KIA きあ
MAR 10,2005 3:バレちゃった。
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普通に、普通に。
最初はびくびくしていたものの、一週間も過ぎれば慣れてくる。
最初は二人とも別行動に徹していたものの、すぐに終わった。
「キアーっ。ノート貸して」
普通に教室に入ってくるロンに、キアは睨みつけた。
もちろん、二人とも女装である。
「……あのね。どうして夜のうちに写さないのさ」
ロンに写せるわけが無い。
折角、外に居るから――って毎日遊び歩いてるんだもん。
「悪いっ。これからは気をつけるから、このとーり」
顔の前で拝むように手をあわせて、ロンは頭を下げる。
「…はい。四眼までには返してよ」
「サンキュウ。じゃ」
ロンは引ったくるようにノートを掴むと、部屋を出て行った。
そんな僕らの様子を見て、カナが笑った。
「仲が良いね。確か、編入手続きの時に知り合ったんだって?」
「あ、うん」
「帰る方向が同じで、一緒に帰ってるんだよね」
「う、うん…」
「どーして、夜に写せるのかなぁ?」
意地悪そうな顔をして、カナが言った。
廊下で、数人の女子が固まっておしゃべりをしていた。
「サオリ様、さっきの出て行ったのがユカ。
中に残っているのが、キアですよ」
サオリと呼ばれた娘は、胸の前で腕を組んだ。
腰まで届くブロンドの髪、化粧もしている。
「なぁに、どっちもお子様じゃないの。ガサツとチビ。
わざわざ私に伝えること?」
サオリは自信満々に言った。
「それが…あのユカって子。サオリ様の記録を抜いたんですよ」
ぴき。
「ふぅん。そうね。でも、野ざるでしょう」
それが――と他の女子が口を開く。
「それから、あのキアって方もかなり勉強ができるって噂で」
ぴきぴき。
「だから? 生まれの良さにはかないませんわ」
「噂だと、お忍びで転校してきた皇族とそのお供じゃないかって」
……。
サオリが静かになったので、周りが様子を窺う。
サオリは口元を手で隠すと、よく響く声で高笑った。
「ほーっほっほほ。それがどうかしまして。
いいわ。世間の厳しさってのを教えて差し上げましょう」
青い瞳が燃えていた。
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夜。僕からの話を聞いて、ロンは腹を抱えて笑い転げた。
「うっわ、いい。お姫さまキアちゃん、ぴったり」
ちらっとこちらを見ては、また笑い出す。
「女ってすげー。よくそんなん思いつくわ」
まだ笑い転げる。
そう、一緒に暮らしているのがばれたカナは聞いてきた。
僕がどこかのお姫様で、ロンがそのボディーガード役なんでしょう?って。
好奇心一杯の眼で。
咄嗟に嘘を思いつかなかった僕は――。
「おっけー、わかったわかった。俺が守ってやるから、なぁ? キアちゃん」
僕は無言でロンをどついた。
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外の道路を車が通り過ぎる度に、カーテンの隙間から光が差し込む。
(さって、そろそろ頃合かな?)
隣で、寝息が聞こえる事を確認して、俺はそっと寝室を出た。
明りはつけない。電化製品の待機ランプで十分だ。
もとより、つけたらキアが起きてしまう。
ジーンズを履いて、ジャケットを掴むと物音ひとつ立てずに外に出た。
春先とは言っても、まだ夜は冷え込む。
俺はジャケットの襟を立てると、階段を降りる。
カチャ。扉がゆっくり開くと、金髪の髪の少年が顔を出した。
フード付きの白いトレーナーと膝丈のハーフパンツ。
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ロンは迷わず繁華街の方を歩いていった。
少し可愛い子を見かけると、すぐに声をかけにいく。
「あーーー……」
案の定と言うか、何と言うか……。
あきれすぎて、言葉が出ない。
物陰でそっとため息をついた。
「ねぇ、君。エルセスのとこの子だよね」
急になれなれしく声をかけられて、キアは振り返った。
ほら、やっぱり…と二人組みの男が話し合う。
自分の服装を思い出してはっとするものの、もう遅い。
「何か?」
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絵:[キア&ユカ]
麗子さんから頂きましたw
[女子生徒/サオリ]
女子高生キャラデザ&ネタ提供、紅子様、おねゆ様、麗子様。多謝。
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4:
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