著者 : 75 氏

その2 ー >>161
開始:04/06/28
最終:05/05/06
その2 − >>644

【 乱馬×あかね×らんま

午後の修練も終えて風呂あがり。乱馬は上機嫌で、濡れた頭をタオルで拭き取っていた。
竜の髭の効果が解けてからというもの、男の姿でこうして髪を解くこともできる。

「ん? あーあ」
髪を縛っていた紐が切れ、ゴムも伸びきってだらりとしていた。
今となっては別にどんな紐でも構わない。
代わりになるものを借りようとかすみの部屋を覗いたが姿はなく、
続いてなびきの部屋の戸を叩いたが、返事はない。

(何だ、みんないねーのか?)
ちらりとあかねの部屋の戸に目をやったが、立ちすくむ。
あかねはもう、髪を束ねたりはしない。
束ねるほどの髪を自分が切り落としてしまってから、もうずっと伸ばす気はないようだ。
時折(あかねにしては器用に)サイドを編み込んでみたりはしているが、
留めているのは女の子向けの飾りのついたものだ。

「……」
あかねの髪が長かった頃を思い出す。
初対面では親切な女だと思った。
そして自分の正体を知った途端、てのひら返したように怒りっぽい女に変わった。
家でも学校でも、何かと鼻息を荒くしたあかねが、唯一大人しく愛らしい少女の姿を見せたのは、
その長い髪を保っていた理由でもある、東風先生の前だけであった。
少しでも想い人の理想に近づきたいと、女らしくしようとしたあかねの心根は可愛いと思った。
けれど、同時に沸々と胸にわいたのは、苛立ちにも似た感情だった。

(あいつまだ…東風先生のこと…気にしてんのかな)
額に滲んだ汗を、湯上りのせいだとごまかして拭き取りながら、
くだらねえやきもちだと苦笑いを浮かべて、あかねの部屋へと入っていった。


「おーい、あかね。あのさ…」
「何よ、ノックもしないで」
予習でもしているのだろう。机に向かったまま顔も上げずにあかねは答えた。

「悪りい。あのさ、何か髪縛るもんねえか? 古くて切れちまったんだ」
「髪? 何でもいいの?」
「おう。あんまり、こう…派手なやつじゃない方がいいな」
人に頼んでおいて勝手なこと言うわね…とブツブツ文句を言いながら、
小箱からいくつかのゴム紐を取り出した。

「はい。これでい……」
差し出した手が止まる。顔を上げたあかねは、ぱっと頬を紅潮させて俯いた。

「? どうした」
風呂上りとはいえ、女所帯の天道家に習って、ちゃんと服は着ている。
あかねが何を照れているのか分からず、乱馬はきょろきょろと自分の身を見つめた。
「…何でもない。ほら、これで…いいんでしょ?」
「何でもないって…。じゃあ何でそんな顔すんだよっ。気になるじゃねえか」
投げつけるようにしてゴム紐を渡し、あかねはまた背を向けて机に戻った。

「なーなー。何だよ? あかねちゃ〜ん」
机の端にしゃがみ込むと、まだ赤くした顔をぷいっと背けられてしまう。
気になるというよりも、赤い顔で恥らうあかねが可愛くて、からかうように覗き込んだ。

「何でもないったら…っ。用が済んだらさっさと出てってよ!」
「何でもないのに、そんなに赤い顔すんのかよ! 何か? 俺の面はそんなに猥褻かよっ」
「猥褻って……そんな事言ってないでしょ!」
「じゃあ何だってんだよ!」


ついケンカ腰になるのはいつもの事。
あかねは困ったな…と額をかき、覚悟を決めてイスを横に向けた。
「…バカみたいな事だから…気にしなくていいよ」
「ああ!? 俺の面がバカみてえだとっ!?」
「そーんな事言ってないでしょ! だから…その…」
ちらりと上げた瞳はまたすぐに俯いてしまい、もじもじと両手の指を絡ませた。

