれ身体は正直なもので、気付けば良牙は右京を抱きこんでしまっていた。
 
「おれで良かったのか?」
「嫌いな男やったら最初から頼まんわ。」
「そ、それもそうか……。」
 
右京の言葉に、遠慮しがちに抱いていた良牙の腕に力が入る。
それを感じた右京も、良牙の背中にそっと腕を回した。
二人は、それぞれ脳裏に去来する別の異性のことを思いながらも、
お互いに今触れている肌の相手を逃すまいとするかのように抱き締めあった。


                                      (終わり)





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