※注意※
 直接的な表現や汚い表現はありませんが、一応浣腸プレイです。
 苦手な方は速攻でUターンして下さい。
 オケな方はスクロールをお願いします。





































































































■ 蜂 の 腰 ■




 頭上で手が戒められ、視界も布で塞がれてしまった。
 縄抜けしようにも、手首の太さが足りない。普段からもっと鍛えておくべきだったと今更後悔するが、もうどうにもならない。
「雷蔵…」
 布の向こう側で声がする。同室の、自分と同じ顔をした人物の声が。
「身動きとれないだろう」
「……」
 身体を動かそうとしても動かないのは、彼が自分の上にのしかかっている為。
「…三郎、一つ聞いて良いか?」
「何?」
「…たかが浣腸するだけなのに、何で目と手を縛る必要があるんだよ」
「だってお前、嫌だって暴れるから」
「当たり前だろ!!」

 事の始まりはこうだ。
 晴れて恋仲となり、授業は大変であれど、二人は幸せな日々を送っていた。
 だが、思春期故にどうしても堪え切れない性欲は付いて周る。ましてや愛する者と同室なら尚更だ。
 しかし、三郎が雷蔵の身体を求める事はあれど雷蔵がそれを受け入れるのは稀だった。
 と言うのも、雷蔵は男同士の性交に抵抗を感じていた。
 愛する三郎が相手なら、抱かれる事も多少痛い思いをするのも彼はいとなわない。しかし排泄器官を用いる事が衛生的に如何なものかと、どうしても気になってしまう。
 三郎はこれまでの雷蔵との性交で彼の腸内は綺麗である事は良く知っていた。
 だがいくら説得しても大方は断られ、相互自慰に終わるのだ。
 そしてとうとう痺れを切らした三郎は、医務室から浣腸液を失敬してきたのだ。
 実際に腸内を洗浄すれば、きっと雷蔵も納得するだろう。そう思っての行動だった。

「…なぁ…本気でするのか?」
「あぁ、そうしないと雷蔵納得しないだろ」
「今ですら力一杯釈然としないんだけど!!て言うか、解け!!」
「だから解いたらお前逃げるから駄目だって。じゃあそろそろ始めるぞ」
 パシャリ、と水が跳ねる音がした。
 湯の張った桶から細い竹で出来た器具を取り出し、手拭いである程度水気を拭き取る。
 そして、グッと力を込めてそれを雷蔵の後孔に押し当てた。
「ッ…!…やめっ!」
「漏らさないように堪えろよ?」
 ズブ、と先端が挿入される。
 硬い竹の感触に、雷蔵は「ひっ」と短く悲鳴を上げた。
 間も無く、ジワリと腹の中に熱い液体が押し出される。
「…っ、ぅう…ッ!」
 緩く内部を押し広げる感覚に雷蔵はブルリと身を震わせる。
 全て入ったのか、三郎はゆっくりとそれを引き抜くと、雷蔵の目を覆っていた布を解いた。
「入ったぞ」
「…これで満足?なら早く手、解け」
「何言ってるんだ。これからだろう?」
 と、彼は懐から砂の入った硝子で出来た容器のような物を取り出した。
「なんだ…それ?」
「蜂の腰。砂時計とも言うな。落ちる砂で時間を計る道具らしい」
 クルリと砂時計を返す。中の砂がサラサラと下の空間に零れ始めた。
「これが全部落ちるまで我慢な」
「おい、冗談じゃないよ!…うッ…!」
 抗議しようと身体を暴れさせようとしても、下腹部を襲う鈍い痛みに阻まれる。
「ぐぅ……っ」
「あんまり暴れると漏れるぞ?」
「ッ…三郎っ…後で覚えてろよ…!」
 睨み付ける以外に抵抗の術を無くした雷蔵は、悔しさに唇を噛んだ。