「……髪下ろしてると…何だか、いつもの乱馬じゃないみたいで…」
「はあ?」

かつての戦いで、束ねた髪が解かれて戦った乱馬を思い出す。
必死の形相で自分を守る乱馬を思い出すと、あかねもまた思い出すのだ。
自分の胸に広がる、乱馬への想いを。
しかしそれは日常の気忙しさに埋もれて、いつしか麻痺したように慣れていってしまうのだが、
普段は見慣れぬ髪を下ろした乱馬の姿を見ると、急に胸を締め付けられたように思い出す。

「いつもの俺じゃないって…?」
「……」
唇をきゅっと噛み締めて顎を引くあかねの方こそ、いつものあかねではないように見え、
恥らいに頬染めるあかねの姿に、乱馬もまたどきりと胸を弾ませた。

(やべえ…こいつ、可愛い…)
ぎしりと身が硬直する。
無言のまま暫し時が流れたが、胸の高鳴りは増すばかりだった。

「あかね…?」
真っ赤な頬に手を伸ばす。首を竦めたが、抵抗するには至らない。
おそるおそる見上げた瞳は、明らかに恋する者へ向けられた瞳だった。
あかねから見れば、きっと自分も同じような目をしているのだろう。
吸い寄せられるように顔を近づけると、その瞳はそっと目蓋の中に消えた。


「ん…」
柔らかい唇だ。キスは初めてではない。
しかし、乱馬の舌がぎこちなく伸びて口内に忍び込むと、
唇の隙間からあかねの甘い声が漏れた。
手を置いた肩は硬直したままかすかに震えている。
まるで狼の前で身を震わせた兎のように見え、乱馬は堪らずその身を抱き寄せた。

「…んっ、やっ…んんっ…」
身を捩ったあかねをしっかりと抱きしめて、深く唇を重ねる。
二人分の重みにイスはぎしぎしと軋み、机と壁に当たって逃げ場は消えた。

その時。
「ただいまー」
玄関口を開く音とともに、かすみの声が響く。

「あー…重っ、肩抜けそう。ちょっと乱馬くーん、いないのー? この荷物運んでよー」
続いて響いたなびきの声に、二人はびくくんと震え上がり、弾かれたように身を離した。

「……おう! 今、行く!」
返事はしたものの、胸はまだドッドッドッと鼓動を高鳴らせていた。
目の前のあかねも、唇を覆ったまま俯いている。
「じゃ…じゃあな! これ、ありがと」
「う、うん…」
ゴム紐を指先で回しながら、玄関口へと下りていった。



夕食時。
食卓を囲んだ面々の中、乱馬はちらちらとあかねの様子を窺ったが、
すでに乾いた髪を束ねた乱馬に対して、あかねはいつも通りの顔をしていた。
「ちょっとその醤油取ってくれ」などと話しかけてみたが、
特に照れた様子もなく、普通に「はい」と差し出されただけだ。
むしろ俯いたままセカセカと茶碗飯を掻っ込む乱馬の方が、おかしいぐらいだ。
「どうかした?」と尋ねるあかねの方がよっぽど余裕があり、
乱馬は「いや…」と首を横に振りながらも、女って分からねえ…と口を尖らせた。


深夜。放浪の旅から戻らぬPちゃんの姿はなく、あかねの部屋ではすやすやと一人寝静ま

っていた。
重ねた口づけの感触が忘れられず、納まりつかない気分で乱馬はそっと部屋に忍び込む。

「……あかね」
近づけば、酷い寝相に蹴り倒されるのも分かっている。
間を置いて数度呼びかけると、あかねはもぞもぞと身を捩り、気だるそうに目蓋を開いた。
「ん…乱馬…? どうしたのよ、こんな遅くに…」
まだ眠い目をこすり、外の光しか入らず、ほの暗い室内に目を凝らす。
ぎしりとベッドを軋ませて、起き上がったあかねに身を寄せた。


