「今度は美希の番だ」
 「うん……」
 期待と不安。両方が入り混じったような声を鼻から漏らす美希を抱き寄せ、ベッドの上にそっと寝かせる。
白いシーツの海に、蜂蜜色の長い髪が散った。投げ出されていた長い脚の中間地点に位置する右膝を掴んだ。
 「あ……プロデューサーさん。その……優しくして欲しいな」
 「言われるまでも無いよ。痛くしないよう努めるから、気を楽にしててくれ」
 なるべく穏やかな声で言い聞かせると、美希はゆっくりと頷いてくれた。俺の顔が見えた方が安心してくれ
るだろうか、と思い、寝そべる美希の視界に入るように自分の体を起こす。
 膝を撫でてから、段々根本に近づくように内腿をさすっていくと、美希の脚にグッと力が入るのを感じた。
 「美希、大丈夫だから」
 「わ……分かってるよ。リラックス、リラックス……」
 「……そのまま寝るなよ」
 「ね、寝ないよ! いくらミキでも、こんな時にまで眠くならないもん!」
 抗議の声をあげながらも、美希が照れ笑いを浮かべた。脚からも力が抜ける。今のやり取りでいい具合に緊
張がほぐれてくれただろうか。
 内腿をすんなり通過して、いよいよ美希の中心に辿り着く。指先に感じた熱は高く、ぬるりと滑る手ごたえ
があるのがはっきりと感じ取れた。
 「…………」
 俺が視線を美希に向けてみると、美希は白い枕を胸元に抱き締めていた。合っていた視線がふっと逸れた。
 「ゆ……」
 「ん?」
 躊躇するような声と共に、逸らされていた視線が戻ってきて、目が合う。
 「指ぐらいなら、入れるのには慣れてるよ、ミキ……」
 「慣れてる、って……」
 美希の頬が恥じらいの赤に染まった。
 「ひ、一人で、練習したの。プロデューサーさんとする時のために……」
 要するに、オナニーの経験はあるとのことだが……美希の言葉に胸が熱くなる。来るかも分からない瞬間に
備えて自らそんなことを──。こんなに想ってもらえている俺は、本当に幸せ者だ。必ず、美希も幸せにして
やらなければなるまい。
 「……ありがとう」
 美希に感謝しながら、視線を美希の秘所へ向けた。左右の歪みの無い、均整の取れた外観に、ピンク色の粘
膜が見え隠れして、光を反射している。美希は、こんな所までも綺麗だった。
 「ん……っ」
 割れ目の底へ指を滑り込ませて小陰唇を指先で開いてみると、美希が軽く身を震わせた。中途半端に開いた
ままの脚、それを広げようとして俺が空いた手で膝を開く動きに、美希は逆らわずに身を任せていた。
 指を差し入れる。よく濡れた肉がぴたっと包み込んでくるが、押し返すような抵抗はあまり無く、予想以上
にすんなりと人差し指が中へと飲み込まれていった。そのまま、ゆっくりと往復させる。
 「は……っ、プロデューサーさんの指、太い……」
 白い枕に皺が寄った。まだ甘いその声から判断すると、苦しくは無いと考えて良さそうだ。
 「痛くない?」
 「あっ、ん……ん、うん……痛くは……無いよ」
 中を押し広げるようにして、指を回す。奥を目掛けて押し込んでいくと、指はしっかりと根本まで飲み込ま
れた。こなれているとは到底言えないが、ギチギチで阻まれるような感覚はあまり無い。これなら大丈夫かも
しれないと思い、中指も膣口にぴとっとセットして、慎重に割り込ませていく。
 「うっ、うぅ……ああぁ……!」
 一際大きな声があがった。指を入れた膣内がギュッと収縮した。押し込んだ人差し指を引き抜くと同時に、
入り口に留まった中指を中へ進めて入れ替える。空いていた親指は、裂け目の頂点にあるクリトリスを刺激し
に向かわせた。
 「ひっ……や、あぁっ! あっ、あ……」
 親指で軽く撫でるようにクリトリスに触れていくと、美希の腰が揺れた。洞穴の内部がどんどんぬかるみを
増してくる。指はあまり動かさない方がいいだろうと思い、入れられる所まで入れたらそのままにしておき、
親指に意識を集中した。こりこりした弾力に硬さが増していくに連れて高くなっていく美希の声に、俺の興奮
も高まる。女体の最も敏感な部分を押し潰すようにして捏ね回していると、内部が収縮し始めた。
 「ふぁっ、や……あぁっ、ああぁぁんっ!」
 中指が、食いちぎられるような強烈な締め付けに襲われた。叫び声のような声と共に美希の腰が跳ね、べと
べとした愛液が噴きだして来て、掌までしっとり濡らした。目一杯全身を緊張させきった所で体からふっと力
が抜け、弛緩した体ががくりとベッドに崩れ落ちた。

