「な、律子。今度は俺も……さ」
 兄ちゃんはそう言いながらベッドに腰掛けて、ズボンのファスナーをじじじーっと下ろしていく。
 (な…何アレ…!?)
 マンガとかだと真っ黒に塗りつぶされてるけど、男の人の『ソコ』に、何があるのかは知ってる。
 でも、お風呂でパパのを見た時は、あんなんじゃなかった。
 天井を向いているそれは先っぽにいくにつれて赤黒くなっていて、蛍光灯の明かりを少し反射している。
 でっかいキノコみたいで、ジャングルの奥深くみたいなアヤシイ所に生えてそうな感じがする。
 身体を起こした律ちゃんは、兄ちゃんの大きくなったアレを目の前にして、戸惑った顔をした。
 でも、それと兄ちゃんの顔とを何度か見ると、ベッドの下に下りて、右手を添えて口を近づけていく。
 「うっ……」
 ベッドに腰掛けた兄ちゃんが、ちょっと顔をのけぞらせた。
 赤っぽい舌を出して、律ちゃんは、あのぐろぐろな兄ちゃんのアレを…舐めている。
 (ふぇ、ふぇらちお…って奴だよね。律ちゃん、イヤじゃないのかなぁ…?)
 まるで別の生き物みたいなそれは、兄ちゃんのカッコいい顔にも、律ちゃんのカワイイ顔にも、まるで似合ってなかった。
 けど、兄ちゃんは気持ち良さそうな顔をしてる。やっぱりアレ、気持ちいいんだ……。
 「どんどん硬くなってる、これ……んむ……」
 律ちゃんが、思いっきり口を大きく開いて…フランクフルトよりもぶっといアレをぱくっと飲み込んだ。
 「あ……律子ぉ……」
 切なそうな感じの、兄ちゃんの声。今度は、兄ちゃんがハァハァ言う番みたいだ。
 さっき律ちゃんが兄ちゃんにしてたみたいに、手で頭を押さえて髪をナデナデしている。
 律ちゃんの唇は綺麗な色をしているけれど、その綺麗な唇の中から、時々赤黒いのが見えている。
 それにしても、男の人が気持ちいい所があんな気持ち悪いとも言えるような色と形をしているって、凄く生々しい。
 ゲームに出て来るモンスターみたいに見えるのに、それが、兄ちゃんについてる。
 「り、律子……もう、いいよ」
 兄ちゃんが上ずったような声をあげた。
 「んっ……止めちゃうんですか?このまま続けても……」
 「……もうヤバいんだよ。律子の口、気持ちよくて……」
 「……ふ〜ん……」
 目を細めて笑った律ちゃんは……すごくエッチな顔になっていた。
 舌なめずりをしてから、再びぱくりと兄ちゃんのアレをくわえて、頭を上下に揺すり始める。
 「うぁ、り、律子!もういいって!それ以上したら……」
 (それ以上したら…したらどうなっちゃうの?)
 男の人のアソコからはせーし、っていうのが出てくるって、友達との内緒話の時に知った。
 兄ちゃん、せーし出しちゃうのかな?本当に白くてドロドロしてるのかな?
 「ま……真面目に、ダメだっ、口の中にっ……うぅっ」
 兄ちゃんは呻いたきり押し黙ってしまい、律ちゃんの動きも止まった。
 シーンとなった部屋の中に、兄ちゃんの荒い息だけが流れ出ては消えていく。
 やがて律ちゃんが口を離すと、赤黒い兄ちゃんの先っぽに、白いのが少し見えた。
 (あれかな、あれだよね、せーしって……)
 「ご、ごめん、ほら律子、ここに吐き出してっ」
 箱からティッシュを取り出して手渡そうとする兄ちゃんの手を、律ちゃんは首を振って拒否した。
 そして、律ちゃんは口元を手で押さえたと思うと…

