著者 : 名無しさん ID:EJeXbdTD 氏

その3 ー >>035
開始:05/08/07
最終:05/08/09
その3 − >>057

【 恋の釣竿

<恋の釣竿アナザーストーリー>

「はあ……。どうしてこんなことになってしまったんだ」
深夜。
響良牙は、山奥に張ったテントの中で頭を抱えていた。
最初は愛しのあかねを釣り上げるつもりだったのに。
いや、そもそも人の気持ちをこんな道具で操ろうなどと考えること自体が間違いだったのだ。
邪な考えの罰なのか、最大のライバルである乱馬を釣り上げてしまう羽目になるとは……。
恋の釣竿の説明書には、釣り上げたときの胸のアザが立派な鯉になると恋の成就だと笑えない冗談が書かれていた。
昨日確認した時点で、らんまの胸の鯉は既に稚魚に成長していたはず。
力ずくでらんまを言い負かそうも、男に戻られればボコボコにされる始末。
らんまにはいろいろとちょっかいを出され、あかねにもあらぬ誤解をされ、この山奥に逃げ込んだ良牙は自嘲気味に笑うしかない。
「ふっ、我ながら情けねえ。気が重いぜ……」
魂の抜けそうな溜息を吐いたとき、
「りょ〜うがっ♪」
「ぬおっ!」
背後から突然抱きつかれて、良牙は前のめりになってしまった。


「らん、ま……?」
「へっへー、ようやく見つけたぜ」
 むにむに、と強調するように押し付けられる柔らかな胸の感触。
「う、わあああああっ!」
 反射的、というか拒絶反応を見せるように良牙はらんまを振りほどき、一目散にテントのすみに逃れた。
「ど、どど、どうしてこんな人里離れた山奥に!」
「ここ、学校だぜ? ほんっとにお前は方向音痴だなー」
 悪態を吐くらんまの目の輝きは、ひどく優しい。
「そんなことはどうでもいい! き、貴様、ここへなにしに来た!」
「……ナニ、だよ」
 らんまの言葉に、良牙の口がひくつく。
 良牙が反論にこぎつける余裕を持つ前に、らんまが薄地のシャツを脱いだ。
「な。しよ?」
 ごくり、と良牙の喉が鳴った。
 あかねより幾分大きく実っている美しい二つの果実は、良牙の男としての理性を惑わせる。さしずめこれは、禁断の果実を蛇に勧められたアダムの気分だ。
「もうおれ、我慢できない」
「ば、馬鹿なことを言うな! 俺が貴様となんかできるわけがなかろうが!」
「どうしてだ?」
「簡単なことだ! らんま、貴様は俺のライバルで……そ、それ以前の大問題は、貴様が男だからだ!」
「今は、女なのに?」
 そうだ。今は可愛らしい女の子でもお湯をかぶれば男に戻る。


こいつが元から女ならば……過去何度、そう思ったろう。
「だから、絶対貴様となんて――」
「んふふー」
 一瞬目を離した隙に、らんまは良牙の懐にもぐりこみ、再び抱きついていた。
「って、なにをしている!」
「良牙ってさー、逞しい身体してるよなー。おれ、どうしてもっと早くお前の魅力に気付かなかったのかな」
 ぞくぞくっ、と良牙に鳥肌が立つ。
「それに、おれがこうなったのもお前のせいなんだぜ? 良牙のこと考えるだけで、おれ……」
(ま、まずい)
 上目遣いのらんまの瞳が潤み、息遣いが荒くなり、ほのかに香るらんまの匂い。今やらんまは、完全に「女」と化している。
(このままでは俺の理性が、持たん!)
 外面上は女。らんまの変装に、幾度となくたぶらかされた経験もある。
 そう、らんまを、女として見ることは可能なのだ。
(あかねさんっ! 俺に、俺に悪の誘惑を断ち切る鋼の意思を!)
「良牙……ん」
 らんまの唇が迫ってくる。ゆっくりと。確実に。
(いや、しかしあかねさんは俺の気持ちには中々気付いてくれん。ならいっそ……いや駄目だ! いやしかし……)
 自問自答を続けるうちに、良牙の中にドス黒い感情が芽生えてくる。
(……これは、練習だ。俺がいつか、あかねさんとするための練習。らんまは、その練習素材だ。ちょっとやそっと乱暴にしたって構わんだろう)
 今こそ、散々おちょくられた仕返しもできる。
「んむっ!」
 もう少しで触れそうだったらんまの唇を、良牙は強引に奪いにいった。


