君と同盟



ずっと横並びだった体格はいつの間にか目に見える程の差になっていた。
がっしりとした筋肉がつき、頭一個分ほど背の高くなった弟。
だからといって普段の生活でその差を感じることなどほとんどなかった。
戦闘では引けをとったことなどないし、組み手で負けることもない。
多少リーチが長くなったなと思うことはあるが、そんなものは間合いの詰め方次第でどうにでもなる。
しかし、どうにもならない状況があると今まさに痛感している。
ラファエロのあぐらをかいた膝上に腰を落として向かい合って繋がったまま、眉間より少し上の額に落ちるキス。
一度だけならいざ知らず、そこばかりに何度も落ちてくるものだから段々と苛立ってくる。

「……なんで額なんかにするんだ」
「そりゃそこに額があるからだろ」

その一言がレオナルドのイライラを一気に増長させた。
いやでもラファエロより低い自分の身長を思い知らされて悔しくなる。

「もういいからさっさと動け」
「いいじゃねーかよ」

にやにやと笑いながら若干見下ろしてくる視線。
わかってやっているのが透けて見えて更に腹が立つ。
少々でかく育ったからと言っていい気になられたのではたまったものではない。

「やらないなら離れろ」

しつこく額へのキスを止めようとしないラファエロの脂下がった顔を右手で掴んで押しのけた。

「ってぇ!!」
「しつこいからだ」

ぎりぎりと食い込む指先にラファエロもいい加減苛立ち始め、レオナルドの背に回した手を甲羅の縁に掛けると意趣返しに差し入れたままの自身を思い切り突き上げた。

「…っあぁ……!」

いきなり最奥まで暴かれたレオナルドは身体を撓らせる。
レオナルドの腰を掴んで何度も何度も打ちつけるとラファエロの腕の中で肢体が跳ねて痙攣し、レオナルドの享受する快楽の深さを伝えてくる。
顔から離れた手は縋るようにラファエロの肩へと落ちた。
あっさりと陥落したレオナルドのしおらしさにラファエロは満足し、その額に再びキスを落とす。
止んだと思ったそれに思考の霞むような快楽から引き戻されて、このまま翻弄されてもいいかとレオナルドは思っていたのに、わざわざ苛立ちを再燃させるラファエロに半ば呆れつつも腹の虫が収まらない。
唇を寄せてくるラファエロの肩を爪が食い込むほどに掴むと、そのまま引きはがすように力の限り押した。

「うお…っ!」

唐突なことに抵抗もできずラファエロはそのまま後ろに倒れこみ、レオナルドがラファエロに馬乗りになる形になる。
倒れこんだ衝撃に体内を抉られてレオナルドは顔を顰めたが、瞠目したラファエロの顔が間が抜けていておかしくて知らず笑みが零れた。

「これでキスできないだろ?」

逆転した視線。
今度はレオナルドがラファエロを見下ろす番だった。
慌てて身を起こそうとするラファエロの両肩を押さえつけてレオナルドは腰を持ち上げる。

「ん……っあ……!」

膝を立て、自らを追いつめるように律動を始めた。
ラファエロはそんなレオナルドを下から見上げると、悪くないなと胸の内で吐く。
青いバンダナの緒がラファエロの鼻先で揺れ、いつにない積極さでもって善がるレオナルドにラファエロの興もいや増す。

「ひっ、う……っ!」

下から大きく突き上げられて耐え切れずに脱力した膝が滑り、支えを失くした身体は自重でラファエロを深く咥えこんでしまう。
ラファエロはそのままレオナルドを穿ち始めた。
レオナルドはレオナルドで、せっかく奪った主導権を失うわけにはいかないと、震える脚を叱咤して必死に腰を揺らめかせる。
身体を支える為に無意識に力が籠るのか、肩を押さえつけているレオナルドの指がさらに食い込み、痛みにラファエロは顔を顰めた。
噛み合わない呼吸がもどかしさを生んでいたが、バラバラだった互いの動きと息が段々と同調し始め、深く押し付け繋がる感覚に時折目の前がホワイトアウトする。
自らの腹に付くほどそそり立ったレオナルド自身は痙攣しながらつとつとと体液を零し、目前に迫る絶頂に耐えていた。
普段取り澄ましたレオナルドの余裕のない表情に煽られ、ラファエロも後どれほどももちそうになかった。
レオナルドより先に達すると限界を悟った瞬間、ラファエロはレオナルドの雄身に手をかけた。
翻弄されるばかりは悔しく、最後の砦を壊すのが自分でありたいと思うただその一心で。

「てめぇもイキやがれ…!」

解放の悦びに震える手で幹を擦って鈴口を抉ると、レオナルドの身体が大きく仰け反り、四肢を強張らせてラファエロの手中に放つ。
意識に空白を残すようなの悦楽の余韻から次第に戻ると、弛緩したレオナルドの身体がラファエロの上に覆いかぶさってくる。
荒い息遣いを間近に感じたかと思うと軽い音を立てて額に触れる唇の感触に驚かされる。

「おいっ…!何すんだ!」

慌ててレオナルドの肩を掴んで引き剥がし、睨むと、

「お前だって俺に散々したじゃないか。自分がされても文句は言えないよな?」

と存外に冷静な声が返ってきてハッとする。
嫌なら二度とするなよ、という釘まで刺されて、自分の身長の有利さで多少調子に乗った覚えのあるラファエロは言葉に詰まる。
ここまで身長のことをレオナルドが気にしてたとは思わず、ラファエロはそのプライドの高さに密かに笑った。



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