 ――――ごくん。

 ロッカーの中にまで、喉を鳴らして飲み込む音が聞こえてきた。
 「律子……」
 「……こ、これ……マズいわね……ドロッドロで生臭くて、喉に引っかかる……最悪の味……」
 (え、そんなにげろげろなんだ……)
 そりゃあ、あんな気持ち悪い感じの所から出てくるものが、美味しいとは思えないけど。
 そんなにマズい物が飲めてしまう律ちゃんの気持ちが、私にはよく分からなかった。
 「だ、だから、吐き出していい、って言ったのに」
 「……感想はそれだけなんですか?」
 不機嫌そうに律ちゃんが兄ちゃんに詰め寄る。
 「感想…あ、あぁ、そりゃ当然、気持ちよかったよ。律子を汚したみたいで申し訳ない気もするけど」
 「……もうとっくのとうに汚れてますよ。まぁ……それなら、またしてあげない事も無いですよ」
 「そ、そうか。だったら……あ、これ、飲めよ」
 兄ちゃんが、ビニール袋の中から緑茶のペットボトルを取り出して、律ちゃんに手渡した。
 蓋を開けてお茶を飲む律ちゃんの脇で、兄ちゃんのアレはまだ大きいままだ。
 「ふぅ……さてと……しますか?続き……」
 ベッドの下に座っていた律ちゃんが、兄ちゃんの横に腰掛けた。
 こくり、と兄ちゃんは頷くと、お茶を出したビニール袋の中から、何やら箱を取り出して、中身を開いた。
 箱の中から、小袋を取り出して、一個を切り離してピリピリと破く。
 (あっ、あれ、コンドームって奴かな)
 『明るい家族計画』とか書いてある自販機の中で売ってるってウワサのあれのことだ。
 兄ちゃんは、破いた袋の中から取り出したそれを、アソコに被せていく。その様子を、律ちゃんはちらちらと横目で見ていた。
 マンガや本では黒い海苔みたいなので隠れていたとはいえ、ここから先がどういう展開になるのかは何となく察しがつく。
 男の人のアソコが女の人のアソコの中に入る…っていうのは分かるけど…
 (あんな大きいの、入るわけないよ〜…)
 私も女の子だから、律ちゃんと同じ事ができるんだと思うけど、もし私が同じ事をしようとしたら…そう考えると、怖くなった。
 兄ちゃんがベッドの側に腰掛けたままで、律ちゃんを手招きする。こっち側にお尻を向ける形で、律ちゃんが上になってまたがる。
 さっきは見えなかった律ちゃんのアソコが、今度はちょっと見える。
 生の鮭みたいな赤っぽいピンクの溝が、脚の付け根の一番深い所にある。
 腰の辺りから兄ちゃんの手がそこへ伸びてきて、両手の指でググッと広げると、そこがぬめっているのが何となく見えた。
 溝の奥に穴があるみたいだけど、どう見てもその穴よりも兄ちゃんのアレの方がずっと大きい。
 (あ、またちゅーしてる……いいなぁ)
 上になった律ちゃんが兄ちゃんに抱きついてキスしているのに目を奪われた。
 どうしてだか分からないけど、抱き合ってたりキスしたり、二人のそんならぶらぶな姿は羨ましく見えた。
 ぽーっと眺めていて、二人の唇が離れた頃には、さっきまであった兄ちゃんのアレが見えなくなっていた。
 「んっ、あ、深……あっ、あ……」
 繋がった部分を見てみると、兄ちゃんのアレの太さはそのままに、根本までめりこんでいる。
 ピンク色の溝は大きく広げられて、あの太いのをすっかり飲み込んでしまっていた。
 (すっごく痛そうに見えるけど、痛く無いのかなぁ……?)
 律ちゃんの表情は見えないけど、さっきアソコを舐められてた時みたいな、あの甘い声を出している。
 私はそれを見ながら、思い出したように、胸の上にあった手を、身体の下の方へ、パンツの中へと滑り込ませた。
 (うひゃ…ぬ、ぬるっとしてる…!)
 未知の液体が、パンツの中にあった。これはきっと……さっき『濡れてる』とか言ってたアレの事だ。
 おそるおそる指にそのぬるぬるをくっつけてみると、胸の先っちょを触った時みたいにビリビリ来た。
 そのビリビリをもっと味わいたくて、溝になった部分を何度も何度も往復させてしまう。
 普段、亜美とバンバン下ネタは話すし、クラスの女の子にもイタズラしちゃったりはするけれど。
 自分で自分のこんな所をいじるなんて、初めてだ。それも、知ってる人が目の前でセックスしている所で。
 こんないけない事をしている自分は、きっと悪い子なんだ…と思った瞬間、背筋がゾクゾクしてしまった。
 「はあぁ……ん、あっ……! あ……あぁっ!」
 上にまたがっていた律ちゃんを抱えてベッドの上に下ろして、今度は兄ちゃんが上になった。
 さっきは動きづらそうな感じだったけど、兄ちゃんが勢いよく腰を振るのに合わせてぐちゅぐちゅ音が聞こえてくるようになった。
 下になっている律ちゃんの声も、大きくなる。でも……二人の顔は見えなくなってしまった。
 「……っぅ、……っっ」
 ぬるぬるした所を指でこすった時のビリビリはどんどん大きくなってきて、今にも大声が出てしまいそう。
 私は慌てて空いた手で口を塞いだけれど、指の動きが全然止まらなくて、足にも力が入らなくなってくる。
 段々外の光景も二人の声も気にならなくなった頃…頭の中でバチンと何かが弾けた。