「あ、や……」
 馬乗りになった良牙が、裸にしたらんまの全身を丹念に舐めてゆく。柄にもなく緊張しているのか少し汗ばんでいて、味はしょっぱい。
 唾液の糸を引きながら、らんまの顔を見つめる。
「はっ、まるで女みたいだな。これがかつての俺のライバルの姿とは、みっともない。なあ、らんまよ」
「だ、だっておれ、今は女」
「よく言うぜ。貴様は普通の男に戻りたいんだろうが」
 当然だろう。良牙もらんまも、その想いは何よりも強い。
 僅かな沈黙の後、らんまが口を開いた。
「……良牙が、女のほうがいいっていうなら、女が、いい」
「……」
(はっ! い、いかんいかん! 俺としたことが、らんまを)
 迂闊にも、可愛い、と思ってしまった。
 その感情を誤魔化そうとするように、良牙はらんまへの強引な愛撫を再開する。
「ん……いたっ」
 先端を尖らせたピンク色の乳首を噛み、下半身の秘部を探る。柔らかなソコへの愛撫は、意識せずとも壊れものを扱うような手つきになっていた。
「ん」
らんまが、しなやかな身体をよじる。
(ここまできたら、とことんやってやる。らんまが二度と俺に逆らわんように)
 やがて、らんまの身体は小刻みに揺れ始め、
「――ふ、ふふっ、ぷはははっ」
 シチュエーションにそぐわぬ、大笑い。
 これには良牙も愛撫の手を止め、目を丸くしてぽかんとらんまを眺める。
 らんまの次の台詞は、良牙の自信を打ち砕くには十分の破壊力を持つものだった。
「へったくそ」


「んふ……む……ちゅっ……ぷは……っ。へへっ、どうだ……? 気持ちいいか? 良牙……」
 形勢逆転。
 今度はらんまが良牙を裸にさせて馬乗りになっている。
 ぺちゃ、ぴちゃ、と淫らな音を響かせながらの、巧みな舌使い。
 ただの欲望の権化である、そそり立つ肉棒も嫌がりもせず、むしろ恍惚とした表情で、舐めている。
 らんまの一言ですっかり自信が喪失してしまった良牙は、らんまにされるがまま。いわゆる、マグロというやつだ。
 言葉も喋れなくなるように感じさせようとしたのに、逆に感じさせられている。
(響良牙、一生の不覚……っ!)
 恋の釣竿の効力で操られているとはいえ、悔しいことに、凄く、気持ちいい。
 なぜ、らんまは全てにおいて自分より上にいくのか。昔からそうだった。らんまと自分を比べて、どれだけ惨めな気分を味わったことだろう。
 そんな気持ちが今になって良牙に蘇ってきて、理不尽な怒りがこみ上げてくる。
「らんま」
「ん? ……わっ!」
 乱暴にらんまを押し倒した。
「あ……っ。良牙」
 恋する乙女のようにほんのりと頬を染めているが。今度は、愛撫などという面倒な前置きをするつもりはない。
 元よりそんなもの、らんまなどに必要なかったのだ。
 指を膣口に浅く挿入する。