「はッ…ぅ、…痛ッ…」
 砂が半分程落ちた頃となると、もう睨む余裕さえ無いのか、目を閉じてひたすら腸が破裂しそうな痛みに堪えていた。
 ジワリと冷や汗が滲む。早く体内の悪い物を出してしまいたい。なのに手は戒められたままで足も上に三郎が乗っているので動かす事が出来ない。
「凄い汗だな」
「さぶろッ…頼む、厠に…っ」
「まだだ。まだ半分も時間が残ってるぞ」
 横目で砂時計を見、絶望的になる。まだ砂が落ち切るにらかなり時間があった。
「マジ、限界なんだよッ!…お前、僕がここで漏らしても良いのか!?」
「それは困る。でもお前なら死んでも我慢するだろ?」
「うぅっ…」
「頑張れ。お前なら出来る!」
「ッ…人事と、思いやがって…!」
 不自由な体勢から、どうにか少しでも楽な体勢になろうと身を捩る。
 しかし、三郎の目には雷蔵が艶めかしく身をくねらせてるようにしか見えない。
「雷蔵、あんまり誘うな。我慢出来なくなる」
「誘って、ないッ!」
「でも凄いエロいぞ」
「うる、さいっ!」
 誰の所為だ?と続けたかったが度々襲う腹痛の波に声が出ない。
(頼むッ、早く時間過ぎてくれッ!)
 祈るように口の中で呟く。しかし、苦痛の時間程時は苛立つ程緩やかに流れる。
 しかし、砂は確実に一定の量を保ちながら落ちているのだ。
 雷蔵は再び横目で砂時計を見た。残り三割と言ったところだ。
(…あと、少しだ。お願いだから、保ってくれ…僕の腹…!)
 グッと爪が手のひらに食い込む程に手を握り締める。
 手の痛みで腹の痛みは治まらないが、多少気は紛れた。
 その感覚だけに縋り、雷蔵はただじっと終わりが来るのを待った。

 砂が落ち切るとほぼ同時、三郎は雷蔵の足の上から退くと手首の縄をスルリと解いた。
「はい、お疲れ様」
 漸く身体に自由が戻った。しかし、痛みが強くて直ぐには動けない。
「ッ…うぅぅ…!」
 腹を抱えて低く呻きながら強い痛みを必死に堪える。
 自由は感覚を過敏にさせる。気を緩ませてはいけないと自分に言い聞かせた。
「早く厠行ってこいよ。限界なんだろ?」
「わ、わかってる!」
 痛む腹を抱えて起き上がる。
 どうにか動けると確認しつつ、彼は戸に手をかけた。
「早く帰ってこいよ!待ってるから♪」
 あまりに呑気な三郎の台詞に、もう突っ込む気力もない。
 彼は腹に手を当てたまま、そろそろと居室を出た。