 「美希」
 ゴムを装着する傍ら、美希が落ち着くのを待って囁くように呼びかけると、目尻に涙を溜めて瞳を潤ませな
がら、美希が俺の方を見た。胸元まで赤くなった肌に、性感の余韻がまだ色濃く残っているのが見て取れる。
 覆い被さるようにして自分の体の影に美希を隠すと、胸に抱きしめられていた枕が横に除いた。
 「プロデューサーさん……いよいよ、なんだね」
 「美希、今更なんだけど……いや、なんでもない」
 本当に俺でいいのか、と言いかけて、止めた。聞くだけ野暮というものだろう。
 「ねぇ……首に手、回しててもいい?」
 美希が開いた両手を天にかざした。
 「ああ、いいとも」
 その手を取って、手の甲に軽くキスしてから俺の首筋へと導く。美希は、まるで家のソファーで横になって
いるかのような、妙にくつろいだ表情をしていた。
 「緊張、してないのか?」
 「だって、『気を楽にしててくれ』って言ってたじゃん。さっきはちょっと緊張しちゃったけど、プロデュ
ーサーさんの言う通りにしてれば何でも上手くいくってミキは知ってるの。楽チンだよね」
 男から上に覆いかぶさられていて、今から初めての性交に入ろうというのに、こんなことを言う。全く、こ
の娘には敵わない。絶対とも言えるほどの固い信頼を寄せられている感激に、目頭の熱くなる思いだった。
 「分かったよ。じゃあ、行くぞ」
 先端を、間違いなく美希の入り口にセットする。まだ濡れそぼる愛液で滑ってしまわないように意識を集中
して、腰をゆっくりと押し出した。
 「んっ……ぁ」
 案外すんなりと、先端が半分ほど入った。だが、まだ傘の最も広がった部分が残っている。指を二本入れて
も大丈夫だったから、とは思ったが、やはりキツイ。奥へと続いている空間があるのは感知できるが、多少無
理にでも押し入らなければ奥へ進めないかもしれない。
 「美希、大丈夫か?」
 「うん、平気だよ」
 美希の表情にはまだ余裕がある。
 「もう少し、力抜けるか?」
 「で、できるかな……」
 深呼吸するように美希に言うと、大きく息を吸い込んで胸部が膨らみ、俺の胸板に美希の吐く息が当たった。
その時、壁のように押し返してくる前方からの圧力が弱まった。
 「うっ……ああぁぁぁっ!」
 今がチャンス、と俺が思い切って一気に腰を押し込むと、奥に滑り込む感触と同時に、驚きとも悲鳴ともつ
かない、叫びのような声があがった。視線を下げると、美希は痛みに顔を歪めるでもなく、未知の現象に遭遇
したかのような戸惑った表情で俺を見ていた。
 「え、な、何、この変な感じ……お腹が……」
 「全部入ったんだよ」
 「全部……そ……そっか、今、プロデューサーさんと繋がってるんだね」
 状況を把握してか、美希が目を細めて笑顔を見せた。てっきり、初めてだから相当痛がるのだろうと予想し
ていたが、こんなこともあるのだろうか。意外なほどに、冷静と言えば冷静な顔をしていた。
 「痛くないか?」
 「え……う、うん。違和感はあるけど、大丈夫……かな」
 「よし……なら、動くぞ」
 美希の膣内は程よく濡れていて、温かい肉に握り締められるような圧力は痛みに変わるギリギリの強さで、
苦しいながらも心地良い。動かないままでいても強く抱擁されているような充足感があるが、一度動けば複雑
にうねった起伏がペニスに絡み付いてくる。痺れるような刺激が下半身に走った。
 「ぁ……ん、あ……」
 ゆっくりと腰を引き、入り口付近まで戻ってからまた奥へ。指しか受け入れた経験の無い美希の膣内はとて
もきつく、勢い良く動くことなんて到底不可能だ。奥に押し入る時は壁が押し返してくるような感触があり、