「何よ…」
ここまでならば、今まで何度でもチャンスはあった。
しかし互いに照れて先に進めず、時には邪魔が入ってしまい、未だ繋がったことがない。
文献によれば、女というものは雰囲気に呑まれれば身を開くというが、
乱馬にはそんなものを作り出すことができなかった。
似た者同士のカップルはいつまでも平行線を辿り、どちらかが照れて身を硬直すれば
その先に進むこともままならなかった。

(これが、あかねのスイッチだったんだ)
不思議そうに瞬きするあかねの前で、髪を束ねたゴム紐をすっと解く。
解けた髪は乱馬の肩に広がり、黙り込んだ乱馬は凝視するようにあかねを見つめた。

「……あかね」
呼びかけた低い響きに、あかねはぴくりと肩を揺らす。
暗くてはっきりとは見えないが、きっと、夕方のように顔を赤らめているのだろう。
伸ばした手が、熱く火照った頬に触れる。
親指で柔らかな唇をこじあけるように撫ぜると、あかねは顎を引いて顔を背けた。
「やだ…」
「何が、嫌なんだ?」

これから自分がする事、しようとしている事を知らしめるように、あかねに尋ねた。
いつもならば反射的な罵倒が返されるところだが、照れ隠しの言葉すら出てこない。
「なあ。何を、されるか分かってんだろ?」
怯えたように身を震わせるあかねを前に、乱馬も完全に調子に乗っていた。
今ならば、何でもできる。そんな気がした。
あかねの両手首を掴み、ベッドに縫い付ける。
突き出された格好の胸が目前に迫り、乱馬は呼吸を荒げた。


「……俺がお前を欲しいって思ったら…嫌か?」
「何言ってんのよ…、隣になびきお姉ちゃんが…っ」
「お前が大声出さなきゃ聞こえねえよ…」
「…でも…」

パジャマ越しに胸をわし掴む感触に、あかねはウッと声を詰まらせる。
就寝時とあって、その下には薄い肌着一枚だけで、覆い尽くすブラジャーすらなかった。
(そっか…。寝る時ゃ着けてねえんだな)
揉み上げた柔らかな感触に、乱馬は興奮し始めている。
ドクドクと高鳴る鼓動、血を集めたように突き上げた欲望に気付き、
覆い被さるようにして半身をあかねの身に突き当てた。

「やっ…! 乱馬、ちょっと待っ…」
「待たねえよ」

ごそごそと裾から忍び込んだ手はパジャマの胸元を揺らす。
生地の下で、直接胸に触れた感触に、じたばたと身を捩ったあかねの体が凍りついた。
代わりに鼻から息が漏れ、乱馬は意地悪くにやりと笑う。
「……気持ちいいんだ…?」
「や…違っ」
「そうかぁ? だってお前…もう乳首立ってんじゃねえか」


「!」
尖った先端をくりくりと捻られ、横向きに枕に顔を埋める。
加虐心をそそるあかねの恥じらいを前に、乱馬はますます悪乗りしてパジャマのズボンを引

き下ろした。

「だ…だめっ」
「何でだよ? まさか…もう濡れてるってわけじゃねえよな」
半身をうずかせた熱を察し、あかねはきゅっと唇を噛んで言葉を詰まらせる。
両手は乱馬の片手で頭の上に押さえつけられて、身を捩ったところでたいした抵抗にはな

らない。
パジャマごとずり下ろされた下着がひざ下にまとわりついたまま、
乱馬の指先が、閉じた足を撫でながら秘所へと近づいてきた。

「んっ」
恥骨を覆う茂みにぴったりとてのひらを当て、すりつけるように上下した中指が秘唇を割り

込む。
添えられた程度の指先が、図らずも花芯に触れると、あかねの全身がぴくりと跳ねた。

しかし……。
いくら女の体を持つ乱馬でも、こうして体を重ねた経験はない。
どうすれば感じるのかがうまく分からず、やや乱暴に花弁をすりあげるだけだった。
やがて湿った秘裂に辿り着くと、溢れ出たぬめりを広げるように円を描く。
「……へえ…やっぱ濡れてんじゃん」


