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夏も終わって、少しだけ過ごしやすくなった頃…彼らから話を持ちかけられました。

 菜穂子さん、露出って興味ない?

あまりに唐突なその言葉に、一瞬何をいってるんだろうという表情を隠しきれない私でした。

それは彼らも気付いたのか、言葉を足して、もう一度聞いてきました。

 うん…こないだ海でえっちしたでしょ?オモテでするって興奮しちゃってさ。

 菜穂子さんの反応も…なかなかだったし。

 えっと…アレは別にそう言うことで盛り上がったんじゃ…。(ま、また何を考えてるのかしら…。)

 …嘘ついちゃダメだよ、菜穂子さん。こないだの海行った時、こっそり写真をとっておいたんだ。

 で、それを元にちょっとした日記を付けてみたんだけど…。

と、その写真の載ったノートパソコンの画面を見せてくる彼ら。

そこには、日記と言うより…体験告白系のサイトのような…身の覚えのないノリで私の事が書かれていました。

 こ…こんなの作ってどうするの…っ。

 心配しなくていいよ、菜穂子さん。コレはまだ、ローカルで保存してあるだけだから。ただ、僕らのお願い聞いてくれないと…さ。

 こう言うサイト作るとアクセスが稼げるんだってね。広告も作ればお金も稼げるって言うじゃない。

 実の息子と、その友達と乱交にふけるお母さんって…そう言うのには、いい題材だと思わない?

 ま…マーくんは…。マーくんは何て言ってるの…?

 自分のママとする事にハマっちゃったみたい。だから、出来れば菜穂子さんにはこの誘いに乗って欲しいって…。

こんな事をネットの向こう側に公開される事もお断りでしたが…

私はそれ以上に、マーくんとの心の距離を離したくありませんでした。

私はまた、考えます。私が素直であれば…それで、それだけで済むことなのです。

 ろ…露出って言っても…あまり露骨なのは嫌よ…。ご近所さんの目もあるんだし…。

 それだけは、聞いてくれるわよね…。

 それは僕らだって同じだよ。あくまで楽しみの一つとして入れるだけだから。ソコは安心して…。

こうして、また一つ付き合う事となりました。

その日、言われた場所で言われたとおりの格好をして、私は家を後にしました…。

 おはよう、菜穂子さん。ちゃんと言ったとおりの格好で来た?

 い…言われたとおりの格好で来たから、今はカンベンしてよ…。

 いいじゃん、いいじゃん…少しだけ、チラッと見せてくれるだけでいいからっ…!

家を出てすぐのバス停の前で…そんな事を言われても、と思いますが…彼らの声が少しずつ大きくなってゆくのを感じると

これ以上焦らせないと思い、人の流れが途絶えたのを見届けてからコートの前をはだけました。

何もつけていない裸体が、わずか一瞬でしたが街の中に晒されます。

 へへ…ママがいざ出ようかってなったら、この格好で出るのは嫌がったからさ

 僕、少し無理に引っ張ってきたんだ。みんな待ってるのに…って。

そんなやり取りを傍で聞きながら頬を熱くしていると、バスが来ました。

私はどきっ、どきっ…と鼓動が高まるのを感じながら乗り込み、出来るだけ運転手さんから離れた席に座りました。

朝早い、郊外に行く路線であったので、幸いにして私たち以外の乗客はいませんでした。

『でっ…出来るだけ静かにしているのよ…っ!』

と言う私の声は少し上ずっていました。

そんな私の心を知ってか知らずか、彼らは妙に素直を装ったまま、しばらくバスの揺れに身を任せていました。

が…、家もまばらになってきたあたりで急に耳打ちしてきたのでした。

 ママ…もう一回、見せてみてよ、ハ・ダ・カ。

 う〜…いやだよ、とは言わせないんでしょう…?どうせ…。

 うん。ちょっとうるさくするだけ…だよ。運転手さんがバックミラーでコッチ見るくらいに。

 そしたらこのコートをちょっと捲りあげて…。えへへ…。

ため息交じりに考えました。全く…この意地悪な性格は誰に似たのでしょう…。

私が逆に、バックミラーの方を見て運転手さんの視線を確認します。

その視線がこっちに向いていない事を確認すると…もう一度、バス停の前でやったようにぱっとコートを捲り上げました。

彼らはその様子を横目でちらちら眺めながら、悪戯が成功したときのような含み笑いをしました。

私は無言でコートの前を閉じました。

その言葉の少なさとは裏腹に、私の胸は更に高まっていってしまっていたのでしたが…。

そうするうちに、バスは終点に着きました。

整理券を渡して、料金を支払う間も緊張しっぱなしの私…。

ドアが閉まる音を聞いて、数歩歩き始めると…膝が笑っていることに気が付きました。

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