■ 注 : 食 べ 物 で 遊 ん で は い け ま せ ん ■




 ベッドの上、クッションを背に上体を倒した状態で、行儀悪くポテトチップスを頬張る。
 読み終えた本を枕元に置き、雷蔵は大きく伸びをした。
 偶の休日、しかし外は雨でなんとなく気怠い。こう言う日は部屋でじっとしてるのが一番。
 だが、本を読み終えると時間を持て余してしまった。
 仕方無く食べる事で退屈を紛らわしていたが、ポテトチップスの残りはもう少ない。
 さぁ、どうしたものかと思案に暮れていたその時、ガチャリと玄関を開く音が聞こえた。
 ややあって床を蹴る足音とカンカン硬質な音が床を響かした。
 床を叩くような音に、雷蔵は僅かに眉を寄せる。
 やがて足音の主は、慌ただしく部屋の扉を開けた。
「ただいま雷蔵っ!」
「おかえり三郎。お前義足で部屋入るなよ。床が傷付くだろ」
「まぁま、細かい事は気にするな」
 軽く流すように言いながら、三郎はどさりと買い物袋を自分のベッドの上に置く。
「で、今日は何鍋?」
「牛乳鍋!お前の好物だろ」
「おぉ!でかした三郎!」
「最後の最後まで兵助が豆乳鍋が良いって口論になってさぁ、豆腐二丁は兵助の者って条件で譲ってもらった」
「だろうと思ったよ。何処で食うんだ?」
「そりゃ八の部屋だろう。俺らの部屋狭いし」
「まぁ、確かに」
 そう言って雷蔵は部屋を見回した。
 彼らの部屋はベッドが二つ横に並んでいる為、他の二人部屋と比べて明らかに狭い。
 本来二人部屋は二段ベッドなのだが、足が不自由な彼らの為に特別にこの部屋だけベッドが二つ並んでいるのだ。
「あ、雷蔵!実はさ、八と変な店入ってさ、面白い物買って来た!」
「変な店?」
「うん、スーパー四階の隅にあるやたらネオンの派手な店」
「あぁ、兵助が目に悪いって言ってた店か」
 彼らの寮から一番近くにある大型スーパーには、店内に小さな店舗が存在するが、その内一つに何処か近寄り難い雰囲気の持つ店があった。どうやら彼らはそこへ入ったらしい。
「そうそこ!なかなか面白い店だったぞ。商品とか変わっててさ。で、これはお前へのお土産」
「お土産?」
「おう。しかも食い物」
「食い物!?」
 食べ物と聞いて雷蔵は途端に目を光らせた。
 三郎は雷蔵のベッドに座って義足を外すと先程の買い物袋に手を伸ばした。
「気に入ると良いけど…」
「食える物なら何でも良い。何買ってきたんだ?」
 ワクワクと目を輝かせる雷蔵が可愛いのか、三郎はその顔に笑みを零す。
「見て驚け!ジャーン!!」
「うわっ…!」
 ガサリと音を立て、三郎は袋の中の物を取り出した。
 濃いピンク色のそれに、雷蔵は笑みから驚きの表情に変える。
「三郎…それ…」
「ん〜、普通の魚肉ソーセージだ」
「いや、形が普通じゃないから」
 それは三郎が言う通り、確かに魚肉ソーセージだった。
 しかし形はと言うと、先端は小さな窪みがあって緩やかに尖っており、エラや皮の皺、挙げ句には丁寧に袋まで忠実に再現された…早い話、男性器に似た形状をしていた。
「どうだ、凄いだろう」
「いろんな意味で凄いよ。目茶苦茶食べる気失せるけど」
「食わないのか?」
「食うよ。形はなんであれ食い物は食い物だ」
「お前のそう言う所が好きだよ」
 にんまりと微笑みながら、三郎はビリッと包みを開く。
 雷蔵はそれを受け取るつもりで手を差し出した。しかし、三郎は近付いてきた手に気付くと、敢えてその手からソーセージを遠ざけた。
「?」
「おっと、折角形が形なんだ。ただ食うだけじゃつまらんだろ?」
 そう言って三郎は足を雷蔵のベッドの上に上げると、雷蔵の身体を挟むように両腿を広げた。
「ほら雷蔵、俯せになって」
「あ、あぁ…って、お前!この体勢って…」
 言われるが儘に身体を俯せにさせれば、丁度三郎の股間が目の前に来る形になる。
 この状態であれを食べ事は即ち、淫口奉仕に近い体勢で食する事に等しい。
「雷蔵、これは俺が持つからお前は手を使わずに食えよ。但し、俺が良いって言うまで囓るの無しな」
「う〜ん…予想はしてたけど、なんか気が引けるなぁ」
「まあまあ、味は美味い筈だから取り敢えず食ってみろって」
 ずいっと口元に先端を突き付けられ、雷蔵は観念したように舌先で少し先を舐めた。
「…どうだ?」
「ん……あ、意外と美味い」
 少し舐めただけなのに、ハッキリと魚肉ソーセージの旨味が口の中に広がる。
 味が気に入ったのか、雷蔵は先程より大きくそれを舐め上げた。
(…あっ…ヤバッ)
 雷蔵の舌が尖端を擦りあげる。
 視覚的な刺激にドキリとし、三郎は大きく息を吸って吐いた。
「なぁ雷蔵、舐めるだけじゃなくてさ、深く咥えろよ」
「ん…」
 言われるがままに雷蔵は先端部分を口に含む。
 そして口の中全体で味わうようにモゴモゴと口を動かした。
 ニヤリと三郎が微笑む。彼はソーセージの睾丸の部分に手を当てた。
「雷蔵」
「ん、あに?」
「発射!」
 ぐにり、と三郎が柔らかくタマを握った瞬間、雷蔵の口の中にヌルリとした物が放たれた。
「うわっ!なんだコレ酸っぱ!」
 驚いて口を離した瞬間、やや黄色掛かった白濁が雷蔵の頬に掛かった。
「あ、悪ぃ」
「ん…てかこれ、マヨネーズ?」
「そう!タマ袋押したら精液に見立てたマヨネーズが飛び出す仕掛けだ!」
「…馬鹿だろ。買う奴も作った奴も」
 はぁ、と呆れたように溜め息をつく雷蔵。だが、三郎は気にしない様子で笑った。
「ははっ、でも遊び心たっぷりで楽しいじゃないか」
「別に楽しくないよ。しかもマヨネーズも無駄に美味いし…」
 親指で頬に掛かったマヨネーズを掬い舐めとる。その様子ですら何処か欲情的だ。
 そして再び彼はソーセージに舌を這わせた。
 垂れたマヨネーズを舐め上げ、ソーセージを味を混ぜ合わせてから飲み込む。
 もっとマヨネーズの味が欲しいのか。雷蔵は先端に口付けると、ちゅく、と中のマヨネーズを吸い上げた。
(うわっ…)
 普段の雷蔵なら決してやらないだろう行動に、三郎の胸は更に高鳴った。
 その上、雷蔵は裏筋に当たる箇所を舌先で円を描くように舐めだした。
(あっ!…そ、そこはッ!)
 本来男性が一番感じる箇所とされる部位。
 もし今雷蔵が舐めているのが食べ物ではなく自分の自身だったら…。
 そう考えただけで、ズクンと下半身が疼いた。
(…ぅ…勃ってきた…)
 雷蔵の舌が、口内が、気持ち良いであろう箇所を舐め上げる度、想像上の快感となって三郎を追い詰めた。
 コクン、と口内に溜まった唾液を飲み込む。呼吸はなんとか抑えているが、いつまで耐えられるかわからない。
 男根に至っては、服の上からでもわかる程勃ち上がり、ヒクヒクと刺激を求めるように訴えていた。
 つい触りたい衝動に襲われるが、今は仮にも餌付け中。そんな事は出来ない。
(頼むからもう少し我慢だムスコよ。後で抜いてやるから)
 欲望と戦いながらも、三郎は雷蔵を観察するのを止めない。
 雷蔵がここまで夢中にしゃぶりつく姿は、滅多に拝めるものではない。
 暑い訳ではないのに汗が頬を伝える。疼きを紛らわそうとすれば切なげに足が動いた。
 天国と地獄のような時間。そんな時間がもう暫く続くだろう。
 不意に雷蔵が上目遣いで三郎を見上げた。
 射抜くような視線に、三郎はドキドキと胸を騒がせる。しかし、