「それ…は…」
あんたがそんなことするからでしょ…と、咎める言葉は、重なる唇に押し殺される。
蠢く乱馬の指先に翻弄され、唇を重ねられ。
上も下も、唇を弄ばれながら、あかねは棒状に伸びた体を捩ることしかできなかった。
己の指に、舌に、顕著に反応するあかねの身が愛おしい。
試しに両手の戒めを解くと、あかねの腕は乱馬の背中に回された。

(あかねも…欲しがってんのか…?)
求められれば呼応したように、下半身にもたげたものが力を増す。
もう我慢できないとばかりに、途中までさげたパジャマと下着を引き抜き、
自らの寝巻きもずり下ろした。

「ら…乱馬…っ?」
潤滑油にも満たない不十分に湿ったあかねのそこに、己の先端を押し当てる。
あかねは急に大股を広げられたことを恥じらい、思わず叫び出しそうだった悲鳴を喉元で抑

えた。
こんなところを家族に見られたらと思うと、悲鳴もあげられない。
「やっ…やっ…待っ、待ってよ、乱馬…っ」
突き上げる乱馬の腰から逃れるようにずり上がり、秘裂の上を乱馬のものが滑った。
身を突く欲望に息を荒げた乱馬は何度も突き上げてきては失敗し、
ぬるぬると滑り、こすりつく感触だけで爆ぜそうなほど昂っていた。
「だ、だめぇ…っ!」


あかねの手がベッドサイドの花瓶をとらえ、乱馬の頭から花ごと花瓶の水が降り注ぐ。
乱馬の…いや、らんまの赤い髪を伝い落ちた水はあかねの身にも降り注ぎ、
冷たさに身を縮め、掴んだ花瓶を床に放り出した。
「……あかね…てんめえ……っ」
睨み上げたところで、身の丈も変わらぬ可愛い娘の姿。
今にも貫かんと猛った肉棒はすでになく、半裸状態で悪ふざけのように絡み合う二人の姿があった。

「あは…ははは、ごめん。だって…」
「だって、じゃねえ! お前、やる気あんのかっ」
「なっ、ないわよ〜! 何なのよ、勝手にその気になっちゃって…私、すっごく恐かったんだからねっ」
「え…“ない”って…。お前、俺とする気…ねえのか? 俺とじゃ…嫌なのかよ」
表情を凍らせたらんまに対し、あかねはふうと溜め息をつき、濡れた髪をタオルで拭った。
「そうじゃなくって…。んーと…もっと普通に…して欲しいっていうか…」
「普通って何だよ? 普通にして、前は駄目だったじゃんか」
「あはは、そうだったね」
互いに照れ屋なところは変わらない。
どちらかが硬直してしまえば、呼応してギシリと身を軋ませてしまい、先に進むことはできなかった。
「……そうだったねー、じゃねーよ…」

差し出されたタオルを奪い取り、ごしごしと髪を拭う。
「おい、お前も濡れてんぞ。脱いだ方がいいんじゃねーの?」
「そうだね」
すでに男の体ではないこと、電気もつけぬ暗闇であることで、あかねは警戒心もなく濡れた服を剥いだ。
「うわー…シーツも替えなきゃ駄目かな」などと暢気に言うあかねをよそに、
らんまは仏頂面で口を尖らせていた。

「…今回はうまくいくと思ったんだけどな…」
「ほら、シーツ替えるからどいてっ」
「んー…」
シーツをわし掴んだあかねの手首を掴み、まだ湿ったままのベッドに押し倒した。


「お前、どうして欲しいんだ?」
「どうしてって?」
「…だってよ。俺がこんなに頑張ってんのに、いつもいつも…すり抜けやがって…。
本当に俺のこと好きなのか?」
「なっ…何よ、それ。あんたこそ、どうなのよ」
「馬鹿か? お前。嫌いな奴に、わざわざこんな面倒な手順踏んで、するかよ」
偉っそうに…とあかねもまた口を尖らせる。