 彼らの部屋から厠までは然程遠くない。しかし、今の彼にはとてつもなく長い距離に思えた。
「早く…早く行かないと…」
 頭でわかっていても身体が動かない。
 壁に身を預けつつ、よたよたと歩くのでいっぱいいっぱいだった。
(…大丈夫、厠はもうすぐだ…)
 自分に言い聞かせるように心の中で呟く。
 すると、幸いにも一瞬ふっと痛みが和らいだ。
 よし、今の内に。次の痛みの波がこないうちに。
 彼は少しペースを上げて歩き出した。
 この廊下を曲がれば厠へはもう直ぐだ。
 そこまで来た、丁度その時だ。
(…えッ!?)
 パタパタと複数の足音が聞こえてきた。
 足音の軽さからして恐らく一年生。更にその中に混じってズッシリと重たげな音も聞こえる事から、足音の主はしんべヱを含む一年は組と察した。
 後輩に格好悪い所は見せられない。雷蔵は慌てて袖で汗を拭うと何事も無いような表情を作った。
 ややあって、雷蔵の予想通りに彼の目の前に、乱太郎を始めとする一年達があらわれた。
「あっ、雷蔵先輩!」
「やぁ、君達。どうしたんだい?ここは五年の長屋だよ?」
 流石五年生と言うべきか、この状況においてでもポーカーフェイスを保っている。
「実は、今日土井先生が宿題出したんだけど、誰も宿題出来てなくて…」
「それに、凄く難しいから先輩に聞こうとここまできたんですけど…」
 何故この状況の、最悪なタイミングで僕の前に現れるのだ?
 しかし、一年生に対してそんな事を言える訳も無く、彼は平静を装った。
「どんな宿題が出たんだい?」
「えーと、ここなんですけど…」
 と、一年生達はプリントを差し出した。
「あぁ、これはね…」
 本当はこんな事をしてる場合ではないのは、本人が一番良くわかっている。
 しかし彼の性格上、困っている後輩を見捨てる訳にはいかなかった。
「あぁ、これはそう言う事だったのですね」
「うん。わからないのはこの問題だけかい?」
「いいえ、実はこのプリントの問題も…」
 一体どれだけ宿題を溜めていたのだろう。殆ど白紙に近いレジメを見て内心愕然とする。
 こうなったらパッパと答えだけを教えて一年生には早く退散してもらおう。
 そう思った矢先だった。
「これの答えは………ッ!?」
 とうとう腹痛の波が寄せ戻ってきてしまった。それも後輩の目の前で。
「ん?どうしたんですか?先輩」
「い、いや、なんでもないよ。それよりこれは…」
 震えそうになる声を殺しつつ、早口で答えを言う。
 何人か彼の話に付いていけない様子だったが、庄左ヱ門がしっかりメモしていたので大丈夫だろう。
「……と言う訳だ。これで本当に最後だな?」
「いいえ、あと火薬のプリントが…」
 何故それ程の量の宿題を今の今まで放置していたのだ?疑問が痛い程脳に腹に突き刺さるが、恐らくは組ではこれが普通なのだろう。
 答えてやりたいのは山々だが、彼とてもうそんな余裕が無かった。
「火薬?火薬なら僕より久々知兵助の方が詳しいんじゃないかな?彼火薬委員だし」
「あ、そっか。じゃあこの問題は久々知先輩に聞こうか」
「そうだね。不破先輩、ありがとうございました!」
「ありがとうございました!!」
「いや、いいよいいよ」
 11人は一斉に頭を下げると、またバタバタと慌だしく廊下を走り去った。
「…ぅッ!…いてて…っ!」
 膝を付いて腹を押さえる。もう本当に余裕が無い。冷や汗通り越して脂汗まで頬を伝っていた。
 中の物を全て出さない限りこの痛みは治まらないだろう。
(早く…厠にッ…!)
「不破先輩!久々知先輩の部屋って何処………不破先輩!?」
「ッ!?」
 マズい、とうとう見られてしまった。
 顔を上げれば、乱太郎としんべヱが呆然とこちらを見ていた。
「先輩!大丈夫ですか!?」
「だ、大丈夫だ。気にしないでくれ…」
「具合でも悪いんですか?」
 ここは正直に言うべきか、それともはぐらかすべきか。
「え、えーと…」
 はぐらかしても彼らなら深追いして質問しそうだ。しかし、正直に言えば間抜けな事実が知られる事になる。それだけは嫌だ。だが、はぐらかすとしても良い台詞が見付からないし…。
 直ぐ迷い悩むのは彼の悪い癖。しかし、身体は嫌気が差す程正直だ。

 ぐぅ〜…

「っ!」
「?」
 まるで訴えるように、腹がぐもった悲鳴をあげる。
 これは恐らく…いや、確実に乱太郎達に聞かれた。
「先輩…」
「いや、これはその…」
 言い訳なんて考えられる程頭は回ってくれない。でも何か言わなければ。
 しかし、目の前の一年生はある意味雷蔵にとって都合良く勘違いしてくれた。
「なぁんだ。雷蔵先輩、お腹空いてたんだ!」
「そうならそうと言えば良いのに」
「え?…ぁ、そう!そうなんだよ。ちょっと小腹がね」
 腹痛と思われるより、空腹と思われた方がマシ。そう自分に言い聞かせて彼は頷く。
「僕良い物持ってるよ。はい、おまんじゅう!」
 と、しんべヱは懐紙に包まれた饅頭を彼に差し出した。
 優しいしんべヱの事だから、断っても無理に持たせるだろう。ならばと雷蔵はその饅頭を素直に受け取った。
「あぁ、ありがとう。後で頂くよ」
「あ、それで先輩。久々知先輩の部屋は?」
「兵助はい組だから、向こうの廊下進めば直ぐだよ」
「わかりました!ありがとうございました!」
「ありがとうございました!」
 と、乱太郎達は礼をして直ぐに去って行った。
「ッ、うぅ!」
 腹の痛みが増す。今までとは違う、本当の限界を知られるような痛みだ。
 もう、一刻の猶予も無い。
 そう悟った雷蔵は、力の入りきらない足を無理矢理立たせた。
 もうこのままじっとしていても楽になる事は無い。ならば一か八か臨界点を越える前に厠へ駆け込むしかない。
 途中で限界が来てしまったらその時はその時だ。
 雷蔵は最後に、もうこれ以上誰にも会わない事を祈り、一目散に厠へ向かって走り出した。