 気が付いたら、外の二人はもう着替え始めていた。私が色々している間に、もう終わってしまっていたらしい。
 最後はどうなったんだろう。それが気がかりで、ちょっと悔しいような気分だった。
 一足先に律ちゃんは部屋の外に出て行って、兄ちゃんはまだ部屋の中を片付けている。
 兄ちゃんも外に出たら、私もすぐに出よう。早く家に帰らなくちゃ。
 『♪あ〜な〜た〜 だけに使える テークニックで とかちつくちて』
 (し、しまったあぁぁぁぁぁぁ)
 腰元でブルブル震える感触と、大音量でロッカー中に響く、聞きなれた着信音。
 マナーモードにし忘れた、とか、ママからだ、とか、そういった事を考える前に全身からドッと汗が吹き出た。
 もうおしまいだ。どうしよう。
 「ま、真美!?」
 「……兄ちゃん……」
 ボタンを押して音を止めた次の瞬間には…ロッカーのドアが開いて、兄ちゃんが目の前に立っていた。



 「………事情は分かった」
 「ごめん兄ちゃん、真美…覗くつもりじゃなかったんだよぅ…」
 ロッカーから出ると、私は兄ちゃんに事情を説明したけど、自分のをイジイジしてた事は言えなかった。
 対面した瞬間、兄ちゃんは最初に驚き、次にこの世の終わりみたいな顔をしたけど、私を怒りはしなかった。
 「いや、真美は悪くないよ。だって、忘れ物を取りに来ただけなんだから……ただ」
 「ただ?」
 「律子もすぐにここに戻ってくる。口裏合わせしよう。真美は財布を忘れちゃって、今取りに帰ってきたばっかりで、偶然ここに来た」
 「う、うん。その方がいいよね」
 何も知らないフリをしていた方が私は気が楽だし、きっと兄ちゃんもその方がいいんだと思う。
 間もなく、兄ちゃんが言った通りに律ちゃんも戻ってきた。
 「…まぁ、ミスは誰にでもある事だけど…次から気をつけなさいよ?ただでさえ夜は危ないんだから」
 律ちゃんへの事情説明は、兄ちゃんがやってくれた。
 さすがに律ちゃんには怒られるって思ったけど、仕事の時よりも優しい言い方で軽く注意されただけだった。
 何もかもを見てしまった私は、それを黙っている事と、自分がこっそりしていた事と、律ちゃんの優しい言い方に罪悪感を感じた。
 「うん…ちゃんと見つかったよ。これから帰るね。うん…うん。じゃあ、バイバイ」
 さっきのケータイは、やっぱりママからだった。ちゃんと帰ると連絡を入れたけど、ママはちょっと怒っていた。
 「よし!じゃあ帰るか。真美の家まで送っていこう」
 事務所を出て鍵を閉めると、兄ちゃんと律ちゃんと私は駐車場に止めてある白い車に乗った。
 たまに兄ちゃんは車で亜美と私を家まで送ってくれるけど、助手席に律ちゃんがいるのが、今日は違っていた。
 窓を開けて、ビュービュー吹いてくる風を浴びていたけれど、まだ火照ったままの顔を冷ましてくれるわけではなかった。
 「なんか元気無いわね。明日も仕事だけど大丈夫、真美?」
 「だ、大丈夫だよ」
 前の座席にいる律ちゃんの方を、どうしても振り向けなかった。
 顔…特に唇を見たら、さっきの事を思い出してしまいそうだったから。
 ただでさえ、あのエッチな姿と、自分でした時のビリビリがまだ頭に残っているのに。
 どうしよう、明日から、律ちゃんに会うのが気まずくなっちゃうかもしれない。
 それどころか、亜美に会った瞬間にキョドっちゃいそうだし、そしたらどうすればいいんだろう。
 


 車はいつも送ってもらう時とちょっと違う道を走り、時計がちょっと進んだ所で、道端に止まった。
 「じゃあ私はここで降りてくから。真美、明日は何時に事務所だったか覚えてる?」
 「えっと、五時からレッスンだから、四時集合だよね?」
 「そうよ。明日はちゃんと学校へも行けるはずだから、遅刻しないで、授業もちゃんと聞くのよ?」
 「……は〜い」
 「ははっ。まるでお母さんだな」
 「もう、茶化さないでください」
 呆れたような言い方だけど、そこには慣れみたいな物を感じる。
 意識して見てみると、律ちゃんが兄ちゃんを見る目は、私を見る目とちょっとだけ違うように思う。
 「じゃ、また明日な。お休み」
 「お休みなさい。真美も、帰りは気をつけてね」
 「うん、おやすみ!」
 律ちゃんが曲がり角の先に消えていくのを、兄ちゃんはじっと見つめていた。
 二人の間には強い結びつきのようなものがあるみたいで、それが私には羨ましい。
 「ねえ兄ちゃん。席変わってもいい?」
 後部座席を出て、いつもは座らない、さっきまで律ちゃんが座っていた助手席に座らせてもらった。
 

