Kiss on The Sofa
うるさいくらい賑やかな我が家も、三人抜けると様子が変わる。
ドナテロもミケランジェロもスプリンターも用があると言って出かけてしまった。
きっと少なくとも翌朝まで帰ってこないだろう。
無駄に広く感じられる室内にテレビの音がいやに響く。
特におもしろい映画、というわけではないが、夕食後だらだらと見続けている。
横ではレオナルドがクッションを抱えて画面に見入っている。
レオナルドと二人きりというのは格別に珍しいことではないが、誰にも邪魔されないというのは嬉しかった。
しかし、せっかく二人だというのにさっきからレオナルドは映画に集中していてラファエロとしてはおもしろくない。
話もしなければ身じろぎすらしない。
レオナルドの集中力の高さが無駄に発揮されてしまっている。
何だか悔しいので「そこのスナックの袋を取れ」、「話の展開が急すぎておもしろくない」などと話しかけ、反応を伺ったがどれもダメだった。
ラファエロは何としてもレオナルドの注意をこちらに向けようと意地になった。
話しかけてダメなら、とレオナルドの肩に手を回す。
反応なし。
引き寄せてクッションに回された手をとる。
反応なし。
これならどうだ、と口付ける。
さすがにレオナルドも驚いてクッションを放り出して逃げようともがく。
やっと反応が返ってきて達成感のようなものを感じてラファエロは嬉しくなる。
身を引こうとするレオナルドを強く抱きしめ、後頭に手を回して一層深くキスする。
口蓋を舐め、舌を吸うと吐息が漏れた。
存分に堪能して離してやると、肩で息をしながらレオナルドが睨んでくる。
「いきなり……なにするんだ!」
「なにってキスじゃねーか」
「そんなこときいてない!」
「じゃ、可愛かったからキスしたって言やーいいのか?」
しれっとそんなことを言うラファエロにレオナルドは真っ赤になって目を逸らす。
「……誰が可愛いんだ……俺が言いたいのは……そんなことじゃ……」
歯切れの悪い反論をするレオナルドの顎を捕らえて今度は軽くキスをした。
「なんでもいいだろ」
ひどく機嫌のいい声でそう言ってラファエロはレオナルドの肩口に顔を埋めて首筋を舐めあげる。
「んっ……なんでもいいわけあるか……」
レオナルドはラファエロを押し戻そうとするが、力が入っていない。
ラファエロはレオナルドの刀のホルダーを外して床に落とす。
ごとりと重い音がした。
邪魔になるものはもうない。
どん、とレオナルドの胸を手で突いて押し倒す。
「うわッ……!」
柔らかいソファの上とは言え、多少の衝撃はある。
すぐさま体重をかけて圧し掛かり、また口付けた。
歯列を割って舌を絡め、互いの体温の上がった唇や舌が触れるのに興奮してさらに熱くなる。
ラファエロが片方の手を太股に這わせるとレオナルドがびくりと慄く。
口を離してレオナルドの顔を見ると、目尻に涙を浮かべていた。
「……嫌なら今すぐ俺を殴って自分の部屋にでも逃げろよ」
真剣な目でそう告げ、レオナルドの目尻を指で拭う。
「…………嫌じゃない……」
呟かれた言葉にラファエロはにやりと笑う。
「んじゃ、遠慮なく」
ちゅ、と頬にキスしてラファエロは首筋へ顔を落とす。
鎖骨を舌でなぞる一方で手は胸元から下腹までゆっくりと滑る。
もどかしいその手つきにだんだんとレオナルドの息があがっていく。
「あっ……」
ラファエロが一物に触れると引き攣ったような声を上げて身を捩る。
性急に扱きたてると必死で声を殺して耐えようとする。
それでも声が漏れるのを抑えきれないのか、レオナルドは口に手を当て堪える。
眉根を寄せて耐えるレオナルドに煽られて、ラファエロは何がなんでも声を聞きたくなる。