「…やっと戻って来たか」
「………」
「随分遅かったな。もしかして…」
「漏らして無い!」
 半ば怒鳴るように言って雷蔵は布団の上に座った。
 先程の苦しみは嘘のように消え失せた。しかし、その代わりに言い様の無い怒りや苛立ちが雷蔵を支配している。
 何でこんな目に遭わなければならないのか。元後言えば三郎が「浣腸してやろう」とか言い出したのが悪い。そうだ、全部三郎が悪いのだ。
 雷蔵は荒々しく溜め息をつくと布団の中に潜り込んだ。
「えっ!?待てよ!今日するって約束だろ?」
「今更そんな気起きないよ。それに僕はやるなんて一言も言ってないし」
「酷っ!私を騙したな!」
「騙してない。お前が勝手に勘違いしただけだ。て言うかお前も早く寝ろ」
 先程の件で雷蔵の気力は無いに等しい。兎に角早く睡眠を取りたかった。
 しかし、三郎に雷蔵をそう易々と眠らせるつもりは全く無い。
「…雷蔵。私はな、この前の性交からずっと自慰を控えていたんだ。お前が身体を許してくれるのを楽しみにしてたんだ。その期待をどうしてくれる」
「……」
 それは少し気の毒なようにも思えたが、今はそれより怒りが勝った。
「今日は嫌だ。明日相手してやるから」
「私は今日じゃないと嫌だ」
「我儘を言うな」
「我儘はどっちだ!」
 このまま言い争っても意見は平行線のまま交わらないだろう。これ以上の言い合いは無意味だ。
 ならば寝た者勝ちだと、雷蔵は目を閉じて三郎の声を無視した。
「おい、雷蔵!」
 ユサユサと肩を揺さぶる。しかし、尚も雷蔵は目を開けない。
 これで諦めてくれるだろう。と、彼は軽く考えていた。
 しかし、今日は三郎もタダでは身を引かなかった。
「…優しくするつもりだったけど、もう手加減出来ないからね」
「ッ!?」
 突如三郎は雷蔵の布団を引き剥がし、彼を強引に仰向かせた。
 貪るような口付け。口内をまさぐられ、雷蔵はゾクリと身震いする。
「ッぁ…三郎!嫌だって言ってるだろ!!」
「聞こえないね。感じてる癖に」
 両手で雷蔵の両腕を戒めながら、顎と頬を使って器用に彼の服をはだけさせる。
 やがて露になった薄茶色の突起物を見付けると、三郎は直ぐさまそこに舌を這わせた。
 ただそれだけなのに、雷蔵はズクンと身体の中心が熱を持ち始めるのを感じた。
「はぁっ…嫌だッ…三郎!」
「嘘言うなよ。本当は疼いてんだろ?」
 膝で股間を圧迫される。雷蔵の口から短い悲鳴が上がった。
「身体は随分と正直だね」
「〜〜…っ」
「今更後悔すんなよ。お前が悪いんだからな」
 ニヤリと笑みを浮かべ、三郎は服の紐を解くとハラリと寝間着を脱ぎ捨てた。