 「……すまなかったな」
 車を発進させながら、兄ちゃんが言った。
 「律ちゃんとの事?」
 「ああ」
 「有名人だから、バレたら大変なんでしょ?」
 兄ちゃんがちょっとだけこっちを見て、申し訳なさそうな顔をした。
 「まぁ、そういう事だ。特にマスコミに知られたら、色んな所に押しかけられて私生活が台無しになってしまうかもしれない」
 私にも、それは分かる。クラスの友達は全然そんな事無いけど、友達の友達ぐらいの人には、仕事の事とかよく聞かれるから。
 全部が全部イヤなわけじゃないけど、喋っちゃいけない事も多いから、聞かれたくないこともある。
 「律ちゃん、超売れっ子アイドルだったんだもんね。今でもテレビ局の人たちの反応凄いもん」
 テレビ局で番組に出演する他のタレントさんたちが律ちゃんにペコペコしているのを見た時は、亜美と二人でビックリ仰天だった。
 「…まだ、律子の分の稼ぎも無いと厳しいからな、ウチは…。でも、いつか真美達だけで律子の人気を抜けると俺は信じてるよ」
 「ホント?でもどうして?律ちゃんの人気を作ったのは、兄ちゃんなんでしょ?」
 「あはは。あれは律子が頑張ったんだよ。新米プロデューサーだった俺はあいつに怒られてばっかりでさ。真美達も分かるだろ?」
 確かに、レッスン中もそうだけど、遅刻や忘れ物には、律ちゃんは特に厳しいし、時々怖かったりもする。
 「でも、最初の内はおっかなかったけど…最近なんか優しくなったような気もするよ?」
 「ん、そうなのか?」
 兄ちゃんは何でもないような返事をしたけど、私はピンと、高木社長っぽく言うとティンと来た。
 「あ、そっか!指輪とかもらったからなんだね!バイショーって奴だね」
 「…買収だろ、買収。それじゃなんだか俺が金で言う事聞かせたみたいじゃないか」
 「じゃあ…やっぱり、兄ちゃんとらぶらぶだから?」
 「ま、まぁ…そんな所だといいな」
 わざとらしく兄ちゃんが咳払いをした。その横顔は、ちょっぴり赤い。
 「んっふっふ〜。兄ちゃん照れてる〜!」
 「うっ、うるさいな」


 さっきの身体が火照るような感じはどうにか治まって、兄ちゃんと楽しく喋っている内に、家の目の前に着いて車が止まった。
 「あ、もう家着いたね。兄ちゃんありがとう」
 「ああ。今更だけど、財布見つかってよかったな。あと、そのー、なんだ」
 兄ちゃんが、言いづらそうに言葉を詰まらせる。
 「律子と付き合ってること、亜美にまで黙ってる事はないけど、なるべく内緒にしてもらえるか?」
 「うん、いいよ。律ちゃんと兄ちゃんが大変な事になったら、きっと真美達も大変な事になるもんね」
 私の返事を聞くと、兄ちゃんの大きな手が頭の上からやってきた。
 「えらいな、真美は」
 「エヘヘ、それほどでもぉ〜…」
 頭を撫でてもらったのは初めてじゃないけど、今日は何だか、恥ずかしいような感じでムズムズしてしまう。
 兄ちゃんは優しい顔をしていたけれど、何かを思い出したようで、またさっきの焦った顔に戻った。
 「そ、そ……それとな。今日のことなんだが、アレは、アレだけは……!!」
 何の事を言っているか瞬時に思い出して、私の顔はボンッと爆発しそうなぐらい一気に熱くなった。
 「いっ、言わない!あの事は言わないよっ!真美はなーんにも見て無かったよっ!」
 あの場で私が何をしていたか、それだけは。
 「じじじじゃあ真美帰るねっ送ってくれてありがとうおやすみーっ!!」
 私だけの秘密にしておきたい。


 おわり


―後書き―
小学生のボキャブラリー、とか、真美の一人称とか色々と挑戦した作品でした。
亜美完全放置なのは仕様です。。。


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