 ガブッ!!
「痛ってえぇッ!!」

 突然雷蔵は魚肉ソーセージの先端を食いちぎってしまった。
「ん、美味い」
「〜ッ!〜ッ!」
 もぐもぐと美味しそうに咀嚼する雷蔵に、三郎は青い顔で口をパクパク動かす。
 三郎自身は何もされていないものの、想像の中でそれと自分の男根を重ねていただけに、それが食いちぎられて一瞬パニックになった。
「おま…!雷蔵!お前何て事するんだ!」
「煩い!食わずに舐めるだけとか生殺しじゃないか!」
「これが俺のチンコだったらどうしてくれるんだ!」
「馬鹿野郎!食い物とチンコを一緒にするな!」
 そう一喝し、雷蔵は残りのソーセージをもしゃもしゃと食べる。
 完全にただの食べ物と化したそれを見て、三郎は現実に引き戻されたような錯覚を覚えて溜め息をついた。
「あ〜、折角お前可愛かったのに…」
「そんな事言われても嬉しくないよ。それに…」
 ソーセージを食べ終えた雷蔵にそっと服の上から股間を撫でられ、三郎はビクリと身体を震わせた。
「お前が本当に舐めて欲しいのはこっちだろ?抜いてやるから脱げよ」
「へ?」
 予期せぬ雷蔵の嬉しい言葉に、三郎は一瞬唖然とする。
「嫌なら止めとくけど」
「い、いやいや!お願いします雷蔵様!」
 言うが早いか、三郎はカチャカチャと性急にベルトを外した。
 チャックを下ろして下着をずらせば既に猛きった男根が露出した。
「うっわ、凄い我慢汁。これ辛かったんじゃないか?」
「うん、雷蔵を見てたらこんなになった。早く鎮めてくれ」
「はいはい、仕方無いなぁ」
「あ、間違っても食いちぎるなよ?」
「わかってるよ」
 ふふ、と微笑み、雷蔵は解放を望むそこへと舌を這わせた。

〜fin〜




〜 あ と が き 〜

リアルに魚肉ソーセージを舐り食いながら考えたネタ。吃驚めっそり一日クオリティ。
もっと修正してからうpろうと思ってたけど面倒になって結局そのまま載せました。




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