「はッ!…く、ぅあッ!はあっ!」
「んっ…雷蔵…」
 俯せに組み敷かれ、背後から強く突き上げられる。
 あれ程嫌だった行為なのに、身体は確かな快感に煽られて言う事が聞かない。
 しかし、心は未だに拒絶を訴え、いやいやするようにかぶりを振った。
「っ…ぅ、く…も、止めろよ…!」
「嫌がる割には…っ、身体は簡単に受け入れたよな」
「ッ…」
「お前も本当は溜まってたんだろ?」
 否定出来ない分、苛立ちが募る。
 しかし、無防備だった前を擦られば、ビクンとあからさまに身体が反応した。
「ああッ!はっ、ううっ、あッ!」
「雷蔵、いつもより感じ易くなってる?なんか…凄いよ?」
「っ、うるさッ、ぃ…!」
 口では反抗するものの、確かに彼はいつもより強い快感を感じていた。
 元より綺麗な腸内でも、一度洗い流した為に本来拒絶していた要因がなくなったのが原因だろう。
「雷蔵…ここに来る前から、もう身体出来てたんだろ?」
「っ…う」
「浣腸しただけでこんなんにしてしるなんて、雷蔵は淫乱だよね」
「はッ…」
「さっき帰ってくるの遅かったけど、もしかして一人で抜いてた?」
「ッ…」
 また始まった、と雷蔵は思った。
 言葉攻め。それは雷蔵が最も嫌いなものだった。
 本来相手に羞恥心と快楽をもたらす筈のそれは、何故か雷蔵には苛立ちと不愉快さぐらいしか生まない。
 恐らくはマゾヒズムが彼の中に存在しないからだろう。
 大抵は彼も大目に見るのだが、今回は虫の居所が悪過ぎた。
 どうにかして三郎に仕返しを…。
 その時、雷蔵の視界にある物が映った。
(…そうだ、あれを使って…!)
 思い付いたとほぼ同時、三郎は雷蔵のある一点に集中するように激しく突き上げ始めた。
「ああッ!や、三郎ッ!止め、!!」
「ッ、止めない。私もう限界だから」
 ゾクリと快感が全身を巡る。大声を上げそうになり、彼は咄嗟に布団に噛み付いた。
「ん、ぅッ!…んんッ!!!」
「…ッ、くっ!」
 一気に追い詰められた雷蔵は声を殺しながら吐精し、三郎もまた寸での所で自身を抜き出すとそのまま熱を吐き出した。

 それから雷蔵は何度も身体を突かれ、三郎の気が済んだ時にはヘトヘトになっていた。
「おーい、雷蔵。生きてるか?」
 返事すら億劫で無言で言葉を返す。
 誰の所為でこんなに疲れてると思ってんだ。
 そろそろ雷蔵の怒りも頂点に達しようとしていた。
「おい、雷蔵ってば」
 伏せてる雷蔵に三郎が被さるように近付く。その時、
「どりゃぁッ!」
「うわっ!」
 突然雷蔵は三郎を布団に押し付けた。
 後で三郎の腕を封じれば、今までと立場が逆転する。
「な、なんだよ雷蔵…?」
「僕は怒ってるんだ」
 静かな低い声で言いながら、彼は三郎の裾を捲り上げて臀部を露にさせた。
「きゃー!雷蔵に犯される〜!」
 この期に及んで彼はまだふざける素振りをみせる。
 そんな生易しいものではないよ、と雷蔵は心の中でほくそ笑む。
「…ッ!?」
 突然三郎は後孔に何か押し当てられるのを感じた。
 それは指や、ましてや男根などではない、もっと硬質な感触だった。
「ら…雷蔵、何をする気だ…?」
「僕だけが苦しい思いするのって、フェアじゃないだろ?」
 それを聞いて三郎は絶望的な確信をする。
 もし失敗した時の為にと持ってきた、予備の浣腸。それに違いない。
「待て待て雷蔵!本当悪かった!だから勘弁してくれ!な?」
「嫌だ。僕と同じ苦しみを味わえ!」
 捩じ込むように器具が三郎の体内に進入し、やや温い液体が中へ押し出された。
「ぃッ…!」
 強引に進入し、抜き出されたそれに痛みを感じたのか、彼は身を強張らせる。
「はい、砂が落ちるまでだよ」
 コトリ、と砂時計が三郎の頭の横に置かれる。
「…はっ、砂が落ちるぐらいまでは耐えてみせるよ。どうせ直ぐ終わるさ。うん…」
 明らかに強がりな発言に多少呆れながらも、雷蔵は腕の下の三郎と落ち行く砂を見守った。