襞の合わせ目をカリで引っ掻くように腰を引けば敏感な裏筋が強く擦れ、呻きが漏れた。一旦奥まで入るとす
ぐ外に引き出したくなり、引き出すとまた奥まで突き入れたくなって、緩やかなスピードながら何度も何度も
美希の内部に性器を打ち込んでしまう。
 「あっ、は……い、あっ、あ……」
 「美希……いいよ、ぬめってて気持ちいい……ん?」
 ふと、美希の眼を見つめていた視線を少しだけ上にずらすと、汗で前髪が張り付いていた。よく見ると、前
髪の隙間から玉のような汗が明かりを反射していた。眉を下げたぐらいで顔に苦痛の色は見られないが、かな
りの量の脂汗だ。呼吸も荒く、首筋にしがみつく掌も、いつの間にかじっとりと汗で湿っていた。
 「おい、美希」
 「な……なあに……はぁ、はぁ」
 「……本当は痛いんだろう」
 「い……痛くないよ。ミキも気持ちいいよ……」
 俺の呼びかけに美希は口元を釣り上げて笑って見せたが、瞳までは笑えていなく、少し不自然な引きつった
表情になってしまっていた。
 「嘘つくなよ……こんなに汗びっしょりかいてまで、どうして痛くないフリなんてするんだ」
 可能な限り優しく、諭すように美希に言う。
 「痛くないの。大好きなプロデューサーさんでミキの中がいっぱいだから……痛くなんてないの……」
 潤んでいた瞳から、大粒の涙が零れ落ちた。痛みを頑なに拒む美希の健気な言葉に、胸がじくじく痛んだ。
 親指で美希の涙を拭いながら顔を被せ、いたわるようにそっと唇を重ねた。
 「……続けて欲しいな。嬉しいのはホントだから……」
 「……分かった」
 ベッドの上に投げ出された右手に俺の左手を重ね、指を絡めて握り締めると、返事代わりに握り返してくる
力を感じた。
 往復する動きを再開する。
 「んっ……う、ん……あっ、はぁ……」
 乱暴にしないように気をつけながら腰を揺すっていると、痛みをこらえるのでは無い声が浅い呼吸に混じり
始めた。内壁の起伏がうねるように絡み付いてきて、竿が扱き上げられて、頭がカッと熱くなる。美希に負担
を与えてはいけない、と思う一方で、下半身が別の生物に乗っ取られてしまったかのように、腰の速度が勝手
に上がっていく。
 「はぁっ、あ、う……か、体の奥が……熱いよ……」
 上ずったような言葉が美希の唇から紡ぎだされた。苦しいぐらいに胎内は狭くなっていて、万力か何かで締
め上げられるようだった。両手両足の先端がびりびりと痺れ、腰の感覚が性器へと一挙に集中する。
 「あぁっ、んん……何か……何だろう……」
 「どうした、美希っ」
 「わっ……ぁ、分からないよ。ミキ……どうなっちゃうの?」
 すっかり滑りの良くなった膣内が、惑うようにヒクついていた。
 「大丈夫だ。俺の手、しっかり握ってろ」
 「うん……うんっ……!」
 体の奥が疼く。達しそうになる俺に縋りつくように、美希が握った手に力を込めた。グラインドの速度を上
げていき、射精感がもう戻れない所まで膨らみ、ひたすら腰を打ち付けていく。下になっている美希の両脚が
俺の腰に絡み付いてくる。空いていた方の手も背中に回ってきた。
 「あ……み、ミキっ……あぁ、ふぁぁあぁぁぁんっ!!」
 「う……っ……!」
 腰が爆発してしまうような快感に俺が動けなくなるのと、思い切り締まって身動きが取れなくなるほどに美
希の中がきつくなり、絶頂に身を震わせる体から叫び声があがったのは、ほとんど同時だった。きつく目を閉
じて何かに耐えるように思い切り俺の体にしがみつく美希の顔を見ながら、俺は頭の芯にガンガン響く射精の
悦楽に抑えきれない声を漏らしていた。