レオナルドの片足を抱えあげて双丘に手を這わせると秘所には触れずに、尻尾の付け根からその先まで指先で撫でた。
尻尾はレオナルドの弱いところの一つだった。
「ひッ…!」
レオナルドの身体が大きく跳ねる。
何度も指先を往復させるとレオナルドは痙攣したかようにわななき、荒い息を吐く。
しかしレオナルドはそれでも歯を噛み締めて声を聞かせまいとする。
ラファエロはその強情さに呆れ、苛立ち、尻尾を撫でる指はそのままに、レオナルドの手をどけて深くキスして口を割った。
開いた口腔に差し込んだ舌と入れ違いに中指を押し込む。
「……んぅ」
苦しそうに顔を顰めるレオナルドだが、ぎこちなく舌をラファエロの指に這わせる。
その健気な様にラファエロの雄身が一層熱を持って重くなる。
十分に濡れた指を引き抜くと秘所に押し当て、ゆっくりと押し入れた。
「あぁ…っ」
開かされた後閉じることもままならなくなったレオナルドの口からあえかな喘ぎが零れた。
抜き差しするとそれに合わせてさらに細い声が次々と漏れる。
もっと啼かせたいと思った。
それはラファエロのもともと緩い箍など外すには十分で、慣らすのもそこそこにラファエロは指を引き抜いてレオナルドの膝裏を抱えあげ、脚を乱暴に開かせた。
「ラ、ラフ…!」
レオナルドははっとして慌てるが、狭いソファでは足掻いてもあまり抵抗にならない。
湧き上がる衝動を出来る限り抑えてラファエロは自身をゆっくりと、確実に突き入れる。
「うあぁぁ」
目をぎゅっと瞑り、身を反らしてレオナルドが急な侵入に耐える。
きついそこにラファエロも眉を顰めた。
「力抜けって…」
ラファエロが痛みに少し萎れたレオナルド自身に手を伸ばし、幹を擦り、先端を抉ると幾分快感に気を逸らされて締め付けが緩む。
そうして強張る身体を宥めすかして全て埋め込んだ。
は、と零した息が異様に熱い。
片足を肩にかけ、ラファエロは緩慢に動き始める。
苦しいのか呻くような声を喉から絞り出してレオナルドは頭をソファに押し付けた。
その露になった喉元にラファエロが甘く噛み付き、舐るとレオナルドの力が抜けていく。
それを見計らって思い切り突き上げた。
「ひ、あッ…!」
高い啼き声があがる。
途端、ぞくりと寒気のような感覚がラファエロの背筋を這った。
ラファエロはそのまま劣情に任せて何度も突き上げ、攻め立てた。
ひっきりなしに甘い声が、濡れた唇から零れてラファエロを更に煽る。
「あぁ!あ、あ、あ…」
びくびくと震えながらレオナルドがラファエロの首に手を回してしがみ付いてくる。
いっぱいいっぱいになりながらも必死でついてこようとするレオナルドに愛しさがこみあげて、ラファエロもレオナルドを抱きしめた。
「レオ…!」
密着した肌は互いに熱く、汗ばんで吸い付くようだった。
レオナルドは無意識に脚を絡めて腰を揺らめかせる。
それを押さえつけるように腰を打ちつけ、ラファエロは低く呻いた。
そろそろ限界が近かった。
痛いほどにレオナルドがラファエロに縋りつくように抱きしめてくる。
「あぁっ…ん…ラファエロ……!」
一際深く突き入れると、つま先を弓形に曲げ、レオナルドが腹に白濁を放つ。
尾を引く掠れた声で名前を呼ばれ、せりあがる快感に恍惚としてラファエロも達した。
意識も霞むような快楽だった。
しばらく二人重なり合ったまま、どちらも一言も発しなかった。
「映画、終わっちまったな…」
ラファエロが顔を上げて不意にそう呟く。
「また今度見ればいいさ」
レオナルドはにこりと笑ってちゅ、とラファエロの頬にキスをする。
気恥ずかしくなってラファエロは真っ赤になって目を逸らした。
「……そうかよ…」
ぶっきらぼうに答えるラファエロにレオナルドはまた密かに笑った。