「ひゃっ」
「俺がヘタクソだとか言った割には、随分濡れてるじゃないか。ええ?」
「そ、それは……っ。りょうが、だか、ら……っ」
 そのまま指をまさぐると、快感に声を裏返らせながら、絶え絶えに答える。
 既にらんまは透明な液を溢れさせ、自らの太腿の内側を濡らしていた。
 良牙は指を抜くと、膨張しきったペニスを掴み、らんまの秘部に密着させた。
 多少の動揺が、らんまの震えから良牙に伝わった。
「わ、わ、はは……。や、やっぱ、熱い、な……」
「らんま、これは貴様が望んだことだ。痛くても、どうなっても知らんぞ」
 さすがに、良牙も我慢の限界にきている。
「わ、わかって――っ!」
 らんまが言い終わる前に、良牙が一気に進入した。
「か……は……っ」
 突然の強烈な衝撃に、らんまは口をぱくぱくとさせ、焦点の合っていない瞳で宙を仰いでいる。
(ぐ……! き、きつい)
 これが初めて味わう、女の味。
 らんまの細い腰を掴むと、自分の腰を進ませてゆく。
「あっ、あっ、ああ……っ、んう……あああああああっ!」
 途中、膜のようなものを破ったような気がしたが、今の良牙にそれを確かめる余裕はなかった。
「は、ははは。熱くて、ヌルヌルして、最高だ……!」
 ただ、貪欲に快感を貪る。


「りょ、りょうがぁ……」
 対するらんまは苦痛に顔を歪ませ、それを紛らわせたいのか、キスをせがんできた。
 そんなものはお構いなしに、良牙は己の欲望のためだけに必死に腰を振る。
「あっ、あっ、あっ、い、いたっ、いたいっ」
 ばちばちと良牙の目の前で飛び散る火花。これが、交わりの快楽。セックスの快楽。
 柔らかい膣を出入りする肉棒。破瓜の鮮血と愛液にまみれて、ぐちゃぐちゃと音を立てている。
 快感に埋もれながら、一心不乱に腰を前後に振ることは忘れずに良牙はらんまの胸の鯉のアザをぼんやりと眺める。
 もう少しで、鯉は完全に成長するだろう。
 そうなれば、一生らんまとの行為に及べる。例えあかねさんにフラれようが、一生この快感が……。
 不意に、らんまが良牙の背中に手を回した。
 痛みを堪えながら、瞳に涙をためて。せつなそうに、愛しそうに良牙の耳元でかすかに囁く。
「……好き」
「な、に?」
「好き……大好き」
 良牙の動きが、止まった。
 欲望に支配されていた体に、冷静な判断力が戻る。
一気に血の気が引いた。


 らんまは、本気で自分に恋をしているのだ。それが、道具でもたらされた感情だとしても。
 その感情を、自分は弄んだ。
 人として、最低なことをしてしまったのではないか。人として、やってはいけないことをやってしまったのではないか。
 今になって、罪悪感が良牙を襲う。
(俺は……俺は、なんということを……)
「……りょうが?」
「……すまん、らんま。俺が、どうかしていた」
 糸の切れた人形のように静まり返った良牙がボソボソと呟き、体を起こしてらんまから肉棒を引き抜こうとした。
 だが、らんまの両脚が良牙の腰に絡みつき、それを阻止する。
「ダメだっ」
「もう……止めよう」
「ダメだっ! イヤだっ! 途中で止めるなんて、そんなの絶対ダメだ! いや、だ……! い、や……」
 震えながら、か細い声を絞り出して。
「う……っ、ひ……っく」
 らんまは、泣いていた。
「おれのこと、嫌いなのか?」
「あ……、いや、そういうわけじゃないが」
「やっぱり、あかねじゃないと駄目なのか? おれじゃ、無理?」
「う、ぐ……」
 反則だ。やはり、女のらんまは反則に可愛い。
(よ、よく考えるんだ、響良牙。こいつは元が男だぞ)
 しかし、もうヤッてしまった。事前ではなく、事後。男のケジメとしては、責任を取らねばならないのでは?
 プラス思考で考えると、お湯をかぶらなければずっと女のまま。デメリットといえば、一緒にお風呂に入れないことぐらい。
 それ以外は家事も得意だし、可愛いし、言うことはない。「男」さえ、捨ててくれるなら。
「む、無理じゃ、ない、かも」