 それから暫く、三郎はじっと痛みに耐えた。
 時折低く呻いたり苦しげな表情を見せたりしたが、見た感じはやや余裕があった。
 砂時計はもう殆ど残っていない。先程はあんなに長い時間に感じたのに、本当に短い時間だったのかと雷蔵は密かに感心する。
 三郎はふいに余裕の笑みを浮かべた。残る砂はあと少し。
 しかし、勿論雷蔵はそれで許すつもりは無い。
「まだだよ、三郎」
 砂が落ち切る直前、目の前で砂時計をひっくり返され、流石に三郎もそれには焦った。
「おい…!雷蔵、これはどう言う…!?」
「三郎、何で僕帰るの遅くなったか、知ってる?」
「っ?」
「一年は組の子達が宿題教えてくれって、それに付き合ってたんだよ。勿論、出さずにね。だから、これはその分」
 にっこりと、しかし底知れぬ怒りを込めて雷蔵は言う。
 その言葉に、三郎は血の気が引くのを感じた。
「ちょ、雷蔵!聞いて無いぞ!」
「僕だっては組が来るなんて思って無かったよ。八つ当たりなんてみっともないからやりたくなかったけど、さっき誰かさんが余計な事言うから頭に来ちゃって…」
「ッ…くっ!」
「あ、暴れても無駄だよ。腕力は三郎より僕の方が上だし。だから…覚悟しなよ?」
 低く、耳元で囁く。
 ビクリと三郎が恐怖に震えた、気がした。

 そこからは、雷蔵にとってあっという間に時間が過ぎた。
 しかし、三郎にとっては恐らくとんでもなく長い時間だっただろう。
 途中で喚いたり、かと思えば急に静かになったり、涙目で訴えてきたり…。
 あまりの必死さに思わず許しそうになるからそれではお仕置にならないから心を鬼にして最後まで我慢させた。
「はい。おしまい」
 砂が全て落ち雷蔵は三郎の上から離れた。
 しかし、彼は動かない。
「どうしたの?早く行きなよ、厠」
 そう言うと、三郎は顔を上げて口をパクパクと動かした。しかし、声が小さくて聞き取れない。
「え、何?聞こえない」
「……ぃ…」
「何て?」
「…ぅ、ごけ…ない……」
 目に涙を溜め、絞り出すような微かな声で言う。
 先程の余裕なんて欠片も無い、青ざめた顔で震える情けないその姿に雷蔵は溜め息を吐いた。
 そんな顔をされると、もう怒りなんて忘れてしまった。
 いや、お仕置を終えた今、怒りを残す理由すら見付からない。
「…ほら」
 手を差し出す。三郎は一瞬キョトンとした表情を返した。
「厠、連れてってやるから」
「…らい、ぞっ…」
 ふにゃ、とその顔を歪む。情けない顔だ、と思ったがそれが自分と同じ顔である事に気付き、心の中で撤回する。
 三郎の身体に負担をかけないように起こし、腕を自分の肩に回した。
「…雷蔵…ゴメン…」
「謝らなくて良いから。我慢する方に集中しろ」
 三郎のペースに合わせてゆっくり立ち上がり、彼らはそろそろと部屋を出て行った。

〜fin〜




〜 あ と が き 〜

…なんぞこれ。
取り敢えず急に書きたくなった浣腸話。
ス○トロじゃないです。そのシーンはありませんので。
私はそのシーンよりもそれを我慢してるって言うシーンの方が好きです。
にしても私の書く鉢屋はなぜいつもこう最後でツメが甘い?

この時代の日本に砂時計があるのか?って質問はスルー(ぉ)




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