「おれは、お前が…」
大切だから。大事にしたいから、と続けられる前に、その言葉は真っ赤な顔に呑まれて消える。
(俺、ナニ言っちゃってんだ、馬鹿野郎)

「私が、何?」
(…相変わらず鈍い女…)
それは女の狡さを秘めた誘導ではなく、ただ単に、あかねは分からないから尋ねるだけだ。
乱馬のように、負けた気がするからと、向こうから言わせたいわけですらない。
分かっているからこそ、余計に溜め息がもれる。

「ねえ、何よ?」
「だから。おれは、お前だから…こんなに、懇切丁寧にだなぁ…」
「へえ〜…そう。私“だから”ねぇ…」
「バッ…調子に乗ってんじゃねぇぞっ? おれは、別にお前が特別だからとか、
大切にしたいからとか、大事にしてるからとか、まだ言ってねぇからなっ」
迂闊にも、その口で言ってしまっていることに、口走ってしまってから気付く。
(だから俺、ナニ言っちゃってんだ、馬鹿野郎!)


しかしあかねは、気付いてもいなかった。
「……乱馬は、他の子とシタ事あるんだ……」
「は?」
「面倒な手順なんて踏まなくても、シタ相手がいるんだね…」
それは珊璞だろうか。それとも幼馴染の右京だろうか。
あるいは、小太刀かもしれない…と、あかねは見当違いなことばかりに思いを巡らせていた。

「お前゛、おれの話聞いてたか?」
聞かれていたらいたで赤面ものではあるが、勘違いされるのも困る。
らんまはワナワナと打ち震えながら尋ねた。
「失礼ね、ちゃんと聞いてたわよっ」
「だったら…っ」
「乱馬は、嫌いな相手とでもスルんだよね? これも、そういうつもりだったんだ…」
らんまの震えが止まり、紅潮した顔から血の気が引いた。
(全っ然…聞いてねえ…)

「男の子って大変だね」
男の性欲が、女のそれとは違うことぐらいは、あかねも知っている。
まるで憐れんだようなまなざしを向けられて、らんまは溜め息をついた。
どこから話を修正したらいいのか分からぬほど、あかねの勘違いは途方もない。

「…あのなぁ…。はっきり言って、女だって大差ねえぞ」
「そう…なの? 詳しいんだねー…」
いくら凄んで見ても女の姿。ずいっと顔を寄せたらんまをしげしげと眺めながら、
らんまは女の時でも欲情したことがあるのかしらと思いを巡らせる。
相手は良牙くんだろうか。それとも…九能先輩? と考えて、ぞっとする。


あかねの勘違いをよそに、隙をみて、らんまの指先があかねの太ももを割り込み、
兆した部分を撫で上げた。
「ゃ…っ」
「ほーら…。お前だって欲しがってんじゃねえか」
「違っ…違うわよっ」
「どこが違うんだ? すげえ熱いし…濡れてることぐらい自分でも分かるだろ?」
男のものとは違う、しなやかな指先で弄ばれて、あかねはきゅっと唇をつぐむ。
言い返そうと口を開けば、それは甘い喘ぎに変わってしまうのだろう。
「分かんねえ? お前…鈍いからなぁ…。じゃあその耳で聞いてみろよ」

「なん…」
座したまま背後から羽交い絞めにされ、再び秘裂を擦り上げる。
両足を絡ませ、開かれた足の間からは、ぐちゅぐちゅと濡れた音が響いてきた。
「…やっ…乱馬、やめ…っ」
「やめねえ」

耳元に齧りつき、静かにしろとばかりにシーッと呟く。
やがて指先は速度を上げ、強すぎる刺激にあかねは身を強張らせた。

「ほら、聞こえんだろ?」
「……ぃ…っ」
首を横に振り、あかねは認めない。


(強情だな…)
指先が充分なぬめりが絡みつくと、複雑な襞を一枚一枚開くようにして、
手探りで膣内に指を進める。
「ン…っ」
途端に抵抗していたあかねの両足が、痺れたように脱力する。
じゅぽじゅぽ…と指を行き来させれば、背後のらんまに背を預けるように身もだえした。
「…ほら、な? お前だって欲しがってるって…まだ分かんねえのか?」
「違…」
「違わねえだろうが」
「そ…じゃなくて……私…は…っ」