「……ほんとか?」
 心底安堵したような、心から嬉しそうな健気な笑顔。見方を変えてしまえば、それがどうしようもなく愛らしく見える。
 萎えかけていた良牙の肉棒に力が戻り、膨張が再開する。
「あ……、りょうがの、また大きくなってきたぁ……っ」
「ら、らんまっ!」
(あかねさん! 優柔不断な俺を許してくれええええ!)
 らんまに覆いかぶさると、挿入も再開。
「あはっ♪」
「らんま! 俺も、お前のことが……!」
「う、うん……!」
 きゅぅっ、とらんまの膣が締まる。
 危うく射精しそうになるのを我慢しながら、良牙がらんまの髪を撫で、胸を甘噛みする。
 たったそれだけのことで、最初の無機質の愛撫の何倍の快感をらんまは得ていた。
「あ……だんだん、気持ちよく、なって、き……た」
「らんま! らんま!」
「はっ、はっ、はっ、い、いいっ、か、感じるっ」
 互いを貪り合うように求め合う男と女。
――やがて、呆気なく良牙が先に果ててしまった。
 初体験にしては、よく頑張ったほうだろう。らんまは多少物足りなさそうな顔をしながらも、自分の上に重なるようにして果てている良牙の頭を撫でた。
「……次は、ちゃんとイかせてくれよ」

「う……」
 目の前が真っ暗だ。
 良牙は、今の状況を把握しようと辺りを手探りする。
 むにゅ。
「!」
 柔らかな感触に飛び起きると、その手はらんまの胸に触れていた。慌ててその手も退かせ、状況把握。どうやら、女の胸に挟まって眠るという男の夢を叶えてしまっていたらしい。
 らんまは、ぐっすりと眠っている。
(そうか、俺は本当にらんまと……)
 もう、後戻りはできない。まあ今更する気も起こらないが。ふと、テントに無造作に転がっていたリュックの中からはみ出している「恋の釣竿」が視線に入った。
「全てはこいつが始まり、か」
 恋の釣竿を取り上げて、その下に敷かれていた説明書を見やる。
「む?」
 広げると今まで見落としていた箇所に、小さな箇条書きがあった。
「恋の釣竿……解除方法?」

 ……。


「ねー、乱馬。あんた、昨日どこいってたのよ」
 乱馬と学校への道程を並んで歩きながら、あかねが問いかける。
「さあ? 俺もよく覚えてねえんだよなー」
 らんまが気付いたとき、そこは夜明け前の学校だった。女の姿だったのだが、寝ぼけた……というのが妥当な判断だろうか。ただ、股間に妙な感じがあったような……。
 と、
「ぶわっ!」
 後ろから、何者かに水をかけられた。
「らんま!」
 バケツを持って佇んでいたのは、良牙だ。
「てめえ、良牙! なにしやがる!」
「あ、良牙くん、おはよー」
「おはようございます。あかねさん」
 あかねとの挨拶は手短に済ませ、良牙はスタスタとらんまに近寄り、その手をぎゅっと握った。
「……おい、なんの真似だ。離せよ」
「好きだ」
 ぴしっ、とその場が凍りついた。
「て、てめえ、何の冗談を」
「冗談ではない。好きだ、らんま。俺と付き合っ――」
 次の瞬間、良牙はらんまの拳で吹っ飛ばされていた。
「な、なに言ってやがる。あの変態野郎……」
 ぜえぜえ、と肩で呼吸をしながら鳥肌を立たせるらんま。
 一方のあかねは、軽蔑の眼差し。
「あ、あんたたち、いつからそんな仲に」
「おれは知らねえっ!」
(らんま! 俺は絶対に今の貴様を振り向かせて見せる! 絶対にだ!)
「は〜はっはっは! 俺は諦めんぞ! らんま〜〜〜〜〜っ!」
 弧を描いて綺麗な星になる良牙の笑い声は、長く、長く響いていた。

                          おわり




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