 ようやく射精が終わった頃に、力が抜けて余裕のできた美希の膣内から腰を引き出して、性器を外気に触れ
させた。ぽたり、ぽたりと、俺のしたことの証が真っ白なベッドのシーツを赤く汚していく。
 「美希、大丈夫か?」
 まず最初に出てきたのはその一言だった。指で、美希の額に浮いた汗を拭う。
 「うん……平気だよ」
 ほっとしたように、美希が一息ついた。
 「……ハニー」
 「ん?」
 「ハニーって呼ぶね」
 「なんだよ、突然だな」
 「折角トモダチ以上になれたんだから、『プロデューサーさん』じゃ他人行儀でヤなの」
 美希の頬にぽっと紅が差した。可愛らしいその表情を見て、俺の頬も緩む。
 「……いいけど、人前じゃ今まで通りで頼むよ。スキャンダルからは何としても美希を守りたいから」
 「うん、分かった。……ねぇ、プ……じゃなくて……は、ハニー」
 慣れない呼称に恥ずかしいのは美希も同じのようだ。俺も、これからこんな甘々な呼ばれ方をするのかと思
うと、照れ臭くて顔が火照ってしまう。
 「なんだい、美希」
 「ちゅーってして欲しいな」
 美希が目を閉じて顎を少しだけ突き出した。
 「おおせのままに」
 仰向けになったままの美希の背中に掌を回し、抱き起こしながら唇を重ねる。
 甘い物なんて食べていないはずだが、美希の唇は甘い味がしたような気がした。
 「う〜ん……ときめいちゃうな、こういうの……あっ」
 うっとりした笑顔を美希が浮かべた瞬間、ぐぅと腹の虫の鳴く音が聞こえた。
 「ははっ、お腹空いたのか……おっと」
 その音に刺激されたのか、俺の腹も情けない声をあげる。そういえば海から戻って夕食を取っていなかった
ことを、今更思い出した。意識した瞬間、猛烈な空腹感が押し寄せてきて、もう一度胃が鳴いた。テーブルに
置いたままだったパンフレットを手に取る。
 「食べに行こうか。今夜はバイキングやってるみたいだし」
 「あっ、それいいな。ババロアいっぱい食べちゃおっと……オニギリはあるかな?」
 「……無いんじゃないか、さすがに。おにぎりは日本に戻ってからだな」
 のそのそと服を着る俺の横で、美希は裸のままごろんとベッドに寝転んだままだった。重力に負けずに上を
向いている乳房が首を振った拍子にぷるんと揺れて、発散したはずの性欲が頭をもたげてくる。
 「ほら、晩御飯食べに行くんだから、美希も着替えて」
 「めんどくさいなー。ハニーに着替えさせて欲しいなー」
 鼻にかかった美希の声と、口元をきゅっと釣り上げて、上目遣いの甘えるような視線。なんでもしてあげた
くなるようなオーラを纏い、男ならばまず逆らえないであろう強大な魔力を放っている。
 「ダメ。面倒臭がってないでそのぐらい自分でやりなさい」
 本当は俺が恥ずかしいからなのだが、わざときっぱりした調子でそう言ってみると、「むー」と美希は膨れ
っ面になったが、
 「……また叱られちゃったの」
 と、すぐに目を細めて満面の笑みを浮かべた。
 美希はぴょんと飛び起きて下着と服を拾い集め、いそいそと着替え始めた。
 そんな微笑ましい美希の様子に安心した俺は、ふとカーテンの隙間から覗く夜空に視線を向けた。紺色の空
には満月が青白く光っていて、水平線から顔を出している所だった。綺麗だったが、手を伸ばそうとは思わな
かった。夜空を照らす月よりも、夕暮れ時の太陽よりも、眺めていたい存在が今は側にいるから。
 
 着替え終わった俺は、カーテンをそっと閉めるのだった。


 終わり


―後書き―

裏ルートに入っていない方の、いわゆる「ゆとり」のつもりで書いてみました。
仲良くなっていけば最終的にはこうなるんじゃないかな、的な。表と裏の中間ぐらい?
美希に対しては、「美の求道者」みたいなイメージを自分は勝手に持ってたりします。
目を引く外見からモテる女の悩み・甘やかされた存在・幼いメンタル……等等を意識して書いた作品でした。



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