らんまの手首を掴み、振り返る。睨みあげた瞳は、悩ましげに歪んだ眉根のせいで
その効力はなかった。
「誰でもいいわけじゃない…もの」

「え…」
「乱馬だから…私……こんなになっちゃうんだもん…」
手首は抑制されたままだが、指先は動く。
掻くように折り曲げると、あかねは耐え切れず目を閉じて、ぴくりぴくりと全身が跳ねた。
「……だから、おれもそうだって言ってんだろうが……」

ぎゅっと抱き寄せた肌。その柔らかさも温もりも心地いい。
いきりたつもののないこの身でも、それは変わることなく胸を熱くする。
「他の誰でもねえ。おれは、お前のことが好───」
「だ、だめ…っ!」


一世一代の告白は、ひときわ大きく身を跳ねたあかねによって制御される。
「な…っ、駄目…って何だよっ」
怒鳴りつけたらんまに対する返答はない。
その指先は締め付けられるようなあかねの痙攣を察知した。
溢れ出た蜜は指先のみならず、あかねの太ももを伝い落ちていく。
「あかね…お前…」

硬直が解け、うなだれたあかねはただ浅い息をもらすだけで、やはり返事はなかった。
火照った身を抱き寄せれば、脱力してらんまに身を預ける。
(…ひょっとして…。イッたのか?)
確かめるように指を蠢かせてみたが、あまりよくわからない。
ただ、少しばかり揺らしただけで、敏感になったあかねの身が跳ねるだけだ。

「…らん…ま…、もぉ…」
「あんだよ」
勢い、売り言葉に買い言葉のように返してしまったが、顔を上げたあかねと視線がかち合い
息を詰まらせた。
「あかね、お前……んっ」


らんまは三度驚いた。
とろりと蕩けそうに欲情したあかねの目つき。
恥らうこともなくうっとりと微笑みかけた表情。
そしてあかねの方から、らんまの口を塞ぐ濃厚な口づけ。
男の乱馬とは違う唇の柔らかさに安心しているのか、それともあかねの中で情欲の炎に
火がついたのか。あかねは飽くことなく浅く深く口づけを繰り返した。

「…おい…んっ……ぁかね、お前…んっ…」
おずおずと舌を絡ませるような稚拙な口づけではあっても、不器用なあかねにしては上出来だ。
らんまはしばらくなされるがままにしていたが、まるで押し倒されるような格好で徐々に
ベッドに沈められ、上になったあかねの重みに押しつぶされそうな胸の圧迫感に、
思わず肩を掴み、押し戻す。
「恐かったんじゃあねえのかよ?」
「…う…ん…」
あかねはまだ、官能と理性の間を振り子のように揺れながら、首を傾げていた。

「……たい」
「ああ? …聞こえねえよ」
「…今のらんまなら…。大丈夫みたい」
「はぁあ!?」
咄嗟に訊ね返した叫びはすぐに両手で塞がれる。


しんと静まり返った室内。
壁ひとつ向こうの気配に耳を立てて起こしはしなかったか様子を伺う間も、
互いの高鳴った鼓動だけは体を通して響いてくる。
(今のおれならって…)
ちらり視線を下ろせば己の豊満な胸に隠れて見えないが、本来ならば今あかねが
乗っている部分にあるべきモノが、この姿ではない。
(…こいつ…。保健体育からやり直した方がいいんじゃねえのか?)
この身で、女であるあかね相手に何ができるというのか。
らんまは呆れたように見上げたが……

「今のらんまとなら…痛くないから、もっと…したい」
あかねの言葉は、らんまの理解を超えるものであった。

(未完)


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